イッチ「“個性”と言う特殊能力がある世界に転生したら“緑谷出久”って子が自殺したんだけど…どうしたらいい?」スレ民達『ハ?』   作:DestinyImpulse

4 / 21
 今回の題名はオーズ風です。

 前回のワンフォーオールをキングエクスカリバーにする案、非難されないかビクビクしてましたが、受けれてくれてありがとうございますm(_ _)m

 キングエクスカリバーの活躍はもう少し先になるのでお待ちください。


 今回は戦闘ありの入試の話です。

 





 それではどうぞ!


特訓と入試と出会い

「ハアッッ!」

 

 其処は何処かも分からない真っ白な空間……そこで二人の剣士が戦っていた。一人は炎と竜を印象付ける鎧に身を包んだ少年。もう一人は緑の軍服に白いロングコートを羽織った金髪が混ざった茶髪の青年。

 

 少年が振るう炎の聖剣を、青年は“赤い腕輪”が取り付けられた右手に握る蒼いロングブレードで弾き飛ばす。

 

 少年と青年……二人の実力差は歴然だ。少年は仮面の下で表情を苦痛に歪ませているのに対して青年は涼しい顔をしている。

 

 青年の剣撃にギリギリ食らい付くが……

 

「まだまだ、太刀筋が甘いな!」

 

「ッ……!?」

 

 ここまでだ。青年は容易に聖剣を弾き、少年の首筋にロングブレードを添えた。

 

「……ハァ、ハァ……やっぱり“神喰ニキ”には勝てる気がしない」

 

「伊達に極東最強とは呼ばれてないからね」

 

 

 変身を解除した少年………剣聖火にそう言って“神薙ユウ”は弾き飛ばされた火炎剣烈火を手渡す。

 

 

「なかなか様になってきたな」

 

 そんな二人の様子を一人の青年が見ていた。

 

「そうそう、ハンターニキの言う通り最初と比べて戦い方も上手くなってきたよ」

 

 白い髪の男性。ユウが言った通り、彼は掲示板の仲間からハンターニキと親しまれている。何故、彼が聖火とユウの稽古を見ていたのかと言うと、彼等が居るこの白い空間はハンターニキが拠点としている場所。無数に存在する世界を駆ける彼はこの空間から害悪転生者を狩りに出動している。

 

「この精神と時の部屋みたいな空間には最初はビックリしたけど住めば都って言うし、時空を移動できるから特訓にもってこいだしね」

 

「ホント、兄貴達には感謝してます!」

 

「その感謝は結果で返すんだな。ほら、そろそろ時間だろ」

 

 満更でもない笑みを浮かべてハンターニキが手を掲げると“銀色の膜状のモノ”が空間に現れる。

 

「あ~あ~どうして聖火の入試と俺の任務が被るんだ〜。やっぱりフェンリルはブラックだー!」

 

「嘆いててもしょうがないだろ神喰ニキ……じゃあハンターニキ、また掲示板で!」

 

「………全く、騒がしい奴等だ」

 

 そう言って聖火とユウはそれぞれの世界に帰還した。そんな二人に笑みを浮かべてハンターニキは“マゼンタ色のベルト”を磨きながら掲示板を眺めていた。

 

 

 

◆◆◆◆

 

 

 ハンターニキの力で元の世界に戻って来た俺は、既に入試に必要な準備はしていたのですぐに出発した。

 

 オールマイトとの修行が始まって数ヶ月。オールマイトから言い渡された海洋公園の掃除も無事に終わらせてからはキングエクスカリバーへと変化したワン・フォー・オールのコントロールに重点を置いた。その過程で、兄貴達との手合わせ等も加わったんだよな……特に神喰ニキ、ライダーキックを片手で受け止めるとか…貴方はエボルトですか……!

 

 と、そうこう考えてる内に雄英に着いたようだ。それにしてもホントに高校なのかと疑う程に凄い場所だな……頭上にある校門と言うのには似合わず、近代的なゲートと言った方が似合う門の前で、俺はポツンと立ちながら心の中で呟いた。 

 

 今や数多く存在するヒーロー。その頂点であるオールマイトを筆頭に多数の有名ヒーロー達の母校である雄英高校。それ故に周りは多くの受験生で溢れていた。

 

 

「なぁ、アレって仮面の剣士じゃね!」

「うぉ、マジだ!本物じゃん!」

 

 

 そして俺はそんな受験生達に滅茶苦茶視線を向けられている。ヘドロヴィランでの一件がテレビニュースや様々なバラエティー番組で話題として取り上げられ、表通りを歩いていると一般人からは質問され、ヒーロー達からは「卒業後は是非ウチのサイドキックに!」と、よく声をかけられるのだ。

 

 まるで、動物園のパンダになった気分だ……恥ずかしさを感じながら俺は逃げるように試験会場に向かった。

 

 

 筆記試験は終了し昼休憩の後、午後から実技試験が始まる。筆記は特に問題無く終わった。実技はどんな事をするのか…そう考えながら食堂で昼食を食べていると…

 

 

「この席、空いてる?」 

 

 横から声をかけられた。

 

 黒髪の短めのボブカットで耳たぶのコードが特徴的な可愛らしい女の子だ。 

 

「ああ、大丈夫だ。誰も使っていない」 

 

「良かった、もう殆どの席が埋まっていてさ」

 

 周りを見てみると殆どどころか全部の席が埋まっていた。 

 

「やっぱり緊張するな、ここにいる全員がライバルだと考えると」

 

「俺も緊張はしている。だけど同時にワクワクしてる、自分の実力が何処までのモノなのかね」

 

「へえ、ロックじゃん。ウチもそういう気持ちだったけど直前で緊張しちゃって」

 

 まあ、倍率300の名門校に受けているんだ普通は緊張の一つや二つするだろう。

 

 

「……自分がどうなるか不安になったら、自分がどうなりたいか考えてみなよ」

 

 

「え?」

 

「そうすれば、これからが楽しくなるって」

 

 未来に不安を感じるのは当たり前だ。だからって下ばかり向いてちゃ何も変わらない。暫くして、女の子は何か考え込んで、そして顔を上げた。

 

 

「サンキュー、なんかすっきりした。自分がどうなりたいか…か、超ロックじゃん!」

 

「吹っ切れたようだな」

 

「うん、ありがとう……え〜と……」

 

「そういえば名前言って無かったっけ、俺は剣聖火」

 

「ウチは耳郎響香、よろしく。………剣聖火? どっかで聞いたような……あーっ! ヘドロヴィランの時の仮面の剣士じゃん!」

 

「あはは……すっかりその呼び名が定着したのか」

 

 その後、昼食を食べ終え一緒に行動する事にした俺達は、実技試験の説明を聞くために会場へと向かった。

 

 

 

 

 

◆◆◆◆

 

 

1:グランドマスター

 そろそろ実技試験が始まるね

 

2:赤目の主人公

 そうだな……この数ヶ月色々と合ったなイッチも他の奴等も……

 

3:グランドマスター

 そうだね……トマト君……原作始まったのはいいけど、まさかペンデュラムすっ飛ばしてリンク召喚まで生み出すなんて……

 

4:名無しのトマト

 俺、また何かやっちゃいましたか?

 

5:グランドマスター

 やり過ぎだwww

 

6:赤目の主人公

 ペンデュラムしたと思ったら、「現れろ未来を導くサーキット!!」なんて言い出してデコードトーカーを召喚した時は……ヤバかった。

 

 

7:名無しのトマト

 おっPとデコードトーカーのダブルエースでのフィニッシュは爽快でした!しかも、流石に二つの召喚法を生み出すのは無理があったのか、俺の中に居るズァーク消えましたし。

 

8:グランドマスター

 最大の難関をこんな方法で乗り越えるとは……このグランドマスターの目を持ってしても見抜けなかった!

 

9:名無しの鬼殺隊

 予測できるかwww

 

10:名無しのトマト

 消え際に「たとえ我が消えても第二、第三の我が必ず世界をぉぉぉぉお!!」って言ってました。

 

11:ありふれた赤龍帝

 ホントに第二、第三がいる件についてwww

 

12:グランドマスター

 あ、赤龍ちゃん。そっちはどう?

 

13:ありふれた赤龍帝

 フフフ、檜山の野郎が不意打ちして只今、ハジメ君と奈落生活ですよ……あの野郎、次に会ったら覇龍で殺す!

 

14:名無しの転生者ハンター

 序盤も序盤だな……これからに備えて地上に出る前に禁手化(バランス・ブレイク)を習得しとけよ。

 

15:ありふれた赤龍帝

 あ、ハンターニキ!了解です!

 

16:グランドマスター

 お、ハンターニキも来た。後は神喰ニキだけだね。

 

17:名無しのゴッドイーター

 呼んだ?

 

18:名無しの転生者ハンター

>>17 お前、任務はどうした?

 

19:名無しのゴッドイーター

 速攻で終わらせたに決まってるじゃん。

 

20:グランドマスター

 因みに何狩ったの?

 

21:名無しのゴッドイーター

 キュウビとハンニバル神速種。

 

22:名無しの鬼殺隊

 どっちもヤバいじゃねーか!!

 

23:名無しのトマト

 ゴッドイーター知らなくても名前で分かる……めっちゃヤバい奴だ!

 

24:ありふれた赤龍帝

 オールマイトの事言えないですよ!貴方も十分化け物です!!

 

25:名無しのゴッドイーター

 解せぬ!そんなに大した事ない…「ユウ! また、危険な任務を一人で行ったんですか!?」…ちょ!アリサ!?いやいやいやいや!ほら見て、掠り傷一つ負ってないよ!?

 

26:グランドマスター

 嫁が出てきたね。

 

27:名無しのゴッドイーター

 だから落ち着けぇ……「それとこれとは話が別です! ドン引きです! お説教です!」……ちょっと待っ――――

 

28:名無しの転生者ハンター

 ………ヨシ(現場猫風)!

 

29:炎の剣士

 何がヨシですかwww

 

30:名無しの鬼殺隊

 お、イッチ………気にするなアイツなら大丈夫だwww

 

31:名無しのトマト

 ところでイッチ………隣のかわい子ちゃんは?

 

32:炎の剣士

 ああ、昼飯の時に意気投合した耳郎ちゃんだよ。

 

33:名無しのトマト

 くたばれ。

 

34:名無しの鬼殺隊

 もげろ!

 

35:ありふれた赤龍帝

 爆発しろ!

 

36:炎の剣士

 いきなりヒドイ!?

 

37:グランドマスター

 オールマイトの次は耳郎響香か……

 

38:名無しの転生者ハンター

 爆豪はカウントしないのか………

 

「今日はオレのライブヘようこそー!! エヴィバディセイヘイ!!」 

 

 ……始まったな。

 

39:名無しの鬼殺隊

 うるせぇ、ちょっと音量下げよ。

 

40:名無しのトマト

 まぁ、これだけ大きな会場ですしこの位がいいんじゃない?

 

41:赤目の主人公

 さて、概要を纏めると…

 

 実技試験の内容は10分間の【模擬市街地演習】

 

 道具の持ち込みは自由。各自指定の試験会場に移動。

 

 演習場には三種類の"仮想敵"が多数配置されている。

 

 それぞれの「攻略難易度」に応じてポイントが設けられる。それを自分の"個性"で行動不能にしてポイントを稼ぐのが目標。

 

 アンチヒーローなどの行為はご法度。

 

 だな。他に何か言ってるか?  

 

42:炎の剣士

 今、眼鏡の受験生が四種類目の仮想敵について質問してます。

 

43:ありふれた赤龍帝

 あ、飯田君じゃん。あんな堂々と質問するなんて凄いな。

 

44:名無しの転生者ハンター

 真面目過ぎるが、基本的に良い奴だから。0Pも概ね原作通りだな。他に気になる点はあるか?

 

45:炎の剣士

 そうですね……プレゼント・マイクの言葉に応えたくてウズウズしている耳郎ちゃんが可愛いです。

 

46:赤目の主人公

 おいwww

 

47:グランドマスター

 まぁ、確かにカワイイね。

 

48:名無しのトマト

 カワイイ!

 

49:名無しの鬼殺隊

 カワイイ!

 

50:ありふれた赤龍帝

 カワイイ!

 

51:名無しのゴッドイーター

 カワ…「ユウ……今、他の女の子の事考えてません?」……あ、アリサ!?そ、そんな訳な―――

 

52:炎の剣士

 神喰ニキwww

 

53:名無しの鬼殺隊

 アイツが戻って来るのはまだ先だなwww

 

54:名無しの転生者ハンター

 説明も終わったか……さて、この実技試験は如何に仮想敵を倒してポイントを稼ぐかがミソだが…頑張ってこい。

 

55:炎の剣士

 はい、それじゃあ行ってきます!

 

56:グランドマスター

 いってらっしゃ~い!

 

57:名無しの鬼殺隊

 ……言わなくて良かったのか?敵ポイントだけじゃないって?

 

58:名無しの転生者ハンター

 ……それは他の受験生も知らない事だ。自分だけ教えてもらうのはイッチだって望んでない。

 

59:名無しのゴッドイーター

 そうだな………それにイッチなら大丈夫だろ。

 

60:名無しのトマト

 神喰ニキ!?

 

61:赤目の主人公

 生きてたのか!?

 

62:名無しのゴッドイーター

 勝手に殺すな!!

 

 

◆◆◆◆

 

 

「んじゃ、お互い頑張ろう剣!」

 

「おう、耳郎も気をつけろよ」

 

 それぞれ違う会場なので耳郎とは此処でお別れ、互いに健闘を祈りそれぞれの会場に向かった。バスで約十分移動した先には塀で囲まれた演習場というよりは一つの街があった。

 

「街じゃん! 敷地内にこんなんがいくつもあんのか!」

 

 全くもってその通りだ。高校が所有していい敷地じゃねぇだろ、東京ドーム何個分だ?

 

 そんな事を考えながら軽くウォーミングアップをし、スタートラインの最前列に立って合図を待つ。

 

『はいスタートー!』

 

「ッ!」

 

 待ちに待った合図と共に一気に駆け出した……が、俺以外誰も動いていない……フライングじゃないよね!?

 

 

『どうした! どうした! 実戦にカウントもよーいドンもねぇぞ! 走れ走れ!! 賽は投げられてんぞ! 利口な奴は先に行ってるぞ!』

 

 それと同時に他の受験生達も慌てて駆け出した。よかったー!フライングじゃなかったー!

 

 その事に安堵していると前のビルを壊しながら仮想敵が現れた。たしかこの形状は1Pの奴か。

 

「標的捕捉!! ブッ殺「遅い!」

 

 仮想敵だからか口の悪い機械音声を遮る形で、すれ違いざまに火炎剣烈火で一閃!切り口を炎で焼かれ爆発する。まずは1P。

 

 今の爆発音を察知したのか複数の仮想敵が一斉に姿を現し、攻撃を仕掛けてくるが……特に焦る事なく火炎剣烈火に炎を凝縮させ再び一閃。放たれた炎の斬撃が仮想敵の集団を飲み込んだ。爆発する仮想敵もあれば、爆発せずに焼け焦げて動きを止める仮想敵も居る。いずれにしても集まっていた敵は全て沈黙した。

 

「耐久性もソコまで高くないし、火耐性もないか……」

 

 仮想敵の耐久性を確認しつつポイントを数える、今ので……だいだい30Pぐらいか……そうこう考えている内に、他の受験生達も追いつき仮想敵と戦闘を始める。

 

 あっという間に乱戦状態になるが、その後も次々襲ってくる仮想敵を倒していく。ほとんど火炎剣烈火の一太刀で事足りる。

 

 

『あと6分2秒~』

 

 

 制限時間を確認しつつ次のターゲットを探していると、仮想敵に囲まれているサイドテールの少女が視界に入った。たぶん群れが集中しているところに踏み込んでしまったのだろう。

 

 少女は拳を大きくして敵集団を攻撃するが、多勢に無勢なのは見るまでもない。

 

「見て見ぬ振りはできないな」

 

 少女の背後から襲い掛かる敵を切り飛ばす。

 

「後ろは引き受ける!」

 

「えっ?う、うん!」

 

 何体もの仮想敵が飛びかかるが………

 

 

【ヘッジホッグ! ふむふむ…】

 

 

 黄色のライドブック、【ニードルヘッジホッグ】を火炎剣烈火の剣先にかざす。

 

 

「受けるがいい……我が刃!!」

 

 

【習得一閃!】

 

 

 火炎剣烈火を振るうと共に無数の針が仮想敵に突き刺さり、次の瞬間爆発した。

 

「すご…」

 

 少女の呆然とした声に振り返ると、叩き潰された仮想敵達の姿があった。凄いパワーだな……。

 

「サンキュー、助かったよ!」

 

「気にすんな、お互い様だ!」

 

 お互いに時間も限られているので、それだけ言ってその場を去った。一体、また一体と俺の攻撃が仮想敵を破壊していく。当然苦戦している受験生などの助力や、怪我で動けない受験生の移動、その場で出来得る限りの応急処置も忘れない。

 

「いつ出てくる……0P」

 

 0Pの事を頭の片隅に置きながら俺は火炎剣烈火を振った。

 

 

◆◆◆◆

 

63:名無しの転生者ハンター

 順調だな。

 

64:グランドマスター

 戦い方も上手くなってるし、特訓の成果が出てるよ。

 

65:名無しの鬼殺隊

 さっきのオレンジ髪の娘助けた時のセリフまんまゴクウブラックやん!

 

66:名無しのトマト

 イッチ……ドラゴンボール知ってたのか……

 

67:名無しの転生者ハンター

 いや、アレは俺が教えた。

 

68:赤目の主人公

 アンタかい!

 

69:ありふれた赤龍帝

 ゴクウブラックとは洒落てますね。

 

70:名無しのゴッドイーター

 おっと、試験会場が騒がしくなったぞ。

 

71:名無しの転生者ハンター

 出てきたか、0P!

 

72:グランドマスター

 こうして見るとデカいね〜!

 

73:名無しの鬼殺隊

 会場は見事にパニック状態……まぁ、あんなデカい奴が出たら普通はそうなるか……

 

74:ありふれた赤龍帝

 あ、アレ!0Pの近くに動けない女の子が!

 

75:炎の剣士

 

【ピーターファン! ふむふむ……】

 

「ハァっ!」

 

【習得一閃!】

 

 

76:名無しのトマト

 ナイス、イッチ!女の子を無事に救出だ!

 

77:名無しのゴッドイーター

 さぁ、これからが見どころだ!

 

 

◆◆◆◆

 

 

 それは突然現れた。

 

 鳴り響く轟音と共に巨大な仮想敵が建物を薙ぎ倒しながら暴れていた。

 

『ソイツが0Pだ!! 速く逃げねぇと潰されちまうぞ!!』

 

 

 ついに出たか、0P。普通なら他の奴等のように逃げるところだけど、俺は怯えて動けない他の受験生を逃しながらアレをどうするか思考を巡らせる。

 

 ふと見ると、0Pの近くに女の子が倒れている。足が瓦礫に挟まっていて動けないのか!

 

 周りの奴等の制止を振り切って、彼女の元へ向かいながら【ピーターファンタジスタ】を火炎剣烈火の剣先にかざす。

 

 

【ピーターファン! ふむふむ……】

 

「ハァっ!」

 

【習得一閃!】

 

 

 火炎剣烈火から伸縮自在の「キャプチャーフック」が飛び出し瓦礫を退かして女の子を優しく引き寄せる。

 

 

「大丈夫?」

 

「ごめん、助かった」

 

 足の腫れ具合からして動けそうもないか……。

 

「おーい!! 大丈夫か!」

 

 其処にさっき助けたサイドテールの少女が駆け寄ってくる。

 

「さっきの…この子を頼む」

 

 ちょうどいいや、動けない少女を預ける。これであの0Pを倒すのに集中できる。

 

 俺が再び前に出ようとすると声をかけられた。説明会の時の眼鏡の受験生だ。

 

「まさかアレに立ち向かう気なのか? これは入学試験だ、残り時間も限られている。アレを倒してもポイントは手に入らない! 分かっているのか!?」

 

 

 …………確かに彼の言う通り、あんな巨大な敵、普通なら逃げ出すだろうし、倒したとしてもメリットもない。

 

 

 だけどさ………

 

 

 

「………試験だの、ポイントだの………それ以前にヒーローが逃げ出す訳にはいかねぇだろ?」

 

 

【聖剣ソードライバー!】

 

 

 0Pに歩を進めながら火炎剣烈火をソードライバーに戻し、ブレイブドラゴンを起動させる。

 

 

【ブレイブドラゴン!】

 

 

【かつて全てを滅ぼすほどの偉大な力を手にした神獣がいた!】

 

 

 ソードライバーの一番右側のスロットに差し込む。これで変身できるが……これ以上暴れると被害が大きくなるし……使うか、ニ冊!!

 

 

【ジャッ君と土豆の木!!】

 

  

 取り出したのは緑色のワンダーライドブック、【ジャッ君と土豆の木】。流石にピーターファンタジスタじゃアレは止められない。

 

 

【とある少年がふと手に入れたお豆が、巨大な木となる不思議な話…】

 

 

 起動したジャッ君と土豆の木を閉じ、物語のスロットに装填して火炎剣烈火を抜いた。

 

 

【烈火抜刀!!】

 

 

「変身!」

 

 

 剣舞を舞いながら聖剣で十字を刻み、炎の斬撃が0Pの装甲にダメージを与えて返ってきて仮面を形成する。

 

 

【二冊の本を重ねし時、聖なる剣に力が宿る!】

 

 

 

【ワンダーライダー!】

 

 

 ライドブックから飛び出した土豆の木を構成する樹皮や土豆の鞘、ツタなどが俺の左半身に宿り装甲に変化していく。

 

 

【ドラゴン! ジャックと豆の木!!】

 

 

 

【二つの属性を備えた刃が、研ぎ澄まされる!】

 

 

 

 

 これが、【仮面ライダーセイバードラゴンジャッ君】……ハイそこ!ふざけた名前とか言わない!

 

 

 

 

◆◆◆◆

 

78:名無しのトマト

 イッチがニ冊使った!

 

79:名無しの鬼殺隊

 まだ、ニ冊は早いですwww

 

80:名無しのゴッドイーター

 早くねぇわwww特訓の時に使ってたぞ!

 

81:ありふれた赤龍帝

 それで、何でドラゴンジャッ君に?

 

82:グランドマスター

 多分、これ以上被害を増やさない為に0Pを封じる為じゃない?

 

83:炎の剣士

 「これで、止まれ!!」

 

84:赤目の主人公

 左腕から豆を射出!ダメージを与えると同時に豆から木が生えて0Pを絡め取った!

 

85:名無しの鬼殺隊

 これで動きは封じた!

 

86:名無しの転生者ハンター

 残り時間もあと僅か……決めろ!

 

 

◆◆◆◆

 

 

 土豆の力で動きは封じた……残り時間ももう無いだろうし、一気に決める!俺は納刀状態の火炎剣烈火のトリガーを2回引いた。

 

 

【必殺読破!!】

 

 

【ドラゴン!ジャックと豆の木!!二冊撃!ファ・ファ・ファイヤー!】

 

 

 土豆の木を足場に0Pよりも高く跳び上がる。それと同時に本のページ型のエネルギー体が俺と0Pの間に何枚か出現し……

 

 

火龍蹴撃破(ひりゅうしゅうげきは)!!」

 

 

 一気に降下!ページ型のエネルギーを通り抜ける度に右足にエネルギーが収縮、現れた火炎剣烈火型のエネルギー体と共に0Pに必殺のライダーキックを叩き込む!

 

 

 ボディに大きな風穴を開けられた0Pは沈黙……地面に着地したと同時にサイレンが鳴り響いた。

 

 

『終了〜!!!!』

 

 

 

 

「……………終わったか」

 

 

 試験が終わった事を実感した俺は変身を解いた。周りの奴等が巨大敵を倒した事に驚きを隠せず凝視してくるが、大して気にせずさっき助けた少女を見つけた。

 

「君、足大丈夫?」

 

「あっ! さっきはありがとう。おかげで潰れずにすんだわ」

 

 

 笑みを浮かべる少女、大丈夫だろう。その時、受験生の間からその場にそぐわぬ女性高齢者の声がした。

 

「お疲れ様~、お疲れ様~。ハイハイ、ハリボーだよ。ハリボーをお食べ」

 

 

 注射の形をした杖をついて低身長の老婆がお菓子を配りながら歩いてくる。雄英のホームページで見たなあの人……確かに看護教諭の……思い出した。

 

「リカバリーガールだ……一応見てもらった方がいい」

 

「うん、ありがと!」

 

 少女にそう言い残し、出口に歩き始める。背後から少女の感謝の言葉が投げかけられる。お礼を言われて悪い気はしないけど……こっ恥ずかしいので振り返りはしなかったが、右手を軽く上げて声に応えた。

 

 

 

 

 

 こうして俺の入試が幕を閉じた。

 

 

 

 

◆◆◆◆

 

 

「アイツスゲー奴だな…あんなデケー奴を倒すなんて」

 

「と言うか、ヘドロヴィランの時の仮面の剣士だろアイツ!」

 

「マジだ! やっぱ、雄英目指してたのか……!」

 

 

 実技試験が終わったが……彼らは動こうとしなかった。それ程までに聖火の活躍が印象的だったのだ。

 

「ホント凄いよな……変身するし、デケー木を生やすし、トドメのあのケリ! どんな個性なんだろうな?」

 

 その殆どが聖火の力に関する話題だった。

 

(そこじゃないだろ!)

 

 そんな彼等の言葉を眼鏡の少年、飯田天哉は内心否定する。

 

 

(彼は残り時間、己の安全、その他諸々の不確定要素が有るにも関わらずに…周りの被害を抑える為に一切の躊躇なく、飛び出した!)

 

 

 きっと、この“試験の構造”に気づいていようと、なかろうと……飛び出したのだろう。

 

 

『………試験だの、ポイントだの………それ以前にヒーローが逃げ出す訳にはいかねぇだろ?』

 

 

 でなければ、あんな心に響く言葉は言えない。

 

 

(……剣聖火……仮面の剣士………僕ももっと精進しなければ!)

 

 

 去っていく聖火の後ろ姿を、飯田は尊敬の念を込めて見つめていた。

 

 

 

「アレが噂の仮面の剣士……」

 

 そして、試験の途中で聖火が助けたサイドテールの少女、拳藤一佳もまた聖火の姿を眺めていた。

 

 0Pを倒した力もそうだが、何より一切の迷いなく誰かを助ける為に立ち向かうその姿は正にヒーローだった。

 

 

「………カッコよかったな………アイツ」

 

 

 

 無意識に漏れた拳藤の呟きが風と共に消えていった。

 

 

 

END

 




 思いのほか長くなってしまった……
 今回登場したドラゴンジャッ君……次の登場はいつかな……

 なお、本来の火龍蹴撃破はキックがヒットすると本のページ型のエネルギー体が出現し、火炎剣烈火型のエネルギー体と共にページごと標的を貫く技ですが、対処が大きすぎたので今回はディケイドのディメンションキックの丸パク…ゲフンゲフン、リスペクトしました。


・神を薙ぐ超古代の光

 新人時代にタイタスに誘われる形でタイタスブートキャンプに参加。見事なウルトラマッスルを手に入れた。パワータイプになればキングジョーやギャラクトロンなどのロボット怪獣をボコボコにできる。本人曰くオリュンポスの機神よりキングジョーの方が硬いらしい。

 
・ O C Gトマト

 遂に原作が始まったが……ペンデュラムすっ飛ばしてリンク召喚まで生み出してしまった。ルールはマスタールール(2020年4月1日改訂版)。流石に二つの召喚法を生み出すのは無理があったのかザァークは消えた。………お楽しみはこれからだ!!(ヤケクソ)

外伝について

  • 別に分けてほしい
  • このままでいい

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。