イッチ「“個性”と言う特殊能力がある世界に転生したら“緑谷出久”って子が自殺したんだけど…どうしたらいい?」スレ民達『ハ?』   作:DestinyImpulse

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三十七章「決勝トーナメント、決勝・前編」

 

 選手控え室で一息ついた俺は、クラスメイト達が待つ観客席に戻るべく廊下を歩いていると、曲がり角から巨大な人影が現れた。

 

「お、いたいた。剣聖火君、決勝進出おめでとう」

 

「っ!?え、エンデヴァー…?」

 

 2m近い巨躯、オールマイトにも勝るとも劣らない筋肉。そして顔や身体から溢れる炎…目の前に現れた人物の正体は轟の父、エンデヴァーその人であった。

 

 炎系最強と謳われる“ヘルフレイム”の個性を持ち、ヒーローランキングではNo.2に君臨するトップヒーロー、エンデヴァー。

 これまで解決してきた事件の数はオールマイトのそれをも超え、史上最多を更新し続けている。まさに日本が世界に誇るトップヒーローの一人と言えるだろう。

 

「あ、ありがとうございます」

 

 なのだが、轟から()()()()()()()ので正直言って関わりたくないと思っている。

 

「予選から本選まで、君の活躍は見せてもらった。物語(フィクション)だったか…素晴らしい個性だ」

 

「……どうも」

 

 エンデヴァーは炎を纏った顔に笑顔を貼り付けて、俺を褒め称えるが炎から覗かせるその目は一切笑っていない。

 

「君のお陰で息子はくだらない反抗期を乗り越えて己の力を受け入れた。これからも息子のいいライバルとして、よろしく頼む」

 

「……はい。俺も轟とはいいライバルでいたいと思っています」

 

 俺の言葉に満足したのかエンデヴァーは取り繕った笑みを浮かべたまま去っていった。……恐らく俺の値踏みの為に来たんだろうな。

 

 憂鬱な溜め息を吐きながら俺は止めていた歩を進めた。

 

 

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『さぁこの後遂に決勝戦!注目のダークホース、剣聖火が勝つのか!それとも轟が阻止するのか目が離せないぜ!チャンネルはそのままだ!!』

 

 準決勝が終わり残りは決勝戦のみ、剣聖火と轟焦凍…果たしてどの様な試合が巻き起こり勝利者となるのは誰か?観客も画面越しの視聴者も今か今かと試合を楽しみしていた。

 

「楽しみですね〜!決勝戦!」

 

 それは雄英祭の警備として雇われたヒーロー達も例外ではない。スタジアムの側に建てられている小綺麗な休憩室で警備シフトの外れたヒーロー達が備え付けられたテレビに視線を向けていた。

 

 楽しそうに声を出すのは新米ヒーロー、マウントレディ。“巨大化”という派手な個性を持っているため、意外と認知度は高く少々ニッチなファンを多く抱えるヒーローだ。

 

「しかし剣聖火君……あの子やっぱり只者じゃなかったんですね〜」

 

「そうだなー。あの時に飛び出した子が今、世間を騒がせてるってのは感慨深いな」

 

「あの時は勝手に飛び出した事を大人として注意したが、あの勇気はヒーローに必要な物だ」

 

 

 彼女の声に2人のプロヒーローが応えた。1人は力仕事を専門とするヒーロー、デステゴロ。もう1人は若手実力派ヒーロー、シンリンカムイである。この2人はマウントレディと活動地域を同じくしている事もあって、彼女とも顔見知りのヒーローだった。今日の警備も、警備時間や場所が被っている時は行動を共にしていた

 

 そして彼らは決勝に歩を進めた聖火の事を知っていた。遡る事、およそ1年。彼等の活動地域でヘドロ型のヴィランが1人の中学生を人質にとって暴れた事件があった。最終的にヴィランはオールマイトが倒したが、取られた人質を救出したのは当時、中学生の聖火が変身した仮面ライダーセイバー……これが当時話題になったヘドロ事件だ。

 

「きっと、体育祭が終わったら職場体験の誘いが凄いんだろうなぁ」

 

 雄英高校はこの体育祭が終わったら職場体験がある。数日間の間、プロヒーローのお世話になり現場の空気を実際に体験してするのだ。その際、プロヒーローは雄英生を指名する時があり、その指標が体育祭なのだ。

 

「まぁ、優秀な者達はトップヒーローの所に行くだろう。彼も炎系ヒーローとしてトップのエンデヴァーの所に行くやもしれん」

 

「私、聖火君のパートナーだった小大ちゃんがイイなー!彼女の個性で物を大きくすれば戦略の幅が上がると思いません?」

 

「いいのか?あんな美人な娘が来たら人気を掻っ攫われるんじゃないか?」

 

 楽しそうに語るマウントレディだがデステゴロの言葉に苦虫を噛み潰した表情になる。

 

 昨今の日本はヒーローが多すぎる“ヒーロー飽和社会”。ヒーロー業一本だけでやっていくには大変な時代だ。その為、副業を持つヒーローも少なくない。マウントレディもアイドルとしての一面を持っているのだが、アイドル業もヒーロー業と同じく人気と知名度が命の商売だ。小大の様な美少女が仮にアイドルヒーローとして脚光を浴びればファンが奪われる危険性もある。ヒーローとて、理想のみでは生活出来ないのだ。

 

 そんな風に決勝戦が始まるまで彼等は雑談に花を咲かせるのだった。

 

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813:マゼンタの旅路

 さて、まもなく決勝戦が始まるがどうだイッチ?

 

814:炎のヒロアカセイバー

 特に問題はないですよ。

 身体や心は温まってますが、精神は落ち着いてます。

 

815:極み主任

 いい状態だ。

 心は熱く頭はクールに…大魔術師も言ってた事だ。

 

816:最高最善のグランドマスター

 相手は轟…油断ならない相手なのは間違いない。

 

817:対魔忍リバイ

 気をつけろよ!

 

818:OCGトマト

応援してますよ!

 

819:炎のヒロアカセイバー

 はい、ありがとうございます!

……ん?

 

820:神を薙ぐ超古代の光

 ん、どうしたの?

 

821:赤目の主人公Z

 何かあったのか?

 

822:炎のヒロアカセイバー

 いや…呼び止められて。

 

823:仮面ライダーニケワン

 呼び止められたって……誰に…ん?

 

824:ねっぷねぷにしてやんよ!!

 あら…ここで来るとはね。

 

 

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「えっと…」

 

「失礼。大事な決勝前に呼び止めてしまって申し訳ない」

 

 掲示板で会話をしながら控室に向かっていた聖火は目の前に現れた人物に困惑していた。

 

 白を基調とした金ボタンのシングルスーツに、白いワイシャツ、赤地に白抜き水玉模様のネクタイというデザイン。一見すると、一般のビジネスマンといった出で立ちである。

 

「サー・ナイトアイ…」

 

 しかし、聖火はその人物を知っていた。

 プロヒーロー・サー・ナイトアイ。

 敵退治や災害救助を主な活動とする他のプロヒーローとはやや趣きが異なり、社会の闇に潜んだ知能犯の捜索、検挙等を行う私立探偵のような仕事を主に取り扱っている…相澤(イレイザーヘッド)に近いヒーローだ。

 

 そして()()()()()()()()()()()()()()である。

 

(つまり…ワン・フォー・オールの事も…)

 

「……どうやら鈍くはない様だな」

 

「っ!」

 

 その事が表に出ていたのだろうサー・ナイトアイの言葉に聖火はドキリと心臓が高鳴った。

 

「君の想像通り…私はワン・フォー・オールの事も、オールマイトの身体の事も知っている」

 

 聖火の事を見極める様に爪先から頭の上まで隈なく視線を向けるサー・ナイトアイに冷や汗を流す聖火。

 

「君が後継者に選ばれたその日、彼は私に連絡をとってきてね。中学生を後継者に選んだと聞かされた時は、正直正気を疑ったよ」

 

 それは至極当然の事だ。

 平和の象徴の力を当時の中学生に譲渡するなど反対されるに決まっている。サー・ナイトアイの疑いの籠った視線を聖火は黙って受け止めた。

 

「独自に後継者にふさわしい人間を育ていた私は当然反対した。……が、根津校長の話や予選から続く君の活躍を見て…彼の目が曇っていない事は分かった」

 

 何処か複雑そうな顔を一瞬したサー・ナイトアイは懐から一枚の紙…自身の名刺を取り出して聖火に差し出した。

 

「故に君を見極めさせてほしい。体育祭が終わった後にある職場体験、君には多くの指名が来ると思うが……この機会を逃したくない」

 

「………分かりました」

 

 サー・ナイトアイを言葉を聞き数秒の間、目の前に出された名刺に目を向けていたが此処で逃げる訳にはいかない。聖火は差し出された名刺を受け取る為にサー・ナイトアイの手に触れた。

 

「………馬鹿な…!?」

 

 その時だ、サー・ナイトアイの表情が変化した。目を見開き冷や汗を流して唖然としている。まるで予想外の事が起こったかの様だ。

 

「えっと…サー・ナイトアイ?」

 

「っ、ああ、すまない。…もう大丈夫だ。呼び止めて済まなかった」

 

 サー・ナイトアイの狼狽えに疑問しつつも時間も無いので聖火は控室に向かうのだった。

 

 

「どうじゃった?あの小僧の未来は?」

 

 其処に物陰に隠れていた一人の老人がサー・ナイトアイに近づく。彼の名はグラントリノ… かつて1年間だけ雄英高校の教師を務めていたオールマイトの師匠でありワン・フォー・オールの秘密を知る数少ない人物の一人である。

 

 彼等がこのタイミングで聖火にコンタクトを取ったのは未来を知る為である。サー・ナイトアイの個性は『予知』。対象人物の一部に触れ、目線を合わせることで発動し、その人物の未来を知る事ができる。

 

「…………」

 

「どうした?そんなにヤバイもんでも見えたのか?」

 

 震えるサー・ナイトアイにグラントリノは最悪の未来が見えてしまったと危惧するが……

 

「み、()()()()()()…!」

 

「なに…?」

 

 サー・ナイトアイから出た言葉に固まる。

 彼の予知の的中率は100%。情報源としては有難いが、それはつまり、彼はこれまで一度として自分の予知した未来を曲げることができていないということをも意味している。

 

 オールマイトの()()を変える為に奔走するサー・ナイトアイは聖火の可能性を探るべく個性を使った。

 

「まるで、これから内容を書く原稿用紙の様に…彼の未来が見えなかった…!」

 

 しかし、聖火の未来は見えなかった。

 まるで、コレから内容を描くかの様に真っ白だった…こんな事は初めてだった。未来が見えないと言う事は未来が定まってないと言う事…

 

「……未来を変えられる?」

 

 そんなサー・ナイトアイの言葉が通路に木霊した。

 

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『さぁ、いよいよラスト!!雄英1年の頂点がここで決まる!!』

 

 大いに盛り上がりを見せた体育祭もいよいよ終わりの時がやってきた。残すはこの決勝の一試合のみ、コレで一年のNo. 1が決定する。

 

『その力、予想不可能!!この体育祭を大いに盛り上げた期待のダークホース!!剣聖火!!(バーサス)!!炎と氷、相反する力を宿す!!その上限を俺達はまだ知らない!!轟焦凍!!』

 

 盛大な紹介と共に登場する聖火と轟にスタジアムの観客たちのボルテージはドンドン高まっていく。道中で敗れてしまったヒーロー科の面々もプロヒーローもツカサ達も興奮に胸を躍らせ真剣な眼差しを向けている。

 

「何となく…こうなる気はしてた。最後はお前が俺の前に立ってるって」

 

「俺もだ剣……お前の前に立ち、俺の全てを使って勝利を貰う」

 

 聖火の言葉に宣戦布告をして返した轟は手を翳す。すると青い光が轟の手の平に集まり……水の聖剣、水勢剣流水が現れる。

 

 その光景に流水を知る耳郎達ヒーロー科も初めて見る観客やプロヒーロー達に動揺が奔る。

 

『コイツはどう言う事だぁぁあ!?轟の手元に剣の火炎剣烈火に似た剣が現れたぁあ!?解説できるかい、マイフレンド!?』

 

『その呼び方やめろ…!……今、轟が出したのは水勢剣流水。この体育祭に向けて剣と模擬戦をしていた時に誕生した轟の聖剣だ』

 

 プレゼントマイクに問い掛けに反応しつつ水勢剣流水の説明をする相澤。淡々と説明するが事前に知ってるヒーロー達やツカサ達とは違って初めて聞く観客やプロヒーロー達の頭上にはハテナマークがまだ浮かんでいるだろう。

 

『剣の火炎剣烈火とは違い他者の力で誕生した水勢剣流水はアイテム扱いで使用は禁止していたが、体育祭が始まる前に申請があってな……剣との試合に限り水勢剣流水の使用を許可してほしいと……まぁ、本人達が納得してるなら俺達が言う事はねぇ』

 

『ルール違反にならないのならOKー!最後の最後まで退屈しないな今年はよぉー!』

 

 ルール違反ではないのならと水勢剣流水の動揺が次第に収まり主審のミッドナイトも闘技場に上がり…剣と轟を見つめながら、静かに口を開く。

 

「ふふ、青春ね。とってもいいわ!さぁ、今日最後の一戦! 残った力の全てを出しまくりなさい!!」

 

「「はい!!」」

 

 ミッドナイトの激励に答えると同時に、観客席のボルテージも最高潮まで高まっていく。そして剣と轟も静かに構えを取り…

 

『レディィィィィイッ! スタート!!』

 

決勝戦が幕を開けた。

 

 

 

END

 

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