イッチ「“個性”と言う特殊能力がある世界に転生したら“緑谷出久”って子が自殺したんだけど…どうしたらいい?」スレ民達『ハ?』   作:DestinyImpulse

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七章「旅に荷物は、付き物だ」

 

「まさか、最初のフォームチェンジが電王なんてな…」

 

 マゼンタニキから渡された電王童話全集で変身した姿をまじまじと見つめる俺。歴代仮面ライダーでも屈指の人気を誇る電王の力を振るう事ができる状況に気持ちが昂るのが分かる。

 

「最初に言っておく!!この姿の俺は……最初から最後までクライマックスだ!!」

 

「何がクライマックスだ……ふざけやがって!!」

 

 アナザー電王が払う二刀を火炎剣烈火で受け止める。確かにアナザー電王に変身して時間が経ってライドウォッチに慣れたからか最初と比べて剣の重みが違う。

 

 こう言う時は気持ちの昂りを鎮めて冷静に対処するのが正しいのだろうが……電王の力を使っているんだ、この昂りのまま行かせてもらう!

 

「戦いってのはノリが良い方が勝つんだからな!!」

 

「ガッ!」

 

 火炎剣烈火と左腕に装備された斧を力任せに振るい短刀を弾き飛ばしアナザー電王を斬り飛ばす。

 

 電王の力を使っているから最初に戦った時と比べて確かな手応えを感じる……これならいける!!

 

「クソが!……これでも喰らえ!!」

 

 立ち上がったアナザー電王が弾き飛ばしたのとは別の短刀を手に取り、振るう。当然、距離があるので俺に届く筈がないが、奴が振った次の瞬間、無数の刃が出現し俺に向かって迫ってくる。紫色の禍々しいエネルギーを纏ったそれは何処となく電王の必殺技であるエクストリームスラッシュに似ている。

 

 これが奴の必殺技なのだろう、当たらればタダでは済まない。

 

「当たればだけどな!」

 

【電王!】

 

 ソードライバーにある電王童話全集をタッチすると胸部である紫の装甲から砲門が展開され。

 

 

「電王咆哮激!!」

 

 そこから無数のミサイルが発射された!

 放たれたミサイルは迫り来る刃に着弾し爆炎を引き起こす。起死回生の一手として放たれたアナザー電王の攻撃は不発に終わった。

 

 無数に広がる爆煙が前方を包み込む、お互いの姿が見えなくなる。丁度いい、コッチも使ってみるか!

 

 右腕の釣り竿を模した武装が青く輝き針金がついたワイヤーが飛び出して爆煙が突っ込む、そして確かな手応えを感じ思いっ切り引っ張る。

 

 爆煙を突き抜けて戻ってくる釣り糸の先にはアナザー電王がグルグル巻きに捉えられていた。そのままタイミングに合わせて火炎剣烈火を連続で叩き込む。

 

 

「ウガァァァァァァアアッ!?」

 

 

「な、何だ!?」

 

 

 このまま決めようとしたその時だった。突如、アナザー電王が釣り糸を引きちぎり此方に向けて拳を振るってくる。咄嗟に火炎剣烈火で受け止めるが予想より重い拳に後ずさる。

 

 

 

「…………………消えろ!俺の邪魔をするヤツは、みんな消えろぉぉぉぉぉぉお!!!!」

 

 声も先程と比べてヤバさが増している。見れば禍々しエネルギーが全身から迸っており明らかにヤバいのが見てとれる。再び無数の刃が現れる、先程と違うのはその数が増えている事、それが一斉に此方に向かってくる。

 

 

 

【ATTACK RIDE BLAST】

 

 

 しかしそれが俺に届く事はなかった。俺の後ろから無数の弾丸が飛んでいき刃を全て砕くも勢いは衰えずアナザー電王の装甲に決して浅く無い傷をつける。

 

 

「ガァアアアッ!?」

 

 

 

 火花を散らせ悲鳴をあげ吹き飛ぶアナザー電王。後ろを振り返ればスクラップになり炎を巻き上げるアナザーデンライナーを尻目にライドブッカーガンモードの銃口をアナザー電王に向けるツカサさんが居た。

 

「ツカサさん!」

 

「こっちは終わった!ここで決めろ、仮面ライダーセイバー!!」

 

 ツカサさんが、ライドブッカーから次々とエネルギー弾を放ちアナザー電王を足止めしている隙に火炎剣烈火をソードライバーに納刀する。決めるのは今しかない!!

 

【必殺読破!烈火抜刀!電王一冊斬り!ファイヤー!!】

 

 

 トリガーを引き、火炎剣烈火を抜刀する。赤く輝く火炎剣烈火から燃えるエネルギーで形成されたレールが伸びアナザー電王を捉える。俺は迷う事なく燃えるレールの上に飛び乗り滑る様にアナザー電王に突撃する。

 

 そして最後に燃えるエネルギーが形を成していく、それはアナザーデンライナーとは違い近未来感を醸し出す、当時の子供が一度は乗りたいと夢見た、時を駆ける列車“デンライナーゴウカ”だ!!

 

 

電王時間走破斬(でんおうじかんそうはざん)!!』

 

 

 デンライナーゴウカのエネルギーと共に突撃し強大なエネルギーを纏った火炎剣烈火でアナザー電王の胴体に一寸の狂いなく叩き込む!!

 

 

「ハァァァァァァアアアッ!!!」

 

 

 そのまま気合いの叫びを上げ、叩き込んだ火炎剣烈火を力強く振るい、切り裂かれたアナザー電王の体に火花が幾度も咲く。

 

 

「…………………嘘だ!俺は…!過去を変えて…!幸せを…!!」

 

「…………………その幸せは緑谷出久の過去を奪って得る幸せだろ?そんな幸せはノーサンキューだ!!」

 

 

 

「嫌だ!嫌だ嫌だ!!戻りたくない!帰りたくない!!あんな辛い今になんかぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 

 最後にそう言い残しアナザー電王は火花を散らせ大爆発する。爆炎が晴れると変身者であろう学生が気を失って倒れており、粉々に砕けたアナザー電王ウォッチの破片が辺りに散らばっていた。

 

 

「これで話は終わりだ」

 

 

 こうして時間を越え、緑谷出久の過去を守る戦いは静かに幕を閉じた。

 

 

 

 

--------------------------------------------------------------------------------------------

 

 

 アレから数日後、アナザー電王の事はツカサの手により誰にも知られる事なく時間は幕を閉じた。

 

 そして現在、オールマイトと聖火が出会った折寺中学校。かつては生徒で溢れていた学び場も自殺者を出してしまった事で今は無人となっている。門は硬く閉ざされており、傍には花やお菓子などが丁寧に並べられており、緑谷出久の人望が伺える。

 

 そしてその前に……“爆豪”が居た。

 

 

 

 

 

 

 

 時は遡り聖火がアナザー電王を倒したその後、元の時間に戻ってきた聖火とツカサは気絶していた爆豪に簡単な手当てを施した。流石に無視する訳にはいかない。

 

「……ッ!」

 

「あ、起きた」

 

「……テメェは……仮面野郎……何で」

 

 相変わらず変なあだ名を付ける爆豪に呆れつつ答える。

 

「怒鳴り声が聞こえて行ってみれば、お前があの学生に暴行されてたんだよ。それを俺とあの人が止めた……覚えてるか?」

 

 聖火が指差した方には気絶したアナザー電王の変身者である学生と我関せずと言った具合に壁に寄りかかってるツカサの姿があった。

 

 それを聞いて爆豪は思い出す。監視のヒーローから逃げた先で“あの学生に不意を突かれて暴行を受けた”のだと。

 

「……?」

 

 しかし爆豪は何故か違和感を感じていた。何かを忘れている様な小さな違和感を……

 

そんな爆豪を横目でツカサは見ていた。爆豪の違和感の正体はツカサがアナザー電王に関する記憶を消した事だった。セイバーである聖火が居るから今更かもしれないが、念の為に学生に襲われた事実はそのままにアナザー電王に関する記憶だけ消したのだ。

 

 ディケイドにそんな力有りましたっけ?と首を傾げる聖火に世界を渡り歩いて手に入れた技能と言ってツカサが行ったのだ。爆豪の様子を見る限りに大丈夫だとツカサは視線を戻す。

 

 

「……………………なぁ」

 

「ん?」

 

 暫く違和感について悩む爆豪だったが、そんな事より大事な事があった。声をかけられ顔を向ける聖火が見たのは……先程怒鳴った時とは違う、親と逸れた子供の様に泣きそうな顔だった。

 

「……あのヘドロ野郎の時、なんでテメェは飛び出したんだよ?ヒーローでもない癖に」

 

 ボソボソと普段の爆豪を知る者からすれば想像できない様な声で聞いてくる爆豪に対して聖火はすぐに答えた。

 

 

「ほっとけない、そう思ったら身体が勝手に動いてた」

 

 

 ハッキリとそう答えた聖火、それを聞いた爆豪は自暴自棄になった様に笑いだす。

 

「ハハハ……デクも…出久も同じ事言っただろうな。そんな出久ももう居ねぇ…!俺が…!俺が殺したんだ!」

 

 爆豪は震えていた、呼び方もデクから出久に変わっており、心境の変化を促す何かがアナザー電王に襲われている時にあったのだろう。

 

「なぁ、教えてくれよ……俺は…俺は………俺はどうすりゃいんだよ!どうすれば償えるんだよ…!」

 

緑谷出久を自殺に追い込んだと自分自身が認めてしまった事で爆豪は正に罪の意識に囚われていた。どうすればこの苦しみから逃れられるか、縋る様に聖火に問いかけるが、その答えを聖火は持っていない。

 

 

「償う事などできはしない。緑谷出久はもうこの世には居ないのだから」

 

 その時、我関せずだったツカサが口を開く。

 

「ツカサさん…」

 

「お前が聖火にどんな言葉を期待しているのかは知らんが、どう足掻いても“幼馴染を自殺に追い込むまで虐めたお前”がヒーローになれる未来はない。当然だ、ヒーローとは勇気を持って困難に立ち向かい助けを求める手を掴む存在。それを信頼できない者に任せる筈がない」

 

 爆豪は悪意を持って緑谷出久を虐め、自殺に追い込んだ。そんな奴がヒーローになる事を許される未来など来ないだろう。

 

 そうハッキリと言うツカサに爆豪自身、その事に気づいていたのか反論する事なく項垂れている。

 

 そんな爆豪などお構いなしにツカサは言う。

 

「別にお前達が誰をイジメようがお前達の自由だ。だがな、行動には責任や代償が付き纏う。それは人であろうと神であろうと逃れられない。お前は緑谷出久の未来を奪った代償を“ヒーローになる夢”を捨てる事で支払った、それだけだ」

 

「…………………だったら。だったら俺はどうすればいんだよ!?今までオールマイトを超えるヒーローになる事だけを夢みて生きてたんだ!そんな俺が!これからどうやって生きていけばいんだよ!?」

 

 しかし遂に爆豪がツカサに向かって叫ぶ。分かっていたとしても、自分の行く末が分からない恐怖に爆豪は叫ぶしかなかった。

 

「それはお前が決める事だ。人は誰しも自分の居るべき世界を探す旅人だ。そこへ行く為に人は旅を続ける。お前はヒーローになるべく旅を続けて、その到着点を自分の手で壊した。だが、道は一つじゃない。これからどうするかはお前自身が決める物だ」

 

「今更……どうしろってんだよ! 俺のしてきた事は“俺より前に行こうとする奴の邪魔”をするだけ。出久みたいに地域貢献をした事もねぇ……むしろそんな事をするアイツを傷つけた。そんな罪まみれの俺がこれからどうしろと!?」

 

 ツカサの説教にも似た言葉に突っかかる爆豪の瞳には少しずつ潤んでおり小さな涙が頬を走る。そんな様子を黙って見届ける聖火と掲示板で覗くスレ民達。

 

 そしてツカサは爆豪から決して目を逸らさずに言葉を語る。

 

「罪か……。確かにお前は罪を犯した。だがな、それを背負って生きるかどうかはお前の自由だ」

 

「なに…?」

 

 ツカサから予想外の言葉に爆豪は目を丸くする。これまで自分を責めてきた奴とは明らかに違う。

 

 

「人は誰しもが人生の旅人、そして旅には荷物が付き物だ。お前がその罪を荷物として背負って生きるかはお前の自由だ。いらない荷物は捨てればいいんだからな」

 

 

 だが……。

 

 

「お前がそれ程に緑谷出久に対する罪の大きさを意識しているのなら……その罪はお前にとって捨てる事のできない大事な荷物って事じゃないか?」

 

 

「あ………………」

 

 ツカサの言葉に爆豪は何かがピッタリと収まった感覚を感じた。自分がこれ程苦しいのは緑谷出久が自分にとって決してどうでもいい存在ではなかったと言う事……

 

「最後に一つ。俺の友の言葉を借りるなら……“生きる事から逃げるな”。未来を諦めてしまった緑谷出久の分までお前は生きなければならない。後は……自分で決めろ。帰るぞ聖火」

 

「……はい」

 

 これ以上言う事はないのだろう。爆豪に背を向けて歩きだすツカサを追う聖火、最後に振り向くと、大粒の涙でアスファルトを濡らしながら泣く爆豪の姿。今の彼の心境はわからない、それでも爆豪が緑谷出久の事を心の底から後悔しているのは理解でき聖火にはそれだけで十分だった。

 

 

 

 

 

 

 そして現在、整えられた花の前で手を合わせる爆豪、やがて黙祷を終えて目を開いた爆豪はゆっくりと語りだす。

 

「……この前、テメェによく似た奴に会った。資格も無い癖に人助けして怒られ……何でだって訳を聞けば“身体が勝手に動いたって”、馬鹿みてぇな理由でよ。……テメェも同じ事言ったんだろうよ」

 

「テメェをずっと見下してた。……“無個性”だったから。俺より後ろに居る癖に、俺より遥か先に居る気がして」

 

 言葉を語る度にこれ迄の事を思い出しているのだろう。小刻みに身体が震えていた。

 

「嫌だった……見たくなかった……認めたくなかった。だから遠ざけて虐めてた。否定する事で優位に立とうとしていたんだ。その時点で俺はお前に負けていた……」

 

「お前が自殺して……自分のやってきた事に対するツケを払う日々で、もうヒーローにはなれねぇんだろうよ……」

 

 

「言ってどうにかなる事じゃないし、お前が帰ってくる訳でもねぇけど、本音だ出久ーー」

 

 

 

 

 

 

 

 

「今までごめん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 そう言って静かに涙を流す爆豪、彼がこの後どの様な人生を歩むかは誰にも分からないし、決して楽な道ではないだろう。誰かに非難され、後ろ指を刺されもするだろう。

 

 

 ただ、一つ確かな事がある。

 

 彼は自らの行いを間違いとしそれを罪として背負った。それを背負って生きていく限り決してこれからの人生で道を踏み外す事はないと言う事。

 

 

 

 爆豪勝己の人生はこれから始まるのだ。

 

 決して放す事のない荷物を持って。

 

 

END

 





 
 コレでアナザー電王&爆豪編は終わりです。
 現在、復活が期待されて人気の彼ですがこのSSではそんな彼が歩んでもおかしくない世界の話で、コレからは特にアンチ描写を入れるつもりはございません。

 どうかコレで納得してください。緑谷君がイジメで自殺してしまった世界線なので爆豪の描写を入れない訳にはいかず一年以上考えて自分的に納得のいく展開だったのでコレ以上は無理です、お願いします。


 次回からは入試編なのでこうご期待!
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