呪術師じゃなくて、カースメーカーですけど   作:鳩胸な鴨

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そこに愛があれば、キミはもうファンなのさ。


彼女らはファンを選ばない。

『さあさあ始まって参り参り参りマイリス登録ゥウ!!華東芽衣子、華東夢黒争奪戦!!

この二名を手に入れるのは、東京、京都、果たしてどちらなのかっ!!』

 

校舎を半壊させた1時間後。

説教されたせいで山のようなたんこぶを頭に作った五条の絶叫が、グラウンドのマイクによって響く。

右側には、ジャージ姿の東京校の面々が、左側には、同じくジャージ姿の京都校の面々が向かい合っている。

爛々と目を輝かせているのは二人…東堂と真依…だけで、あとは心底面倒臭そうな顔をうかべていた。

 

「私たちに拒否権はないの、同志五条?」

『ないね!!正直、悠仁ほど面倒ごと抱えてないから、どっち行っても扱いは変わんないと思うよ〜?』

「この人話聞かないの。ギャンブルおっちゃんと一緒なの」

『だまらっしゃあ!!あんな碌でなしと一緒にすんな!!!』

「五条さんも割と碌でなしですけど…」

『伊地知、仕事分けてやるよ。死ぬほど』

 

伊地知があまりのショックに、本気で泣き声をあげ、膝から崩れ落ちた。

彼が碌でなしなのは、残念ながら、この場の誰もが知っている。

中継で歌姫が興味なさげに、ことの成り行きを見つめていた。

 

『明日中には帰ってよ?今日明日はとにかく、明後日は一年で回せるほど余裕あるわけじゃないんだから』

「それは分かってるんですが…」

「真依ちゃんがこの調子なんで…」

 

そこにいたのは、ジャージを着た悪魔。

止めどない嫉妬と怒りが、とんでもない爆発力を生み出し、明らかに彼女の容量を遥かに超えた呪力を放出させる。

その姿は、姉の真希でもドン引きするほどに、なんとも言えない悍ましさがあった。

 

「真依…。お前、ホントにアタシがいない間にどーしたんだ…?」

「私は愛を見つけたのよ…!!アンタみたいなイモくさいメガネ女と違ってね…!!」

「うわっ…。気持ち悪さのベクトルが東堂とカメコと同じだ…」

 

愛は人を狂わせる。

それを間近で見た虎杖が呟くと、真希もまた、なんとも言えない表情を浮かべる。

状況が状況ならカッコいいセリフなのだろうが、この場に限っては気持ち悪さしかない。

 

「虎杖悠仁!!」

「え?なんで俺?」

 

急に名前を呼ばれた虎杖が、なぜ呼ばれたか分からず、首を傾げる。

真依はその態度すら気に入らないのか、とんでもない表情に、青筋まで浮かべながら、口を開く。

 

「東堂から聞いたわ。カメコさんに死ぬほどの大怪我を負わせたんですって!?!?」

「いや俺じゃなくて呪霊なんだけど!?半分は自傷だし!!」

「庇わなかったアンタにも責任はあるこの大会で完膚なきまで殺してやる!!!」

 

とんでもないとばっちりである。

虎杖はやり場のない感情を、隣にいた真希に打ち明ける。

 

「真希さんアンタの妹怖ぇーんすけど!?」

「…………釘崎。私を殴れ。夢見てるかも」

「現実ですよ、真希さん…」

 

真希はというと、これが現実かどうかすら疑って、釘崎に頬を差し出していた。

ところが残念。現実である。

完全に巻き込まれた皆は、顔を見合わせて肩をすくめた。

 

「ってか、二人はどっちがいいんだ?」

「面倒いから引っ越したくない」

「真依ちゃんがこっち来たらいいの」

 

この問題を根底から全否定する一言である。

パンダの問いに正直に答えた二人に、真依がぴしっ、と固まる。

どうやら考えているらしい。

だが、いくら推しの頼みとはいえ、そこには引けない理由があった。

 

「ダメよ…。そっちには真希とその下っ端っぽいのがいるから…。

推しの前で姉と喧嘩するって醜態晒すほど、私は落ちぶれてないわ…」

「今まさに東京校にカチコミかけるって醜態晒してるんだけどな君」

「あ゛???」

「はいっ。口答えしてすみません」

 

加茂、修羅に太刀打ちできず。

後輩に敬語を使ってしまうほどに、威厳もクソもない姿である。

一方、真希の下っ端といわれた釘崎は、「てめーは束縛強めの地雷女じゃねーか!!」とキレていた。

全くもってその通り。

 

「兎に角、勝負よ東京校!!私たちが勝てば華東芽衣子さん、及びに華東夢黒さんをお持ち帰りさせてもらうわ!!

安心なさい!!彼女らには京バ○ム阿闍○餅八ツ橋その他もろもろ沢山の名物を毎日飽きないように日替わりで貢ぐから!!!」

『はぁっ!?ちょっ、そんなお金…』

「歌姫先生。できますよね???」

『……………………はいっ』

 

修羅の前には、教師とて敵わない。

歌姫のすぐ隣にいる楽巌寺ですら、画面を覗き込んだ際に「怖っ…」と漏らしていた。

その条件を聞いてか、夢黒は口端から涎を垂らす。

 

「京バ○ムって、ほら、あれ。抹茶のバームクーヘンなの。私、大好きなの…!」

「こら、揺らがない。イベントの時に差し入れで持って来て貰えばいい。

ああいうのはたまに食べるから美味しい」

「…………確かに。でも、○じゃり餅って聞いたことないの」

「平べったい饅頭」

「ああ!あのUFOみたいなの!!」

 

完全に京都の土産トークに移行してる。

完全に口が京都の菓子になりつつある二人に、五条もそのトークに交ざる。

 

『僕としては、お勧めは京○言かな!

見た目はフツーの羊羹だけど、小豆を蜜漬けにしてから羊羹にしてるらしくてさ!!

その味わいはそんじょそこらの羊羹じゃ味わえないよ〜?』

「きょうな○ん…!!」

「京納○まで知ってるって、同志五条、もしかして相当行ってる?」

 

五条はとにかく、華東姉妹は自分の未来を左右するのに、そのことをすっかり忘れて盛り上がる三人。

緊張感がまるでない。いや、元より緊張もクソもない、デイサービスのレクリエーションのようなものなのだが。

 

『と。それはさておき。対決内容を、このクジ箱から選んでもらいまーす!!』

 

五条がその話題に区切りをつけ、どこからかクジ箱を取り出し、真依に投げ渡す。

真依はガサゴソと中をまさぐり、その中の一つの紙片を取り上げた。

 

「………『叩いて被ってジャンケンポンバトルロワイヤル』?」

 

紙片には、あまり綺麗とは言えないデカデカとした文字でそう書かれていた。

 

♦︎♦︎♦︎♦︎

 

グラウンドのど真ん中にて。

三輪と釘崎が向き合い、その間を二つのハンマー(ビニール風船)とヘルメットが陣取る。

釘崎は非常に面倒くさそうに、三輪は怯えた状態で佇んでいた。

と、そこへ五条のハイテンションな絶叫が、いつの間にか用意された実況席から響く。

 

『説明しよう!!「叩いて被ってジャンケンポンバトルロワイヤル」とは!!』

『叩いて被ってジャンケンポンに、「ハンマーで殴れば勝ち」と「二秒のみ攻防が可能」、更に「呪術あり」のルールが追加。

勝負は勝ち抜き制で、負けたら次の人に交代。先に全員負けた方の負け…。

なんでこんなルールブックあるの?』

 

カメコが渡されたルールブック…本というにはあまりにも薄っぺらいが…を読み上げ、首を傾げる。

が。五条はそれを無視し、実況を続けた。

 

『さあ、存分に始めろ!

レディーッ、ファイッ!!!』

『聞いてないの。完全に無視してるの』

『うん。知ってた』

 

五条の掛け声に合わせ、二名がジャンケンを始める。

叩いて被ってジャンケンポンという遊びを、まさか東京でやるハメになるとは思ってなかった釘崎に、昔は弟とよく遊んだ三輪。

どちらも経験は同じ。勝負に先は見えなかった。

 

「「最初はグッ、ジャンケンポン!!」」

「「あいこでしょっ!!」」

 

最初は互いにグー。あいことなった。

次に釘崎がパー、三輪がチョキ。

三輪は風船のハンマーを取りに行くも、釘崎がそれを払って防いだ。

 

「あーーーっ!!今の反則でしょ!?」

『「追加ルールに違反してなければ、なんでもいい」なの』

「そもそも元のルールが曖昧だしな」

 

三輪が抗議するも、釘崎、夢黒にルールは破ってないと言われ、撃沈。

続いてジャンケンをすると、三輪がグー、釘崎がパーで敗北。

三輪は慌ててヘルメットを取って被るも、釘崎はその頬にハンマーを炸裂させた。

 

「へぶぅっ!?!?」

『いっぽぉん!!釘崎野薔薇の勝ちっ!!』

「っしゃあ!!」

「えっ!?えっ!?今っ、横っ…」

 

ガッツポーズをかます釘崎に、三輪が慌てて抗議する。

が。カメコはルールブックを開き、その一文を指さした。

 

『殴ったら勝ちだから』

「やってられるかぁ!!!」

 

うがーっ!!と頭を掻きむしる三輪を、メカ丸が慰めながら、舞台から去る。

次に舞台に立ったのは、西宮桃。

奇しくも、交流戦のリベンジといった形となった。

 

「よぉ、メイちゃん。ビョーキのママにとうもろこし届けるんじゃねーのか?

こんなとこいねーで畑で迷ってトトロと空に行きやがれチビガキ」

「そっちこそ、実家で焼きそばバ○ォーンの麺洗面所に全部こぼして、残ったわかめスープでも啜っとけばァ?」

 

怪しい空気が漂う。

それを見て、加茂はこめかみに頭痛が走ったのか、患部を押さえた。

 

「頭が痛い」

「糸目の人、大丈夫っすか?これ、氷嚢」

「ありがとう…」

 

加茂、虎杖の優しさに涙する。

知らぬうちに両校の間で絆が育まれる最中、西宮が釘崎の一撃で宙を舞う。

普段から金槌を使っているだけあって、釘崎は最も容易く二戦を制した。

 

「I'm winner!!!You're loser!!!!」

「ぐぅうう…!!この一年、ほんっっっ…と可愛くないんだけど!!!」

「おっほほほほ!!負け犬が何言っても負け犬の遠吠えなのよ!!」

「むぎぃいいいーーーーーーっ!!!!」

「めっちゃ煽るじゃん、釘崎」

「アイツ西宮嫌いなのか…?」

 

♦︎♦︎♦︎♦︎

 

時は進み。敗退したのは、京都校が三輪、西宮、メカ丸、加茂の四人。

東京校が、釘崎、伏黒、狗巻の三人。

残るは京都校が真依と大トリの東堂、東京校が真希とパンダ、大トリの虎杖だった。

釘崎は、メカ丸まで下す快進撃を見せたものの、戦闘経験豊富な加茂の前に敗北。

加茂はその後、伏黒を下すも、狗巻の呪言の前に撃沈。

その狗巻も、続いて出て来た修羅こと真依に、口を押さえられ、勝負が決まったにもかかわらず、必要以上にタコ殴りにされ撃沈。

 

現在相対しているのは、真依と真希。

自らの知らぬ間に修羅に片足突っ込んでる妹に、真希は思わず身震いする。

 

「なぁ、ホントに一回落ち着けって。な?

サインとかなら貰ってやるし、なんなら一緒に食事するように頼んでやっから…」

「あなたが一番憎かったわ…!!」

「それもう聞いたよ…。ってか、この状況で言うと締まらねーな…」

 

妹が自分を憎んでたという話は、以前の交流会の際に聞いた。

ここで再び蒸し返されても、と思っていると、真依は真希に掴みかかった。

 

「あんた、あんた…!!推しと同じ学校に通ってるって、どれだけ幸せだと思ってんのよ!!!!!」

「……………は????」

 

違った。この恨みつらみは、家柄とか全然関係してなかった。

真希が完全に置いてかれてる中で、真依はガクガクと真希の体を激しく揺らす。

 

「さあ言いなさい!!どこまでしてもらったの!?膝枕!?あーん!?姉妹の契り!?それともキスとか『あのね』までやってるとか言ってみなさいブッ殺すわよ!!!!」

「何一つやってねーよ!!!」

「嘘おっしゃい!!私だったらどっちも『あのね』するわ!!!」

 

カメコと夢黒もそこにいるのだが、完全に周りが見えなくなっている。

東堂…高田ちゃんのグラビア雑誌派のため、二次元は買わない…以外の皆は、『あのね』の意味を知っているため、三輪などは顔を赤くしている。

京都校の面々も、無論、東京校の面々もドン引きしてる中、華東姉妹はと言うと。

 

『彼女の愛も、本物』

『うんうん。見上げた愛なの』

 

寧ろ、受け入れる姿勢を見せていた。

それに冷や汗をかいた五条が、二人に忠告する。

 

『君らもうちょいファン選べば?』

『私を愛してくれてる。それすなわち、カースメーカーを愛してくれてることだから…』

 

悲報。アホはやっぱりアホだった。

真依は真希から手を離すと、元の位置に座り、いつにない真剣な表情で告げる。

 

「私はアンタの屍を越えて、愛を取り戻す」

「いろいろ手遅れだと思う」

 

結論から言おう。京都校は普通に負けた。

真依はカメコと目があったことで気を取られ、真希に敗北。東堂は真希とパンダを下すも、虎杖を前に、妄想癖を炸裂させたせいで撃沈した。




京都校の皆は負けた後、普通に観光して帰宅した。真依はサインとかいろいろサービスしてもらった(あのねを除く)。
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