「お、マジか」
「どったの、パンダ先輩?」
携帯を弄るパンダが、真希から送られてきたメッセージに思わず声を出す。
男四人が旅館に泊まると言う、修学旅行で見るような暑苦しさに辟易する様子もない彼らは、こぞってパンダの携帯を覗き込む。
そこには、「吟醸の依頼受けた」と短いメッセージがあった。
「え?真希さん、マジで吟醸の依頼受けたんですか?」
「目ェつけられてるって話は聞いたが、先越されたな、お前ら」
呪術師になって日の浅い悠仁は、皆が何を言っているか分からず、疑問符を浮かべる。
吟醸。普通は酒や味噌などを、吟味した材料を使って丁寧に作り上げていくことを指す。
しかし、そう考えるとおかしなことばかりである。
虎杖が首を傾げていると、ソレを察したパンダが説明を始めた。
「吟醸っつーのは、『癒しの吟醸』ってコスプレ喫茶の店名な。
ここは裏業で呪術関連の依頼の斡旋もしてて、術師界隈じゃ『一級への登竜門』とか言われるほどハイリスクハイリターンの依頼を扱ってんだ」
「へぇー…」
「ま、ここの依頼をこなさなきゃ一級になれないってわけじゃないが」と付け足し、箱買いしたカルパスを口に放るパンダ。
体はぬいぐるみなのに、どうやって消化しているのかが些か疑問だが、トイレにも行くし、鼻血も出すので今更だろう。
つまりは、依頼をこなせば真希にとってプラスとなるとだけ考えておけばいい。
夢黒ほど物分かりが悪いわけではないが、あまり頭の強くない虎杖は単純に理解する。
が。隣にいる伏黒は、神妙な面持ちを浮かべていた。
「…虎杖。吟醸の依頼は実力に絶対的な自信があるヤツが受けるもんだ。
最低でも特寄りの一級呪霊の単独討伐。
このくらいじゃないと、死すら視野に入れる必要がある」
「え?ヤベェじゃん!?」
戦車ですらも心細いとされる一級と、クラスター爆弾の絨毯爆撃でトントンとされる特級の狭間にいる化け物を単独で倒す。
これがどれだけ無謀なことか、想像しなくとも理解できることだろう。
真希はこれから、それが最低ラインの依頼を受けるという。
心配するなと言う方が無理な話である。
「まぁ、大丈夫だろ。最近の真希は、前より確実に強くなってる。あんま余計な心配してると、帰ってきたら殴られるぞ〜?」
ソレは嫌だ、と虎杖が苦笑を浮かべ、パンダの携帯を借りて「健闘を祈ります!!」と打ち込んだ。
と。その時だった。
「ブラザーーーーーーーッッッ!!!!」
扉を勢いよく開け、浴衣を着た東堂が両手を広げて気持ち悪いフォームで走りながら、虎杖に迫ったのは。
虎杖は反応が遅れ、その抱擁を拒むことが出来ず、筋肉に埋もれる。
上品でいて、爽快感のある香水の匂い。風呂上がりでもケアはバッチリなところが逆に気持ち悪い。
東堂葵とは、そう言う男であった。
「こんな短期間に幾度も再会できるとは、やはり俺たちは運命に愛されているな!!
存分に愛を語り合おうじゃないか!!!」
「ああ、そうだった…。高専の男子合同の依頼だったんだ……」
「虎杖、頑張れ」
「明太子」
抱擁と頬擦りを受けながら、虎杖は死んだ目で依頼内容を想起していた。
すべすべもっちりしていながらも、筋肉を感じられる硬さ。
これが東堂でなければモテモテだったのだろうが、東堂がやると気持ち悪いだけだった、と抱擁経験者のパンダは語る。
曰く、無駄にムダ毛やシミが一切なく、赤ん坊のようにすべすべしてるのもまた腹が立つらしい。
因みに。愛の語り合いはとんでもなく盛り上がった。
その盛り上がり様を面白半分で記録していた加茂が、卒業後に著書に書き起こすと、大ブームを巻き起こしたという。
タイトルは「二秒で作れる大親友」である。
♦︎♦︎♦︎♦︎
『全くもってつまらん。
伏黒恵がいて良かったな小僧。いなかったら貴様を二十は殺してるところだ。
小僧。貴様には女と伏黒恵を同時に見ることができる立場にいることで、漸く価値が生まれているというのに、何故共におらんのだ』
「仕方ねーだろ、カメコとは任務が別なんだから」
宿儺の生得領域内にて、愚痴が始まった。
要するに、「カメコも伏黒も近くで見たいのに、なんで二人は一緒にいない」と文句を垂れてるだけだ。
アイドルグループが揃っていないことに苛立つ悪質なファンみたいだ、などと思いながら、虎杖は宿儺を宥める。
「帰ったらいつでも見れるだろ」
『彼奴の変化を間近で見るから面白いのだろうが。この千年、あのような生得領域を作り出した「バケモノ」はいなかった。
無論、この俺も含め、だ。この俺に理解できぬ事象がある。伏黒恵とは別の興味。
それがあの女、華東芽衣子なのだ。貴様のようなそこらにいる虫とは違う』
同じような人間で、華東夢黒もいるのだが、カメコの方に興味が向いているらしい。
常人が足を踏み入れれば、即座に死を覚悟しなければならない生態系渦巻く世界樹を六本も生得領域に生やした女だ。
生やせていない夢黒よりも、そちらの方に興味が向いてしまうのも仕方がない。
「名前覚えてんのな」
『無論、興味を抱いたのだから覚えるに決まっているだろう。彼奴に咽び泣いて喜べと言っても無視するのは気に食わんが、例外的に許している』
尚、カメコには「急に喋り出すなんか偉そうで全生物のクソ煮詰めたみたいなロクでもない性格した変な口」と認識されている。
偉そうにするだけの脅威性があるのだが、生得領域にブロッコリー感覚で世界樹を生やすカメコには、あまり怖がられていない。
「お前って、カメコのこと好き」
『死ね』
流石の宿儺も食い気味だった。
器が小さいのか大きいのかよくわからない宿儺でさえも、あんなヤバい女を娶るのは快不快関わらず嫌だったらしい。
虎杖はバラバラにされて復活した。
♦︎♦︎♦︎♦︎
「ここが『八尺様のおぐし』がある村か」
「実家に帰った気分だわ」
「私たちはこう言うところ初めて」
「うん。ザ・ド田舎なの」
その頃、田舎町にぽつん、と立っているバス停の前にて。
観光地にすらならないようなその景色に、四人はそれぞれ感想を呟く。
真希は任務で何度か訪れたことがあり、釘崎は実家が似たような立地である。
カメコたちは夏休みを丸ごと使ってサバイバル生活をしたことがあるのだが、こういった人の住む田舎というのは初めてだった。
「…いつもだったらおじいさんとかが農作業してそうなイメージあるけど」
「避難してっからな。寛ぐのはまた今度。今は回収優先すっぞ」
「受肉されたら厄介ですもんね」
「あ゛」
釘崎がそんなことを言うと。
カメコが固まったように歩みを止め、ダラダラと冷や汗を流す。
カメコは呪力操作に天才的なセンスを有しており、その応用で呪力の感知に長けている。
この場の誰よりも早く、その「危険度」を感知できるのだ。
ここまで言えばもうわかるだろう。
『八尺様のおぐし』と思われる呪力の塊が、明らかに意思を持ちながら、この村の外へと歩いていたのだ。
「ギャンブルバカ。此処から北西5キロ先に向かって。五分以内に」
『へーへー』
語尾を強め、威圧するように言うと、棺から出てきた男が言われた方角へと向かう。
皆は一瞬だけ疑問符を浮かべてたものの、即座に戦闘に入れるように構える。
「カメコ。ブツが受肉したか?」
「違う。誰かが運んでる。
運んでる本人じゃなく、誰かを依代にして、受肉させる気なのかもしれない。
…濃い呪力に混じって、それなりに強いのがゆらめいてる。呪力の傾向からして人間」
「大方呪詛師ってトコか」
運ねェなソイツ、とだけ付け足し、靴の踵を合わせる真希。
なんにせよ、この村から持ち出されたら危険極まりない。
呪詛師の手に渡っているのなら尚更だ。
「移動速度からして走ってる。
私たちが来たのに気づいてる動き。急ごう」
「あのバカ行かせて良かったのか?」
「今回の危険性を理解しないほど、アレはバカじゃない。遊びに行くのは、私たちでも余裕な時。今回は真っ直ぐ向かってる」
ギャンブル中毒の男がある程度の好き勝手を見逃されているのには、いくつかの理由がある。
その理由の中の一つとして、ずば抜けた状況判断力が挙げられる。
余程のポカをやらかさない限り…例で言えば生前に五条悟と戦ったこと…は、自分にとって最善と言える行動をする。
彼女らのみで解決できる事態には、財布をスッて競馬場に行くのが難点だが。
裏を返せば、今回は女四人では危険だということに他ならなかった。
「下手したら特級案件かもな、コレ」
「やることは変わらないの。ブチのめして回収するだけなの」
「だな。走って…はキツいか」
先程のカメコの指示が正しいのならば、ここから5キロ先に目標が、今なお遠ざかっているという。
男に五分のタイムリミットを設けていたことから、五分もすれば、相手は村の外に出てしまうと言うことだ。
流石に、5キロの距離を五分で駆け抜けるなどと言った芸当は、真希にすらできない。
なら、どうするか。
真希は即座にカメコの方を見て、声を張り上げた。
「カメコ、背中の手で私ら投げ飛ばせ!!」
カメコの背中の巨腕は特級呪具となったローブの一部であり、その階級に相応しい力を有している。
人一人を5キロほど投げ飛ばすことなど、造作もない。
相手が逃げる途中で適当な人間に呪物を食わせ、受肉されたら面倒だ。
走って向かうよりも、遥かに手っ取り早く済むだろう。
「今のうちにバフかけまくっとく。
バフが切れたら死なないように立ち回って、相手をその場に留まらせることだけ考えて」
この方法の欠点を挙げるなら、バフやデバフをばら撒けるカメコが移動できないことだろうか。
ブチギレた際の興奮状態でなければ、5キロを一気に駆け抜けることは不可能。
呪具の手をフル活用しても、恐らくは十分ほどかかる。
それまで死ぬな、と皆に活を入れ、カメコは真っ先に、着地した際の隙が少ないだろう真希を、背中の手で掴んだ。
その際に、早口で呪言を唱え、皆の増強を済ませる。
「着く頃にゃあ終わらせる。帰りになんか高ェ飯奢ってやるよ」
「舌噛む。歯を食いしばった方がいい。
3、2、1……せいっ!!」
問題点はまだある。投げ飛ばされた後のことだ。
今回は距離が距離のため、投げられても、呪力で受け身さえ取れば無傷で済むだろう。
真希は呪力がないぶん、体が丈夫に出来ている。最悪の場合、砲剣を着地の際に下敷きにすればいい。
「お姉ちゃん、あのバカは今回は爆発させ無い方がいい?」
「八尺様の受肉まで、温存するほうが生存率が上がる、とだけ」
「カメコ、なる早で来なさいよ。アンタいないと楽できねーんだから」
「ん。善処する」
次に夢黒、釘崎の順で掴み、カメコは躊躇いなく投げ飛ばした。
遠くなっていく皆を見つめ、ローブの利便性に感嘆しながら、ぽつりと呟く。
「なんで皆これ着ないんだろ」
♦︎♦︎♦︎♦︎
『よォ、女が生理的に受け付けなさそーなツラしたテメェさん。
ちぃっと死人の相手でもしてくれや』
呪詛師…重面春太は、急に現れた目の前の存在に、目を剥いていた。
左手ごと円形に抉れた体に、片手に持つ、とんでもない呪力を込めた呪具。
無論、カメコと五条が悪ふざけで作った物で、名は『代償の槍』。
機能としてはシンプルで、身に負うハンデが大きいほどに、呪力を増す槍。
ハイランダーという世界樹の迷宮に登場する職で、『生命力を糧にして攻撃する』という特徴を再現しようとして失敗したモノだ。
男は既に死亡しているのに加え、左手と脇腹を失ってるのだ。
その呪力は、もはや語るまでもない。
「えー?なに、オッサン?呪霊の類?」
『残念ながらちげーよ、呪詛師。
テメェを足止めしろって頼まれてる…ただの動く屍だ』
重面がげんなりした顔で問うと、男はいつぶりか分からないマトモな対峙に、一種の感動に打ち震える。
普段は折檻も兼ねて爆破されるが、今回は戦力が多い方がいいとカメコあたりが判断を下したことだろう。
あの女は、危機管理能力が自分と同等と考えていい存在。
普段の言動は馬鹿げているが、そのあたりの判断が出来ないほど愚かではない。
「屍なら大人しく埋まっとけよ!!」
(コイツ自体はンな強かねーな。
逃げるそぶりを見せねーあたり、なんか秘策があんのか、それとも呪物をどっかに隠したか…あとは第三者が持ち出したか)
重面が振り下ろす、柄が手のひらになっている刀を弾き、男は思案に暮れる。
思考を彼方にやっても攻撃を捌けるくらいには、脅威が感じられない。
自分が鍛える前の釘崎あたりは危険そうだが、今なら一方的とは言わずとも、余裕で倒せるくらいだ。
こういったタイプの呪詛師は弱いものイジメ大好きの小物臭いのが多いのだが、ここまでいいように攻撃を捌かれているのに逃げないのを見るあたり、何かがあるのだろう。
(アイツが割り出した位置からコイツの移動速度を考えりゃ、隠す暇はねぇ。
第三者の介入も、アイツの感知範囲から考えてあり得ねぇか)
となれば、だ。
この状況を打開できる何かを持っていると、シンプルに考えた方がいい。
出来れば、その秘策とやらを見たいが、そうは問屋が卸さないらしい。
流星のように落ちてきた真希が、振りかぶった砲剣を降ろし、地面を叩き割る。
「ぅわあっ!?」
重面がそれを紙一重で避けるも、風圧に吹き飛ばされ、尻餅をつく。
真希は地面に刺さった砲剣を軽々持ち上げる、首を傾げる。
「っかしーな…。確実に当たる軌道にいたと思うんだが、なんかしたな?」
「わぁ!女の子だぁ!!」
「声がキメェ顔がキメェ髪型キメェ肌がキメェ全部キメェ。整形外科でもサジ投げるな。
テメェにハナクソほども興味ねーから、さっさと八尺様とやらの髪よこせよ」
砲剣を片手で構えながら、獰猛な笑みを浮かべる真希。
それに続くように、釘の散弾と棺の二連撃が重面を襲う。
が。重面は真希に駆け出しており、そこから奇跡的な転倒をすることで、偶然にもそれらを躱した。
「ンだその避け方ァ!?」
「釘崎先輩、動揺は隠さないとなの」
「………可愛い後輩のいる手前、カッコ悪いとこ見せちゃダメね。
…ん?お前、こないだの呪詛師か」
「わあ、女の子がたくさん!!うはうはハーレムだよぉ〜」
その声と仕草に、夢黒は心底不快そうな表情を隠そうともしなかった。
普段なら早口で罵倒してるのだが、相手は呪物を持っている。
それを触媒に何かをされると面倒だ。
一刻も早く戦意を削ぐべく、夢黒は棺を置き、笑う男を睨む。
「君が一番、楽しそう!!」
重面が夢黒の腹目掛け突き出した刀を、夢黒は最も容易く両手で挟む。
真剣白刃取り。
そのまま怪力で彼を振り払おうとすると、刀が一人でに重面の手から離れた。
重面自体も予想していなかったのか、目を丸くしながら、即座に夢黒の腹に重い蹴りを入れる。
「おいたが過ぎるよ、君」
「かっ…!?」
そのままでは終わらない。
重面が続け様に顔を殴ろうと、拳を握る。
笑っていることから、人を傷つけることに快楽を得る類の人間なのだろう。
呪詛師としては、ありがちな性格だ。
その拳が頬に炸裂すると共に、釘崎の投げた釘が、重面の腕に刺さった。
「痛いな…おっと?」
「芻霊呪ほ…ってはぁ!?!?」
と。突き刺さると同時に、刀の柄となっている手のひらが、刺さった釘を抜いて捨てた。
どんなラッキーだ。
あまりのことに皆が驚愕に目を見開く中で、真希があることに気づく。
(あいつの目元の模様…。色が抜けてるヤツがあんな。さっきからのラッキーを考えるに、幸運貯金みてーなモンか?
発動状況とアイツの様子を見て考えるに、自動発動系の術式か)
相手の目元にある模様は、六つで全て。
そのうち二つは色が抜けているあたり、残りのラッキーはあと四回と考えた方がいい。
倒せなくてもいい。すべきことはただ一つ。何もさせないことだ。
「お前ら!!ソイツが動けねーように、手足折るか切り落とすかしろ!!」
「「了解!!」」
「わ、わわっ…!?」
四人が連携して襲いかかるも、重面は飄々とそれを避け、反撃を試みる。
性格からして、この場から逃げてもおかしくないというのに、なぜ留まるのだろうか。
男は重面の隅々を観察し、その理由を考える。
そうこう考えているうちに、重面の目元の模様がひとつ減り、砲剣の一撃を奇跡的な転倒で避け、その刀を真希の脇腹に刺していた。
「真希さん!!」
「見た目ほど大袈裟な怪我じゃねーよ。内臓は避けた。
一年前にゃもっとキツいのもらってんだよ」
真希はその刀身を掴むと、攻撃できないように握力でへし折る。
最近はスパルタ鬼講師の指導を受けているので、この程度なら出来る様になった。
重面が驚愕に目を開いている隙に、真希はその胸ぐらを掴み、逃げられないようにする。
真希は気づいていないが、彼女が狙うのは、男の生死には関わらないため、幸運は機能しない。ただ、腕一本を消し飛ばすだけだ。
砲剣のトリガーを引き、呪力を迸らせる。
「安心しろ。片腕なくても、十分生きていけんだろ。《アサルトドライブ》!!!」
一閃。
煌めく呪力が柱を作り、地面に真希を中心にクレーターが出来上がる。
作物に影響が出ないように、場所は選んでいる。
光が収まると、男は肩から先がなくなった右腕を見て、絶叫した。
「ぁ、あ、ぁぁあああああっ!?!?
なんて酷いことするんだあ゛ぁぁああああああぁあああっっっ!!!!」
「テメェが選んだ生き方だろうが。
腕一本で済ます私の手際に感謝して欲しいね」
本当だったら足が良かったのだが、カメコから「横に薙ぐと周囲の被害が半端ない」と聞かされていたため、仕方なく腕にした。
攻撃手段を失ったのだ。片手を失うことで戦意を削げれば、あとは捕らえるだけ。
「ぐぞぉ…!!やっぱ、時間稼ぎなんて、引き受けるんじゃなかった……!!!」
「は?」
真希がその真意を聞こうとした、まさにその時。
重面のポケットから、虎杖から聞いた小型の「改造人間」が覗いていたのに気づいた。
その口元には、最早数ミリもない髪。
飲み込むのに苦労していたのだろう。
その改造人間は、何度か泣きながらも、それを飲み込んだ。
『ぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽ』
瞬間。村が禍々しい空間へと作り替えられる。
この現象を彼女らは知っている。
帳などという、生やさしい結界術ではない。
生得領域に術式を付与した、呪術の頂点とも呼べる絶技。
《領域展開》。
絶望が、四人を包み込んだ。
ネットで広がった畏れから使えてもおかしくねーなと思いました。
虎杖たちはちゃっちゃっと依頼終わらせて、温泉旅館楽しんでます。
重面春太は、リアルでいたら女が生理的に受け付けなさそうな要素全部持ってると思って真希さんにボロクソ言わせました。釘崎に初対面で「モテねーだろ」って言われてたから仕方ないね。
吟醸はポジション的には世界樹で言う酒場。ただし依頼の難易度が六層中盤並みがデフォとかいうクソ仕様。その分見返りは大きい。
カメコの領域展開はまだやりません。別のことを考えてます。