GEHENAは対HUGEの戦いにおいて革新的な成果を上げ続ける(彼の倫理上では)完全に正義の組織です!
反GEHENA主義のガーデン? 民間企業のGEHENAに反対して非合法な武装闘争をしかけてくるなんて悪のカルト組織ですね!


このお話はpixivにも投稿しております。

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そこそこ合法的な活動をしているG.E.H.E.N.A.研究所のお話です。
(完全に真っ白ではない)


本質的には善良なGEHENA研究員のある日

 

 

 

 襲撃警報が解除されたのを確認すると、俺は他の皆と一緒に避難スペースから歩き出した。三年目ともなると襲撃自体は慣れっこで、HUGEや『その他』の襲撃から研究員を保護するための避難スペースは毎回役に立ってくれていた。幸いにして、今のところHUGEに対してその防護力を試す機会には恵まれていないが、年に一回程度ある武装勢力からの襲撃から身を守るにはそこへ駆け込む足の速さも重要だった。

 配属された最初の年は避難訓練も手を抜いていたが、実際に襲撃されてみるとそんな考えは全くの甘えだと思い知らされた。武装勢力はな(・)ぜ(・)か(・)非致死性の武器を使用しているたが、それだって当たれば骨くらいは簡単に折れる威力はあったし、当たり所が悪ければ最悪命を落とすのだ。この研究所でも去年は配属されたばかりの後輩が撃たれて3ヶ月ほど入院していたし、襲撃のたびに掲示板は労災報告書で埋め尽くされていた。

 

 今日は先日に処置を施した被検体の精密測定を行う予定だったのだが、襲撃があったということはおそらく被検体も連れ去られているだろう。今回の処置はかなり上手くいっていただけに、被検体の喪失は非常に痛いものがある。それに加えて襲撃で荒れてしまった設備の片付けもしなければいけないという事実が俺の心を重くしていた。

 

 戦闘の余波で窓ガラスが割られ、破片の散らばる廊下をジャリジャリと足音を鳴らしながら自室へと歩く。気の早い職員はもう箒とちりとりを持ち出して掃除を始めている。一応確認すると、自室はとりあえず問題なさそうだったので掃除に加わった。もっと警備に金かけてもいいんじゃないのか?

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

「室長!もっと警備を厳重にしてくださいよ!毎回被害が出てるじゃないですか!」

 

 三日後、俺は上司に直談判して警備の強化を訴えていた。年に一度程度ではあるが、そのたびに被検体を連れ去られ、施設の設備群にも多少の被害が出ているのだ。このくらいは言っても許されるだろう。

 そして有り体に言って俺は暇だった。いや、研究成果のレポートはこまめにまとめているから、代わりの被検体が来るまであまりやることがないのだ。同じような研究者は多いらしく、今日はラウンジでお茶を楽しんでいる奴らが多かった。

 俺の文句を聞いたボスからは何やら歯切れの悪い返答が帰ってくる。

 

 

 なんですって? 予算が足りない? それに警備員を雇っても通報くらいしかやることがない? そりゃそうでしょうけど……。今回壊された測定器とさらわれた被検体の損害額はと比べたら壁を厚くするくらい安いもんでしょう。それにここは日本ですよ? なんであんな武装勢力が野放しになってるんですか? しかもあれ、リリィ主力の部隊ですよね? 一体いつからこの国では内戦が始まって――ッ!

 

 ちょっと待てよ?

 上司に文句を投げつけていた俺はある事実に気づく。そもそもあんな銃器を運用するようなリリィ部隊が野放しになっている? あれだけの装備に加えて練度もかなりのものがある。しっかりとした拠点を持った武装勢力? いくらこんな時代とはいえ国がそれを野放しにしている? 民間企業を襲っているのに警察の捜査が進んだ話もいっこうに聞かない?

 

 

 いくら研究にしか興味がないとはいえ、俺にだってそのくらいの常識はある。少なくとも犯罪行為は警察に通報すれば何とかしてくれるはずだったし、俺の記憶に間違いがなければ民間企業に押し入って銃をぶっ放す、なんて行為は明らかに犯罪であるはずだった。

 事実、先日も襲撃犯がいなくなってから警察官があちこちウロウロしていたことを覚えている。掃除の最中に出くわしてジャマだと思ったから間違いないはずだ。

 多くの疑問をつなぎ合わせた結果からおそらくの答えを見つけ出し、上司へと問いかけた。

 

「室長? もしかしてGEHENAってあの武装勢力と何かしらの取引があるんですか?」

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 どうやら当たらずとも遠からずのようだった。室長の語ったところによればこちらにも利点があって襲撃を許しているらしい。

 

 まず、強化施術を受けた被検体のその後について。被検体は身寄りのない子供を児童養護施設から合法的な契約で引き受けてくることが多いが、必要なデータを得た後は基本的に世間に放り出される。もちろん契約書に書かれた金額は渡されているわけだが、こんな時代に高卒程度の技能で少女が身寄りもなく生きていくことは確かに難しいだろう。あっという間に食い物にされて野垂れ死ぬことは目に見えている。そんなことになれば民間企業たるGEHENAの評判はガタ落ちだ。いくらこちらが正規の契約に基づいて、それなりの金額を渡していると言ってもマスコミが面白おかしいストーリーを作り上げるだろう。

 ああ、これは逆かもしれないな。武装勢力へ『引き渡す』ことが前提になっているからこそコストカットで簡単な教育しかしていないのかもしれない。

 まあ何にしろ、ある程度のデータをとった後の被検体の処理を武装勢力に任せて、こちらも被害者となることで万事上手くいくわけだ。

 上司の言い方だと誘拐された後もデータを追えている被験体もいるみたいだし、武装勢力の正体はどこかのガーデンだろうな。……あまり深入りすると危なそうだからその辺の追求はしないでおこう。

 一年前後で実験スパンが組まれるわけもようやく分かった。被検体は丁寧にやればかなり長持ちするのだからもっと長期で計画立ててもいいのでは? なんて考えていたが、そんな理由があったとは。ちょうど計画の継ぎ目だったら研究も一段落しているし、よしんば計画がスタートしていても開始直後ならもう一度やり直すことも楽だな。

 

 それに加えて、どうやら社会貢献の面もあるらしい。せっかく強化してスキラー数値を上げたのに性能実験中だけHUGE狩りをさせていたのではあまりにもったいない。かといって民間企業に効率よくHUGEを狩るようなノウハウはないので、いっそのこと他に任せてしまおう、というわけか。いや、さっきも少し考えたけど、やっぱり武装勢力の中身はガーデンじゃないか。なにか大っぴらにできないわけでもあるのか?

 それはさておき、開発途上の技術とは言っても施術に成功すれば戦えるようになるわけだし、被検体をそのまま解放するよりは対HUGEの戦力になってくれた方が俺としても嬉しいからな。自分の研究が実際に社会に貢献していると知るのは気持ちがいいな。直接見られないのは悲しいが、研究へのモチベーションがかなり上がったぞ。

 

 あとは、何やら反GEHENA主義なるガーデンがあって、そこに強化リリィを供給する目的も大きいそうだ。普通にGEHENAの成果を利用してくれるガーデンには技術だけを提供すれば使ってくれるが、反GEHENA主義のガーデンはそのあたりの支援をなかなか受けてくれないらしい。

 反GEHENA主義とはこれまた理解出来ない概念が出てきたが、そいつらは本当にHUGEとの生存競争を勝ち抜く意思があるのか? そもそも世界で発表される論文はあちこちのGEHENAラボ発のものも大量にあるわけだけどその辺の利用とかどうしているんだ?

 それに、いくら主義が気に入らないからって暴力で解決しようというのは人倫の道にもとると思うのだが、どんな理屈でリリィに言い聞かせて動かしているんだ? まさかリリィもいきなりよその家に誘拐、強盗に行けと言われて素直に頷くような人格破綻者ばかりなんてことはないだろうし。

 

 下手にこちらが重武装で防犯すると相手も殺傷性を高めてくるから、職員だけシェルターに籠もってやり過ごした方が結果的に被害が少ない、だとか、連れてきたけれど被検体として適当でない、としてただそこにいるだけの穀潰しに成り果ててしまった人間も押しつけているだとか、他にも色々と理由はあるらしい。

 それに、上司の知る限りでは武装勢力との政治的取引みたいなものはないようだ。そもそも反GEHENA主義のところとは対話のチャンネル自体が存在しないらしい。

 言われてみれば納得出来る。こんな非合法手段に走るような組織がこちらとの取引に応じるはずもないだろう。そもそも合法的に話し合えないから非合法な武力に頼らなければいけないのだろうし、組織的にも対話をしようとしたなどと知られただけで失点になるようなカルトなの容易に想像出来る。

 

 

 

 ? なんですか? 何か思うところがあるか、ですって? いえ、話を聞いて納得したので特に何もありませんが。倫理的な問題? 確かに未成年の少女たちに犯罪行為をさせている武装勢力は許しがたいですが、善良な一般市民にできるのは通報くらいのものですよ? それを野放しにしているのには心が痛みますが私の手の届くところではありませんので仕方ありません。

 え? 被検体について? いえ、彼女たちは合法的な契約に則って被検体となっているのですから何か考える必要があるんですか? 大抵のことを可能にするような契約書なのですから厚さが2センチもあるような紙束になるのは仕方ありませんよ。私はきちんと国連の実験指針を守っていますし、施術前にも本人たちの同意を得ていますよ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 鬱憤を上司にぶつけに行ったはずだったが、思いのほか面白い話をすることができて機嫌が良かった。鼻歌交じりに5人分の被検体請求申請書を埋めながら、このモチベーションなら来期の実験計画を立てるのもはかどるだろう、と考える。スキラー数値の安定的な上昇は、実現すればリリィ人口を大きく増やすことができるだろう。そうして増えたリリィに強化スキル『ノスフェラトゥ』を安定的に付与出来れば戦争を一変させることができるはずだ。

 

 

 




科学ノ進歩、発展ニ犠牲ハツキモノデース

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