――――それは、何気ない午後の事だった。
「えっ。私は剣術など、覚え申さぬのですが……」
――――夢から覚め、ついに幸せを掴んだ、本当の岩本三重。
「いやっ! 阿修羅というは、私の事では無くてですね……。
あっ、そんなこと言っても分かりませんよね。はい」
――――いま彼女の前に、“最大の敵”が立ちはだかる。
「戦えと、仰るのですね――――
「興津ッ! しっかりせぬかぁ興津ッ!」
「丸子の脈が無いぞ! 誰ぞ医者を呼べッ!」
「えーっと……エクゾチュパる零どの?
死んでしまわれたのですか? おーい」ツンツン
――――倒れていく仲間達。成す術なく破れていく門弟ら。
「レイピアが弾かれる! まったく刺さりませぬっ!」
「うそ……この千加が四つ手で負けるなんて。
きゃあああぁぁぁーーーーっっ!!??」
――――掛川の虎子たちを物ともせぬ、
「お下がりなさいませ。……この権左、命に代えましても」
「
「また、共に釣りに行きとぅ御座いましたなぁ……三重さま」
「濃尾無双は過去のこと。……だがまだ娘の為に、してやれる事がある」
「熱海に行くんでしょ!? なら早くお逃げなさいッ!
でないと、何の為に皆は……! また頬を叩かれたいのっ!?」
――――虎が、牛鬼が、夜叉が。
「やるぞ
「お前は下から飛べ、私は横からいく」
「これなるは我ら必勝の構え、“流れ十文字”の姿――――
飛猿と逆流れの合わせ技ぞ! 躱せるものなら、躱してみぃッ!!」
――――そして、虎眼流の双龍が。
――――――次々と
「嫌だ……嫌だ嫌だ嫌だっ!
せっかく幸せになれたのに! せっかくやり直せたのに! ……こんなのってッ!!」
――――乙女の泣き崩れる声が、掛川の夕焼け空に響く時。
『やれやれ。えっちの時以外は、出しゃばらぬつもりでおりましたが……。
因果な物ですねぇ、
――――彼女が、
『“痛い”……そう感じたるは、いつ以来の事でしょうか?』
『認めまする。
お手前は、これまでわたくしが戦ってきた、どんな侍よりも強い――――』
『なれど、心なき力に意味などありましょうか。
――――いま、虎眼流の阿修羅が。
『三重どの、呼吸を合わせるのです』
「感じる……これが貴方の魂の鼓動っ……!」
『わたくしと共にある時、三重どのは無敵にございまする。
なれば、いざ征かんッ!!』
「やぁぁぁッ!! ねお虎眼流・奥義ぃぃぃーーッッ!!!!」
――――
「正眼。……これはね? 一番はじめに習った構えなの」
「わがはい……わがはいは、なんで力を……?」
『そろそろ参りましょうか。三重がお供いたしまする』
『報告しに行くのでしょう? 立派な侍になったよって――――』
◆スペシャルサンクス◆
団子より布団 様