無職の凡人〜別に親のコネとかいらなかったんだがな〜後悔してももう遅い 作:平泉凡二郎
コネ入社
「凡二郎が将来どんな人になるか楽しみだぞ!」
「お母さんも、凡二郎がどんな職種に就こうとも応援してますよ」
「ジローもきっと凄い人になるよ!だってあたしの弟なんだからねっ!」
やれやれ、何を言ってるんだか。相変わらずうちの家族は喧しいものだ。
そんな期待されても困るってものだか。
まあ俺は凄いからつまり凄くなるに決まっている。
俺の名前は平泉凡二郎。
今年で22歳になる。
高校を出ると大学に行かなければいけない。
大学を出て学士の称号を授かるためだ。
学士を授かることで箔がついて就職し易くなるし、給料も良くなる。
大学では遊んでいようと卒業しているだけでありがたがられるのだ。
うちは金持ちだから奨学金も借りずに大学に入学した。小学生から家庭教師がいたし、勉強もそう難しくなかったから適当に出席しているだけで卒業できた。
もっとも授業中はスマホゲームをしていて授業の内容なんか一つも覚えてないがまあいいだろう。
大学は出ることが必要であって何を学ぼうが関係ないのだから。
この大学を出たか否かによって、その後の人生が大きく変わってしまうのだから恐ろしい。
金や余裕がなくて、高校を出たはいいが大学に行けずそれでも頑張って独学でもう勉強した人間より親の脛をかじって大学を卒業した人間の方を評価するのだから、日本という社会は歪んでいると思う。
だが、そのおかげで俺は明治大学卒という称号を得て仕事が選び放題なのだから、この狂った社会に感謝しかない。
「それにしても凡二郎は偉いな、留年せずに大学を卒業できたんだから。父さんなんか3年も留年しちゃったというのに……」
それは大学の教育が変わったからだろう。父さんの頃とは、難しさが段違いのはずだ。ゆとり万歳!
「まあ、小説書いてるしめっちゃ文章書けるからさ」
そう、俺は小説を、書いている。
小説家を志したのは小学生の頃、それから大学しても今なお熱意は変わらずに書きつつけている。
「さすが!私の子よ!小説が書けてしかも大学も留年せずに卒業できるなんて天才かしら」
「そうだな!凡二郎は将来凄い人間になるぞ、環境大臣も夢じゃないな」
「なんで環境大臣?」
「いや、なんかこうくっきりとした姿が見えているわけではないけど、おぼろげながら浮かんできたんだ。環境大臣という言葉が。シルエットが浮かんできたんだよ」
「あら、占い師の貴方がいうならそうなのかもしれないわね」
「ええ!?ジローは大臣になりたかったのか!むむむ、もしかして私が女優として有名になってるから負けたくないとか……」
勝手に未来を予測する父さんと何故か"それもいいわね"とか同意している母さん。
姉は"何故か今日からライバルだ"とか訳の分からないことを言っている。
まぁ、いつものことだな。
しかし、あいつらは一度何かいい始めると俺が何が言っても止まらない。
放っておいて俺は会場に向かうことにした。
そう、今日は父さんのコネで大手企業に就職するために軽い面談をする日なのだ。
まあ、就職するつもりはなかったが通してもと頼まれたんじゃ仕方がない。
とりあえず受けてやろうとやってきたが、まあボロっちいところだ。
俺はもっと有名なベンチャーとか入ってインタビューされるくらいになりたいんだが、まあ仕方がない。
「早く行きたいのはわかるが、焦るのは良くないぞ」
息を晴らした父が追いかけてきた。
俺一人で大丈夫なのに心配症だな。
「はぁはぁ、ひとりで歩くと危ないじゃない。もしかして私たちと一緒に行くのがいやなのね?」
「まあ、そりゃあ」
大人なのについてくるなんて。
「凡二郎、でも今日は僕のコネを使うんだから、僕がついて行かないと誰なのかな?って担当者が思ってしまうかもしれないだろう?」
「そ、そうよ。ね?」
「う。うん」
そういうものなのか。
そういえば、病院に行った時も両親について行って貰うといいですねって微笑みかけられたな。
面接会場に着くと、他には誰もいなかった。
それはそうか。
親のコネで入社する人なんかいないか。
父が歩いていた社員に何か話しかけているのが見える。
「凡二郎、もう入っていいみたいだ。
僕たちもついていくけど、普通に答えるだけでいいからね」
「わーかってるって」
「ジローなら出来るよ!大丈夫大丈夫」
そんな風に言われなくたってわかってるわ。
「軽い面談みたいなものだから大丈夫よ。お父さんの知り合いだからね、軽くそうね。私たちと話すみたいにすれば大丈夫よ」
そういうもんなのか。
まあ大丈夫だろ。
父に促されるまま、部屋に入ると三人の大人がいた。
右からおっさん、おっさん、おっさんと。普通のおっさんどもだ。
「それでは……面接を始めます。どうぞ席に……」
「ふふふ、凡二郎は言われる前に席につけて偉いぞ」
「ふん、まあ、こんくらい当たり前だよ」
おっさんどもは俺が席に言われる前に座れるとは思ってなかったのか、激しく瞬きをして、どうやら驚いているようだった。
「(お、おい、これ本当にやばくないか)」
「(んな、こと言ったってあの社長が)」
「(聞こえたらどうするんだ、前向くぞ)」
何やら三人はコソコソと話している。
まあ、随分と賢そうなやつがきたなとか、こんないい人材うちで雇えるなんて幸せだなとかそんなところだろう。
「(おい見ろよ、あの自信満々の顔とバカ親)」
「(人材つうか、人災だろ)」
「ごぼん、ごほん。えーと、平泉凡二郎さんでしたね。私たちの会社を受けようと思ったのは……なぜかな?」
「うん?まあ、あれです。父さんがこんなところだったら楽勝で入れるって言うから一応受けてみたつうか、まあなんて言うか、一応明大卒なんで、まあ色々会社の悪いところを改善できるんでまあ、なんつうか、そうなんか受けてみたって感じっです」
俺の言葉に納得したのか、悪いところに気がついたのか深く頷いていた。
「「「(こいつはダメだ、絶対ダメだ)」」」
「で、ほかに何かありますか」
「(このクソガキ ……)あー、えっと君は有名占い師、平泉呪一郎氏の息子だったね」
は?何言ってんの、横見ればわかんだろ。頭悪いな。俺が社長になる日も遠くないな。社長になったらこいつらは無能だけど俺を入社させた恩に免じて解雇しないでやろう。
頭が狂いそうなので続きは明日投稿します