己の心、己知らず(Rising Girl) 作:家葉 テイク
原作:ウマ娘プリティーダービー
タグ:サイドストーリー ダイワスカーレット アグネスタキオン エアグルーヴ ウオッカ 女トレーナー 育成シナリオ前提
URAファイナルズの初代優勝者となったダイワスカーレットは、一番のウマ娘として初めての誕生日を迎えていた。ただし、喜ばしい日にも拘らず、彼女の表情は曇っていて──。
最近のトレセン学園は、少し静かだった。
いつも生徒たちの喧噪で少し騒がしいカフェテリアも、どこか雑踏が遠ざかるみたいに、まるで賑やかさのボリューム自体が下げられているかのような不思議な静けさがあった。
「やあ、誕生日おめでとう、スカーレットくん」
背後からかけられた声に振り返ってみると、そこには虚ろさと活力を共存させた、不思議な眼差しの先輩が。
アタシは身体から抜いていた力を瞬時に入れなおして立ち上がる。
「タキオンさん! ありがとうございます!」
「あぁ、いいよいいよ、座っていてくれ。……隣、いいかね?」
「あっ……はい」
タキオンさんの柔らかい笑みに、なんだか浮足立ったアタシ自身を見透かされたような気がして、アタシは恥ずかしくなりながら席に戻った。続いて、隣の椅子が億劫そうな音を立てて引かれる。
コトリ、とおそらくタキオンさんが持ち込んだであろうティーカップが置かれる音がした。
「怪我の調子はどうだい」
するりと、いっそ無造作なほどにあっさりと切り出された言葉に、タキオンさんの気遣いを感じる。アタシはすぐには答えずに、自分の左太腿を静かに撫ぜた。
URAファイナルズを優勝した後、フェブラリーステークスに向けた調整をしている最中、アタシは怪我をした。結局フェブラリーステークスは回避して、早三ヶ月。もう、すっかり走れるようになっているし、トレーニングも再開している。けど……アタシはそれでも、怪我の調子を話すときにどうしても言い淀んでしまっていた。
身体に不安があるわけじゃない。むしろ、レースに出られなかった分、活力は漲ってると思うし、三年間の厳しいレース生活で蓄積していた疲労みたいなものもまとめて癒すことができたんじゃないかと思う。ただ……どこか、落ち着かない。
「ふぅン……。そうかい」
言い淀んだアタシの答えをどう受け取ったのか、タキオンさんは少し怖い顔をして目を細めた。自分の本音を見破られたみたいで、アタシは急いで言い繕おうとして、
「まぁ少し落ち着きたまえよ。此処はゆっくりお茶を飲んで心を休める為の場だろう?」
そこで、自分が前のめりになっていることに気付いた。
……は、恥ずかしい。アタシだってもう立派なグランプリウマ娘なのに。顔が熱くなるのを感じながら、アタシはすごすごと姿勢を正す。タキオンさんは愉快そうに笑いながら、
「アッハッハッハッ! そんなに元気なら心配は要らなかったね。いやなに、実は最近、腱の再生力を高める薬の開発に成功してね! ちょうどいいしスカーレット君に実け……もとい治験のアルバイトでもと思ったんだが」
「……え、それって」
……アタシの怪我は、確かに左脚の腱を痛めたことによるものだった。
でも、タキオンさんの研究は『速さ』を向上させるためのモノだって、アタシは知ってる。怪我を治すような、脇道に逸れるような研究は……しないとも言えないけど、このタイミングで……とも思う。
アタシの自惚れじゃなければ、だけど……。
そういえば、タキオンさんはアタシが怪我をしているときも、よく声をかけてくれていたと思う。最初は、走れなくなって落ち込んでいたアタシに、色々なサプリを見せてくれたっけ。結果的にタキオンさんのトレーナーさんに引っ張られてたけど……。
でも、そんな心遣いがアタシには嬉しかった。だから、今まで前向きにリハビリに励むことができたんだから。
「だが……
「っ、た、タキオンさん!」
「しかし困ったねェ。これに託けて誕生日プレゼントと強弁するつもりだったんだが。さてスカーレット君。私はちょっと代わりの誕生日プレゼントを用意してくるから失礼させてもらうよ」
「あっ、」
お礼を言おうと思ったのに、タキオンさんは早口にそう言い切ると、アタシの言葉も聞かずに走り去ってしまった。……まるで、お礼なんて必要ないと言わんばかりに。
その背中にお礼をぶつけるのも何か違うと思ったから、アタシはただ黙って頭を下げることにした。
タキオンさんの見立ては……多分、正しい。
アタシの脚は、もうどこも問題ない。体調も絶好調だと言える。多分、今レースを走ったならアタシは問題なく『一番』を取れるくらい、身体のコンディションは良い。
……でも、今のアタシの様子を見て、多分タキオンさんは身体じゃなくて気持ちが整ってないって思ったのよね。今の腑抜けたアタシじゃ……たとえ体調が万全でもレースには勝てないって。
「…………ハァ、ダメだわ、アタシ」
そこまで考えて、自分を客観的に見て、アタシは溜息を一つ吐いた。
こんなんじゃ、全然アタシらしくない。こんな姿を見られたら、海外に行ったアイツに笑われちゃうわ。『今のお前になら目隠ししてたって勝てるぜ!』……とかなんとか言って。
……うん。
きっとアタシ、怪我でブランクがあるから気弱になってるんだわ。今日はトレーニングもないし、部屋に戻って休むことにしよう。
そう思って、空になったティーカップを持って立ち上がると──遠くにエアグルーヴ先輩が歩いているのが見えた。
「エアグルーヴ先輩!」
アタシはティーカップを食器返却口に置いて、すぐにエアグルーヴ先輩を追いかける。
さっき部屋に戻るって考えたばかりだったけど……エアグルーヴ先輩と話せば、何かが見えてくるかもしれないって思ったから。
エアグルーヴ先輩は、アタシが声をかけると足を止めてこちらへ振り返ってくれた。
駆け寄るようにして目の前まで行くと、エアグルーヴ先輩はふとアタシの脚元に視線を落として、
「その様子なら、もう怪我は平気のようだな」
「あっ……はい。お陰様で」
「お前は頑張りすぎるきらいがある。ブランクが空いたからといって、気合いを入れすぎるなよ」
エアグルーヴ先輩は窘めるようにそうアドバイスしてくれた。
でも……違うんです。気合いを入れすぎるどころじゃなくて、アタシ……。
「……? どうかしたのか。何か悩みでもあるのか?」
言い淀んでいると、エアグルーヴ先輩は心配そうに眉を顰めて問いかけてくれた。
この人はいつもそう。一見厳しいようでいて、本当はとても優しくて思いやりのある人。アタシが怪我をしているときだって、いつも気にかけてくれて……温かい言葉をかけて、励ましてくれた。
アタシが腐らず治療に専念してこれたのは、この人の支えがあったからこそだもの。……それだけに、せっかく脚を治せたっていうのに燻っているアタシを見せるのは……怖い。
「あの……っ」
「……ハァ、聞いた私が馬鹿だったな」
それでも、藁にも縋る気持ちで意を決して話をしようとした瞬間、エアグルーヴ先輩は呆れたように溜息を吐いたのだった。
バッサリ斬り捨てられたような錯覚で、さあっと血の気が引くのが分かる。エアグルーヴ先輩はそんなアタシのことを置いてけぼりにするように、もうこっちには一瞥もくれずに、
「いいか、スカーレット。お前の
そう言って、エアグルーヴさんは最後にこう言い残した。
「……ああ、そうだ。誕生日おめでとう。プレゼントは追って用意するが」
「……ハァ」
気づけばアタシは、トレーナー室までやって来ていた。
アタシが怪我をしている間も、トレーナーはリハビリに付き合ってくれたから、今日も多分此処にいると思うけれど……。
正直、怪我をした当初はともかく、リハビリ中や、今に至るまでの弱音は──トレーナーには相談できていなかった。大事な『最初の三年間』を乗り切って、幾多の苦難を乗り越えてURAファイナルズを優勝したっていうのに、今更こんな弱音を見せたくなかったし……今までは、この気持ちも自分で乗り越えられると思っていたから。
でも……タキオンさんに自分の弱音を見抜かれ、エアグルーヴ先輩に突き放されたアタシは、トレーナーに寄りかかってしまうくらいに参ってしまっているのだと思う。本当に、情けない話だけど……今はもう、トレーナーに全部の気持ちを吐き出したくてしょうがなかった。
「トレーナー……!」
ノックもせずに、アタシはトレーナー室の扉を勢いよく開ける。鍵もかけていない扉はギイと威勢のいい音を立てて開いて、その奥で作業をしていた大柄な女性の姿を開陳する。……またズボラなカッコしてる。
まぁ良いわ。それよりも……今は、アタシの気持ちを、トレーナーにぶつけたい。
「どうしたの? スカーレット。そんなに血相変えて……、」
立ち上がって出迎えようとしたのだろう。机に手を置いて少しだけ腰を浮かせたトレーナーが完全に立ち上がるよりも早く、アタシは机に詰め寄る。
ああ、早く聞いてほしい。アタシの胸の内を。この張り裂けそうな想いを……!
その一心で、アタシは殆ど叫ぶように思いの丈を吐き出した。
「トレーナー!」
ここしばらく、アタシのことを悩ませ続けていた重い重い、
「アタシ、今すぐ走りたい!! 強いウマ娘と! 競って競って……それでまた、『一番』になりたい!!!!」
そんなアタシの口から飛び出た言葉は、自分が思っていたような弱気のそれとはかけ離れていて。
「…………え?」
だから思わず、アタシは自分で口にした言葉の意味が分からず、少しの間だけ呆然とした。
対するトレーナーはというとけろりとしたような表情で、すっと立ち上がる。それから、またしても前のめりになっていたアタシの頭にポンと手を置いて、こう続けたのだった。
「うん、知ってる」
「怪我の調子はどうだい」
そう問いかけた瞬間だった。
目の前のウマ娘の瞳に、尋常ならざる光が宿ったのは。
怪我をしたのは、海外遠征を視野に入れ始めた頃だったか。その前哨戦として定めたフェブラリーステークスへの追込みをかけていた矢先の負傷。当時の彼女は大変心を乱していたように思う。
彼女がご執心なウオッカ君──彼女を追いかける、とまではいかないが、海外に進出したライバルに差をつけられるんじゃないかと、気を揉んでいたりもした。
だから私は、未だに脚に不安を持っていて、それで気を病んでいるのではないかと推測していたわけだが──どうもその心配は杞憂だったようだ。
弱気を抱えたウマ娘は、こんなにギラギラとした光を瞳に宿さない。
今にも私を食らってやるぞと言わんばかりの情熱的な意思の炎。勝利の渇望。とある何者かとの決着を望む闘志。どうやら彼女自身は自分でもその光に気付いていないようだが──なかなかどうして。
彼女もまた、
「……? どうかしたのか。何か悩みでもあるのか?」
問いかけてから、私は自分でも『馬鹿なことを聞いた』と思った。
実際に悩みを抱えていて言い出せない輩が、そんな聞き方で悩みを打ち明けられる訳ないから──ではない。
目の前にいる大馬鹿者の悩みが、特別贅沢であることをすぐに察したからだ。
この栗毛のウマ娘の瞳は、確かに揺れている。だがそれは弱気ゆえではない。むしろ、逆。コイツは、よりにもよって、怪我をして海外遠征がふいになって、長期戦線離脱を余儀なくされた後のこのタイミングで──
ナメられたものだ。数か月のブランクがあるくせに、コイツはもう海の外のレースを見据えている。いや、そこで走る何者かのことを考えて、恋焦がれていやがる。
ふざけた話だと思う。この女帝を前にして、コイツはもう、国内には己の敵などいない気でいるのだ。……この国にはまだ、他のティアラ路線を勝ち抜いてきた『女王』達が大勢いるというのに。
だが一方で、微笑ましくも思っていた。
だってそうだろう。怪我で三か月ものブランクを経験しておいて──ダイワスカーレットというウマ娘は、未だそれほどに『一番』への渇望を忘れていない。
優等生を標榜する、意地っ張りなこの娘の根幹には、何ら翳りはない。──先達として、これほど喜ばしいことはない。
「……ハァ、聞いた私が馬鹿だったな」
だからこれ以上、言葉を聞かせる必要はない。
そう判断し、私はその場を立ち去る。さあ、見せてやるとしよう。女帝の背中を。国内にもまだ、お前が『競う』べき強敵はいるのだと。
…………つくづく思う。コイツのトレーナーは、
ダイワスカーレットは、飢えていた。
天皇賞・秋。有馬記念。そして、URAファイナルズ。
名立たる大舞台を次々と勝ち抜き、名実ともに『一番』のウマ娘となったスカーレットは──次なる戦いの相手に、海の外の強豪たちを見定めていた。
その判断には、彼女の同室であり生涯の好敵手であるとある不良娘の存在があることは間違いないが……運命の悪戯か、彼女は海外遠征の前哨戦に見定めていたフェブラリーステークスの直前に故障を起こしてしまう。
最初こそ故障で動揺していた時期もあったスカーレットだったが、彼女は──彼女自身が自分で思っているよりもずっと、強かった。
すぐに怪我を治すと、リハビリ、トレーニングと一心不乱に、しかし慎重に──完璧なリカバリを見せていた。
そこに、浮き沈みの激しい『気性難』と呼ばれた未熟な少女はもういない。数多の激闘を乗り越えてきた、百戦錬磨のグランプリウマ娘がいるのみだった。
誤算があるとすれば、彼女の立ち直りがあまりにも早すぎたことだろうか。
早々にメンタルを持ち直したスカーレットは、その後三か月間、ずっとレースに焦がれながら過ごしていた。フェブラリーステークス、ドバイワールドカップ、高松宮記念、大阪杯、天皇賞・春、NHKマイルカップ、ヴィクトリアマイル──春のG1戦線が目の前を過ぎ去っていくのを眺めながら、彼女の闘志は見る見るうちに大きくなっていった。
走りたい。
走れば、勝てる。一番になれる!
そんな声が聞こえてくるようだった。もっとも──彼女は
まったくひねくれ者にも程があるだろうと、私は小さく笑ってしまった。自分の本当の気持ちすら勘違いしてしまうなんて。
「…………ええと、つまり」
スカーレットは、顔を真っ赤にしながら状況を整理する。
私は、自分で自分の言動についていけなくなったスカーレットに、丁寧に彼女の本当の気持ちを説明してあげていた。それを呑み込んだスカーレットは、ようやく自分の気持ちに気付けたらしい。
「アタシは……怪我が治ったから、一秒でも早くレースに出たくて」
「うん」
「でもそのことに自分で気付かず、怪我で自信をなくして弱気になっていると勝手に思い込んで」
「うんうん」
「藁にも縋る想いでトレーナーに助けを求めに行ったつもりで──レースの催促をしたってこと?」
「大正解」
いやあ、正直トレーナー冥利に尽きるとは思う。
だって怪我にも腐らず、なお熱意をもってレースに臨んでくれるんだから。
そんな彼女にだからこそ、私も全力を尽くしたくなるのだから。
「ほら、いつまでももじもじしてないの。勝負服、準備しておいたから。さっさと着替えておいで」
「……? 勝負服? なんでよ。新しい勝負服の話なんて聞いてないけど?」
「違う違う。……ま、着替えてからレース場に行ってみなよ。分かると思うから」
そう言って、私は部屋の片隅に準備しておいた勝負服を指差す。
そして、付け加えるようにこう続けた。
「それと。……誕生日おめでとう、スカーレット」
言われて、スカーレットはようやくその事実に気付いたみたいに目を丸くしていた。
……おかしいなぁ。タキオンさんとエアグルーヴさんも言ってくれてたと思うんだけど。それにも気付かないくらい重症だったの? まぁ、スカーレットらしいというかなんというか……。
アタシは、逸る気持ちを抑えるように呼吸を落ち着けながら、レース場へと急いでいた。
なんとなく、予兆はあった。
思い返してみれば、タキオンさんもエアグルーヴ先輩も、『プレゼントは後で』と言っていたっけ。そこにきて、勝負服に……レース場。ここまで材料が並べられたら、マヤノじゃなくても分かっちゃうっての。
「──やぁやぁ! 馬子にも衣裳とはまさにこのことだね! 似合っているよ、スカーレット君」
「ふん。この期に及んで浮ついた顔をしているようなら一喝してやろうと思っていたが……無駄な心配だったようだな」
タキオンさんに、エアグルーヴ先輩。
二人とも、それぞれの勝負服に身を包んで、ターフでアタシのことを待ち受けてくれていた。
それだけじゃない。
その二人の奥には────
「よう、宿敵」
黒いジャケット。
スカした、いけ好かない態度のウマ娘。
アタシの、
「誕生日だから、敗北をプレゼントしに来たぜ」
──ウオッカが、そこにいた。
「と、トレーナー……?」
視線を動かさず、アタシは隣にいるトレーナーに声をかける。
声が上擦っているのが分かる。だって、だってアイツは、今海外にいて……。
「誕生日だからね。あの子のトレーナー、私の同期だから。ちょっと無理言って、帰国のタイミングをずらしてもらっちゃった。後でスカーレットもお礼言っとくんだよ」
ははっ、何よそれ。
トレーニング中に怪我をして、レースも、海外遠征も、全部ダメになった……そんなウマ娘に、こんな豪華な面子を、誕生日だからって理由で充てたっていうの?
超高速のプリンセスを。
女帝を。
常識破りの女帝を。
…………ただの模擬レースで、全員喰っていいっていうの?
「もう勝つ気かよ? 後で負けて吠え面かくんじゃねーぞ。お前が機嫌悪くなるとめんどくせーんだよ」
「何よ! アンタこそ、無様に負けて負け癖つけたりなんかしないでよね」
いつぶりだろう。コイツとこうして憎まれ口を叩くのなんて。
やっぱりアタシのトレーナーは、よーくアタシのことを分かってる。アタシが一番喜ぶプレゼントが何なのか、ちゃんと分かっててくれた。
飢えていた。
アイツは海外に行って……それはそれでいい。アイツの夢はそういう『カッコよさ』で……そういうアイツだから、アタシは勝ちたいと、アイツを負かして『一番』になりたいと思ったんだから。だからアタシは、アイツがいなくなって少し静かになった部屋も、確かにモチベーションにすることができた。アイツのいないURAファイナルズの優勝を、誇ることができた。
でも──その後アタシは怪我をして、有り余る熱を放出する場所がなくなっていたのね。
そして今、そこにうってつけの舞台が用意された。
久々の宿敵との再会。そして憧れの人たちとの対決。それらを、これ以上ないお膳立ての上で。
いずれも、相手にとって不足なし。
むしろ、ブランクのあるアタシじゃ圧倒的不利と言ってもいいかもしれない。
でもアタシは、心の奮えを抑えることができなかった。抑えるつもりも、なかった。
「いいわ。みんなまとめてかかってきなさい」
天高く、真上に昇る太陽を指差すように、人差し指を突き上げて。
アタシは、全世界に宣戦布告するように、高らかに歌った。
「今日もアタシが、“一番”になるんだから!!」