隻腕の奴隷巫女神“ヒルコ” ~八願の神様スサノオとゆく、古事記冒険譚~   作:みかみ

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 初めましての方は始めまして。お久しぶりの「型」はお久しぶりです。
 前作「本当はあったかもしれない鬼滅の刃」は大正時代の物語でしたが、今回のお話は古墳時代、まだまだ神様の息吹の残る頃のお話です。
 世の中はまだまだザマァなお話が人気なようで、私自身もそんな物語を一次創作で書いてみようと思ったのですが、成功したのか失敗したのか分かりません(汗

 すべての判断は、お付き合いくださる読者様にしていただきましょう。

 それではまた、よろしくお願い致します。


序章:天地創生

 時間という概念すら忘れるほどの、昔々の物語。

 それはそれはもう、遥か、はるか遥かな、始まりの一欠けら。

 

 元々、この世と呼ばれる場所には何も存在していなかった。

 

 あるとするなら、無という概念のみ。

 

 命は勿論、物質を構成する分子さえも存在しない。ただ、それを証明する無という概念のみが存在した。

 

 概念である無に、形はない。

 だが存在がある以上、知覚するための色は必要だ。

 無という概念は自身の色を、黒とか闇と呼ばれるモノであると知覚した。

 

 陰の誕生である。

 

 同時に、陰は自身と正反対の概念を生み出してゆく。

 たとえ命がなくとも、形がなくとも。

 陰という存在がある以上、相反する存在もまたあるはずだ。

 

 陽の誕生である。

 

 陽にも当然、色が存在した。

 それは白く、光り輝く何かだった。

 

 陰と陽。

 二つの概念は、相反する存在であるために無限の衝突を繰り返す。

 ぽろり、ぽろりと。

 二つの概念が衝突しあうたびに、黒や闇、白や光が弾け、こぼれる。

 すると、陰と陽が混ざり合った存在も生まれた。

 それは長きの間、名すらなく。

 しかして何もないはずだった現世に、異物としてあり続ける。

 弾けて生まれた無数の異物は、天から降り注ぎ、地に降り積もった。

 

 天地の概念が生まれた瞬間である。

 

 陰と陽、天と地。

 そして異物。

 その五つの概念はまだ形もなく、あやふやで、卵のようにぐるぐると混ざり合う。

 ただ無という概念しか存在しなかった現世に、これほどのモノが生まれたのだ。

 

 天は仰ぎ見るもの。

 地は踏みしめるもの。

 それは現世という世界そのものだ。

 

 陽と陰は、神となって世界を創った。

 では、その二つの子である異物は?

 生みの親である神は、ソレをこう呼び恐れた。

 

 八岐ノ大蛇、と。

 

 かくして世の全てを造りたもうた「神」は、八つの過ちを地に残した。

 神の過ち、それは人に欲という感情を与えてしまった事につきる。

 

 八つの()は勾玉に封じられ、蛇のごとく世を這い回り災いをばら撒く。

 人々は、それらを地下深くへと沈め、二度と日の光を浴びぬよう隠してしまった。

 

 白人(しらひと)胡久美(こくみ)母子姦淫(ぼしかんいん)蓄犯淫(ちくはんいん)昆虫災(はうむしのさい)、高つ鳥の災、蓄仆(けものたお)し。

 

 そして、生膚断(いきはだたち)

 

 この八つの勾玉が一つとなる時。天叢雲は成り、地上に再び八岐ノ大蛇が顕現する。

 

 ああ、神よ。全ての父と母、あるいは兄と姉である尊き神よ。

 なぜ完全なる貴方が、このようなモノを野放しにしておかれるのか。

 人々は天を仰ぎ、ひたすらに祈る。

 神からの答えはない。

 

 それは人という種が、神から現世を任されているのか。

 

 それとも、

 

 もう、すでに。

 

 失敗作として見放されているのか――。

 

 

 

 ――古天地未剖,陰陽不分,渾沌如鷄子,溟涬而含牙。及其清陽者薄靡而爲天,重濁者淹滯而爲地,精妙之合搏易,重濁之凝竭難。故天先成而地後定。然後神聖生其中焉――(日本書紀冒頭より抜粋)

 

 即是(これすなわち)天地創生也(てんちそうせいなり)

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

 かくして天地創生は成り、隠と陽から生まれた神は、更に様々な物質を司るべく同胞を生み出した。

 

 海、川、木、草。

 この世に存在する全ての森羅万象には神が宿り、営みを見守っている。

 それは、汚物が溜まる厠にさえ居た。

 

 天地創造を成す現世は、陽を男神、陰を女神として形作った。

 それは男神が僅かばかり余りあるモノで、女神が僅かばかり足りぬモノであった。

 男と女。二つが交わる結晶は、地を創生する神となる。

 

 地となる島を生む、国生みを成し遂げたのだ。

 すべては万事順調かにみえた。

 

 しかしてしかして、欲としての異物は八岐ノ勾玉と化するにとどまらない。

 森羅万象の神とて人の形を成したのだ。

 その兄とも姉とも言える“異物”が“欲”が、人の形を取れぬ道理はなし。

 

 では、人としての異物はいったい何処へ行ってしまったのだろうか?

 答えは、月明かりの降り注ぐ闇海原に浮かぶ葦船にあった。

 

 さぁ、ようやく挨拶できるね。

 堅苦しいお喋りなんて、もうおしまい。

 物語が短く済むか長くなるかは、まだまだ分からないけども。

 よろしければ、しばしのお付き合いをヨロシクね?

 

 ボクは、陽と陰から生まれた最初の不純物。

 何も期待されず、ただ生まれ変わるを良しとされた失敗作。 

 

 手もなく足もなく、それ以前に形さえなく。

 

 ただ、ブヨブヨと。ただ、ウネウネと。

 導かれた地で、ただ生き抜くために足掻き続ける。

 

 物語はそんなボクが、ヒトの体を得た辺りから始まります。




 最後までお読みいただき有難う御座います。

 今回はお話は日本書紀冒頭に描かれた「この世のはじまり」です。すくなくとも前半は。
 この辺りを表現するだけでも、ひょっとしたらR-15がつく可能性があります。
 なんてったって、

「男神が僅かばかり余りあるモノで、女神が僅かばかり足りぬモノであった」

 なんて下ネタが堂々とかかれるのが日本神話なのです(笑
 あと神様が短気で滅茶苦茶します。現代なら完全にサイコパスです。あ、今、最古パスなんて変換がでてきたぞ。ちょっと面白い。

 堅苦しい言葉も使いましたが、次回からはなるべく読みやすいよう書き進めていきますのでよろしくお願いします。

 ではまた明日、お会い致しましょう。
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