遊戯王 神秘眼の姫君   作:ヴィルティ

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零の射撃者

『エイストール』の村。

そこにたどり着くまでに馬車はなく、オディアナたち3人はただひたすら歩く。

幸いなことに、ちゃんと道は整備されており、獣道や草を掻きわけて歩くことはなかった。

 

「いろんな樹があるね」

 

ハスキミリアはあたりをきょろきょろと見渡しながらそんなことを呟く。

屋敷から外に出たことが全くなかった彼女にとって新鮮な光景なのだろう。

昨日の馬車の旅の時も目をキラキラさせていたが、今も同じぐらい輝かせている。

 

「あれはハスミトの樹と言うんですよ」

 

そしてオディアナが植えられている樹の名前をハスキミリアに教えてあげる。

 

「そうなんだ」

「あの樹に限らず色々な植物が私たちが生きるために必要な空気を生み出してるんですよ」

「そうなんだ。オディアナさん、物知りなんですね」

 

ハスキミリアに褒められオディアナがふふーんと鼻高々になる。

それを見ていたシーアが微笑ましそうな表情になっている。

 

「少し喉乾いたかな」

「なら水筒をどうぞ」

 

ハスキミリアの言葉を聞いた瞬間、シーアが持っていたカバンから水筒を取り出しハスキミリアに手渡す。

ハスキミリアが水筒に備え付けられていたコップにお茶を注いでいき、美味しそうに飲む。

 

「ありがとう」

「どういたしまして」

 

ハスキミリアがお礼を言うと、いきなりハスキミリアの傍にティルルが実体化する。

ティルルの顔はどこか面白くなさそう、と言った感じの顔だ。

シーアが少し困ったようにしてると、ティルルがぶすっとしながら口を開く。

 

(シーアさん)

「ん?」

(お嬢様にお茶を入れるのは私の役目。たまたま上手くいったからと言ってあんまり調子に乗らないように)

 

 

カップを手に持ちながらポットをわざわざ高いところに持ち、そこからお茶を注ぐ。

ティルルの言うお茶を入れるというのは、おそらくあの行為のことを指すのだろう。

さすがにあれは真似出来ないとシーアは思う。

そもそも今は旅の途中で、ただ単に水分補給のためにお茶を渡しただけなのだ。

どうティルルをなだめようかとシーアが困っていると、それよりも先にハスキミリアがティルルの頭を撫でる。

 

「ティルル、あんまり嫉妬しちゃダメだよ。お茶会を開くとき、ティルルがいつも頑張ってお茶を入れてくれてるのは知ってるよ。今回は状況が状況だから、ね?」

(ですが)

「私はティルルの入れてくれるお茶が大好きだよ。だから村にたどり着いたら思う存分ティルルのお茶を飲ませて」

(お任せを)

 

ハスキミリアに仕事を頼まれ、ティルルが誇らしげな表情でシーアを見る。

そしてティルルが姿を消すと、ハスキミリアがぺこりと頭を下げる。

 

「ごめんね」

「いや、別に気にしてはいない。私も少し軽率だったな」

 

別にハスキミリアは悪いことをしていないのに謝られてシーアが少しびっくりしつつ、気にしてない旨を伝える。

メイドの非を代わりに謝罪する。

お嬢様とドラゴンメイドたちに言われてはいるが、根は優しい子なのだろう。

 

「2人とも、早く行きましょう」

 

オディアナに促される形で2人が慌てて歩き出す。

 

整備されてる道の中、傍に植えられてる樹に果物がなってるのをハスキミリアが気づいた。

 

「あれ、何の果物?」

 

やはり好奇心旺盛にハスキミリアがオディアナに尋ねる。

 

「あれはミーカァンという果物ですよ。酸っぱい、なのに甘いという矛盾した感想を抱きつつ、それでも旬の今のおいしさは素晴らしいんですよ」

「そうなんだ。勝手に取っても怒られないかな?」

 

あのミーカァンは自然に出来たのではなく、誰かが栽培したものではないか。

それを疑問に思ったが故の質問なのだろうが、オディアナはにっこりと微笑む。

 

「大丈夫ですよ。そもそもこの国で栽培している果物の樹はちゃんと特製のビニールハウスを使い、いつでも旬の味になるように気温を調整したりしていますから」

 

アルトマ王国で人が作り上げてる果物は、いつでも旬の味が出せるようにビニールハウスの中で季節の温度を疑似的に再現するように努力している。

その果物を利用し果物酒を作り、その果物や果物酒を他の国に輸出する。

そうやってアルトマ王国に生きる者たちは財を成しているのだ。

 

「じゃ、あのミーカァンを食べたいな」

(じゃ、私にお任せなのです!)

 

ハスキミリアの傍にラドリーがいきなり実体化し、ミーカァンの実が生っているいる樹に向かってダッシュしていく。

着物のようなメイド服を着ながらあれだけのスピードでよく走れるなとシーアが少し感心する。

 

(よいしょっと)

 

ラドリーが樹に登りミーカァンの実をもぎ取ろうとする。

 

 

【樹から降りろ、お嬢ちゃん】

 

(えっ?)

 

頭の中に変な声を聞こえ、ラドリーが反射的に樹から飛び降りる。

その瞬間、ミーカァンの実のへたに銃弾が当たり、ミーカァンの実が落ちていく。

 

(おっと)

 

ラドリーがそれをキャッチし、ミーカァンの実を手に取る。

 

「い、今の何!?」

 

だが、傍から見ていたハスキミリアは驚くよりほかなかった。

 

(お嬢様、どうぞー!)

 

ラドリーがとてとてとハスキミリアの元へと戻っていき、ミーカァンの実をハスキミリアに渡す。

ハスキミリアがまだ驚いている中、ラドリーはにこーっと笑いながら褒めてくれるのを待っている様子だった。

 

「あ、うん。ありがと、ラドリー」

 

ハスキミリアがラドリーの頭を撫でてあげると、ラドリーはぴょこぴょこと尻尾を振り、えへへと笑顔になる。

あの現象にはほとんど興味がなく、ただミーカァンの実をハスキミリアに渡すというお仕事をこなせてラドリーは満足しているのだろう。

 

「……今のは」

「ええ、相変わらずいい仕事ですね」

 

オディアナとシーアがそんな話をしているのをハスキミリアは聞き逃さない。

ミーカァンの実を手に持ったまま2人の方に顔を向ける。

 

「今の実が勝手に落ちていく現象、知ってるの?」

「知ってるというか、なんというか」

 

オディアナがどうハスキミリアに説明しようか考えていると、シーアが口をはさむ。

 

「まあすぐに来ますよ」

 

シーアがそれだけ言った数分後。

 

 

「おー、どうやら無事にミーカァンの実を手にしたようで何より、ぜよ」

 

銃弾が飛んできた方向から紫色の髪の毛が非常に目立つ、少々日焼けしたかのような肌の色をした男が飄々と笑いながら歩いてきた。

 

「え、えっとあなたは?」

 

ハスキミリアが突然歩いてきた男に戸惑いの目を向ける。

 

「相変わらずの腕前だな、ムゼロ」

「ふふ、褒められるのは嬉しいぜよ」

 

ムゼロと呼ばれた男はシーアと親しそうに話す。

 

「えっと、知り合いなの?」

 

ハスキミリアがオディアナに尋ねると、オディアナはこくりと頷く。

 

「彼の名はムゼロ。これから向かう『エイストール』の村に居を置いている凄腕のスナイパーです」

「スナイパー、ってことは」

「そう、あのミーカァンの実を傷つけず、へただけを的確に射貫いたんです」

「でも、銃声とか聞こえなかったよ?」

 

ハスキミリアが戸惑っていると、ムゼロがにこっと笑いかける。

 

「はは、結構離れたところで頼まれた獲物を探していたら、たまたまミーカァンの実を取ろうと頑張ってる可愛いメイドの子が見えたからな。さすがにあの服で樹を登ると服が汚れちまうからな、手助けしてやったんだぜよ」

 

そしてオディアナの姿を確認し、お辞儀をする。

 

「これはこれはオディアナ姫。このような場所に何の用で?」

「これから『エイストール』の村に視察に向かうところでした」

「視察? にしてはお供はシーアだけで……」

 

ムゼロが怪訝そうな目をシーアに向ける。

シーアがほんの一瞬ためらったのをムゼロは見逃さなかった。

 

「どうやら何かを隠しているみたいぜよ。どう説明しようかと困ったのが顔に見えたぜよ、シーア」

「……相変わらずの洞察力だな」

 

シーアが観念したようにつぶやく。

 

「オディアナ姫」

「……いいでしょう。お話しましょう」

 

オディアナが直々にアルトマ王城に起こった出来事を話す。

最初は半信半疑に聞いていたムゼロだったが、真剣な顔で話すオディアナを見つめていた。

その様子にどうやら嘘偽りはないと悟り、はぁと息を漏らす。

 

「なんてことだ。王城がそんなことになっているとは」

「だから王城を元に戻す方法を探しに魔法国家『エルディーム』を目指しているんです。そのついでにアルトマ王国領内の村にもアルトマ王城と同じ惨劇が起こっていないかを視察という名目で調べていたの」

 

オディアナが説明を終えると、ムゼロが更に大きな溜息をつく。

 

「確かにそれだけの大掛かりなこと、『デュエルモンスターズ』が抱えている『闇』か、それか大きな大魔術でもない限り出来はしないだろうな」

「オディアナ姫と私だけが無事だったからな」

「なるほどね、おおむね理解は出来たぜよ。で、この子は?」

 

ムゼロがハスキミリアに顔を向ける。

少しびくっとなったのを確認し、ムゼロがにこっと笑う。

その笑顔を見て警戒心を少し解き、ハスキミリアがぺこりと頭を下げる。

 

「私はハスキミリアと言います。ここから少し離れた場所にある屋敷に『ドラゴンメイド』たちと過ごしていたんですが、ある男に酷い目に遭わされていたのをオディアナ姫さんとシーアさんに助けられて。その時の2人の姿に感動して、私もオディアナ姫さんと同じように立派な主になりたいと思って同行してるんです」

 

ハスキミリアが少し早口で説明し、ぺこりと頭を下げる。

そのそばでドラゴンメイドたちが少しハラハラした顔でムゼロの返事を待つ。

 

(あれ、さっきまでオディアナさんって気楽に呼んでくれていたのに)

(おそらくムゼロがオディアナ姫に絶対な忠誠を誓っている立場の人だった場合、オディアナさんなんて気楽な呼び方してるって分かったら怒られると思ってるんだろうな)

 

オディアナとシーアがそんなことを考えていると、ムゼロがさっきと同じように屈託なく笑う。

 

「そうか。オディアナ姫は俺様のような者すら認めてくれて生きる場所を与えてくれた器のデカい姫だ。お嬢ちゃん、なかなか見る目があるぜよ」

 

そう言われハスキミリアが嬉しそうな顔をする。

そしてオディアナも間接的に褒められたようなものだったので少し照れていた。

 

「そういや、ムゼロが探してる獲物って一体?」

 

ハスキミリアが安心してミーカァンの皮を剥いて中の実を食べ始めた中、シーアがふと気になったことを尋ねた。

 

「ああ『エイストール』の村付近に巨大な熊が出てきたって騒ぎになったぜよ。その熊は『エイストール』の村付近の果物を食べてたんだが……たまたまビニールハウスに侵入して、そこで作業をしていた村人一人が襲われて重傷を負っちまったんだぜよ」

「命に別状は?」

「なんとか一命は取り留めた……だが、その熊は人の肉の味を覚えちまった。さすがに放置するわけにもいかなくなっちまったぜよ。で、この俺様のスナイプの腕を買われてその熊を探してんだ。で、探してる中でさっき説明した通りハスキミリアのお嬢ちゃんの傍にいるそこの青髪の、えーっと、『ドラゴンメイド』だったか」

(『ドラゴンメイド・ラドリー』です)

 

ラドリーがぺこりと頭を下げながら挨拶すると、ムゼロも頭を下げる。

 

「こりゃどうも。その子がミーカァンの実を取ろうとしていたがたまたま見えたからな、小さなお手伝いをしたってわけだ」

(そうだったんですね。ありがとうございました。おかげでお嬢様にミーカァンの実を手渡すことが出来ました)

「そりゃよかったぜよ」

 

ムゼロに笑みを向けられ、ラドリーもまた満面の笑みを向ける。

その様子にオディアナもシーアも微笑ましくなっていたが、シーアがすぐにいつもの顔になり、ムゼロに向き合う。

 

「しかし、ムゼロほどの目でも見つけられないとは、中々厄介だな」

「単に他の果物を探して移動したのかもしれないけど、ハスキミリアさんがミーカァンの実を取っていたから、この辺の果物はまだ荒らされてないってわけぜよ」

「ってことは」

「この近くにいるかもしれないな。よし、いったん『エイストール』の村に向かうまで同行するぜよ」

 

ムゼロが任せろと言わんばかりに胸をどんと叩く。

 

「それは頼もしいです」

「姫にそう言われたのなら、ますます期待に応えないといけないぜよ」

「おいおい、浮かれて失敗しないようにしてくれよ」

「もちろん。誰に向かって物を言ってんだシーア」

「これは失礼した」

 

シーアが素直に謝り、ムゼロは気にするなと言わんばかりの顔になる。

 

「じゃ、お願いします」

「おう、まかせなハスキミリアさん」

 

明らかに年下だろうに、それでもハスキミリアのことをさん付けする。

それはオディアナもシーアも同様だったが、ハスキミリア個人としてはちゃん付されるよりも、大人としてちゃんと向き合ってくれてる気がして嬉しかった。

 

 

ムゼロが先頭に立ち、辺りをきょろきょろと見渡す。

そのすぐ後ろに3人が立ち、歩いていく。

 

(あの)

 

ハスキミリアがムゼロに聞こえないように小さな声でオディアナに尋ねる。

 

(どうかしたんですか?)

(後ろからいきなり熊に襲撃を受けたら)

(大丈夫ですよ。ムゼロさんの目は私が知る中天下一品です。彼が様子を伺った後の場所はどこよりも安全な場所なんですから)

 

オディアナがそういうなら事実なのだろう。

ハスキミリアがそう信頼し、ムゼロの背中を見る。

何の迷いもなく歩いていく姿を見て、確かにオディアナとシーアの2人が信頼を向けるのが分かる姿だなと思った。

 

「……!」

 

ふとムゼロが立ち止まり、3人も同様に立ち止まる。

 

「北東から少し離れた場所。足音が聞こえちまったんだろう、来る。後ろから動くんじゃねーぜよ」

 

ムゼロの言葉にうなずき、3人が止まる。

それから数秒後。

ハスキミリアの数倍もあるほどの大きさの黒い熊が森の中から飛び出してきた。

 

そしてハスキミリアが驚きの声を上げようとした瞬間。

ムゼロがいつの間にか抱えていたマシンガンが火を吹く。

無数の銃弾が熊の体に向かって放たれる。

 

「グオオオオオッ!?」

 

視界に入っていたはずの人間からいきなり致死量の弾丸の雨を受けるとは思っていなかったのだろう。

熊が抵抗しようと腕を振り上げたのが最後の動きとなり、そのまま前のめりに倒れていった。

 

「……悪いな」

 

ムゼロがぽつりと呟き後ろを振り返る。

獲物をしとめ、嬉しがるわけでもなく、命を奪った苦しみに苛まれる顔でもなく。

どこか達観したような顔をしていたが、3人の方に向いたときにはそんな顔ではなく、安堵した顔を見せていた。

そしてどこかから取り出していたマシンガンもやはり消えており、それも疑問に思いつつハスキミリアがとあることを尋ねる。

 

「ねぇ、あの熊を本当に殺しても良かったの? もしかしたら別の熊ってことは」

 

ハスキミリアの質問に対して、ムゼロがほんの少しだけ考える。

 

「本来、熊は人に対して怯えを見せて、近寄ってこない。熊が人を襲うってのは、大抵人がばったり熊と出くわしてしまって、熊が防衛本能で人を襲うというのが真実ぜよ。だが、あの熊は人を襲ったことで人の血の味を覚え、自分が人に暴力を奮えばあの血がまた飲める。だからあの熊は怯えることも迷うこともなく俺たちの元に向かって歩いてきた。明確に襲おうという意思があった証拠ぜよ」

 

ハスキミリアに対してムゼロが説明をすると、ハスキミリアはなんとか納得してくれた。

 

「うん、分かった。ところで、そのマシンガンはどこから」

「はは、それならそこにいるシーアと同じ理屈さ」

 

ハスキミリアがシーアの方を見ると、いつの間にやらどこかから取り出した黒い槍を手にし、オディアナを守るように立っていた。

 

「相変わらずの腕前だな」

「そちらこそ。オディアナ姫だけじゃなく、王族を守る王族護衛隊長なんて呼ばれるようになり、本格的な戦いから離れ、姫と楽しく過ごしているから腑抜けているかと思っていたが、どうやら腕は鈍っていないみたいだな」

 

ムゼロとシーアがそんなことを言い合うと、お互いふっと笑う。

 

「まあとりあえず今は無事に獲物を討伐出来たんだ。これを村の連中に報告すれば安心してくれるぜよ。シーア、ちょうどいい。剣で熊の手を切り取ってくれ。倒した獲物の体の一部を見せれば村の連中も『もしかしたらまだ生きているんじゃ』という疑いもしないぜよ」

「分かった」

 

シーアが槍を消滅させ、代わりに剣を出現させ、遠慮なく熊の手首を切り取り、その手を取る。

 

「オーケー。さ、村に向かうぜよ。目的地は一緒だろうけど、近道とか知ってるし案内してやるぜよ」

 

血が滴り落ちる熊の手をムゼロが持参してきた袋に入れる。

そして何事もなかったかのようにムゼロが歩き出し、その後を3人が付いていく。

 

 

そしてムゼロが歩いていく道は本来オディアナたちが通ることを予想していなかった道だった。

整備されているというわけではないので少し歩きづらいのは確かだった。

だが、寄り道をしたにも関わらず本来予定していた到着時間よりも早く村に到着し、ムゼロの言っていた近道は何一つ嘘ではなかったことが分かった。

 

「じゃ、村長の所へと行くぜよ。姫様たちも視察という名目で来てるんだし、挨拶は必要だろ?」

「ええ、そうですね」

 

ムゼロは村に着くなり何の迷いもなく村長宅へと向かう。

 

「ムゼロ、無事に仕留めたのか?」

「おう、もちろんぜよ」

 

『エイストール』の村の人から声を掛けられ、ムゼロは笑顔で応える。

 

「って、おおお、オディアナ姫!? どうしてこの村に!?」

「何、姫様だと!?」

 

城下町や前の村でも似たような反応をされていたため、さすがのオディアナもこの反応には慣れてにっこりと微笑み返す。

そして村の視察が目的だと告げると、村人たちに少しだけ緊張が走る。

別に悪いことをしてなくても様子を伺うと言われたら人はどこか緊張してしまうものだ。

そんな反応を受けながら4人は村長宅へと向かっていく。

 

 

「村長さん、納得してくれたみたいで良かったぜよ」

 

ムゼロはやはり笑顔で村長宅を後にする。

ムゼロの話を聞き終わった村長は安堵し、何度もムゼロにお礼を言っていた。

 

「さてと、じゃ私たちは一泊したらまた次の村に行って目的地へと向かう」

「というわけで、ここでお別れですね。ムゼロさん、頑張ってくださいね」

 

シーアとオディアナ、そしてハスキミリアが宿屋へと向かおうとした瞬間、ムゼロが話しかける。

 

「あー、そのことなんだが。俺も付いていっていいか?」

「え!?」

 

その言葉を聞いて一番驚いたのはなぜかハスキミリアだった。

 

「まあ確かに女だけしかいなかったところにいきなり男が付いていっていいかと聞かれたら、そりゃそんな反応もするわな」

 

ムゼロはそう解釈したが、ハスキミリアは首を横に振る。

 

「ううん、ムゼロさんってこの村の人に慕われていたから、その村を捨てて私たちに付いていくっていうのが正直、少し意外で」

「別に村を捨てるわけじゃねーぜよ。オディアナ姫たちの旅が終わったらまたこの村に戻るつもりだぜよ」

「じゃ、どうして付いてくるって?」

「んー、ただ単に気になったから? それに、オディアナ姫を護衛するのがシーアだけというのが少々不安だぜよ」

 

ムゼロがそう言うと、シーアがぴくりと反応する。

 

「言うじゃないか、ムゼロ。構えろ」

「おっと、村の中で派手にドンパチしちゃ大問題ぜよ。ここはこれで」

 

ムゼロが手にデッキを出現させ、それを見たシーアが更に不敵に笑う。

 

「いいだろう、それでも負けるつもりはない」

 

シーアもデッキを出現させ、お互い構える。

 

(……シーアったら、単純な挑発に乗って)

 

オディアナが少し困った顔でシーアとムゼロを見る。

ハスキミリアはあわあわしてどう声をかけようか困っていた。

そんな2人を置き、お互いデュエルを開始する。

 

 

「「デュエル」」

 

「先攻は俺みたいぜよ。俺はカードを5枚伏せてターンエンドぜよ」

 

ムゼロ LP8000

 

魔法・罠:セットカード5枚

手札:0枚

 

「いきなりカードを全てセット!?」

 

ハスキミリアが驚いている中、シーアがカードを引く。

 

「私のターン、ドロー」

「ドローした瞬間に罠カード『強欲な瓶』発動。何もないみたいだからチェーンして『八汰烏の骸』、さらにチェーンして速攻魔法『ご隠居の猛毒薬』さらにチェーンして『積み上げる幸福』、そして最後に『連鎖爆撃』発動だ」

「え、いきなりドローフェイズに5枚すべて発動させちゃったよ!?」

 

ハスキミリアが驚いている中、処理を進めていく。

 

「チェーン5の『連鎖爆撃』の効果。このカードも含め、積み上げたチェーンは5。そのチェーンの数×400ポイント相手にダメージを与える。2000ダメージだぜよ!」

 

シーアの体に鎖が巻きつき、その鎖が一気に大爆発を起こす。

 

「シーアさん!?」

「安心しな、お嬢さん。シーアほどなら死にやしないさ。そしてチェーン4の『積み上げる幸福』の効果で2枚ドロー。そして『ご隠居の猛毒薬』の効果で800ダメージを与え、そして『八汰烏の骸』と『強欲な瓶』の2枚は両方ともカードを1枚ドローする効果がある罠カード。よってそれぞれの効果で1枚ずつドローし、合計2枚ドローぜよ」

 

ムゼロが手にした薬を投げ込み、爆発が更に大きくなった。

 

「わわわっ」

「……やってくれるな」

 

爆発の煙が晴れていく。

その煙の中、シーアが堂々と立っていた。

 

シーア LP8000→6000→5200

 

「さすが。『デュエルモンスターズ』……というより『闇』に寄り添う人間ぜよ。傷がついても治っていくな」

 

事実、ムゼロの言葉通りシーアは傷ついていたがみるみると傷が塞がっていく。

『デュエルモンスターズ』がシーアを気遣い、傷を治療してくれているのだ。

 

「いや、さすがに痛すぎるぞ」

「悪い悪い。だが、この村には俺以外にデュエルが出来る人はいないし、そもそも俺が遠慮なく力をぶっぱなしても壊れないのはシーアぐらいぜよ。さぁ、そちらの力も見せてくれよ」

 

ムゼロもまたシーアと似たような不敵な笑みを浮かべ、シーアを見る。

そのシーアもまた好戦的な目をムゼロに向けていた。

 

「ああ、私もムゼロ相手には遠慮する気はない。容赦なくいかせてもらうぞ!」

 

 

ムゼロに挑発され、かつ容赦のない先制攻撃。

 

 

これだけの仕打ちを受け、闘志に火が付かないシーアではなかった。

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