遊戯王 神秘眼の姫君   作:ヴィルティ

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射撃者VS魔術師

「さて、あれだけのことをしてくれたんだ。早速行くぞ。手札から永続魔法『星霜のペンデュラムグラフ』発動。そしてペンデュラムスケール5の『慧眼の魔術師』とスケール2の『賤竜の魔術師』をペンデュラムゾーンにセッティング。そして『慧眼の魔術師』のペンデュラム効果発動。このカードを破壊してデッキからこのカード以外の『魔術師』ペンデュラムモンスターをペンデュラムゾーンに置く。デッキから『虹彩の魔術師』をセッティング」

 

慧眼の柱が虹彩の魔術師に変更された瞬間に『星霜のペンデュラムグラフ』のカードが光る。

 

「『星霜のペンデュラムグラフ』は1ターンに1度『魔術師』ペンデュラムモンスターがフィールドから離れた場合、デッキから『魔術師』ペンデュラムモンスター1体を手札に加える。私が加えるのは『調弦の魔術師』だ。そしてペンデュラム召喚! EXデッキより甦れ『慧眼の魔術師』よ、そして手札からは『調弦の魔術師』よ、やってこい」

 

シーアのEXデッキと手札からそれぞれ2体の魔術師が飛び出していく。

そして調弦の魔術師は手にした巨大音叉をがんがんと叩き、協和音を鳴らす。

 

「『調弦の魔術師』は手札からペンデュラム召喚に成功したとき、デッキから『魔術師』ペンデュラムモンスターを効果を無効にして特殊召喚する。出でよ『黒牙の魔術師』。そして私はLV4の『慧眼の魔術師』とLV4の『黒牙の魔術師』の2体でオーバーレイネットワークを構築! エクシーズ召喚。出でよ『星刻の魔術師』」

 

星と時を模した黒いローブを着た魔術師が現れ、杖をムゼロに向ける。

 

「そして『星刻の魔術師』の効果発動。デッキから闇属性、魔法使い族モンスター1体を手札に加えさせてもらう。デッキから『アストログラフ・マジシャン』を手札に加える。そして『虹彩の魔術師』のペンデュラム効果を発動。私の場の『星刻の魔術師』はこのターン、相手モンスターと戦闘して与える戦闘ダメージを2倍にする」

「だけど、別に俺の場のモンスターが存在しているわけじゃねぇ。狙いは別にあるんだろ?」

 

ムゼロが不敵な表情で尋ねると、虹彩の魔術師の柱が破壊される。

 

「その通り。『虹彩の魔術師』はペンデュラム効果を使うと破壊される。そして破壊された時、デッキから『ペンデュラムグラフ』と名の付くカード1枚を手札に加える。手札に加えるのは『時空のペンデュラムグラフ』だ。早速バトルフェイズだ」

 

慧眼の魔術師が杖を構え、星刻もまた同様に杖を構える。

杖を向けられているというのに、ムゼロは余裕そうな顔だ。

 

「『慧眼の魔術師』でダイレクトアタック」

 

慧眼の魔術師の杖から光の球が放たれ、それがムゼロのお腹に直撃する。

 

「おっと」

 

ムゼロは少々よろめきこそしたものの、特に慌てる様子はない。

 

ムゼロ LP8000→6500

 

「次に『星刻の魔術師』で攻撃だ!」

 

星刻の魔術師の杖からも闇の球が放たれ、先ほど光の球がぶつかったところに闇の球が直撃する。

 

「なかなかいい攻撃じゃねぇかぜよ」

 

ムゼロ LP6500→4100

 

「あのムゼロって人……特に痛がっている感じしないね」

 

ハスキミリアが隣に立つオディアナに耳打ちする。

実際の所一瞬でシーアが受けたダメージ以上のダメージをムゼロに与えている。

だが、ムゼロはそれなのに特に慌てた様子を見せていない。

それがハスキミリアにとっては少し不気味に思えたのだ。

 

「うん、そうですね。でも、ムゼロさんには何か考えがあるんでしょう。特に何も考えてないというわけではないでしょうし、怖がらなくても大丈夫ですよ」

 

オディアナにそう諭され、ハスキミリアが頷く。

 

「なかなかの威力だな」

「そう効いてない感じで言われてもそうは思えないな」

 

ムゼロが軽口を叩くのに対し、シーアは少し憮然とした感じで返す。

 

「まあいいじゃねぇか。さて、バトルフェイズは終わったみたいだが、どうするぜよ?」

「決まっている。メイン2、カードを2枚伏せてターンエンド」

 

シーア LP5200

 

モンスター:星刻の魔術師

EXモンスター:慧眼の魔術師

魔法・罠:賤竜の魔術師 星霜のペンデュラムグラフ セットカード2枚

手札:2枚

 

「さて、俺のターン、ドロー。俺は手札から魔法カード『強欲で金満な壺』を発動するぜよ。EXデッキから3枚除外するごとに1枚ドロー、そしてそれは6枚まで選べる。当然俺は6枚をランダムで除外させてもらうぜよ」

 

ムゼロが何のためらいもなくEXデッキのモンスターを除外していく。

 

「相変わらず何のためらいもないな」

「どうも。そして2枚ドロー。さて、俺は『星刻の魔術師』と『慧眼の魔術師』の2体をリリースしシーアの場に『溶岩魔神ラヴァ・ゴーレム』をプレゼントしてやるぜよ」

 

シーアのモンスターゾーンの中央に穴が開き、その穴の中に慧眼の魔術師と星刻の魔術師が吸い込まれていく。

そしてその穴の中からマグマが噴き出し、そして檻の中にシーアが閉じ込められ、その檻を大事に抱えて離さないようにマグマの魔神がシーアの場に出現した。

 

「シーアのモンスター2体をリリースして特殊召喚された!?」

「確かに攻撃力の合計だったらシーアさんのモンスターの総攻撃力を上回ってるけど、それでも攻撃力3000のモンスターだよ!」

 

オディアナもハスキミリアもいきなり現れた溶岩の魔神に驚きを隠せないでいた。

 

「そして手札から魔法カード『ミスフォーチュン』を発動。相手の場のモンスター1体を対象にして発動する。その対象となったモンスターの攻撃力の半分のダメージを与えるぜよ」

 

ムゼロが手をかざすと同時にラヴァ・ゴーレムの体からマグマが垂れ落ち、シーアの体を焼く。

 

「あつつつっ!?」

 

シーア LP5200→3700

 

「そしてカードを3枚セットしてターンエンドだぜよ」

「エンドフェイズにセットしておいた永続罠カード『時空のペンデュラムグラフ』を発動させてもらう。『賤竜の魔術師』と一番右に伏せたカードを破壊させてもらう」

 

シーアの場の『時空のペンデュラムグラフ』が怪しい光を放つと、賤竜の魔術師の柱が砕け散り、その破片がムゼロがセットしていたカード1枚に突き刺さり、容赦なく破壊した。

 

「チッ『和睦の使者』がやられたぜよ」

「よし。そして『星霜のペンデュラムグラフ』の効果発動。デッキから『慧眼の魔術師』を手札に加えよう」

 

シーアの場の『星霜のペンデュラムグラフ』が優しい緑色の光を放つと、その光の中から『慧眼の魔術師』のカードが現れ、シーアが手に取る。

 

「そして私のターン、ドロー」

「スタンバイフェイズに『溶岩魔神ラヴァ・ゴーレム』の効果が発動する。このカードのコントローラーのスタンバイフェイズに1000ダメージを与えるぜよ」

 

先ほどと同じようにラヴァ・ゴーレムの体の上から溶岩が垂れていき、シーアの背中に直撃する。

 

「だからさっきから熱いって!」

「いや、シーアぐらいの『闇』の適応力のおかげで熱いぐらいで済んでるぜよ。王族の護衛隊長という立場に立って心が生温くなってないか心配していたが、どうやら心配ないようでよかったぜよ」

 

シーアの文句に対してムゼロはどこか安心したような顔でシーアがマグマを浴びるのを見ていた。

 

シーア LP3500→2500

 

「そして罠カード『仕込みマシンガン』発動ぜよ! シーアの手札と場のカードの合計だけダメージを与えるぜよ」

 

ムゼロが左手をかざすと『闇』が左手に集まり、マシンガンの姿となる。

そして容赦なくシーアに向かって銃弾の雨を浴びせる。

 

「そう何度もしてやられるわけがないだろう。罠カード『ホーリーライフバリアー』を発動。手札1枚を捨ててこのターン相手から受ける全てのダメージを0にして、戦闘によってモンスターは破壊されない」

 

シーアの周りを光のバリアが包み込むが、その光はどこか澱んでいた。

光が純粋に綺麗だったなら、このバリアが何度もオディアナの身を守るためにシーアが張ってくれているバリアだということにオディアナは即座に気づけたはずだった。

だが、そのバリアはムゼロの銃撃を弾き飛ばすのではなく吸収し、跳弾することによって関係ない別の人が傷つくのを防いでいた。

 

「仕留めきれなかったぜよ」

「残念だったな。もっとも、ラヴァ・ゴーレムは不本意ながら私のカード扱いとなるからダメージは防げなかったがな。それと『ホーリーライフバリアー』に対してチェーン発動しなかったということは、どうやらフリーチェーンで私にダメージを与えられるカードというわけではなさそうだな」

 

得意そうにシーアが宣言すると、ムゼロの眉間がぴくっと、ほんのわずかだが動いた。

それは図星、だということがシーアに分かり、シーアがにっと笑う。

 

「なら行こうか。私はペンデュラムスケール5の『慧眼の魔術師』とペンデュラムスケール2の『刻剣の魔術師』をペンデュラムゾーンにセッティング。そして『慧眼の魔術師』を破壊してデッキから『黒牙の魔術師』をセッティング。そして『慧眼の魔術師』が破壊されたことで『星霜のペンデュラムグラフ』が発動し、それにチェーンして『アストログラフ・マジシャン』の効果発動。『アストログラフ・マジシャン』を特殊召喚し、『慧眼の魔術師』の3枚目を手札に加え、星霜の効果で『紫毒の魔術師』を手札に加えよう。そしてペンデュラム召喚! EXデッキからいでよ『虹彩の魔術師』、そして手札から出でよ『紫毒の魔術師』『慧眼の魔術師』」

 

シーアの手札から一気に3体の魔術師が飛び出していく。

先ほどのアストログラフと合わせて合計4体の魔術師が一気にシーアの場に並んだ。

 

「すごーい!」

「さすがはシーアですね」

 

ハスキミリアもオディアナも素直にシーアの大量展開を喜び、笑顔を見せた。

その笑顔に答えるようにシーアも一瞬笑顔でハスキミリアとオディアナを見たが、すぐにキリッと真剣な顔をムゼロに向けた。

 

「なんだ、そんな顔も出来るんじゃねぇかぜよ」

 

だが、2人に笑顔を向けていたのをムゼロは見逃していなかった。

そしてそれを指摘されたシーアがみるみる顔を赤くしていく。

 

「う、うるさいな」

「いいじゃねぇか、別に。シーアの妹も今のシーアの笑顔を見たらどんな反応をするだろうか」

「ええい、私を動揺させようという作戦か!? これ以上は無駄話をする気はない! 私はLV4の『虹彩の魔術師』と『慧眼の魔術師』の2体でオーバーレイネットワークを構築。エクシーズ召喚。出でよ『Em トラピーズ・マジシャン』」

 

きゃはきゃは笑いつつも、どこか不気味さすら感じさせる笑みを浮かべた魔術師がシーアの場に降り立つ。

 

「トラピーズ・マジシャンの効果。オーバーレイユニットを1つ取り除いてモンスター1体を対象にして発動する。対象となったモンスターは2回攻撃できるが、バトルフェイズ終了時に破壊される。対象にするのは当然ラヴァ・ゴーレムだ」

 

トラピーズ・マジシャンがラヴァ・ゴーレムに向かって手をかざす。

手から放たれた紫色の光がラヴァ・ゴーレムを包み込み、ラヴァ・ゴーレムのぬぼーっとした顔がどこか興奮したようなり、ぬほぬほ言い出した。

 

「やる気満タンみたいだな。早速バトルフェイズだ。行けラヴァ・ゴーレム!」

 

ラヴァ・ゴーレムがシーアを捕らえていた檻から手を離し、ムゼロを叩き潰すべくぬるぬると近づいていく。

 

『ぬほぬほーっ!』

 

ラヴァ・ゴーレムが雄たけびを上げながら緩やかにムゼロに近づいていく。

 

(さてと、伏せカードは『業炎のバリア―ファイヤー・フォース―』。まあ、ここまでだな)

 

ムゼロが顔を上げると、自身がシーアに送りつけたラヴァ・ゴーレムが腕を振り上げていた。

元々の持ち主がムゼロとはいえ、シーアに渡されたためシーアの命令を裏切るわけにいかないラヴァ・ゴーレムにためらいはなかった。

ラヴァ・ゴーレムが容赦なく右腕を振り下ろし、ムゼロを叩き潰した。

 

「ぐへぇ、熱いぜよ!」

 

ムゼロ LP4100→1100

 

「もう一回だ!」

 

そしてもう片方の腕も振り上げられ、少しよろめいていたムゼロに対して遠慮なく振り下ろされた。

 

「ぎゃああああああああっす!?」

 

ムゼロ LP1100→0

 

 

「いやー、遠慮しねぇなシーアは」

「最初に遠慮なくダメージを与えてきたのはムゼロだろうが」

 

ムゼロとシーアがそれぞれの戦いにおいて思ったことを述べあう。

 

「そういや、シーアさんとムゼロさんってお知り合いなんですか?」

「ええ。ムゼロさんは元々はこの国の出身ではなく、別の国の出身なんですよ。さっきのように銃器を取り出して狙撃することが出来るんですが、その力を忌み嫌った両親に殺されかけて、逆に返り討ちにしたんです」

 

オディアナがはぁと溜息をつき、ハスキミリアが思わず口元を手で抑えた。

あの軽い態度の裏に、そんな重い過去があったなんて想像もしていなかったのだろう。

 

「そんな彼は両親のわずかな財産で食いつないでいたんですが、その財産も切れて、親殺しの罪で別の国から放たれた追っ手から逃げてきてこの国に流れ着き、死にかけていたところをたまたまシーアが見つけたらしくて。で、どういうわけかはシーアもムゼロさんも話はしてくれませんが、なんか色々あったらしくてなんとか生き延びることが出来たんですよ」

「おっと、オディアナ姫、その過去話はあんまりしてほしくないんですがね」

「すみません、ハスキミリアさんがどうして私とシーアと顔見知りだったのか気になったらしくて」

 

オディアナがきっぱりと言うと、ムゼロは少しだけ困った表情をする。

ハスキミリアがどうしようか考えているとムゼロが口を開く。

 

「まあその過去は話したくなったら話すぜよ。で、シーアがたまたまアルトマ王城にいたとき、オディアナ姫と仲良くなってそのまま城の衛兵になったんだ。で、俺はまた一人になるのかと思ったけど、シーアはどうやら俺のことをオディアナ姫に話したらしく。過去に親を殺したとはいえ、死にそうな思いをしたこと、そして命の危機に瀕したことで過去の過ちは清算されただろうと判断した、そうですよね」

 

ムゼロがオディアナに顔を向けると、オディアナはこくんと頷いた。

 

「ええ。親に命を狙われて辛い思いをして、自分の身を守るために抵抗した結果、実の親を殺してしまった。この国だったら正当防衛になる。だけどもムゼロさんの国では親殺しを責め立てられ命を狙われ続けてましたからね。命を狙われ続けるという辛い思いをさらに味わっているのだから、もういいだろう、ということで」

 

オディアナがムゼロに顔を向けると、再びムゼロが口を開く。

 

「そしてこの国で暮らす民になっているのだから、その民に安定した暮らしをさせないといけない、ということでアレン国王は俺を何でも屋の狙撃者として『エイストール』の村の人たちに説明し、この村に家を与えてくれた。そして村人たちから受け入れられるかどうかはあなたの働き次第ですよ、と言われ、村人たちから頼まれる依頼事をこなし、今では困ったことがあったら真っ先に俺に相談してくれるぐらいに信頼関係は築き上げられたのさ」

 

ムゼロが説明を終えると、ハスキミリアに真剣な顔を向ける。

 

「だからこそ俺はこの国には恩がある。その国が大変な目に遭ってて、助けたいと思う。だから旅についていきたい。女3人旅に男が混じるのは不安だろうし、俺の過去は汚いものだが……それでも受け入れてくれるかぜよ?」

「……正直に言えば、すぐに受け入れるのは難しいですけど。それでもオディアナ姫さんとシーアさんが信頼を寄せているのだから、私も信じてみようと思います」

「ん、そっか。なら、その信頼を裏切らないようにしないといけないぜよ」

 

色々な人と信頼関係を作り上げていくのは、もう何度も経験してるからな、とムゼロは言い、ぺこりと頭を下げた。

 

「で、今日は一泊して、明日に出発するんだろう?」

「うん、そのつもりです」

「だったら、俺はこの村の家に寝て、3人は宿屋に泊まればいいぜよ。俺も旅支度とかあるし。ただ、勝手に村を出ていくというのはやめてほしいぜよ」

「そんなことしないですよ」

 

オディアナがきっぱりというと、ムゼロがにっと笑う。

 

「オディアナ姫がそういうなら心配いらねぇぜよ。では、これでいったん失礼するぜよ」

 

ムゼロが手を振り、自分の家に向かって歩いていった。

 

そしてオディアナたち3人も村の宿屋に泊まり、歩きで溜まった疲れを癒した。

 

 

そして翌朝。

村の入口にすでにムゼロは立っており、オディアナたち3人がムゼロと合流した。

 

「すでに村人たちには俺が姫の護衛を務めるということは説明してありますので、問題ないぜよ」

「そうでしたか。では、改めて行きましょうか」

「ええ」

「うん」

 

 

こうして、新たな仲間が加わりオディアナたちの旅は続くのであった。

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