「先攻は俺様からだ。俺様は『マシンナーズ・ギアフレーム』を召喚」
オレンジ色の人型の機械素体が出現し、コソ泥男の場に降り立つ。
「ギアフレームが召喚に成功したとき、デッキから『マシンナーズ』モンスター1体を手札に加えることが出来る。俺様が手札に加えるのは『マシンナーズ・アンクラスペア』。そしてアンクラスペアはカード効果で手札に加わった時、手札から特殊召喚することが出来る!」
ゆらりと不気味なオーラが揺れる。
漆黒に染まった機体が銃を持ち、シオンに銃口を向ける。
「アンクラスペアは召喚、特殊召喚に成功したとき、デッキから『マシンナーズ』モンスター1体を墓地へ送ることが出来る。俺が送るのは『マシンナーズ・カーネル』だ。そして俺はLV4のギアフレームとアンクラスペアでオーバーレイ。2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築。エクシーズ召喚。出でよ『ギアギガントX』!」
歯車が組み合わさり、器用に動く機械人形がコソ泥の場に出現する。
「ギアギガントXのオーバーレイユニットを1つ取り除いて効果発動だ。デッキからLV4以下の機械族モンスター1体を手札に加える。『マシンナーズ・ギアフレーム』を手札に加える。そして俺様はカードを1枚伏せてターンエンドだ」
コソ泥 LP8000
モンスター:ギアギガントX
魔法・罠:セットカード1枚
手札:4枚
「あの男」
「ああ、下級モンスターを利用してサーチと墓地肥やしを上手いこと両立させていた。結果として手札消費1枚で攻撃力2300のエクシーズモンスターが場に残ったぜよ」
「シオンさん、大丈夫でしょうか?」
シーアたちが心配な目で見る中、シオンのターンが始まる。
「私のターン、ドロー。私はペンデュラムスケール8の『メタルフォーゼ・ヴォルフレイム』と『レアメタルフォーゼ・ビスマギア』をセッティング」
シオンが手札から2枚のペンデュラムカードをセッティングする。
「おいおいおい、両方ともペンデュラムスケール8じゃペンデュラム召喚が出来ないぜ」
「ええ、あなたに言われなくても分かっています。私は『レアメタルフォーゼ・ビスマギア』のペンデュラム効果を発動します。ヴォルフレイムを破壊することでデッキから『メタルフォーゼ』と名の付く魔法・罠カード1枚をセットします」
ビスマギアのカードが置かれた場所から発生した光の柱からヴォルフレイムのカードが置かれた光の柱に向かって炎が放たれる。
その炎が柱に直撃し、柱がパリンと音を立てて割れ、その光の破片が『メタルフォーゼ・コンビネーション』のカードに変化しセットされた。
「デッキから『メタルフォーゼ・コンビネーション』をセットします。そしてペンデュラムスケール1の『メタルフォーゼ・ゴルドライバー』をセッティングします。ペンデュラム召喚! EXデッキより再錬成せよ『メタルフォーゼ・ヴォルフレイム』!」
白く巨大なキャタピラ車。
それが重厚な音を立ててシオンの場を走り込み、ヴォルフレイムが見参する。
「そしてバトルフェイズ。ヴォルフレイムで『ギアギガントX』に攻撃!」
ヴォルフレイムが勢いよく走りこんでいき、歯車で出来た機械の巨人を吹っ飛ばす。
「チッ」
コソ泥 LP8000→7900
「だが、俺はタダじゃやられねぇぜ。地属性・機械族モンスターが破壊されたことで墓地の『マシンナーズ・カーネル』の効果発動。墓地から再起動せよ『マシンナーズ・カーネル』!」
ギャリギャリギャリ。
地の底から金属同士が擦り合う嫌な音が響き渡る。
その音と共に地面が割れ、巨大なチェーンソーを腕に装備した青き機械巨人が出現する。
「モンスターが戦闘破壊されただけで墓地から攻撃力3000のモンスターが飛び出してくるなんて」
ハスキミリアが驚愕しながらコソ泥の場に現れたマシンナーズの機械大佐を見つめる。
機械大佐からは感情は感じられないが、シオンに対する殺意みたいなコードがプログラミングされているのか、チェーンソーが不気味な音を立てて稼働する。
「……大丈夫。私の妹は自信がないときに闘いを挑むような子じゃないよ」
だが、シーアは妹を信用してるのかゆるぎない信頼の眼差しでシオンの場を見ていた。
「メイン2。私はカードを1枚伏せて、ゴルドライバーのペンデュラム効果を発動するよ。ビスマギアを破壊してデッキから『メタルフォーゼ・カウンター』をセットするよ。そして破壊されたビスマギアの効果発動。エンドフェイズに『メタルフォーゼ』モンスター1体を手札に加えます。そのままターンエンドしてデッキから2枚目のビスマギアを手札に加えます」
シオン LP8000
EXモンスター:メタルフォーゼ・ヴォルフレイム
魔法・罠:セットカード3枚 メタルフォーゼ・ゴルドライバー
手札:3枚
「次は俺様のターンだ。ドロー」
コソ泥が手札を引き、にやりと笑う。
「俺様は『マシンナーズ・ギアフレーム』を召喚し、その効果でアンクラスペアを手札に加える」
先ほどと全く同じ流れがコソ泥の場で再現される。
だが、違うのはアンクラスペアの効果で落とされたカードだ。
「俺はアンクラスペアの効果でデッキから『マシンナーズ・ルインフォース』を墓地へ送る。そしてギアフレームとアンクラスペアの2体でオーバーレイネットワークを構築。エクシーズ召喚。出でよ『ギアギガントX』」
だが、それ以外は結局さっきと同じ動きしかしてこなかった。
ギアギガントXの効果で手札に加えられたのはデッキに眠る最後の『マシンナーズ・ギアフレーム』だった。
「俺様は墓地の機械族モンスターのLVの合計が12以上になるように除外し、墓地の『マシンナーズ・ルインフォース』を特殊召喚する」
墓地のギアフレーム2体とアンクラスペアの素体がコソ泥の場に浮かび上がる。
アンクラスペアのボディから放たれていたどす黒いオーラが広がっていき、キャタピラを足とし、カーネルよりも巨大な闇の破滅機械が稼働を始めた。
「攻撃力4600のモンスターをたった墓地の機械族モンスター3体を除外することで特殊召喚するなんて」
「つ、強すぎる」
オディアナもハスキミリアも攻撃力が大量に上がっているモンスターの大量展開に驚き、目を見開く。
「さぁ、バトルフェイズに入ろうか」
「バトルフェイズに入る前に私は罠カードを発動させてもらいます。『バージェスマ・ディノミスクス』です。『マシンナーズ・ルインフォース』を除外させてもらいます」
シオンの場からうねうねとした白き触手を持つ謎の生命体が出現し、ルインフォースに絡みつく。
だが、その瞬間カーネルがチェーンソーを振り上げた。
「カーネルの効果を発動させてもらうぜ。俺の場の機械族モンスター1体を破壊し、破壊したモンスターの攻撃力以下の相手モンスターをすべて破壊する。ルインフォースの攻撃力は4600。よって4600以下のモンスターを全て破壊してもらうぜ」
カーネルがチェーンソーでルインフォースの体をバラバラにしてしまった。
だが、そのバラバラになった破片から闇が放出され、その闇がヴォルフレイムを飲み込み闇の中へと引きず込み消滅させてしまう。
「そして俺の場のルインフォースが効果で破壊されたことで除外されている『マシンナーズ』モンスターを3体選んで特殊召喚する。俺が特殊召喚するのはコストにしたギアフレーム2体とアンクラスペアだ」
ルインフォースの残した闇からギアフレーム2体とアンクラスペアがぬるりと這い出す形で現れ、コソ泥の場が機械兵士たちで埋まる。
「さぁ、こいつらで一斉攻撃すればLPが尽きるぜ……何っ!?」
だが、コソ泥は目を剥いて驚いていた。
ルインフォースの闇に飲み込まれがら空きになったはずのシオンの場に、翼を生やした赤き鋼の兵士が立っていたのだから。
「私の場のカードが破壊されたことで『メタルフォーゼ・カウンター』を発動しました。そしてその効果でデッキから『メタルフォーゼ・バニッシャー』を特殊召喚しました。そしてバニッシャーは『メタルフォーゼ』のカードの効果で特殊召喚に成功した場合、相手の場か墓地のモンスター1体を除外します。除外するのは当然『マシンナーズ・カーネル』です」
バニッシャーが翼を広げると、その翼から赤き灼熱の波が放たれた。
その灼熱の波が機械大佐の体を一瞬で溶解し、消滅させた。
「ぐっ、この」
コソ泥が歯噛みし、カーネルを除外する。
「すごい、シオンさん! カーネルをあっさりと除外しちゃった」
「ああ。破壊しても復活するなら除外すればいい。そうすりゃ復活する流れを断ち切れるぜよ」
ハスキミリアもムゼロも感心してる中、シーアはシオンの顔をじっと見る。
シオンは余裕そうな態度をしているが、首筋に一筋の汗が流れてるのが見えた。
おそらく、結構ギリギリだったのだろう。
ディノミスクスがなければこの流れは成立していなかったのだから。
「だが、甘いぜ。罠カード『機甲部隊の超臨界』を発動する。その効果でデッキから『マシンナーズ・カーネル』を特殊召喚して場のギアフレーム1体を破壊する」
だが、たった1枚の罠カードの効果でカーネルがデッキから出現し、再びシオンの場のバニッシャーを睨みつける。
「くっ、あっさりと2枚目のカーネルを特殊召喚するなんて」
「予定とは食い違ったが、改めてバトルフェイズだ。カーネルでバニッシャーに攻撃!」
先ほど解かされた別機体が復讐を言わんばかりにチェーンソーでバニッシャーの体を切り裂く。
「くうううっ!」
シオン LP8000→7900
「続けて3体のモンスターでダイレクトアタックだ!」
ギアギガントX、ギアフレーム、アンクラスペアがそれぞれシオンの体に向かって攻撃を放つ。
「俺様の力、その身で味わえ!」
ほんの一瞬、シオンの体がゆらりと揺れる。
その違和感にシーア以外気づくことなく機械兵3体の攻撃をモロに受けた。
「ううっ」
シオン LP7900→2000
シオンはマシンナーズ2体とギアギガントXの攻撃を受けつつもほんの少しよろめいただけで、コソ泥をきっと睨みつける。
「あれだけの攻撃を受けて、立ってられるなんて。さすがはシーアさんの妹だね」
ハスキミリアが闘う姿勢を一切崩さないシオンを見てキラキラとした目でシオンを見つめる。
カーネルを除外し有利になった流れを一瞬で崩され一気に大ダメージを受けても、闘うという意思を崩さない。
その姿勢がハスキミリアには眩しく見えたのだ。
だが、当然闘う意思があれで無くなるだろうと思っていたコソ泥からしたら面白くはなかった。
「チッ……俺はギアフレームのユニオン効果発動。カーネルに装備する。そしてカードを1枚伏せてターンエンド」
コソ泥 LP7900
モンスター:マシンナーズ・カーネル マシンナーズ・アンクラスペア ギアギガントX
魔法・罠:セットカード1枚
手札:3枚
「私のターン、ドロー」
シオンがカードを引き、コソ泥の場を睨みつける。
「なんだ、その目は」
「私は墓地の魔法カード『錬装融合』をデッキに戻して1枚ドローします」
「何、そんなカードをいつの間に……あっ」
先ほどのディノミスクス。
その効果を発動するとき、手札を1枚捨てる。
その時のコストにそのカードを墓地へ落としていたのか。
「1枚ドロー。そしてカーネルには消えてもらいます」
シオンがそう告げた瞬間。
カーネルの背後に闇の穴が開き、その中から現れた手に掴まれ闇へと引きずり込まれる。
「何っ!?」
「カーネルをリリースし『多次元壊獣ラディアン』を特殊召喚します」
(ケケッ)
ラディアンがケラケラ笑いながらシオンを見下ろす。
(いい仕事しただろ?)
「うん。ありがとう。そして私は『メタルフォーゼ・コンビネーション』を発動・ゴルドライバーの効果で『メタルフォーゼ・コンビネーション』を破壊してデッキから『錬装融合』をセットします。そして破壊されたコンビネーションの効果でデッキから『メタルフォーゼ』モンスター1体を手札に加えます。『パラメタルフォーゼ・メルキャスター』を手札に加えます。そして魔法カード『錬装融合』を発動します。手札のメルキャスターとビスマギアの2体で融合。出でよ『メタルフォーゼ・ミスリエル』」
女性型の戦士が小型ロケット装置と翼をつけ空中を飛翔する。
シオンを一瞬だけ見た後、お互い頷きコソ泥を睨みつける。
「ミスリエルの効果発動。墓地の『メタルフォーゼ・コンビネーション』と『錬装融合』とラディアンを対象にするわ。2枚の墓地のカードは私のデッキに、そしてラディアンは手札に戻るわ。当然ラディアンは私のカードだから私の手札に戻るわ」
ラディアンがシオンの手札に戻っていく。
「俺のモンスターを除去した挙句手札に……」
「そして魔法カード『混錬装融合』を発動! 場、手札、そしてEXデッキで表側表示になっているペンデュラムモンスター1体をそれぞれ1枚だけ墓地へ送ることで融合召喚を行います。場のミスリエルとEXデッキの『メタルフォーゼ・ヴォルフレイム』を墓地へ送り『メタルフォーゼ・オリハルク』を融合召喚します」
巨大な斧を手にした男型の戦士が出現し、そのそばにバニッシャーが現れる。
「ミスリエルの効果。このカードが墓地へ送られた場合、EXデッキで表側表示となっている『メタルフォーゼ』モンスター1体を特殊召喚します。そしてバニッシャーがメタルフォーゼの効果で呼び出されたことで、墓地の『マシンナーズ・カーネル』を除外します」
灼熱波がコソ泥の墓地まで届き、2枚目のカーネルも除外された。
「くそおおっ!」
「これでカーネルの蘇生は問題ありません。手札から魔法カード『サンダー・ボルト』を発動し、あなたの場のモンスターをすべて破壊します」
アンクラスペアとギアギガントXが稲妻に打たれ、一瞬でショートし爆発四散した。
これで完全に場ががら空きとなった。
「そして『メタルフォーゼ・スティエレン』をペンデュラムスケールにセッティング。ペンデュラム召喚! 手札から来て『多次元壊獣ラディアン』」
ラディアンのLVは7。
スティエレンのスケールは8であり、ゴルドライバーのスケールは1。
よってラディアンを手札からペンデュラム召喚することは容易いことである。
「さぁ、バトルフェイズ。私とお姉ちゃんの村に手を出そうとした報い、受けなさい! オリハルク、バニッシャー!」
バニッシャーがその灼熱波をオリハルクの斧に乗せ、斧でコソ泥の体を切りつける。
「ぐあああああっ!?」
コソ泥 LP7900→5000→2200
「トドメをお願い、ラディアン!」
(ああ、モチのロン)
ラディアンが地面に闇の穴を開き、その中に手を突っ込む。
そしてコソ泥の足元に闇が広がり、闇から現れた手に掴まれる。
(ジ・エンド)
ラディアンが呟き遠慮なくコソ泥の体を握りつぶした。
コソ泥は叫ぶことすらなく、その身を砕かれ地面へと放り投げられた。
コソ泥 LP2200→0
「が……あっ」
コソ泥がよろよろと立ち上がるが、シオンがそんなコソ泥を睨みつける。
コソ泥は恐怖の目でシオンを見て、慌てて後ずさる。
「この村から出ていけ。もし2度目の盗みを働こうというのなら……遠慮できないよ」
シオンが呟くと、コソ泥は全力で村から出ていくべく駆け出した。
「ふぅ」
シオンが全身の緊張から解放され、息をついた。
「シオンさん、お見事でした」
オディアナがシオンの戦いぶりを褒めると、シオンが安堵した顔でオディアナを見る。
「お褒め頂きありがとうございます。姫様。にしてもなぜ姫様とお姉ちゃん、そしてムゼロさんたちがここに……」
シオンがなんとかコソ泥を追い払った今、湧いてくるのはその疑問だけだった。
「実はな、シオン」
シーアが代表し、シオンに事情を語る。
「アルトマ王城が、この村と同じことになっていたなんて」
シオンは信じられないと言わんばかりに呟く。
確かにそうでもなければ姫と大事な姉がタイミングよく村に来ることなんて有り得ない。
「私はこれからオディアナ姫と、ムゼロ、そしてハスキミリアさんと一緒にアルトマ王城を救うための手がかりを探しに行くが……シオン、一緒に来ないか?」
「えっ?」
シオンが顔を上げると、シーアが少し躊躇ったようにしつつ、次の言葉を紡ぐ。
「なんだ、その、デュエルの実力も見事だったし、それに、シオンは私にとって大事な家族だからな……村がこんなことになって、シオン一人をこの村に残していくなんて私には心配で出来ないからな。だから」
「うん、また一緒にいられるんだねお姉ちゃん!」
シオンが感極まり、笑顔でシーアに抱き着く。
シーアがそんな妹をやさしく抱きしめる。
「よく頑張ったなシオン」
(……にしてはさすがは巨乳姉妹。抱き合ってお互いの胸がぐにぐにと当たって潰れおっぱいを形成してるが……口にするのは野暮ってもんぜよ)
ムゼロが内心少しだけ下心を抱きつつも冷静に興味のないふりをしていた。
男だったらあの間に挟まることが出来れば、死んでも悔いなしという幸せを味わうことが出来るかもしれない。
だが、ムゼロはそんな野暮は一切しない男だった。
「さてと……故郷がこんなことになってて休息は取れないから次の村に向かうしかないが……大丈夫かな?」
村の入口に戻り、悲惨なことになった村を見ながらシーアが呟いた。
「大丈夫よ、シーア。行きましょう」
「うん。シオンさんも仲間に加わったことだし、色々おしゃべりしたい」
「俺も文句ないぜよ」
オディアナたちからは一切の文句も否定もなかった。
「お姉ちゃん、いい人に恵まれたね」
「ああ、私にはもったいない限りの仲間だ」
こうして。
新たにシーアの妹、シオンが旅の仲間に加わった。
オディアナの故郷を救うための旅は、とうとうアルトマ王国領を抜けることとなる――