遊戯王 神秘眼の姫君   作:ヴィルティ

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動き出す運命

先攻はデスティアスから始まる。

 

「俺のターン、ドロー。俺は魔法カード『フュージョン・デステニー』を発動。手札、デッキから融合モンスターによって決められたモンスターを墓地へ送り、『D―HERO』を融合素材にする融合モンスターを融合召喚する」

 

デスティアスのデッキから2つのDの文字が飛んでいく。

 

「俺が素材にするのはデッキの『D―HERO ディバインガイ』と『D―HERO ディアボリックガイ』の2体だ。現れよ『D―HERO ディストピアガイ』」

 

デスティアスの場に現れたのは、額にDの文字を貼り付けた黄色の頭部と紫色の胴体を持つ、人型の英雄。

人型でありながらどこか人とは違う印象を持たれるのは、運命の英雄の一員であるからか。

 

「ディストピアガイが特殊召喚に成功したとき、墓地のLV4以下の『D―HERO』モンスター1体を指定し、その攻撃力分のダメージを与える。ディバインガイの攻撃力は1600、喰らえや」

 

ディストピアガイが手をかざす。

その手のひらに空いていた闇の孔から風が吹き荒れ、兵士を吹き飛ばす。

 

「うわわわっ!」

 

兵士が尻もちをつき、それでもなお立ち上がる。

 

エイディーム国兵士 LP8000→6400

 

「へーっ、意気込みやよし。そして俺は墓地の『D―HERO ディアボリックガイ』の効果を発動。墓地のディアボリックガイを除外してデッキから同名カードを特殊召喚する」

 

上半身裸で闇の覆面をかぶった運命の英雄がデスティアスのデッキから飛び出す。

 

「俺はディアボリックガイとディストピアガイの2体をリンクマーカーにセット。召喚条件は戦士族モンスター2体。リンク召喚。出でよ『X・HEROクロスガイ』」

 

赤きXの文字が刻まれた英雄がデスティアスのEXモンスターゾーンに立ちはだかる。

 

「そしてクロスガイがリンク召喚に成功したとき、墓地の『D―HERO』モンスター1体を特殊召喚する。甦れ『D―HERO ディストピアガイ』」

 

クロスガイの後ろに控えるように異形の英雄が現れる。

そしてすっと手をかざし、いつでも戦闘には入れる準備万端の姿勢を見せる。

 

「俺はカードを2枚伏せてターンエンドだ」

 

デスティアス LP8000

 

モンスターゾーン:D―HERO ディストピアガイ

EX:X・HERO クロスガイ

魔法・罠:セットカード2枚

手札:2枚

 

「俺のターン、ドロー」

 

エイディーム国兵士がカードを引いた瞬間、1枚のカードが発動される。

 

「ドローフェイズに永続罠カード『D―タクティクス』発動だ。そしてスタンバイフェイズにタクティクスの効果でHEROの攻撃力を400ポイントアップする」

 

ディストピアガイの額のDの文字とクロスガイのXの文字が深紅に輝き、力を得る。

 

「くっ、俺は『切り込み隊長』を召喚だ」

 

剣を構え、歴戦を潜り抜けてきた茶髪の戦士が飛び出す。

 

「そして切り込み隊長の効果で手札の切り込み隊長を特殊召喚する」

 

隊長の呼び声に応え、剣の銘柄が違う剣を持つ隊長が現れる。

 

「隊長が2体……『隊』の『長』って一体なんだったっけ、という話だな」

 

2人並ぶ隊長を見てデスティアスが呆れたように呟く。

 

「俺はカードを2枚伏せてターンエンドだ」

 

エイディーム国兵士 LP6400

 

モンスター:切り込み隊長×2

魔法・罠:セットカード2枚

手札:2枚

 

「エンドフェイズにディストピアガイの効果発動。こいつは攻撃力が元々の攻撃力と異なっている場合、攻撃力を元に戻すことで相手の場のカード1枚を破壊する。右の伏せカードを破壊させてもらうぜ」

 

ディストピアガイの額の深紅のDの文字が飛んでいき、右に伏せられていたカード『聖なるバリア―ミラーフォース―』が破壊された。

 

「おっと、危ない危ない。そして俺のターン、ドロー。スタンバイフェイズに再びタクティクスの効果を発動し、ディストピアガイの攻撃力が400アップする」

 

これによりクロスガイの攻撃力は2400となり、最上級モンスターに匹敵する数値となった。

 

「そしてディストピアガイの攻撃力を元に戻し、残されたセットカードも破壊しておこう」

 

破壊されたのは『魔法の筒』。

相手モンスターが攻撃してきた時、その攻撃を無効にしその攻撃力分のダメージを与えるカードだった。

 

「おいおいおい、俺の攻撃に対して強烈な効果を発揮するカードばっかりじゃねぇか。国を守る兵士の意地ってか」

「うるさい」

「俺は『D―HERO ドリルガイ』を召喚」

 

両手が巨大なドリルとなっている運命の英雄が現れ、漆黒の肉体を光らせる。

 

「ドリルガイは召喚に成功したとき、自身の攻撃力以下の攻撃力の『D―HERO』モンスター1体を手札から特殊召喚する。こいつの攻撃力は1600。手札より出でよ攻撃力1100『D―HERO ディナイアルガイ』」

 

手に鎖を構えた運命の英雄が現れ、デスティアスの場にD―HEROたちが並ぶ。

 

「そしてディナイアルガイが特殊召喚に成功したことで、除外されているディアボリックガイをデッキトップに置く。そして墓地のディアボリックガイを除外し、ディアボリックガイをデッキトップから特殊召喚する」

 

ディアボリックガイが再びデッキトップから飛び出し、ディストピアガイの横に並び立つ。

 

「そして俺はドリルガイ、ディナイアルガイ、ディアボリックガイの3体をリリース。出でよ『D―HERO Bloo―D』!」

 

竜の翼。

竜の頭。

深紅に濡れたそれらの装備を身に纏う運命の英雄が現れ、目を光らせる。

 

「LV8以上の『D―HERO』モンスターであるBloo―Dが特殊召喚に成功したことで、『D―タクティクス』の効果。相手の場か手札、墓地のカード1枚を除外できる。俺が除外するのは当然、場の『切り込み隊長』だ」

 

Bloo―Dの翼から赤色の光線が放たれ、切り込み隊長の胸が光線で貫かれた。

隊長が苦しそうに呻きながら膝をつき、命が絶たれた。

 

「くそっ」

「これで『切り込み隊長』の効果で『切り込み隊長』以外のモンスターが攻撃できない、それが2体いることでどのモンスターにも攻撃できなくなるという『切り込み隊長』ロックは崩壊した。もっともBloo―Dが存在している限り、相手の場のモンスターの効果は無効化されているんだけどな。そしてBloo―Dの効果発動。相手の場のモンスター1体を対象として、そのモンスターを装備カードとして装備する。そのもともとの攻撃力の半分が力となる」

 

Bloo―Dの翼に切り込み隊長が吸収され、翼の表面に苦しみもがく切り込み隊長の顔が映る。

 

「なんておぞましいことを……」

「今からでも遅くはねぇ。この橋の守りから手を引け。逃げるのなら俺も深追いはしないさ」

 

デスティアスが呟くが、デュエルをしていた兵士は首を横に振る。

 

「ふ、ふざけるな。俺はこのエイディーム国を守るために闘う兵士なんだ。逃げるなんてことはしねぇ」

「そうだそうだ!」

 

デュエルしていない方の兵士も足を震わせているが、この場を去るつもりは毛頭ない。

そう感じ取ったデスティアスが何度目か分からない溜息をつく。

 

「やれやれ……国を守るために命を張る。蛮勇は決して美徳じゃねぇ。ここから逃げ出しエイディーム国王に襲撃者がいると伝え、なりふり構わず他の兵士たちをまとめて俺に差し向けた方が、結果的に俺を倒せる可能性が上がっただろうに。まあ、忠告はしたが、無視したお前らが悪い」

 

デスティアスがパチンと指を鳴らすと、運命の英雄たちが動く。

ディストピアガイが手の孔から風を放ち、兵士を吹っ飛ばす。

 

「がああっ!」

 

エイディーム国兵士 LP6400→3600

 

「クロスガイ」

 

そして吹っ飛ばされて身動きが取れなくなっている兵士に対してXの文字を光らせ、文字から放たれた赤き閃光が2人の兵士の足をXの文字型に千切り取った。

 

「うぎゃああああっ!?」

 

エイディーム国兵士 LP3600→1200

 

「トドメだ。行け」

 

Bloo―Dの竜の翼から無数の赤き雨が空中に放たれる。

そして空中から赤き雨が兵士たち2人に向かって降り注いだ。

 

「「ぎゃああああああああああっ!」」

 

エイディーム国兵士 LP1200→0

 

赤き雨により全身を貫かれ、そしてクロスガイにより足をバラバラに千切られたことで動けなくなった兵士の元へとデスティアスが近寄っていく。

倒れている兵士の周りはすでに血で満たされており、水たまりのように血が広がっていた。

 

「逃げさえすればいいものを……」

「なっ……」

 

アルトマ王国側から男の驚愕の声が聞こえ、デスティアスが振り返る。

 

「一体何が」

「ハスキミリア、見ねぇ方がいいぜよ」

 

どうやらアルトマ王国から逃げようとしてる民が来たか、とデスティアスが思い改めて目を凝らす。

 

「……おいおいおい、あれはオディアナ姫ではないか。ジジイ、しくじりやがったな」

 

オディアナ姫の周りに4人も人がおり、姫も含め全員から『闇』の気配が漂っていた。

 

「……さすがに分が悪いか。ここは」

 

デスティアスの周りに闇が溢れ、闇がデスティアスを包み込む。

そして闇がデスティアスを包み込み消えた瞬間、先ほどまで彼の頭部があった場所を銃弾が掠めていった。

 

「チィ、間一髪で逃がしたぜよ」

 

ムゼロの視力であの男がやらかしたことを見る限り、仕留めた方が良いと判断し発砲した。

だが、その銃弾が頭を貫かれる前に逃げられてしまった。

急いで走ってきたものの、デュエルがたった3ターンで終わってしまい、止めることが出来なかった。

 

「ムゼロさん、あの人たちは」

「……見ない方がいい」

 

あまりにも悲惨なやられ様。

これをさすがにオディアナやハスキミリアに見せるわけにはいかなかった。

 

「大丈夫か?」

 

シオンがオディアナとハスキミリアを足止めさせ、ムゼロとシーアが無惨な目に遭った兵士の元へと行く。

 

「……あ……アルトマ王城の王族護衛隊長のシーア」

 

兵士が光をなくしつつある目でシーアの姿を確認する。

 

「一体どうしてこんなことに」

 

上半身と下半身が切断され、その下半身部分もまたバラバラにされている地獄絵図を見ながらシーアが尋ねる。

 

「どうしてここに?」

「エイディーム国に出向き、アルトマ王国に掛けられた呪いを解くための手段を探しに行こうとしたんだ。でも、どうして」

「……エイディーム国領内の村が突然現れた何者かに破壊されてるんです。まだエイディーム城に何者かは来てませんが……国の兵士である俺たちがあの橋でこれ以上侵略者を侵入させまいとしたんですが」

「……手も足も出ず、やられちゃいました。あの男……デスティアスと名乗る男。その男の仲間……アルトマ王城とエイディーム国領内の村を襲ったんです」

「なっ」

 

シーアの顔に動揺が広がる。

呪いを掛けた何者かの仲間が、これほどの残酷なことをしでかしたというのか。

 

「……ちくしょう」

「いい、もうしゃべるんじゃねぇぜよ」

 

ムゼロが悔し涙を流す兵士たちを黙らせようとしたが、首を横に振る。

 

「お願いがあります。国を守る兵士である俺たちが、この国を襲った何者かの仲間に無様に負けてしまった。他の国の護衛隊長に頼むのも変な話ですが……この国を襲った何者かを、倒して……エイディーム国を救って……」

「ああ、分かった」

 

シーアは当然その頼みを聞くつもりだった。

この国を襲った何者かと、アルトマ王城を襲った何者かは繋がりがある。

その何者かを追えば、城を襲撃した何者かの情報も掴めるかもしれない。

まずは呪いを解く方法を探すつもりだが、同時に情報収集も出来るなら一石二鳥だ。

 

「……ありがとうございます……不甲斐ない俺らの代わりに……」

 

兵士たちはなんとか伝えるべきことを伝え、もう悔いはないと言わんばかりに目を閉じ、その命の幕を下ろした。

 

「……シーア。今回の件、ただ単にアルトマ王城が襲われたってだけじゃねぇぜよ。下手すると、このデーリング大陸全域が危機に晒されてる、と言っても過言じゃねぇぜよ」

「ああ、そうだな」

 

ムゼロの意見にシーアが同意した。

 

アルトマ王国だけではなく、エイディーム国も何者かによる侵略を受けた。

となると……この大陸で何か良からぬことが起きるかもしれない。

 

「……まずは呪いを解く方法を最優先で探すが……急いで解決しないと、エイディーム国を侵略しようとしてる何者かがアルトマ王国にも手を伸ばすかもしれない」

「悠長にはしていられねぇってことだな。分かったぜよ」

 

とりあえずムゼロとシーアが巨大な布をどこからともなく取り出し、兵士たち2人の死体にかけ、ここを通る際に兵士たちの死体を姫たちの目に付かないようにした。

 

 

 

「…………」

 

デスティアスが無言で闇の中を歩く。

 

「やるべきことは終わったのか、デスティアスよ」

 

そんな彼の背後から落ち着いた老人の声が聞こえていた。

 

「今のところはな。それよりも、あんたの仕事に手落ちがあったぜ、グリシア」

 

デスティアスが振り返り、グリシアと呼ばれた老人に話しかける。

 

「手落ち?」

「アルトマ王国の住人……護衛隊長とやらのシーア、そして姫であるオディアナが無事に生存していたぜ」

「なんと……」

 

グリシアの声は驚きに満ちており、それを聞いたデスティアスが溜息をつく。

 

「ったく、年取って耄碌したんじゃねーのか?」

「むぅ……まさかあの樹呪から逃れられるほどの存在だったとは」

「まったく。まあ、いい。エイディーム国領内はすでにバルエッドが支配を開始してる。2人とその仲間の始末はバルエッドとその手下たちに任せるとしようぜ。じゃあな、じーさん」

 

デスティアスはひらひらと手を振り、闇の更なる奥へと歩いていった。

そしてデスティアスがグリシアの視界から消えた後、グリシアが握り拳を作り、震わせる。

 

「おのれ……あの国の小娘どもめ、ワシに恥をかかせおって……このままではすまさんぞ」

 

それだけを言い残し、グリシアもまた闇の中へと消えていった。

 

 

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