「バトルフェイズ。『オッドアイズ・ドラゴン』で裏守備モンスターに攻撃!」
(おう!)
オディアナの命に従い、オッドアイズ・ドラゴンが口から炎を吐く。
その炎は容赦なく糸に絡みとられた影の鳥人形を焼き払う。
「ふん。守備モンスターに攻撃したところで戦闘ダメージは入らない」
「だけど、効果ダメージはどう? 『オッドアイズ・ドラゴン』は戦闘で相手モンスターを破壊した場合、その元々の攻撃力分の半分のダメージを与えるの」
オッドアイズ・ドラゴンがさらに炎の球を人形に向かって吐きかける。
人形は回避することが出来ず、炎の球が足に直撃する。
「ふん」
人形 LP8000→7700
「これで場はがら空きになった……え?」
だが、オディアナの目に映ったのは空っぽになったはずのフィールドに『シャドール・リザード』が息を潜め、裏守備になっていた光景だった。
「残念だが『シャドール・ファルコン』はリバース効果と呼ばれる、裏側から表側になったときに発動する効果もある。その効果で墓地に存在していた『シャドール』と名の付くモンスターを裏守備で蘇生したのだ」
「そう簡単に場はがら空きにしないってわけね。メイン2、カードを1枚伏せてターンエンド。エンドフェイズ時に『オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン』のペンデュラム効果を発動します。このカードを破壊してデッキから攻撃力1500以下のペンデュラムモンスター1体を手札に加えます」
オディアナの手に『オッドアイズ・ペルソナ・ドラゴン』が加わり、次の一手を用意し終えた。
オディアナ LP8000
モンスター:オッドアイズ・ドラゴン
魔法・罠:セットカード1枚 オッドアイズ・ミラージュ・ドラゴン
手札:3枚
「次は俺様のターンだな、ドロー」
人形がカードを引き、仮面の奥底でにやりと笑う。
オディアナは仮面の奥底の表情を読み取れるほどまだ大人ではない。
故に、これから起こることがまだ予測できなかった。
「まずはそいつを破壊させてもらおうか。『シャドール・リザード』を表側攻撃表示に変更。そしてリバース効果で相手の表側表示モンスター1体を破壊する!」
息を潜めていた『シャドール・リザード』がオッドアイズ・ドラゴンの首めがけて飛んでいく。
そして一瞬のうちに首を締め落とし、オッドアイズ・ドラゴンががくんと頭を垂れる。
(無念)
「ううん、よくやってくれたわ」
オディアナに声を掛けられオッドアイズが満足げにしながら消えていった。
「そして私は魔法カード『影依融合』を発動。手札の『シャドール・ビースト』と『シャドール・ヘッジホッグ』の2体で融合」
「む、リバース効果とやらで戦うわけじゃないのね」
オディアナが警戒心を強めるが、その間に人形の手札に存在していた虎と針鼠の人形が無理やり合成されていく。
「シャドールは属性の力を糸に絡め、強大な力を操ることが出来るようになる。融合召喚。出でよ『エルシャドール・ミドラーシュ』」
人形の場に現れたのは、巨大な竜の人形に乗った巫女の人形。
竜にも巫女の胴体にも糸が絡みついており、闇の力を糸から受け取っていた。
「む……」
「ふふ、どうした? 融合召喚を目の当たりにして驚いているのか?」
「いえ……虎の人形と針鼠の人形が合体して、どうして巫女を乗せた竜の人形になるのか、イマイチ理解が追いつかなくて」
「オディアナ姫、今はそんなことどうでもいいですから集中してください!」
ゴーレムと戦っていたシーアが考え事にふけるオディアナに忠告する。
シーアの忠告を聞き、改めてデュエルに集中しなおす。
「融合はカードの効果によって行われる行為。そして『シャドール・ビースト』が効果で墓地へ送られたことで1枚ドローし、『シャドール・ヘッジホッグ』が効果で墓地へ送られたことでデッキから『シャドール』と名の付く効果モンスター『シャドール・ドラゴン』を手札に加える」
融合素材とした2枚分の手札が一瞬で補充されなおす。
「そして『シャドール・ドラゴン』を召喚」
ミドラーシュの竜とはまた違う、獅子を模した竜の人形が糸に絡みとられカタカタと動く。
「バトル。『エルシャドール・ミドラーシュ』でダイレクトアタック」
竜が巫女の指示に従い綺麗な動きでオディアナに近づく。
そしてその尻尾でオディアナを吹っ飛ばす。
「ッ!」
オディアナ LP8000→5800
「オディアナ姫!」
シーアが心配のあまりオディアナの名を叫ぶ。
だが、シーアの予想に反してオディアナは気丈にも立っていた。
(大丈夫、オディアナ?)
「ええ、ありがとう皆」
どうやらオディアナのデッキの霊魂たちがオディアナをモンスターの攻撃による衝撃から身を守ってくれたらしい。
それを見たシーアがほっと一息つくと、改めてゴーレムに向き合う。
「王族の護衛隊長として、いつまでもお前の相手をしているわけにはいかないんだ!」
そして黒き槍を強く握り締めなおし、ゴーレムの頭に向かって思いっきりジャンプした。
「はああっ!」
ゴーレムがゆっくりと頭を上げた瞬間には、もう勝負はついていた。
黒き槍がゴーレムの頭部を完全に貫き、その機能を完全に破壊していた。
ゴーレムは頭部からバラバラに崩れ去っていき、やがてタダの土の塊となった。
「よし」
シーアが一息つき槍を消し去り、改めてオディアナに向かい合う。
「オディアナ姫、こちらの決着はつきました。思う存分戦ってください」
「うん、分かった!」
オディアナがぱっと笑顔になるが、そのオディアナの元に『シャドール・ドラゴン』が迫っていた。
「ゴーレムはやられましたが、あなたを始末した後その生意気な女も倒してあげますよ」
シャドール・ドラゴンの頭から突っ込んでくる体当たりを受けてもオディアナは少しひるんだ程度で済んだ。
王家から代々伝わってきた『オッドアイズ』のデッキの力は凄いのだと改めてシーアが認識する。
オディアナ LP5800→3900
「リザード!」
リザードも体当たりをするが、やはりオディアナはひるまない。
オディアナ LP3900→2100
「ふん、いくらデッキの霊に守られたところでLPが削られてしまっては意味がない。メイン2、俺様はこれでターンエンド」
「エンドフェイズに罠カード『戦線復帰』を発動します。墓地から『オッドアイズ・ドラゴン』を守備表示で蘇生します」
再び『オッドアイズ・ドラゴン』がオディアナの場に舞い戻り、オディアナに向かって頷く。
人形 LP7700
モンスター:エルシャドール・ミドラーシュ シャドール・ドラゴン シャドール・リザード
魔法・罠:セットカード2枚
手札:1枚
「そして私のターン、ドロー。私はペンデュラムスケール1の『オッドアイズ・ペルソナ・ドラゴン』をペンデュラムゾーンにセッティング」
「これで今度は7から1までのモンスターがペンデュラム召喚可能になったというわけか」
人形が忌々しそうに呟くが、オディアナはそれとは対照的にふふーんと笑う。
「ええ。そして今度のペンデュラム召喚は一味違います! ペンデュラムモンスターは場から墓地へ送られる場合、代わりにEXデッキへと送られます。そしてペンデュラム召喚はそのEXデッキで待つ魂を改めて呼び戻す神秘の召喚法です!」
「なっ、ということは」
「ええ。ペンデュラム召喚! EXデッキより戻ってきてください『オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン』!」
オディアナのEXモンスターゾーンに『オッドアイズ・ドラゴン』よりも派手な装飾を身に着けた竜が君臨する。
(ペンデュラムの力を身に着けた俺、行くぞ)
(ああ、無論だ)
「『オッドアイズ・ドラゴン』を攻撃表示に変更しバトルです。『オッドアイズ・ドラゴン』で『エルシャドール・ミドラーシュ』に攻撃します!」
オッドアイズ・ドラゴンの口から吐かれた炎がミドラーシュの体を完全に焼き払う。
人形 LP7700→7400
「そして、忘れたわけではないですよね」
オッドアイズ・ドラゴンの効果でミドラーシュの攻撃力の半分、1100のダメージが人形に入る。
その眼は怒りに燃え、人形自身も焼きつくす炎を吐く。
炎をまともに浴び人形が苦しみもだえる。
「ぐああああっ」
人形 LP7400→6300
「次に『オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン』で『シャドール・ドラゴン』に攻撃します!」
闇の螺旋光線が竜の口から吐かれ、シャドール・ドラゴンが光線に貫かれあっという間に木っ端みじんに破壊された。
「そして『オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン』はモンスター同士の戦闘によって発生する戦闘ダメージを倍にします」
攻撃力の差は600。
そしてその2倍である1200ダメージが人形に入る。
「おのれっ!」
人形 LP6300→5100
「よし。メイン2、カードを1枚伏せてターンエンドです」
オディアナ LP2100
モンスター:オッドアイズ・ドラゴン
EXモンスター:オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン
魔法・罠:セットカード1枚 オッドアイズ・ミラージュ・ドラゴン オッドアイズ・ペルソナ・ドラゴン
手札:2枚
「くくく……よくもやってくれたな。だが、今の攻撃があなたをピンチに陥れたんだぜ! 俺のターン、ドロー! 俺は『影依融合』を発動!」
「それは先ほど発動した融合魔法! 2枚目を引いていたのですか!?」
オディアナの驚いた顔を見て、その顔が見たかったと言わんばかりにくくくと笑い声を漏らす。
「いーや、さっきの攻撃がピンチに陥れたと言っただろう。『エルシャドール・ミドラーシュ』の効果を発動していたのさ。こいつは墓地へ送られた場合、墓地の『シャドール』と名の付く魔法・罠カードを手札に戻すことが出来るのさ」
「ですが、先ほど見た限り、融合をするにはモンスターが必要なはず。ですが、あなたの場には『シャドール・リザード』しか存在してないですし、手札も2枚。その2枚の中にモンスターカードがあるというわけですね」
「いいや『オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン』はEXデッキから呼び戻されたモンスター。『影依融合』は相手の場にEXデッキから特殊召喚されたモンスターが存在していれば、デッキからも融合素材に出来るのさ」
その言葉通り、人形のデッキから1枚のカードが飛び出していく。
「俺様はデッキの『シャドール・ドラゴン』と『マスマティシャン』を墓地へ送り、融合召喚!」
先ほどシーアが破壊したゴーレムの土が人形の場に現れた糸に向かって飛んでいく。
糸が土を取り込み茶色に染まっていき、その糸が突如現れた巨大な機械を縛り付け、その機械の上に女神を象った人形が座り込む。
「出でよ『エルシャドール・シェキナーガ』」
その女神人形がふふんと笑い、オッドアイズたちを見下ろす。
「攻撃力2600……! オッドアイズたちを上回ってる」
「そして墓地へ送られた『シャドール・ドラゴン』の効果でそのセットされた魔法・罠カードを破壊させてもらうぜ」
墓地から飛び出した竜の人形の牙が伏せられていたカードの突き刺さる。
「破壊される前に永続罠カード『ペンデュラム・スイッチ』を発動します! ペンデュラムゾーンの『オッドアイズ・ミラージュ・ドラゴン』を守備表示で特殊召喚します!」
光の柱から顎が鋭利な緑色の竜が飛び出していき、オッドアイズたちの間に割り込む。
「ふん、だが関係ない。『エルシャドール・シェキナーガ』で『オッドアイズ・ドラゴン』に攻撃!」
シェキナーガが座る機械からビームが放たれ、オッドアイズ・ドラゴンが光線を回避することが出来なかった。
だが、そのオッドアイズの姿が一瞬で消えていく。
「何!?」
「『オッドアイズ・ミラージュ・ドラゴン』のモンスター効果を発動しました。オッドアイズと名の付くペンデュラムモンスターが存在していたことで、オッドアイズ1体を破壊から守ったのです。無論、戦闘ダメージは受けますが」
オディアナにほんの少しだけ痛みが走るが、大事な仲間を失うことに比べればどうということはなかった。
オディアナ LP2100→2000
「ぐぬぬ……そのような効果を発動していたとは」
「生憎、さっきあなたも効果発動を宣言しませんでしたからね。これでおあいこです」
オディアナがまるで悪戯をした子供のように笑う。
こんなところもまた人気があるところなのだとシーアは思う。
土から産まれた人形。
故に、シャドールの元々の闇以外には土に纏わる力しか使いこなせない。
「さて、次はどうするのです?」
「このまま……ターンエンド」
人形 LP5100
モンスター:エルシャドール・シェキナーガ シャドール・リザード
魔法・罠:セットカード2枚
手札:2枚
「私のターン、ドロー。私は魔法カード『螺旋のストライクバースト』を発動します。私の場に『オッドアイズ』モンスターが存在していれば、相手のカードを1枚破壊できます。破壊するのは当然『エルシャドール・シェキナーガ』」
シェキナーガがオディアナの放った魔法から放たれた闇の螺旋に飲み込まれる。
巨大な体が螺旋に貫かれ、胴体に風穴が開いた瞬間爆発四散した。
「シェキナーガにも墓地の『シャドール』と名のつく魔法・罠カードを手札に加える効果がある。『影依融合』を手札に回収する」
「ミラージュを攻撃表示に変更しバトルフェイズ。『オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン』で『シャドール・リザード』に攻撃」
闇の螺旋がリザードを貫き、効果も含めて大ダメージを与える。
「ぐああああっ」
人形 LP5100→3700
「『オッドアイズ・ドラゴン』! ダイレクトアタック!」
オッドアイズ・ドラゴンが炎を吐くが、その瞬間巨大な影が人形の足元に現れる。
「罠カード『影光の聖選士』を発動! 墓地の『エルシャドール・シェキナーガ』を守備で蘇生させる! 守備力3000を突破できると思うなぁ!」
巨大な影からシェキナーガが飛び出し、人形を守る盾となる。
「構いません。チェーンして速攻魔法『虚栄巨影』を発動します。攻撃宣言時に私の『オッドアイズ・ドラゴン』の攻撃力を1000アップさせ、3500にします」
オッドアイズ・ドラゴンが一瞬だけ巨大化しさらに巨大な炎をシェキナーガに浴びせかける。
いくら巨体なシェキナーガでも、さらに巨体な竜の炎を浴びればどうしようもない。
「そして『オッドアイズ・ドラゴン』の効果で1300ダメージ受けてもらいます」
オッドアイズ・ドラゴンの炎の余波が人形を襲う。
「ぐうううっ」
人形 LP3700→2400
「墓地へ送られたシェキナーガの効果で『影光の聖選士』を墓地から回収」
「追撃です! ミラージュ!」
「いい加減にしろよクソがぁ!」
今までの冷静さはどことやら、今まで正体を明かそうとしなかった伏せカードに手を伸ばした。
「永続罠カード『影依の原核』発動! こいつは守備力1950のモンスターとなって俺の場に特殊召喚できる」
ミラージュが走って人形に顎を突き刺そうとしたが、無数の糸が生えた謎の物体により阻まれ、その攻撃は届かなかった。
「くっ。私はこのままターンエンド」
オディアナ LP2000
モンスター:オッドアイズ・ドラゴン オッドアイズ・ミラージュ・ドラゴン
EXモンスター:オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン
魔法・罠:オッドアイズ・ペルソナ・ドラゴン
手札:1枚
(まずいな。LPこそ姫が逆転したが、『影依融合』と『影光の聖選士』が手札に戻った以上、すぐに場を立て戻される)
姫がこちらを見て動揺させないようにポーカーフェイスを保っていた物の、その内心には少しだけ焦りが浮かんでいた。
「俺のターン、ドロー! 俺は魔法カード『影依融合』を発動! デッキから『シャドール・ファルコン』と『増殖するG』を墓地へ送り2体目のシェキナーガを融合召喚!」
再びシェキナーガが人形の場に君臨し、オッドアイズたち3体を見下ろす。
「墓地へ送られた『シャドール・ファルコン』の効果で場に再セット。そして『影依の原核』を攻撃表示に変更しバトル! 『影依の原核』で『オッドアイズ・ミラージュ・ドラゴン』に攻撃!」
無数の糸がミラージュに襲い掛かるが、そのミラージュは幻影となりて糸を回避した。
「ミラージュの効果で自身を破壊から守ります」
オディアナ LP2000→1750
「シェキナーガで『オッドアイズ・ミラージュ・ドラゴン』に攻撃!」
シェキナーガのビームがオッドアイズ・ミラージュ・ドラゴンの胴体を貫く。
(ぐっ。みんな、オディアナを頼んだよ)
オッドアイズ・・ミラージュ・ドラゴンがそれだけ言い残し消滅していく。
オディアナ LP1750→350
「何、そいつの効果は1ターンに何度でも使えるのではないのか?」
「誰もそんなこと言った覚えはないですよ。先ほど、リザードでミラージュを攻撃しておけばよかったのに」
LPが少なくなりつつも、オディアナは戦う態度を崩さない。
「なるほど、なかなかしたたかだな。ちゃんと効果を確認しなかった俺が悪いわけか。メイン2、カードを2枚伏せてターンエンド」
人形 LP2400
モンスター:エルシャドール・シェキナーガ 影依の原核
魔法・罠:セットカード2枚 (影依の原核)
手札:2枚
「私のターン、ドロー」
「姫、今がチャンスです! 『影依の原核』が攻撃表示の今なら!」
だが、シーアの助言を聞いた人形が仮面の奥で口元を歪ませる。
「そんな穴を残すと思うか? 俺は速攻魔法『神の写し身との接触』を発動。手札の『シャドール・ビースト』と場の『影衣の原核』の2体を融合。『エルシャドール・ミドラーシュ』を守備表示で融合召喚する」
2体目の竜の巫女人形が降り立ち、シェキナーガと共に決闘者である人形を守る。
「墓地へ送られたビーストの効果で1枚ドローし、原核の効果で原核以外の『シャドール』と名の付く魔法・罠カードを回収する。『影依融合』を手札に戻す。これで穴はないぜ」
人形が仮面の奥底から高笑いをするが、オディアナはほっと息をつく。
「それで終わりですか?」
「な、何が言いたい!?」
「私はペンデュラムスケール4の『オッドアイズ・ファントム・ドラゴン』をペンデュラムゾーンにセッティングします。そしてバトルフェイズ」
オディアナがシェキナーガを見据えると、オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンが勢いよく走っていく。
「オディアナ姫!?」
「血迷ったか!? 攻撃力が100足りないぞ!?」
「いいえ、これでいいんです。『オッドアイズ・ファントム・ドラゴン』はペンデュラム効果により、もう片方のペンデュラムゾーンに『オッドアイズ』モンスターが存在してれば、攻撃宣言時にそのモンスターに1200の攻撃力を与えます」
(行け……我……力を貸す)
(ありがたい!)
ファントムが後ろから亡霊のようにペンデュラム・ドラゴンに憑依し、闇の螺旋に勢いを加えた。
「攻撃力3700になれば『シェキナーガ』も仕留められる!」
「それだけじゃありません! 2枚目の『虚栄巨影』発動! さらに攻撃力を1000アップ!」
シェキナーガの余裕を携えていた表情が一瞬で闇の螺旋に貫かれ、粉々に砕かれた。
「そして『オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン』の効果を忘れたわけではないですね!」
「ぐ、し、しまったあああああ!」
戦闘ダメージを倍にする効果。
2100のダメージが倍になれば、4200。
それは、人形のLPを0にするのに十分な数値だった。
「うあああああああああっ!」
人形 LP2400→0
ミドラーシュも消え、人形ががっくりと膝をつく。
「教えなさい。お父様とお母様、そして兵や城に住む者をこんな目に遭わせたのは一体誰なの」
「ははははは……教えてやるものか。だが、我らのマスターに歯向かうことは……死を意味すると同義……お前らがどうしようが自由だが、な」
それだけ言い残すと人形の体がガラガラと崩れていき、地面に落ちた仮面はまるで地面に溶けるように消えていった。
「オディアナ姫、初陣お見事でございます」
「うん、褒めてくれてありがとう。オッドアイズたちも力を貸してくれたから何とか勝てたけど……」
オディアナの顔は弦に包まれた城に向けられていた。
その顔つきは勝利に浮かれた顔ではなく、残された者たちを思う憂い顔だった。
「シーア……私はこれから、城の皆を救うための方法を探すのと、それから皆をこんな目に遭わせた人を倒しに行く……もしかしたら、とんでもない苦難の道になるかもだけど……それでも、付いてきてくれる?」
オディアナの声が震えており、それでもシーアにまっすぐ瞳を向けていた。
先ほどデュエルをしていた時と違い、瞳の色は元に戻っていた。
「私は王族の護衛隊長であると同時に、オディアナ姫によりこの城に推薦された身。オディアナ姫が為そうとしてることを全力で補佐することこそ、私の存在意義」
そこまで言ったところでシーアが息をつく。
「ああもう、固い言葉は好きじゃないな。姫のためならどこまでも付き合いますよ」
シーアが告げると、オディアナがシーアの手を取り喜ぶ。
「良かった。でも、私が間違えた道に進もうとしてるのなら、ちゃんと窘めてね」
「もちろんです。では、行きましょうか。まずは城下町へ向かい、そこで改めて休息を取りましょう。それから今後の予定を立てましょう」
「うん、分かった」
オディアナが頷くが、シーアの顔はイマイチ晴れなかった。
「ここから城下町まで馬車を使えば数十分程度なのですが……今から徒歩で城下町へ向かうことになりますが、姫。体力は大丈夫ですか?」
「うん、大丈夫だよ」
オディアナの返事を聞き、シーアが覚悟を決めた顔になった。
「では、行きましょうか。ここから長い旅路になるかもしれませんが」
「うん」
オディアナは改めて城を見る。
(待ってて、皆。皆を救うための方法を見つけて、堂々とした笑顔で戻ってくるからね)
そして改めて夜道を見る。
先が見えない、真っ暗な道。
これから進もうとしてる旅路を示してかのようでオディアナは少しだけ不安になる。
(ううん、大丈夫)
「オディアナ姫?」
「あ、ごめん」
でも、シーアもいるし、デッキの『オッドアイズ』たちもいてくれる。
何も一人で見えない道を進むわけではない。
心から信頼できる者たちと共に進むことが出来る、それがどれほど頼もしいことか。
オディアナはシーアと共に、城下町に続く夜道へ進んでいった。