遊戯王 神秘眼の姫君   作:ヴィルティ

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破壊人形

「お願いがあるんです」

 

私の目の前に現れたのは、ハスキミリアちゃんよりも年下に見える少女。

髪の毛は黒いが、ツヤがなくちゃんとお手入れしてないのかボロボロに見える。

 

「申し訳ないが、今俺たちは忙しいんだ。この村の人にでも頼んだ方がよっぽどいい結果になるぜよ」

 

ムゼロさん、そんなすぐに断らなくても。

顔自体フードで隠してるから見づらいけども、その声色からは必死さが聞いて取れた。

それだけでも彼女が何かしらの助けを求めているのはよくわかる。

 

「ムゼロさん」

「失礼、オディアナ姫」

 

なおも警戒をとかないムゼロさんとシーアを制し、私は彼女の前にすっと出る。

 

「お願いとは何ですか?」

「あの……もし私の記憶違いでなければ、アルトマ王国の王女、オディアナ姫ですよね?」

「はい」

 

馬鹿正直に答えたとき、シーアとムゼロさんが少しばかり呆れた顔をした。

一応身分ある立場なのだから、堂々と答えるなと言わんげな顔ね。

 

「良かった。このエイディーム国で起こりつつある惨状を聞きつけてくれたんですね」

「ええ」

 

事実、この国の国境にあった橋が謎のデュエリストに襲撃され、見張りが命を落としたのも、昨日宿泊した村も何者かの襲撃を受けたのも知っている。

このエイディーム国は何かしらの危機に晒されている。

当初はエイディーム国にお父様とお母様が治めるアルトマ王国にかけられた呪いを解くための手段を探しに来たのだけども。

 

だが、そんなことを目の前にいる少女に言う必要は一切ない。

 

「良かったぁ……オディアナ姫様、ぜひ私の故郷に一度足を運んでいただけますか?」

「あなたの故郷、にですか?」

「オディアナ姫、彼女はまだ目的を言っておりません。目的をはぐらかしつつ自分の故郷に誘うというのは」

 

シーアの言うことはいちいちもっともだ。

彼女は私のことを守ってくれるし、いつも大局的に見れば正しいことしか言わない。

確かに目的そのものをちゃんとここで聞かないと。

 

「そうですね……あなたのお願いとは一体なんですか? もし私にきなくさいことをさせようというのなら、絶対に聞けませんよ」

「そういうのじゃないんです……つい数日前、私の故郷がデュエリストに襲われて、壊滅被害に遭ったのです。エイディーム国王城に助けを求めたのですが、王城自体も相当な被害を受けており、辺境の村に助けを出せないと門前払いを受け……」

「そして他の村にも訪れた、というわけですね」

 

彼女の靴はすり減りボロボロになっており、櫛すら入れてないようなぼさっとした髪。

ここ数日間移動ばかりしてたのは目に見て分かる。

そんな少女を私は見捨てることが出来ない。

 

「はい」

「分かりました。その故郷には今、襲ってきたデュエリストとやらはいるのですか?」

「いいえ……でも、あのデュエリストは厄介な物を残していったのです」

「厄介な物って何?」

 

シオンさんが口を挟むと、少女がはぁと溜息をつく。

 

「ある時間を迎えると、自動的に動き出す人形です」

「人形?」

「その人形は時間を迎えると1時間の間、無差別に破壊活動を始めるんです。1時間破壊活動を行った後は動きを停止するのですが」

「ならその間に壊せばいいんじゃねぇのか?」

 

ムゼロさんの疑問はもっともであり、私も含め全員がムゼロさんの言葉に同感する。

だが、少女は首を横に振りムゼロさんの言葉を否定する。

 

「その人形はあまりにも頑丈で……停止している間に人形を外に追い出しても破壊活動を行う時間となると村に戻ってきて」

「破壊活動を来ない、また1時間経過すると動きを止めるってやつか」

「今のところ、幸いなことに襲撃時間そのものは決まってるのでその時間の間だけ村から人を避難させてはいるのですが」

「建物や農作物が破壊され、被害が拡大してるってわけね」

 

シオンさんが推測を言い、彼女が頷いたことでその推測は確信へと変わる。

 

「確かに村の人が破壊できない、追い出しても戻ってきて破壊活動をするというのであればエイディーム国の兵士に頼るのも必然ってわけだったのね」

「はい。エイディーム国のエリート兵士たちは魔法などの扱いにも長けていますから、物理で破壊できない人形もどうにかしてくれるのではないかと。ですが、断られてしまって……それでエイディーム国の村を回り、どうにか出来そうな人を探していたのですが」

「当てが外れたってわけだな。だけども、なぜそれをオディアナ姫に?」

 

シーアの疑問ももっともだ。

正直な所、この旅が始まる数日前に私はデュエリストになった。

だから私のことは闘うことすら知らない、平和ボケしてる姫だという認識を他の国の人間はしているはず。

 

「アルトマ王国とエイディーム国は隣国同士、交流があるはず。だからオディアナ姫が惨状を聞いてアルトマ王国から救援を出してもらえるよう要請していただければ、私の村にも助けの兵がやってきてくれるはず。お願いです」

「言いたいことは分かったけど……なぜ最初、動く人形のことを黙り、一度故郷に足を運ばせようとしたんだ?」

 

ムゼロさんが追及するが、彼女は毅然とした態度を取っている。

ムゼロさんの少し怖い見た目にもまったく臆せず話をしてる辺り、肝は据わっているのだろう。

 

「百聞は一見に如かず。動く人形のことを説明しても信じてもらえるとは思えなかったので、一度人形が暴れまわるさまを見ていただければ」

「信じてもらえると思ったのか。だが、その人形が暴れまわるのにオディアナ姫が巻き込まれ危険な目に遭う、そういう風には考えなかったのか」

「……申し訳ありません」

 

彼女は素直に謝罪し、改めて私の方に向き直る。

 

「ですが、これは信じてください。私は決してオディアナ姫様をハメようとしたわけではないんです」

「オディアナ姫様」

 

ずっと黙ってお話を聞いていたハスキミリアさんがここで口をはさんできた。

何だろうと思い、彼女の方に顔を向ける。

 

「この子、嘘は言ってない。心からオディアナ姫様に助けを求めてる。助けてあげられないかな?」

 

ハスキミリアさんの言葉を聞き、彼女がハスキミリアさんの方を見る。

先ほどからムゼロさんとシーアに鋭い指摘ばかりされてる彼女にとっては純粋なハスキミリアさんの言葉はきっと癒しとなったのだろう。

でも、確かに心の底から助けを求めてる子を見捨てることは私には到底できはしない。

ムゼロさんやシーアは私のことを甘いと思うだろう。

でも、それが私なのだから今さらその性分は変えられない。

 

「そうですね。助けましょう」

「ありがとうございます! お礼の報酬は村で出来る限りお支払いいたします」

「やれやれ。相変わらずオディアナ姫様は甘いぜよ」

「だけども、その甘さに救われた人々はアルトマ王国に数多くいる。だから慕われてるんだ」

「そうだな。じゃ、行くとするか」

 

ムゼロさんの言うとおりだ。

まずは早速――

 

「その村へと案内していただけませんか?」

「え……アルトマ王国の兵士をお呼びしてくださるんじゃ」

「わざわざ戻って用意するんじゃ時間もかかるぜよ」

「その通り。姫様がやる気になったのなら、少なくとも私は従うよ」

 

ムゼロさんもシーアもやる気満々だ。

 

「よーし、頑張るぞー!」

「うん、そうね。私たちでその人形、処理しちゃいましょうか」

「いやそのあの……」

 

彼女は安心した顔から困惑しきった顔になってる。

兵士を呼んできてもらえると思いきや、まさか今から村に向かい人形を処理しようというお話になっているのだから。

そんな彼女を安心せさせるべく、私は口を開く。

 

「大丈夫。この場にいるみんな、すっごく頼りになるから」

 

私の言葉に全員が頷く。

それを見て頼もしい気持ちになるのは、誰よりも私だ。

 

「では、行きましょうか。道案内頼めますか? えっと」

「あ……自己紹介が遅れました。私はシンドレアです」

 

シンドレアさんか。

よし、改めて名前も聞いたところで早速行くとしよう。

その人形がどれほど厄介な物かは正直見てみないとわからないけど……

 

私は目の前にある出来る限りのことをやるしかない。

 

 

 

改めてシンドレアさんに目的地の村の名を聞くと、本来の目的地であった『ブルト』よりも少し手前ではあるが、マリモルトよりも奥地にある村だ。

今日一日歩けばなんとかたどり着けそうだ。

 

「にしても、地図にも載ってない名もなき村か。敵さん側はどうしてそんな所に破壊活動を行う人形なんて置いたのやら」

 

ムゼロさんの言葉にシンドレアさんは分からないと言わんばかりに首を横に振る。

確かに地図にもないほど知名度がない村だとしたら、襲われる理由なんて見当たらない。

 

「まぁ、本来何日もかけて『ブルト』まで出向くつもりだったからな」

「うん、ラッキーだったねお姉ちゃん」

 

シオンさんが嬉しそうな声で同意を求め、シーアは無言でうなずく。

シーア自身本心から納得してるのかどうかは分からないけど、大事な妹さんの言葉だから頷き、彼女を傷つけないように配慮したのだろう。

シーアは少々不愛想な所もあるけど、とてもやさしい子だ。

そんな優しい子だからこそ、傍にいれば私も心が温まる。

だからちょっとだけわがままを言って王国の兵士にしたのだけど。

その後王族護衛隊長にまで出世するなんて夢にも思わなかった。

 

「良かったね、シオンさん」

「うん」

 

ハスキミリアちゃんも無邪気にシオンさんの言葉に同意し、シオンさんがますますいい笑顔を浮かべる。

それを見ていたムゼロさんとシーアの顔にもほんの、ほんのちょっとだけ微笑ましい笑顔が浮かんでいた。

もっとも、それを指摘しても顔を緩めてはいないと否定するんだろうけど。

2人とも、素直じゃないところがあるからね。

 

 

そしてシンドレアさんの案内を受けその日はほぼ一日歩き、目的地である村に到着した。

森の中に覆われてる村であり、いくつかの民家が見える。

だが、それらの民家は全て刃物や獣の爪跡などのようなもので傷つけられており、ボロボロになっていた。

小さな畑もあるのだが、それらも植物が上から踏み荒らされ、見るも無残なことになっていた。

地図に載らない小さな村というだけあり、本当に数十人だけがここで生活してるようなところだった。

 

「確かにこりゃ酷い」

 

ムゼロさんの言葉を否定するような者はこの惨状を見た後だと誰もいない。

それほどまでに酷く荒らされている。

こんな惨状を生み出す人形が、一日一時間暴れる。

自分たちが住んでる場所が突如心なき存在に破壊される。

それは住んでる人にとってどれほどの恐怖なのか。

 

一刻も早くその恐怖からこの村の人たちを助けてあげなくては。

 

「どこにその人形はあるのかな?」

 

シオンさんが辺りをきょろきょろと見渡す。

だが、シオンさんが人形を見つける前にこの村で暮らしてると思われる男の人がやってきた。

 

「シンドレア、戻ってきたのか」

「お父さん」

 

どうやらこの男の人はシンドレアさんのお父さんらしい。

前髪の生え際が少し後退しているが、シンドレアさんと雰囲気はよく似てる黒髪の男性だ。

 

「この人たちは?」

「お父さん、この人たちなんて言い方失礼だよ。この女の人、隣国のアルトマ王国の王女であるオディアナ姫様だよ」

「な、本当なのか!? あの善政を敷き、国民たち皆が慕ってると噂のアルトマ王国の姫がこんな場所に!?」

 

そんな大仰に言われると少し照れる。

確かにお父さんもお母さんも良い政治をしてるし、私も国の人たちを救うためにやれることはやってたけど、まさかそんな噂が他国まで広まってるなんて。

 

「この村を襲ってる人形を倒してくれるんだよ」

「本当かい!……だけど、ついさっきこの村の屈強な男たちがその人形、この村の近くの川に放り捨てちまったんだよ」

「え、そうなの?」

「今までは適当な場所で放置してたから戻ってきた、だったら川に流してしまえば戻ってくることもないだろうって判断して」

「……いや、それぐらいであの人形が戻ってこないなんて思えない」

 

そういうシンドレアさんの顔には恐怖が浮かんで見えた。

それほどまでに人形とやらの破壊活動に悲惨な目に遭わされ、心に傷を負ってしまったのだろう。

やはり早いところどうにかして人形とやらを完全に破壊せねば。

 

「にしても、人形とやらを見ることが出来ないなんて残念だな」

「どのように破壊をしてたのか、見た覚えはあるか?」

 

ムゼロさんが残念がるのと同時にシーアが早速聞き込みを始める。

シーアの仕事の速さは相変わらずだけど、シンドレアさんではなくその父親に尋ねるあたりやっぱりシンドレアさんが受けた心の傷の方が深いと判断したんだろう。

その判断力、私も見習わなきゃ。

 

「うーん……実際人型の人形なのは確かなんだけど、その人形は剣やら杖やら色々使って兎に角暴れまわってたんだよ」

「なるほど、武器は問わないってわけか」

「で、人型、っと」

「武器を使って暴れまわる心無い人形ですか。厄介そうですね」

 

シーアとムゼロさん、シオンさんはすでに臨戦態勢だ。

だが、人形がこの場にない以上そのやる気は今は置いておいてほしい。

 

「とりあえず今日はもう遅いですし、家に泊まっていってください」

「シンドレア、ウチのようなボロ家にお姫様やその従者を泊めるなんて」

「気にしなくていいですよ」

 

そういったが、シンドレアさんもシンドレアさんのお父さんも少し申し訳なさそうな顔をしている。

別にちゃんと寝泊りさえできればどこでもいいんだけどなぁ。

 

 

その日、シンドレアさんの家に一泊させてもらった。

この村の中ではそれなりに大きな民家であり、やはり外側には大きな傷が付いている。

壁の一部分に至っては完全に破壊されており、そこを板で補強してるという痛々しい形だ。

 

料理の方も別にマズくはなかったし、布団も枕も寝心地が悪い、というわけではなかった。

それに部屋が少し狭かったのもあって、全員で布団をくっつけ合う形になって寝るというのは新鮮だった。

ムゼロさんはもしかしたら人形がいきなり夜襲を仕掛けるかもしれないから、という理由で外で見張り番をしている。

シンドレアさんはゆっくり休んでくださいと止めたのだが、ムゼロさんはそういうところは頑固だ。

 

「ムゼロさん、本当に大丈夫かなぁ?」

 

ハスキミリアさんはそんなムゼロさんを心配し、隣の布団で横になってるシンドレアさんも同意する。

 

「やっぱりお父さんと同じ部屋に休んでもらった方が」

「いや、ムゼロなら大丈夫だ」

「うん、昔あれよりも酷い状況で野宿してたこともあったし、ついさっき夜食の差し入れに行ったら『昔を思い出してむしろワクワクしてるぜよ』って言ってイキイキしていたよ」

「……そうですか」

 

あ、シンドレアさんちょっと引いてる。

だけどもちゃんと見張ってくれてるのなら、安心して熟睡できそうだ。

もし人形を破壊するのなら、明日になるだろう。

その時に休めてなくて、疲れた体で闘うなんてことは問題外だ。

 

シンドレアさんが電気を消し、私は目を閉じ眠りに着いた。

 

翌朝。

ムゼロさんは外で見張りをしていたにもかかわらず、目の下に隈も出来ておらず、むしろ元気いっぱいな顔をしていた。

 

「大丈夫。誰かの気配を感じれば即座に目覚めることぐらいは出来るから、眠ってないってわけじゃないぜよ」

 

妙に謎スキルも披露して、昔を思い出したのかやる気に満ち溢れていた。

まぁやる気があるというのはいいことだ。

 

朝食も終え、シンドレアさんがおずおずと頭を下げる。

 

「いつもでしたら、あの人形が襲い掛かってくる時間はもうそろそろです」

「分かりました。では、村の人は避難しておいてください」

 

川に流されたとはいえ、シンドレアさんが危惧してる通り戻ってこないとは限らない。

シンドレアさんとシンドレアのお父さんと一緒に家を出て、鍵をかけた後2人は村の外へと出ていく。

他の村人たちもゆっくりと2人の後についていく。

 

 

「さて、これでもう村に残ってる人はいないよね?」

 

辺りを見回して確認する。

確かにもうすでにこの村には私とシーア、ハスキミリアさん、ムゼロさん、シオンの5人以外誰もいなかった。

昨日人形を川に流してきた男たちは『もう川に流したんだ、戻ってこれやしないさ』と楽観的に言っていたが、シンドレアさんたちの説得もあってちゃんと避難したようだ。

 

私も含めて全員が臨戦態勢を取ってると、ふと村の南側から金属で出来た音が響く。

その音はガションガションと響き、しかも大きくなってくる。

やはり川に流した程度じゃどうにもならなかったか。

 

 

「来る!」

 

そしてムゼロさんが手にした銃を南の方向に向け、数発発砲する。

銃声が鳴り響くが、跳弾した音が聞こえたと同時に銅色で出来た人型の人形が飛び出してきた。

その手には剣と斧が握られており、目の部分だけが赤いガラス玉らしきものを入れられている。

そのガラス玉が不気味に光り、まるで獲物を定めた狩人のようだと思う。

 

『ギギャギャーッ!』

 

そしてムゼロさんが再び数発人形に銃を発砲するが、銃弾は剣や斧で弾かれ、一発だけ頭に入ったが跳弾し、動きを止めるには至らなかった。

 

「嘘だろ、『戦士抹殺』の銃だぞ?」

 

どうやら『戦士抹殺』のカードにおいて戦士を狙ってる銃を具現化し、発砲していたようだ。

デュエルモンスターズの中でも屈強な戦士族を破壊する効果を持つ銃だから破壊力は抜群のはずだ。

その銃すら効かないとなると、相当な硬さだ。

この村の人が破壊しようとしても出来なかったわけだ。

 

「はっ!」

 

シーアが槍で人形に切り込み、シオンさんも人形の足元を蹴りで払う。

人形はシオンさんの蹴りで転ばされ、シーアの槍が首の部分を貫く。

 

「やったか!?」

 

ムゼロさんのその言葉は、即座に裏切られる。

首の付け根を破損させられても普通に動き出し、剣や斧をハチャメチャに振り回す。

シーアもシオンさんも即座に人形の元から撤退していた。

人形の振りまわる武器によって傷つくことはなかったが、2人顔からは驚きは隠せていなかった。

 

「まさか槍で首の付け根を破壊しても動きを止めないとは」

 

シーアは昨日、スディルという作られた人形とデュエルをしていたがそのさなか、頭を銃弾で撃たれて破壊されたことで機能が一部停止した。

すぐに動きを再開したらしいが、この人形の場合は破壊しても一瞬たりとも停止することはなかった。

 

「なら、とりあえずは」

 

ムゼロさんが『仕込みマシンガン』を具現化させ、容赦なく弾丸を浴びせる。

さすがの人形も武器で弾幕を全て弾き飛ばすことはできず、弾き飛ばせなかった銃弾が容赦なく全身に命中する。

 

『ギギャ……ギャーッ!』

 

だが、悲鳴を上げて弾丸が全身にめり込んでもなお動きを止めない。

 

「マジかよ」

「となると……最終手段だな」

 

ムゼロさんもシーアもデッキを取り出し、構える。

シオンさんはおろおろしていたハスキミリアさんの傍に立ち、彼女を守る選択肢を取ったみたいだ。

そして人形は首を少しだけ動かし、デッキの方を見る。

 

『デッキ認知……デュエリスト抹殺人形、稼働』

 

さっきまで機械的な叫び声しか上げなかったのに、突如流暢に喋り出した!?

その変貌ぶりに思わず驚いていたが、ムゼロさんは特に怯むことなく前に出た。

 

「ムゼロさん」

「オディアナ姫、いや、ここにいるみんな。ここは俺に任せてほしいぜよ。あれほど銃弾ぶちこんだのにピンピンされたんじゃ、俺の立つ瀬がねぇ。ここは俺の顔を立ててほしいぜよ」

「…………どうします、姫様?」

 

シーアは一瞬でデッキを片付け、私に意見を求めてきた。

ムゼロさん……あんなに『俺にやらせろ』みたいな顔をされたら、私は彼を止める言葉を出せない。

だから、この言葉をあなたに贈ります。

 

「お願いします、ムゼロさん。ただ、負けそうになったら」

「分かってるって」

 

なんという好戦的な笑み。

あの顔がムゼロさんが一番やる気になったときの顔だったはず。

 

「さぁ、やろうじゃないか人形」

『無差別破壊モード、リセット。決闘モード、移行します』

 

剣と斧が鈍い茶色の光を放ち、デュエルディスクとデッキに変化した。

そしてデッキからカードを5枚引き、ムゼロさんと向き合っている。

 

ムゼロさん、決して無茶だけはしないでくださいね!

 

 

 

「「デュエル」」

 

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