さて、格好つけてあの人形相手にデュエルを挑んだんだ。
格好悪いところは見せられないぜよ。
「俺のターン! 俺はカードを5枚セットしてターンエンド」
一気にカードを5枚伏せる。
さて、あの人形の出方は。
『セットカード、5枚確認』
……驚いた様子、特になしかよ。
普通の決闘者だったらいきなり5枚も伏せてきて顔色を少しは変えるものだが。
まぁ、いい。
ムゼロ LP8000
魔法・罠 セットカード5枚
手札0枚
「私のターン、ドロー」
さて、あの人形にターンが移ったが。
一体どんな戦術を見せてくる。
「『ギミック・パペット―シザー・アーム』を召喚」
頭がハサミで出来た漆黒の人形か。
気味悪い見た目してやがるぜよ。
「シザー・アームが召喚に成功したとき、私はデッキから『ギミック・パペット』と名の付くモンスター1体を墓地へ送ります。墓地へ送るのは『ギミック・パペット―ネクロ・ドール』。そしてデッキの上から8枚を裏側で除外」
一気にデッキの上から8枚も裏側で除外!?
おいおいおい、何考えてやがる。
「手札の『機巧蛇―叢雲遠呂智』を特殊召喚します」
除外された裏側の8枚のカードが蛇の首になりやがった。
正直、気持ち悪っ。
「攻撃力2450のモンスターがデッキトップ8枚除外で特殊召喚されるとは」
「厄介なモンスターですね」
オディアナ姫もハスキミリアさんもいきなりLV8の攻撃力2450のモンスターが飛び出したことに驚いてる。
だけども、それぐらいで俺は怯みはしないぜよ。
「バトル。シザー・アームでダイレクトアタック」
頭部のハサミ部分をこちらに向け、俺を切り刻もうと向かってきやがる。
だが、そんな単調な攻撃は甘いと言わざるを得ない。
「罠カード発動『和睦の使者』」
シーアもシオンも使ってる防御カード。
まぁ、厳密にいえば俺が使ってるのを見て彼女たちはデッキに投入したみたいだ。
そういう意味ではある意味彼女たちの守りは俺が仕込んだようなものぜよ。
もっとも、シーアに至ってはアルトマ王国から託されたデッキにそんな改造を加えるとは思ってなかったから面食らった覚えがある。
「戦闘ダメージが0になり、戦闘でモンスターが破壊されないカードですね」
「その通りだ。だが、俺は止まらない。和睦の使者の効果にチェーンして罠カード『強欲な瓶』発動。デッキから1枚ドローする、そしてその効果にチェーンして『仕込みマシンガン』発動。それにチェーンして『積み上げる幸福』発動。最後に『連鎖爆撃』をドカン、ぜよ!」
あの人形の体に鎖を巻きつける。
そして俺が爆薬を放り投げ、あの人形に纏わりつく。
「チェーン5に『連鎖爆撃』が発動されたことでチェーンの数×400ダメージを与える。よって2000ダメージ、そして積み上げる幸福の効果で2枚ドローし、仕込みマシンガンの効果で1200ダメージだ」
連鎖爆撃で体が爆発した人形に向かって仕込みマシンガンをお見舞いする。
ターゲットが爆風に飲み込まれてるが、それぐらいで俺は狙いを外さない。
実際、銃弾が命中してる音が響いてるのは聞こえる。
何発か弾かれてる音も聞こえてるけどが、お見舞いできてるならそれで良し、ぜよ。
「そして強欲な瓶の効果でドロー」
これで3枚の補充、そして合計3200のダメージをお見舞いできた。
よっしゃ、これでどうだ。
「…………」
だが、爆風が晴れた後、人形は少し煤けていたが、微動だにせず俺を睨みつけていた。
『デュエルモンスターズ』の『闇』の力を借りた一撃だが、やはり『決闘者』相手じゃ少し効き目は薄いか。
デュエルに持ち込んでるからさっきよりは効いてるはずなんだが、どんな素材で出来てるんだぜよ。
「これ以上の攻撃は無意味と判断。メイン2、シザー・アームと叢雲の2体をリンクマーカーにセット。召喚条件は機械族モンスター2体・リンク召喚。『ギミック・パペット―キメラ・ドール』
無数の人形が組み合わさって青い動物みたいな体になってやがる。
さっきから気持ち悪い見た目のモンスターが多いぜよ。
「キメラ・ドールの効果でデッキから『ギミック・パペット―ビスク・ドール』を手札に加えます。そしてカードを2枚伏せてターンエンド」
人形 LP4800
EX:ギミック・パペット―キメラ・ドール
魔法・罠:セットカード2枚
手札:3枚
「俺のターン、ドロー」
だが、完全な意味で効いてないわけじゃない。
だったら、とにかく俺の全力の狙撃をぶち込み続けるだけぜよ。
「俺はカードを2枚セットして『カードカー・D』を召喚」
真正面にでかでかと『D』の文字が貼り付けられた青い車体が来てくれたぜよ。
さて、こいつの効果を。
「召喚成功時に手札1枚を捨てて罠カード『サンダー・ブレイク』を発動します。カードカー・D』を破壊させていただきます」
だが、あの人形の指先から稲妻が放たれカードカー・Dが大破する。
チッ、さすがに露骨すぎたか。
「確かそのモンスターはリリースすることで2枚ドローするカード。モンスターが残らないのであれば始末するのみです。さぁ、どうしますか?」
無機質な声で尋ねてきやがる。
だが、それぐらいのジャマは許容範囲内だ。
「俺はこのままターンエンドぜよ」
ムゼロ LP8000
魔法・罠:セットカード2枚
手札1枚
「そのエンドフェイズに墓地の叢雲の効果を発動します。デッキトップ8枚を裏側で除外」
そしてまたあの蛇が甦りやがった。
闇の力で作られた機械特有の再生能力、ってか。
「少しの焦りが見えますね」
焦り?
「カードカー・Dのドローをアテにしていたと見えますね。それがやられたことで焦りが見えます」
「勝手なことを」
心無い人形のくせに、俺が焦ってると見えてるとは。
その目のカメラ機能、壊れてるんじゃねーかぜよ?
「私のターン、ドロー。私はキメラ・ドールの効果を発動し、デッキから『ギミック・パペット―マグネ・ドール』を手札に加えます。そして墓地の『ギミック・パペット―シザー・アーム』を除外して墓地から『ギミック・パペット―ネクロ・ドール』を特殊召喚します」
なんだ、あの棺桶。
棺桶の蓋が開いて……うわ、赤黒いシミが付いた不気味な人形が出てきた。
「何、あれ」
(ハスキミリア、見ちゃダメです)
ハスキミリアさんに見せないようにティルルが彼女の目を手で隠す。
まあ確かに見てて良い気分になれるものじゃねーぜよ。
「そしてマグネ・ドールは場に『ギミック・パペット』モンスターが存在してるとき手札から特殊召喚できます」
磁石でできた人型の人形がネクロ・ドールの隣に降り立った。
これでLVは8か。
「私はLV8のネクロ・ドールとマグネ・ドール、叢雲の3体でオーバーレイネットワークを構築。エクシーズ召喚。出でよ『No.88 ギミック・パペット―デステニー・レオ』」
3体の人形が地面に沈んでいった。
その地面の下から、獅子を人型にしたような巨大な人形が現れた。
さっきまでの不気味な人形に比べりゃまだマシな見た目してるぜよ。
「攻撃力3200か。さっきまでの人形たちと違って立派な攻撃力してるぜよ」
「ええ。ですが、獅子は兎を狩るのに全力を尽くしますが、人の知能が加わった獅子はもっと効率よく獲物を狩ります。デステニー・レオの効果発動。オーバーレイユニットを1つ取り除いて『デステニーカウンター』を乗せます。この効果を使うターン、私はバトルフェイズを行えません」
攻撃力3200の獅子が、攻撃を放棄するだと?
一体何が。
「デステニーカウンターがこのモンスターに3つ乗ったとき、私はこのデュエルに勝利します」
戦闘を介さない特殊勝利だと!?
「更に焦りが見えましたね。どうやらそのセットカードと手札は私の攻撃に反応するカードと推測できます」
……ぐっ、うっかりリアクションを取ってしまった。
「ムゼロさん、そんなことないよね!」
ハスキミリアさんが声をかけてくれるが、さすがに嘘はつけやしねぇ。
伏せてあるカードは『威嚇する咆哮』に『魔法の筒』。
そして手札は『速攻のかかし』。
カードカー・Dのドローでバーンカードを引き込む予定だったが、それすらも読まれてた。
「顔色が青いですよ? どうやら、私に弾丸を撃ち込むことに夢中で、忍び寄ってきていた獣に気づいていなかったみたいですね」
……言い返す言葉はない。
あの心無い人形にハッタリが通用するとは思えないぜよ。
だが、ハスキミリアさんを含めたみんな。
なんだその心配した顔は。
女に心配されるほど、このムゼロは落ちぶれた覚えはないぜよ!
「私はこのままターンエンド」
人形 LP4800
モンスター:No.88 ギミック・パペット―デステニー・レオ
EX::ギミック・パペット―キメラ・ドール
魔法・罠:セットカード1枚
手札:3枚
「俺のターン、ドロー!」
ここで『まだ』と考えるか『もう』と考えるかでネガティブかポジティブかが決まる。
『もう残り2ターンしか余裕がない』と考えるのはネガティブ思考。
『まだ2ターンも猶予がある』と考えるのはポジティブ思考。
当然俺は後者だ。
「よし、『強欲で金満な壺』発動! EXデッキから裏側で6枚を除外して2枚ドロー!」
ここで2枚のドローは有難い。
そして……よし。
「俺はカードを2枚伏せてターンエンドぜよ」
ムゼロ LP8000
魔法・罠:セットカード4枚
手札:1枚
「さて、私のターン、ドロー。私はキメラ・ドールの効果でデッキから『ギミック・パペット―チア・チェンジャー』を手札に加えます。『No.88 ギミック・パペット―デステニー・レオ』の効果を発動。2つ目の『デステニーカウンター』を乗せます」
デステニー・レオの体が徐々に輝き始める。
あの輝きが満ちたとき、俺はあの獅子の人形に獲物として刈り取られるというわけか。
「私はカードを1枚伏せてターンエンド」
人形 LP4800
モンスター:No.88 ギミック・パペット―デステニー・レオ
EX:ギミック・パペット―キメラ・ドール
魔法・罠:セットカード2枚
手札:4枚
「俺のターン、ドロー」
引けるか……っ!
「よし」
そんな心配したような眼をするなって、皆。
ここでこいつを引けたのはデカい。
「デステニー・レオとキメラ・ドールの2体をリリースして『溶岩魔神ラヴァ・ゴーレム』を特殊召喚!」
獅子の人形と人形の集合体が溶岩に飲み込まれていき、その溶岩が魔神の姿となり、手にした籠で人形を閉じ込める。
「……!」
どうやら完全に想定外、だって感じだな。
表情はないが、その様子が見たかったぜよ!
「俺はこのままターンエンド」
ムゼロ LP8000
魔法・罠:セットカード4枚
手札:1枚
「私のターン、ドロー」
「スタンバイフェイズにラヴァ・ゴーレムの効果で1000ダメージ受けてもらうぜ」
垂れてくる溶岩にそのボディは耐えられるかな?
溶岩が人形の腕に垂れてくる。
「……私の体が!」
よし、溶岩で肩辺りが焦げ付いてる。
さすがに無敵のボディというわけではないみたいぜよ。
人形 LP4800→3800
「ですが……私は墓地の『ギミック・パペット―キメラ・ドール』を除外し『ギミック・パペット―ネクロ・ドール』を特殊召喚します」
再び棺桶から不気味な人形が這い出てきたか。
しかし……ラヴァ・ゴーレムのLVは8。
エクシーズ素材かリンク素材に使われちまう。
「私は『ギミック・パペット―ギア・チェンジャー』を召喚します」
頭が歯車でできた人形か。
狙うならこのタイミング!
「罠カード『仕込み爆弾』発動! 相手の場のカードの数×300ダメージを与える!」
ギア・チェンジャー、ネクロ・ドール、ラヴァ・ゴーレム、そしてセットカード2枚。
場のモンスターがオーバーレイユニットかリンク素材になる前に1500ダメージ与えてやるぜよ!
「くらいな!」
俺が巨大な爆弾を放り投げ、人形の足元で爆発する。
さっきラヴァ・ゴーレムが肩の辺りを焦がし、傷つけた。
いくら耐久性が高かろうが、壊れかけた部分に攻撃を続ければ。
「……!」
狙い通り、右肩辺りが完全に壊れかけてる。
あと少しダメージを与えれば右肩の付け根から完全に壊せるはず。
だが、先ほどシーアが首を潰しても再生したからな。
デュエルモードだと自動再生する機能が鈍くなってるかもしれないが、時間を与えてはいけない。
人形 LP3800→2300
「ギア・チェンジャーとラヴァ・ゴーレムの2体でオーバーレイネットワークを構築! エクシーズ召喚! 『No.40 ギミック・パペット―ヘブンズ・ストリングス』!」
天使の翼を生やし、剣を携えた巨大人形があの人形の場に降り立つ。
「魔法カード『ジャンク・パペット』を発動します! 墓地から『No.88 ギミック・パペット―デステニー・レオ』を蘇生させます!」
一気にモンスターを蘇生させてきたか。
「永続罠カード『掃射特攻』発動! ヘブンズ・ストリングスのオーバーレイユニットを2つ取り除き、最初にセットされた2枚を破壊します」
「ならその効果にチェーンして『威嚇する咆哮』発動だ」
「そうはいきません。カウンター罠カード『神の宣告』を発動します。LPを半分支払い威嚇する咆哮の発動を無効にし、破壊します」
とうとう自身のLPを削ることすら構わない、というわけか。
『仕込み爆弾』の所にチェーンしてしまえば1900のコストで1500を止められる。
それじゃ確かに意味がないからな。
人形 LP2300→1150
「残りセットカードは1枚、手札も1枚。バトル! ヘブンズ・ストリングスでダイレクトアタック!」
「手札の『速攻のかかし』発動! 攻撃を無効にしバトルフェイズを終了させる」
「その攻撃が無効にならなければいいだけの話。手札から速攻魔法『RUM―クイック・カオス』を発動します。場の『No』と名の付くモンスターを素材に、同じ『No.』の数字を持つ『CNo.』1体をエクシーズ召喚とします! ヘブンズ・ストリングスを素材にランクアップ!」
かかしが降り下ろされた剣を受け止めようとした瞬間、剣そのものが闇となって消え、かかしがあらぬ方向へと飛んでいく。
「出でよ『CNo.40 ギミック・パペット―デビルズ・ストリングス』!」
さっきと違い、天使の翼が悪魔の翼になってる。
そして悪魔の人形が俺に剣を振り下ろす。
だが、攻め急いだのが運の尽きだ。
「罠カード『業火のバリア―ファイヤー・フォース―』発動! 相手の場のモンスターが攻撃したときに発動し、相手の場の攻撃表示モンスターをすべて破壊し、その破壊したモンスターの攻撃力の合計の半分だけ俺はダメージを受け、その後俺が受けたダメージ分、お前もダメージを受けてもらう」
「な!」
どうやら気づいたようだ。
3300と3200。
その合計は6500。
バリアの放つ熱が俺自身を襲う。
「ぐっ」
ムゼロ LP8000→4750
だが、3250のダメージを受けてしまえば。
「これで終わりだ」
「……!」
人形 LP1150→0
肩の破損した部分に炎が注がれていき、そこから全身があの人形が焼き焦げていく。
さすがに全ての機能が炎で焼き払われてしまえば……
人形はぶすぶすと煙を上げ、その場に倒れこんだ。
再生機能も全て焼き払えば、再生することはない。
「やったぁ!」
ハスキミリアさんが俺に抱き着いてきて、俺は優しく抱き留める。
そこのドラゴンメイドさんたち、俺はハスキミリアさんに手を出す気はないからそんな睨まないでほしいぜよ。
「お疲れさまでした」
「おう、オディアナ姫様。俺、やり遂げたぜよ」
姫に告げると、優しい笑顔で俺を見てくれた。
シーアが忠誠を誓うのも分かる笑顔だ。
なんとかこの村を襲っていた人形の討伐は完了したぜよ。
しかし……あの人形を作り上げたのは、一体誰だったんだぜよ?
「……やられた」
動きを完全に停止させた人形をこっそりと見ていたスディルに、その場にいた誰もが気づくことはなく。
「……戻る」
スディルは溜息をつき、その場から姿を消したのだった。