「……………」
洞窟の外。
シーアは目を閉じ、中にいる妹のことを案ずる。
夜食の買い出しと言い、オディアナ姫を部屋に置いてここまでやってきた。
この村に男の人はおらず、そして妹は何かを決意した目をしていた。
真っ当な姉だったら、妹が無茶をしないように止めるのが筋なのだろう。
だが、妹を信じ待つこともまた、姉の務め。
オディアナ姫は部屋で一人くつろいでいるが、ムゼロにちゃんと頼んでいる。
彼ならきっちりと姫を護衛してくれるだろう。
男たちがこの洞窟から出てきたのは確認している。
後は妹……シオンが無事に戻ってくるのを待つだけだ。
「私はペンデュラムスケール8の『メタルフォーゼ・スティエレン』と『メタルフォーゼ・ヴォルフレイム』の2体をセッティング!」
「あらあら、ペンデュラム召喚をするのにスケールが同じじゃいけないわよ?」
馬鹿にしないでもらいたい。
私の信じてるメタルフォーゼの戦略はここからだ。
「スティエレンのペンデュラム効果発動。ヴォルフレイムを破壊し、デッキからメタルフォーゼ魔法・罠カード1枚をセットするよ。デッキから『錬装融合』をセット。そしてペンデュラムスケール1の『パラメタルフォーゼ・メルキャスター』をセッティング。これで私はLV7から2までのモンスターを同時に特殊召喚可能! ペンデュラム召喚!」
2体のモンスターの間に開いた時空の穴から2体のモンスターが飛び出していく。
「EXデッキから出でよ『メタルフォーゼ・ヴォルフレイム』!」
巨大な戦車とバイクに乗る私の信頼している戦士たちがやってくる。
ヴォルフレイム ATK2400
「一気に強力なモンスターを特殊召喚してきたわね」
「問題なのはシャンバラね。攻撃してきた瞬間に効果を発動して裏守備の導師を表側表示にされて攻撃を無効にされちゃう」
だったら、やることはただ一つ。
「なっ!?」
導師のカードが吹っ飛ばされ、タルバスの場に巨大な蛾が降り立つ。
「裏守備モンスター1体をリリースして『怪粉壊獣ガダーラ』を特殊召喚する!」
洞窟の大きさに合わせて少し小さいが、それでもかなりの大きさの蛾があの女の場にやってきてる。
「そして『錬装融合』を発動するよ! 手札のゴルドライバーとシルバードの2体で融合! 出でよ『メタルフォーゼ・ミスリエル』!」
ウィングパックを装備したサイキック戦士、私のエースモンスターだ。
「墓地の『錬装融合』をデッキに戻して1枚ドロー。そしてミスリエルの効果発動。墓地のシルバードとゴルドライバー、そして場のガダーラを対象にして発動。墓地の2枚をデッキに戻して対象にした場のカードを戻す」
ミスリエルがガダーラの胴体に蹴りを入れ、呻きながらガダーラがカードに戻り、シオンの手札へと戻る。
「なっ……」
「バトルフェイズ。ヴォルフレイムとミスリエルの2体でダイレクトアタック」
ヴォルフレイムが勢いよく戦車で突撃していき、タルバスを吹っ飛ばす。
そして吹っ飛ばされたタルバスをミスリエルが勢いよく地面へと蹴り落とす。
「あああっ!」
タルバス LP8000→3000
「よっし!」
一気に大ダメージ!
ガダーラも手札に戻ったし厄介なモンスターが出てきても対処できる。
このまま一気に押し切る!
「メイン2、メルキャスターの効果でスティエレンを破壊して『メタルフォーゼ・カウンター』をセット。カードを1枚伏せてターンエンド」
シオン LP8000 場 メタルフォーゼ・ヴォルフレイム メタルフォーゼ・ミスリエル 魔法・罠カード メタルフォーゼ・メルキャスター セットカード2枚 手札1枚
「私のターン、ドロー!」
タルバスが勢いよくカードを引き、ふっと笑う。
「私は1000LPを支払い魔法カード『簡素融合』を発動! EXデッキからLV6以下までの通常融合モンスター1体を特殊召喚する! 来て『カルボナーラ戦士』!」
立派な剣を持ち、鎧に身を包んだ戦士が現れる。
「効果のない攻撃力1500のモンスターで何をするの?」
「男同士で恋愛出来ないなんて誰が決めたの? 私は『サブテラーの戦士』を召喚!」
赤き髪の毛をたなびかせ、美麗な戦士がタルバスの場に降り立つ。
「サブテラーの戦士の効果発動。デッキからサブテラーモンスター1体を墓地へ送り、戦士と私の場のモンスター1体をリリースすることで墓地のサブテラーモンスター1体を蘇生させる。サブテラーの戦士とカルボナーラ戦士をリリースし墓地へ送った『サブテラーマリス・リグリア―ド』を裏守備表示で特殊召喚する」
サブテラーの戦士がカルボナーラ戦士の顎をくいっと引き、カルボナーラ戦士がどきっと胸を高鳴らせる。
そして勢いよくサブテラーの戦士がカルボナーラ戦士を押し倒し、愛を語り合う。
その瞬間、地面が割け2人が地中奥深くへと堕ちていき、リグリア―ドが代わりに地面へと現出する。
「なんなの今の……?」
「男同士の愛の語り合いは、まだあなたには早いみたいね。そしてシャンバラの効果発動。リグリア―ドを表側守備表示にしてミスリエルを除外するわ」
地中から現れた巨大な黒き蛇がミスリエルの体に巻きつき、そのまま体内へと取り込んだ。
「こうもあっさりとミスリエルを……」
「そしてリグリアードがリバースしたことで墓地のサブテラーの戦士の効果発動。墓地からこのカードを蘇生するわ」
どこか満足しきったような顔でサブテラーの戦士が地中から飛び出してくる。
カルボナーラ戦士だけが犠牲になったみたいだけど……うん、細かく想像するのはやめておこうっと。
「バトルフェイズ。サブテラーの戦士でヴォルフレイムに攻撃!」
戦士が手にしていた剣でヴォルフレイムの戦車に斬りかかる。
「攻撃力1800……自滅?」
「いや、そんなわけないでしょ。罠カード『サブテラーの決戦』を発動。戦士の守備力1200を戦士の攻撃力1800に加え、攻撃力は3000になる」
戦士が顔つきにふさわしくない野太い叫びを上げ、ヴォルフレイムの戦車を真っ二つに切り裂いた。
「そして『サブテラーの決戦』は発動後、墓地へ送られずセットされるわ」
「くっ……だけども私の場のカードが破壊されたことで罠カード『メタルフォーゼ・カウンター』発動!」シオン LP8000→7400
「さっき手札に加えたカードの効果を忘れた? 『サブテラーの妖魔』を手札から墓地へ送り、カウンターの効果を無効にし、リグリアードを裏守備にするわ」
ピンキロの髪の毛をした異種族の女性がカウンターのカードを指で押さえ、その能力を封印した。
そしてその後リグリアードが妖魔をぱくんと食べてしまい、食事を終えて満足したのか眠ってしまう。
「これで一気に形勢逆転ね。メイン2、このままターンエンド」
タルバス LP2000 場 セットモンスター(サブテラーマリス・リグリアード) サブテラーの戦士 魔法・罠カード セットカード2枚 手札1枚
「私のターン、ドロー!」
確かに一気に形勢逆転された。
だけども、ピンチの後にチャンスあり。
「まずはサブテラーの戦士にはご退場願うわ」
サブテラーの戦士がガダーラに押しつぶされ、地面へと埋められてしまう。
「くっ」
「そして永続罠カード『メタルフォーゼ・コンビネーション』発動。メルキャスターの効果でコンビネーションを破壊し、デッキから『混錬装融合』をセット。そして墓地へ送られたコンビネーションの効果発動」
シオンの墓地から炎が噴き上がり、その中から1枚のカードが現れる。
「デッキからメタルフォーゼモンスター『レアメタルフォーゼ・ビスマギア』を手札に加えるわ。そして魔法カード『混錬装融合』を発動! 手札のビスマギアとEXデッキのヴォルフレイムの2体を墓地へ送り2体目のミスリエルを融合召喚するわ!」
再びミスリエルが現れ、伏せられたカードを見据える。
「墓地のビスマギアと混錬装融合をデッキに戻し、その伏せカードを手札に戻させてもらうわ」
「あら、ミスリエルの攻撃力は2600,ガダーラの攻撃力2700には届かないわ」
確かに数値上じゃミスリエルはガダーラに勝てない。
だけどもデュエルは攻撃力の数値だけで決まるゲームじゃない。
「手札の『メタルフォーゼ・バニッシャー』の効果発動。メタルフォーゼカードを含む表側表示のカードを2枚破壊して特殊召喚する!」
ミスリエルとメルキャスターの2体が炎に包まれその体が金属へと変化する。
その金属が組み合わさっていき、全てを滅する戦士が炎の中から産まれ落ちる。 ATk2900
「バニッシャーの効果発動! メタルフォーゼカードの効果で特殊召喚に成功した時、相手の場か墓地のモンスター1体を除外する! 裏守備のリグリアードを除外する」
眠っていたリグリアードに向けてバニッシャーが指をパチンと鳴らすと、一瞬でその体が炎に包まれ、黒焦げとなり消滅していく。
「リグリアード!」
「そして墓地へ送られたミスリエルの効果。EXデッキか墓地のメタルフォーゼモンスター1体を選択して特殊召喚する。甦って『メタルフォーゼ・ヴォルフレイム』」
先ほど戦士の攻撃で真っ二つにされた戦車が炎により完璧に修復され、シオンの場に降り立つ。
「これで役者は揃った。さぁ、行こう! バニッシャーでガダーラに攻撃!」
バニッシャーがガダーラに抱き着くと、そのまま全身から火を放ち、ガダーラと己自身を焼きつくす。
ガダーラが消滅するが、バニッシャーは溶け落ちた自身の肉体を再構成し、再びシオンに場に降り立つ。
「え、これって」 タルバス LP2000→1800
「そう、攻撃力2400のヴォルフレイムでダイレクトアタックし、あなたのLPは0になる!」
この村の女性を悲しませ、男性たちを己の欲で苦しめた罪を、贖いなさい!
シオンの強い意志が炎となり、ヴォルフレイムが強き炎で全身を焼きタルバスに突撃する。
強き炎を纏った突撃をタルバスは回避できず、壁に強く吹っ飛ばされた後、全身に炎が広がっていく。
「あ、嘘でしょ、私が全力も出せずに消える?」
タルバスが無念の声をこぼし、炎が消えていく。
炎が消えたとき、タルバスの姿はそこにはなく、1枚の黒炭となったカードが落ちていた。
タルバス LP1800→0
「……ふぅ」
誰も見てないけども、私一人でやり遂げた。
これであの村には平和が戻ってくる。
徐々に達成感が私の中に満ちていき、ぐっと握り拳を作っていた。
「終わったみたいね」
洞窟の外に出ると、石壁にお姉ちゃんがもたれかかっていた。
声色からして特に怒ってるわけじゃないと思うけど……
何を言われるか分からず思わず黙り込んでしまうと、優しく頭をぽんぽんとしてくれた。
「村のために助けになりたいと思う素直な気持ち、そして敵を確実に仕留めるその強さ。本来姉としては妹の行動を窘めるべきなんだろうけども……誇らしいという気持の方が強いな。よくやったね」
「お姉ちゃん……ありがとう」
城での兵勤めをしていた時、常に自分にも他人にも厳しいお姉ちゃん。
だけど、私の行いを咎めるわけでもなくむしろ讃えてくれた。
それだけで心が暖かくなっていくのを感じていた。
「さてと、私は姫に夜食の買い出しのために外へと出ると言っているのだ。平和になった村に戻って夜食の菓子でも買って戻ろうか」
「うん」
私が思わずお姉ちゃんの手を握ると、お姉ちゃんが私の顔を見てくる。
……ちょっと子供っぽかったかな?
だけどもお姉ちゃんは手を離すわけでもなく、少しだけ優しく握り返してくれた。
ますます心が暖かくなるのを感じながら、私とお姉ちゃんは村へと戻っていくのであった。