遊戯王 神秘眼の姫君   作:ヴィルティ

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竜捕らえし闇の機竜

「皆ー、いるー!?」

 

屋敷に入るなりパルラが大声で叫ぶ。

 

「パルラさん、ご主人様や仲間が心配なのは分かりますけど、いきなり大声を上げるなんて」

「すでに敵の手に落ちてしまったのなら、わざわざ敵に存在を教えるのは問題だぞ」

 

オディアナとシーアがパルラを咎める。

彼女はしまったと言いながら口を抑える。

 

「……まぁ、やってしまったものはしょうがない。とりあえず探してみるとしよう」

「そうですね。にしても、立派なお屋敷ですね。よく他の人たちが気づかなかったね」

 

オディアナが屋敷の中をきょろきょろと見渡す。

中は電気もちゃんと通っており、闇が暗闇をもたらしてもこの電気が屋敷を明るく照らす。

町はずれの森の中にあるだけに、明かりが灯る屋敷が存在していれば誰かが気づくはずだ。

 

「えへん、私たちのメイド長であるハスキー様が結界をお張りになったんです。ですが、その結界もザイバに見破られて、今では奴がこの屋敷を……」

 

パルラが握りこぶしを作り、ぷるぷると震わせる。

誰が見ても怒りの感情に満ち溢れていることが分かる。

そんな彼女を見て何も感じないほどオディアナとシーアは薄情な人物ではない。

 

「なら、早いところそのザイバって奴をとっちめないとな」

「ええ。行くわよ、シーア」

「はい。オディアナ姫とパルラさんは私の後ろに」

 

シーアが先頭に立ちオディアナとパルラを連れ屋敷のメインホール内を歩く。

 

 

「……今の声」

 

眼鏡をかけた黒髪の少女がゆっくりと顔を上げる。

それと同時に、首につけられていた鉄の首輪と鎖がじゃらりと鳴る。

首輪をつけられ、天井から垂れ下がっている鎖に首と両腕を繋がれ、動けないようにされていた。

そんな彼女の顎を、金色の瞳を持つ白髪の老人はゆっくりと撫でる。

 

「ふふふ、せっかく上手いこと逃げられたのに戻ってくるなんて馬鹿な子だ。過去のご主人のことなんて忘れて新しいご主人に尻尾を振っていれば、今の君のような目に遭わずに済んだものを」

「くっ」

 

ハスキミリアが老人……ザイバを睨みつける。

 

(お嬢様に手を出すな!)

(この……)

 

ハスキミリアが成長しドラゴンになったような見た目の女性……『ドラゴンメイド・ハスキー』と白髪のドラゴンメイドである『ドラゴンメイド・チェイム』がザイバを睨みつける。

 

「おっと、これ以上近づこうものなら君たちのご主人様がどうなってもいいと?」

 

ザイバがハスキミリアの首に手をかけると、ハスキーとチェイムが悲痛な顔で「やめて」と叫ぶ。

それを聞いたハスキミリアが申し訳なさそうに首を垂れ、その光景を見ていたザイバがにたぁを笑う。

 

「さて、すでに他のメイドがパルラを迎えに行ってくれている。その後は……くくく」

 

ザイバがにたにたと下品な笑みを浮かべ、目を閉じる。

 

「まあ待てばよい。馬鹿な小娘を捕らえた後、ゆっくりと可愛がってやろう」

 

 

屋敷の中の廊下を歩き、シーアが前方に注意を払う。

パルラが後ろを確認し、間にいるオディアナがシーアの背中をじっと見る。

 

「シーア、大丈夫?」

「今のところ敵襲はありませんね。この廊下の先の部屋から探していかないと」

「分かったわ」

「皆、大丈夫かな」

 

さっきの反省を活かし、パルラが小声で呟く。

 

「……ザイバとやらの目的は皆殺しとか、命を奪う目的ではないだろう」

 

シーアがぽつりと呟き、パルラとオディアナがシーアの背中を見る。

 

「どうしてそう思うの?」

「ここに来るまで、屋敷の中から血の匂いを一切感じなかった。屋敷の中を支配こそすれど、誰かを傷つけたりといったことはしてないんだろう」

 

シーアがきっぱりと言い切ると先に進む。

 

「とはいえ、パルラさんを手中に収め目的を果たしたら、次の目的が殺戮行為とも限らない。とりあえず被害者が出る前に解決しないといけませんね」

「頼りにしてるわよ、シーア」

 

オディアナが呟いたところでシーアがほんの一瞬足を止める。

それを見逃さないほどオディアナとシーアの付き合いは短くない。

 

「シーア?」

「……何かが近づいてきますね」

 

シーアの足取りが少し早くなる。

それに付いていくようにオディアナとパルラは彼女の後を付いていく。

 

「後ろからは一切気配はありません。ですが、いつ挟み撃ちにされてもおかしくはない……おや?」

 

シーアが少し戸惑ったような声を出し、オディアナが思わず立ち止まる。

後ろからきていたパルラが足を止めきれずオディアナの背中に顔を突っ込む。

 

「いひゃい」

「ごめんね、パルラちゃん。どうかしたの?」

「近づいてきたはずの3つの気配が一か所で止まりました。このあんまり広くない廊下だと1VS1になるだろうと予測したからでしょうか?」

「この先は……私たちとご主人様がお食事をする大広間だ」

「なるほど、そこで私たちを仕留める気ね」

 

オディアナの言葉にシーアが同意する。

 

「そのようですね」

「とりあえず廊下を進んで2番目の角を右に曲がってまっすぐ進んだところに大広間があるよ」

「丁寧な案内、さすがはメイドですね助かります」

「えへへ」

 

シーアに褒められパルラが照れつつも笑顔になる。

 

「じゃ、行きましょうか」

「はい」

 

 

そしてパルラに案内された道を歩き、オディアナたち3人が大き目な扉の前で立ち止まる。

 

「行きますよ」

「うん」

 

オディアナが扉を開くと、大きなテーブルが部屋の中央を占めていた。

そのテーブルの前に3体のドラゴンメイド……赤い髪の毛とロングスカートメイド服の『ドラゴンメイド・ティルル』、青い髪の毛と割烹着メイド服の『ドラゴンメイド・ラドリー』、ピンク色の髪の毛とナースメイド服の『ドラゴンメイド・ナタリー』がいた。

 

「な、何あれ?」

 

だが、オディアナはとある異様な光景に目を奪われる。

ドラゴンメイドたちの頭の上には竜を模したかのような黒い機械が存在しており、その機械から触手が伸び、ドラゴンメイドたちを捕らえていたのだ。

 

「皆、大丈夫!?」

「いやあれどう見ても大丈夫には見えないと思う」

 

パルラが叫ぶ中、シーアが思わず口を挟む。

そしてシーアの言葉通り、ゆっくりとラドリーが口を開く。

 

「ぱ、パルラさん……? た、助けてほしいです」

「ラドリー!?」

「私たち、この機械竜に囚われて」

「さっきからこいつらを殺せという声が頭の中で大音量で響いてるんです」

「い、イヤです」

 

ラドリーがそうつぶやいたのと同時に、上の機械竜の部分が目を光らせる。

 

「来ます!」

 

細長いヘビのような見た目をした機械竜……『サイバー・ダーク・キール』が口から水を吐き出し3人の視界を奪う。

 

「これってラドリーの!?」

「舐めるなっ!」

 

シーアが手にした槍で水を切り開き、キールに切りかかろうとする。

だが竜の角を模した機械竜『サイバー・ダーク・ホーン』が口から炎を吐きシーアを襲う。

 

「危ない!」

 

オディアナの呼びかけを聞き左へ側転し炎を回避する。

そして急いでオディアナとパルラの元へと戻っていく。

 

「あんなことが出来るのか、あの機械竜たちは」

「おそらくだけど、皆の力を使ってる」

 

そして竜の翼を模したような機械『サイバー・ダーク・エッジ』がピンク色の光を放ち部屋を一瞬光で染める。

 

「姫、パルラさん!」

 

オディアナとパルラが眼を開いたとき、自分たちの体は光のバリアに包まれていたのがまず確認できた。

だが、シーアはそのバリアの中におらず、接近してきていた『サイバー・ダーク・ホーン』と『サイバー・ダーク・キール』を槍で相手していた。

 

「シーア!」

「大丈夫です、姫!」

 

シーアが槍でなんとか機械竜を切ろうとするのだが、その瞬間に触手で絡めとっているドラゴンメイドを盾にする。

そして一瞬手が鈍った隙に残りの2体がシーアを襲撃する。

そのトリオ戦術でシーアは上手いこと攻めに転じることが出来なかった。

 

(今日の傭兵の時だってそうだった。シーアに戦わせてばかり。王族護衛隊長として守ってくれるのはすごく嬉しいけども、私だってなんとか戦うことが出来れば)

(オディアナ)

 

ふとオディアナが左手あたりにじんわりと暖かい何かが存在していることに気づいた。

 

(あなたたち?)

(オディアナがちょっと疲れるかもしれないけど、オディアナが戦えって命じてくれれば私たちは力を奮う)

(いいの?)

(もちろん。デュエリストというのはデッキと心を通い合わせる者のこと。その主人が戦いたいと望むのなら、いくらでも力を貸すよ)

(だったら、お願い。シーアに力を貸してあげて)

(了解!)

 

 

オディアナが目を閉じ、ほんの少しだけ紫色の光が放出された。

 

「今のは」

 

パルラが尋ねようとした瞬間、シーアの隣に『オッドアイズ・ミラージュ・ドラゴン』と『オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン』が姿を現わす。

 

(オディアナを守る人は僕たちの仲間!)

(シーア殿、助太刀いたす)

 

ミラージュたちを見てシーアが一瞬だけ驚くが、こくんと頷く。

 

「ああ、ありがたい。ただ、オディアナ姫が限界を感じるか危機に陥ったときは即座に戻ってくれ」

(分かったよ!)

(では、参る!)

 

 

オッドアイズ・ミラージュ・ドラゴンがサイバー・ダーク・エッジに向かっていく。

ナタリーが目を見開かされたと同時にピンク色の光が部屋内に満ち溢れそうになる。

 

(おっと)

 

だがミラージュが淡い緑色の球体型のバリアでエッジを包み込み、光が球体の中だけで満ち溢れた。

 

「眩しっ」

 

意識を奪われていたナタリーすらも思わず意識を取り戻すほどの光を浴びナタリーが目を閉じた。

 

(今だ!)

 

ミラージュの顎がナタリーを捕らえていた触手を切り裂き、ナタリーが地面へと落下していく。

その瞬間、先ほどと同じようなバリアがナタリーの体を包み込む。

 

(えーい!)

 

寄生先を失いおろおろしていたエッジの体をミラージュの顎が貫く。

エッジがバチバチと音を立てショートし、そのまま爆発した。

 

(よし!)

 

 

(ほぅ、面白い)

 

ティルルを乗っ取ったホーンが口から炎を吐き、オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンを襲う。

 

(我らの始祖『オッドアイズ・ドラゴン』は炎を武器とする。その始祖にペンデュラムの力を宿した私相手に炎でお相手してくるとはな)

 

オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンの赤い瞳の部分が赤く光り、それと同時にオディアナの片方の目も赤く光る。

 

(行くよ)

 

オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンも口から炎を吐き、ホーンが吐く炎とぶつかり合う。

炎がぶつかり合ってはその場で消えていく。

だが、その炎同士が発する熱は消えることはなく、むしろ増していき部屋内の温度が上がる。

 

「……熱っ!?」

 

機械で出来た触手にも熱が広がり、それで捕らわれていたティルルが意識を取り戻す。

だがその触手はティルルを離そうとしない。

だが意識を取り戻したティルルが何度も熱い熱いと叫び、、ホーンの支配力よりもティルルの生存本能が上回る。

 

「離しなさーい!」

 

そしてやがてティルルが腕を全力で振り、触手を力づくでぶっ壊した。

 

(火事場の馬鹿力、とはよくいったものだ)

 

オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンがそんな諺があったなと思い、ふっと笑いながらティルルを見る。

 

「あ、熱かったぁ。助けてくれたのは感謝するけど、他にもやり方があったでしょ?」

 

ティルルが文句を垂れるのを聞き、大丈夫だと判断したオッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンがさらに勢いよく炎を吐く。

ティルルから炎の力を奪い取れなくなったホーンの吐く炎が徐々に消えていき、やがてホーンがエネルギー切れを起こした。

こうなってしまえば、どちらが勝つかは火を見るより明らかだった。

 

(トドメだ!)

 

炎に闇のエネルギーを込め、黒きエネルギー波がホーンの体を包み込む。

ホーンの体が炎が籠った闇に耐えきれず爆発した。

 

 

「っと」

 

キールが水の球を発射しシーアを牽制する。

たかが水、されど水だ。

水を利用したウォーターカッターはダイヤモンドすら切断するほどの力を持つほどだ。

それにはさすがに劣るものの水の力でシーアに向かっていく。

 

「あ、あうっ、そんなところ触らないで」

 

だがキールの触手がラドリーからエネルギーを補給しようと彼女の体をまさぐる。

それの動きにびくっと反応し、ラドリーが顔を赤くする。

それを見ていたシーアが嫌悪感を抱きつつ、ふととあることに思い至る。

 

(やってみる価値はあるか。勝負は一瞬の隙)

 

そう考えている間に水の刃がシーアを襲う。

シーアが刃を槍で受け止め、漆黒の槍の穂先に全力を込める。

 

「くおおおおおっ」

 

シーアが踏ん張り声を上げ、攻撃を耐える。

お互い体を震わせつつその場から一歩も動かない。

 

「シーア、頑張れ」

「ええ、頑張ります!」

 

オディアナから激励の声を受け、シーアが一層腕にと槍の穂先に力を込める。

水の刃がうっすらと切れていき、やがて水の刃が消え槍の穂先が空中を切った。

そして触手がもぞもぞと動き出す。

 

「やだ、また」

 

力を補給しようとラドリーの体をまさぐろうとするその瞬間が決定的な隙だった。

シーアが手にした槍を床に突き刺し、手に力を入れる。

 

「はっ」

 

シーアが紫色の茨の鞭を出現させ、それを勢いよく奮う。

鞭がキールの体と触手に絡みついていき、完全に鞭に絡みとられ動きが封じ込められた。

 

「今だ」

 

地面に突き刺した槍を引き抜き、ラドリーを絡みとっていた触手の元を断ち切った。

 

「わわっ」

 

ラドリーが地面に着地し無事を確認したところで、シーアが槍でキールの頭を勢いよく貫く。

 

「女の子の体をまさぐる破廉恥、成敗する」

 

キールの頭が粉々に粉砕され、ボディが床に墜落し爆発した。

 

 

「ふぅ」

 

バリアが解除され、オディアナとパルラが床に着地する。

 

(僕たち、頑張ったよ)

「ありがとう、ミラージュたち」

 

オディアナがミラージュとペンデュラムの頭を撫でると2体の竜は満足したように消えていった。

 

「もちろんシーアもお疲れ様」

 

オディアナがシーアの頭を撫で、シーアが思わず面食らう。

 

「オディアナ姫?」

「あ、ご、ごめんねつい」

「まったく、私は子供じゃないんですよ」

 

シーアがそういうが、顔が少し赤らみちょっと嬉しそうだったのをパルラは見逃していなかった。

そして3人のメイドたちが無事だったのを確認し、パルラが3人の元へと駆け寄る。

 

「大丈夫?」

「うん、なんとかね」

「ラドリー、あの機械に体いっぱい触られて、すごく恥ずかしかったです」

「わ、私も……胸とか触られちゃったし」

 

ラドリーたちが言葉を口にするたび、怒りのボルテージが上がっていってるのがオディアナとシーアの目には取れた。

 

「さぁ、行きましょうか。あのザイバが私たち3人にあの機械を取り付けた場所。そこにハスキミリア様が囚われてる」

「早く助け出して、あのエロジジイをぶっ飛ばしましょう」

 

怒りに燃えてるドラゴンメイドたち4人に対してオディアナもシーアも口を挟むことはせず、駆け足で進んでいく4人の後を付いていった。

 

 

応接間。

その扉をパルラたちは勢いよく開ける。

 

「ザイバ!」

「む……どうやらあの3人はしくじったようだな」

 

ザイバが先頭に立っていたパルラを見て忌々しげに呟く。

 

「そうよ。この2人が助けてくれたのよ」

 

パルラが後ろに手を向けると、オディアナとシーアが少し息を切らし立っていた。

 

「あ、あれ?」

「あ、歩くの早いって」

「無言で付いていくのも大変だったんだぞ」

「わはははは、随分と頼りになる仲間だなぁ」

 

オディアナとシーアの疲れてる姿を見てザイバが大笑いする。

 

「もっとも、これを見ても逆らう気になるかな?」

 

ザイバがハスキミリアの首に手をかける。

 

「ハスキミリア様!」

「やめて!」

 

ハスキミリアの傍には鎖で縛られているハスキーとチェイムの姿があった。

ハスキミリアを人質に取られては竜に変化して鎖を砕くこともできない。

 

「ふふん。これほど素晴らしい力があればもう誰も『サイバー・ダーク』を馬鹿には出来ないはずだ」

「どういう意味かしら?」

 

オディアナが尋ねると、ザイバがじっくりとオディアナの顔を見る。

 

「……これはこれは。よくよく顔を見てみればアルトマ王国のオディアナ姫ではないですか。どうしてこのような所に」

「あなたにそんなことを説明する必要はないわ。ハスキミリアさんはこの国の住人。この国の住人が困っているのなら助けるのが王族の務めよ」

 

オディアナがきっぱりと言い切ると、ザイバがくくっと笑う。

 

「なるほど、素晴らしき志。だが、私が『サイバー・ダーク』を出来損ないと馬鹿にしてきた者たちに復讐するチャンス。ジャマをしないでいただきたい」

「さっきから聞くと出来損ないとはなんだ?」

 

シーアが尋ねると、ザイバが忌々し気な顔をする。

 

「お前たちの国の住人は知らないだろうが、私が住んでいた国には『サイバー流』と呼ばれる流派が存在している。そのサイバー流は機械とドラゴンの力を合体させた機械竜の力を使い戦う」

 

オディアナもシーアも首を傾げる。

そんな流派が存在していることなど聞いたことがない。

 

「だが、奴らは『サイバー・ダーク』など、ドラゴンの力を外部ユニットとして合体させねば戦えない出来損ないのポンコツと馬鹿にしおった。若き者が『鎧皇竜サイバー・ダーク・エンド・ドラゴン』を開発しても『サイバー・エンド・ドラゴン』の力を借りねば何もできない、出来損ないらしいポンコツロボットと馬鹿にした」

「……で? 何がしたいんだ?」

 

シーアが呆れ、疲れた体を解すように腕を伸ばしながらザイバに尋ねる。

 

「この国にはこっそりと暮らす『ドラゴンメイド』という、人の心を宿すドラゴンが存在していると聞きつけたからな。私の『サイバー・ダーク』の力として服従させ、私の力にする。そしてその力を持って『サイバー流』に復讐しようと思ったわけだ」

「そのようなことのために私たちやご主人様を!」

 

パルラが怒りザイバに近づくが、ザイバがハスキミリアの首を手に取る。

 

「おっと、大好きなご主人様がどうなってもいいのかなー?」

「くっ」

 

パルラが動きを止めたのを見てザイバが満足げな顔をする。

 

「よろしい。では、再び君たちを操り人形にして姫とその傍にいる女を追い払ってもらおうか」

「断る」

 

シーアがパルラを押しのけ前に進む。

 

「いいのか? この小娘の首を捻り、殺しちゃうぞ?」

「やってみろ? この国の民を殺す。そんなことをしたら貴様の体をバラバラにして目ン玉くり抜くぞ? そうだ、そんな君の首を切り取り、その『サイバー流』とやらがある国に持って帰り、晒し首にするというのもいいなぁ」

「き、貴様本気か!?」

 

ザイバがシーアに尋ねると、シーアがさらに足を進める。

 

「本気さ」

「この小娘はこの国の住民なのだろう? その姫が住民を助けようとしているのに、姫の意思を蔑ろにする気か?」

 

ザイバがそう言うが、その顔に少しばかり怯えが見えているのをシーアは見逃していない。

 

「私は姫に忠誠を誓った身。あなたがその子を利用することでドラゴンメイドたちを好き放題操り、姫を傷つけようというのならば私は姫を守るため、最善手を取ります」

「ちょっとあなた」

「ハスキミリア様に手を出すなど許さないです」

 

だがティルルとラドリーがシーアの両手をがっしと掴み、彼女の動きを止める。

それを見たザイバが安堵の息をつく。

 

「よーしよし。さぁ、そのままその2人を追い出してもらおうか」

 

その瞬間。

 

(甘いな)

 

杖がザイバの横を薙ぎ払い、緑色のバリアがハスキミリアを包み込む。

バリアからはみ出た鎖が断ち切られ、ハスキミリアが驚いた顔で首を横に振る。

 

「ハスキミリア様!」

「良かった」

 

ハスキーとチェイムがほっと安心した顔になると、杖が鎖を断ち切り2人も解放された。

 

「んなああああ!」

 

何が起きたかわからず呆然とするザイバ。

 

(まったく、人遣いが荒い)

「ご苦労、アストログラフ」

「ミラージュもお疲れ様」

 

宇宙を模したローブを着た魔術師『アストログラフ・マジシャン』がひらりとマントごと一回転するとハスキーとチェイムを連れドラゴンメイドたちの元に連れてくる。

そしてバリアに包まれたハスキミリアがドラゴンメイドたち6人の中央に着地する。

 

「ご主人様!」

「無事でよかったです!」

 

そしてバリアから解放された瞬間、ドラゴンメイドたちがハスキミリアの頭を撫でたり抱きしめたりする。

もみくちゃにされたハスキミリアは困惑しつつも嬉しさが顔からにじみ出ていた。

 

「な、い、一体」

「お前だけがデッキの霊魂を扱えるわけではない。オディアナ様はつい先ほど『オッドアイズ』たちの霊魂と共に戦えるようになり、私は『アストログラフ・マジシャン』の霊魂と共にあるのさ。もっとも、私はオディアナ様ほど慕われてないからか他の魔術師たちに関しては武具だけしか解放できないけどな」

「シーアに啖呵を切らせてる間にアストログラフがミラージュを連れて闇に紛れるように移動し、ドラゴンメイドたちがシーアを抑えあなたが隙を作った瞬間にアストログラフたちが対応するようにしたのよ」

 

敵を騙すにはまず味方から。

もし敵が本気でハスキミリアを殺そうとしたのならアストログラフが作戦を起こす前にザイバを止めるつもりだった。

 

「く、くそっ」

「さて……こうやってひっそりと隠れ住んでいたとはいえ、私の国の民の心を傷つけ、その子と共にあるドラゴンメイドたちを弄ぶとは。許しません」

 

オディアナが左手を掲げるとその左手にデッキが握られ、手首にデュエルディスクが装着された。

 

「ちょっと待って」

「あいつだけは何度消しても消したりないわ」

「私たちの手で」

 

ドラゴンメイドたちが怒りと殺気が籠った眼でザイバを睨みつける。

それを見たザイバがひっと体を揺らすが、シーアがそれを制する。

 

「申し訳ない。あなたたちドラゴンメイドが戦っている間に卑劣な策でまたハスキミリアさんが囚われたら問題です。あなたたちはハスキミリアさんを守ることに全力を尽くしてください」

 

シーアがドラゴンメイドたちに説明したが、まだ若干不安げだった。

 

 

「くっ、なら『サイバー・ダーク』の力であなたを倒し、また改めて『ドラゴンメイド』たちを支配下に置くまで」

「これ以上私の国の民に手出しはさせませんよ」

 

 

「「デュエル」」

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