ピンポーン…
P「……ん。んが……」
ピンポーン…
P「……ん…むにゃ…」
ピンポンピンポンピンポンピンポーン…
P「あ、あぁ…分かったよ…もうちょっと待ってくれ…」
プルル、プルル、プルル…
P「はい、もしもし…」
咲耶「やぁ、おはようプロデューサー。眠り姫ならぬ、眠り王子の魔法をときに馳せ参じたよ。」
P「あぁ、おはよう咲耶…ふぁぁぁ…」
咲耶「フフ、その様子では我が王子様は未だ心ここにあらず…といったところかな?だがすまない、私も愛しの君の魔法を解くのは心苦しいのだけれど、私の内なる愛情が堪えられなくてね…迷惑、だったかい…?」
P「いや、他ならぬ咲耶のためさ、今開けるよ…ふぁぁ…。」
ガチャリ、と部屋の扉を開ける。
扉の前には眉尻を下げ、どこか寂しそうにした白瀬咲耶が立っていた。
起き抜けで我ながら冴えない顔をしている自覚はあるのだが、咲耶はこちらの姿を捉えると、パッと顔を華やがせて小走りで家に上がり込んできた。
P「おはよう咲耶。まだ朝だってのに、今日も咲耶はバッチリ決まってるな…寝癖一つもない。」
咲耶「フフ、おはようプロデューサー!お褒め頂き光栄だよ。今日の寝起きも愛くるしい顔をしているね…早速だけど、もういいかな?」
そう言うと咲耶はこちらにパッと手を広げて何かをせがむような姿勢になる。
その意図を汲み取った俺は、のそのそと咲耶に近づいていき、ギュッと抱き止める。
咲耶「んっ…。フフ、昨日は遅くまで私達のために頑張ってくれたのかな?いつもよりもハグに力がないよ?」
P「そうかな…?でも咲耶達もどんどん忙しくなってきてるし、俺も頑張らないとと思うとついな。」
咲耶「ありがとう、プロデューサー。でも、くれぐれも体には気をつけて欲しいな?今はもう君だけの体じゃないのだから、ね…」
P「こら、誤解を招くような言い方をするんじゃない。…それより、今何時だ?」
咲耶「そうだね、ええと今は…」
咲耶「4時きっかりだね。」
P「……最近思ってたけど、どんどん来る時間が早まってないか?」
咲耶「そ、そうかな?これでもはやる気持ちを抑えてここまで来たのだけれど…///」
抱き止めた腕の中でもじもじとする咲耶。咲耶をアイドルとしてプロデュースしてそれなりに経つが、ついぞ撮影でこのような表情は見たことがない。
正直、眼福というやつだ。…とはいえ、時間が時間なだけに眠いのも確かだ。
P「なあ咲耶…ずっと玄関でこうしているのも何だし、そろそろ上がったらどうだ?」
咲耶「そ、そうかい?私としてはアナタの可愛らしい顔を見られて癒されるのだけれど…でもそうだね、仕方ない、ね…」
そう言うと咲耶は目に見えて分かるほど渋々、と言った様子でその体を離してくれた。
P「ん、とりあえず顔を洗って歯磨きしてくるよ…咲耶は大丈夫か?」
咲耶「うん、ありがとうプロデューサー。私は寮で身支度は済ませてきたから大丈夫だよ。」
そう言う咲耶は、なるほど確かに身支度は完璧のようだった。
いつも通り少し高めの位置で結い上げた髪に、上品な雰囲気を纏う襟付きの白シャツ。下は黒のスキニーで、元々高身長の咲耶を更に際立てている。このままお洒落なカフェに繰り出したとしても、十二分に場に溶け込めることだろう。
俺たちがこんな関係になったのは、ファン感謝祭の少し後からのことだ。
あの時、咲耶がアンティーカでの活動をできていないことに寂しさを覚えていたことを踏まえて、後日改めて俺に何かできることはないか、と咲耶に問いかけた。
咲耶「そうだね…じゃあ、少しだけわがままを言ってもいいかな、プロデューサー?」
咲耶「その、少しだけでいいんだけれど…アナタと私だけの時間を、これから少しだけでいいから作ってくれないかな?」
初めはその申し出に大層驚いたが、詳しく聞くと、どうも俺の大きな手で触れてほしい、ということらしい。
幼い頃から一人で暮らすことの多かった咲耶にとって、父親とのスキンシップの経験が乏しく、いつからか男性とのスキンシップを求めるようになっていたことに最近気づいたのだとか。
初めは寮にいる皆にお願いしてはどうかとも言ってみたのだが、それではどうも満足できなかったらしい。
自分から咲耶に悩みを打ち明けて欲しいと言った手前、無下にすることもできず、この奇妙な関係が始まった。
最初は事務所の誰もいない時間を見計らってだったのが、いつの間にか現場への移動中の信号待ち、昼休み時間中の合間、現場の休憩時間…と、一日に咲耶に割く時間は着々と増えていった。
だがそれでも咲耶の欲求は留まるところを知らなかったらしい。
最初は撫でるだけだったのが、手と手を握ることをせがむようになり、隙あらばハグも厭わなくなってきた。
咲耶「プロデューサー、次のオフだけれど、私と同じ日だったよね?よければ、その…アナタの家に行ってもいいかな?アナタの温もりを欲してしまって近頃は何も手につかないんだ…」
そしてとうとう、家で2人っきりでスキンシップを取りたい、とまで言ってきた。
初めは流石にそれは、ということで断ったのだが、その時の咲耶の顔といったら、今までに見たこともないくらいに蒼白し、この世の終わりと言った顔をしていた。
担当アイドルにそんな顔をさせるくらいなら…
そうして意思の弱い俺は、流れるままに咲耶を家に上げることを許してしまったのだった。
P「なあ咲耶、俺はこの際だからもう半ば諦めてるんだが、寮のみんなには何て説明して出てきているんだ?」
咲耶「ああ、今回は『箱根駅伝の往路復路を自分で歩いてくる』と言っておいたよ。正月に寮のみんなで見て、それはもう盛り上がったからね。特に恋鐘は地元出身の選手を見つけては歓声を上げっぱなしで、最後はほとんど声が出ていなかったね。」
P「…それで押し通すのがすごいな。確かその前は…」
咲耶「その前は『10代から60代までの女性を1人ずつファンにするまで帰れま10』だったね。」
P「……。ちなみに、次の候補は」
咲耶「ああ、次からは『23区内全ての神社仏閣巡り』にするつもりだよ。フフ、これは流石に時間がかかるだろうから、向こう3ヶ月はこの言い分で通せそうかな?」
P「…それで誰も疑わないのか。あいつら大丈夫か…?」
咲耶「フフ、ファンとの出会いを大切にしたいと言ったら、みんな納得してくれたよ?それより、ほら…」
P「ん、ちょっと待ってくれ。服も着替えるから…」
そう言って俺はクローゼットからいくつか手頃な服を見繕う。流石に何回も家に上げているとはいえ、ずっと寝巻きというのは決まりが悪い。
咲耶はというと、玄関でのハグ以降、簡単に頭を撫でただけでそれらしいスキンシップをしていないため、どことなく寂しそうだ。
咲耶…着替える間くらいは我慢してくれ…!
咲耶「そうだ!プロデューサー、私が着替えさせてあげるよ!」
P「はい!?!?!?」
さ、咲耶…!なんてことを言い出すんだ!?
咲耶「フフ、そうさ。最初からこうしていれば良かった…さあバンザイしてくれ、プロデューサー!」
P「ま、待て待て!流石にそれは色々まずいだろ!?」
咲耶「そうかな?だけど、甘奈は甜花によくやってあげているみたいだし、同じようなものじゃないかな?」
P「双子と男女の他人がやるとは全く状況が違うだろ…!」
咲耶「他人だなんて…私とアナタの関係はその程度のものだったのかい…?」
P「ああっ、そういうことじゃなくてだな…って、うわっ!?」
咲耶「フフっ、隙ありだよプロデューサー!」
そう言って咲耶は俺にピタッとくっついてきたかと思うと、服の下にするりと手を差し入れてきた。
P「さ、咲耶、やめっ…!く、くすぐったいから、くくっ…!
咲耶「おや?これは王子様の弱点を見つけてしまったかな?ほらほら♪」
咲耶はがっちりと後ろから俺を捕まえたまま、それでいてまさぐるように手をわしゃわしゃと動かしてくる。
咲耶の華奢な手が俺の上半身を蠢いているこの状況に、何も感じないのが無理というものだろう。
咲耶「事務所では隙のないプロデューサーも、こうなってしまってはかたなしのようだね…♪さあ、もっと私を感じてくれ…」
そう言うや否や、咲耶は俺の寝巻きをサッと捲り上げ、それと同時に正面に回り込んできた。
舞踏会でみるようなあまりに鮮やかな一連の動きに、つい俺は見惚れてしまう。
…やっていることは変態一歩手前なのが至極残念ではあるのだが。
P「なあ咲耶、俺の上裸なんか見てもつまらないだろ?後でいっぱい撫でてやるから、もう少し…」
咲耶「いいやもう我慢できないね、プロデューサー…ほ〜ら♪」
P「ッ!」
咲耶は俺のへそ辺りをなぞっていたかと思うと、腹筋、脇腹、大胸筋と、下から上にゆっくりと手を這わせていく。
艶めかしいその動きと、うっとりとした咲耶の表情も相まって、最早妖艶とも言える空気を醸し出していた。
咲耶「思えば、プロデューサーの上半身をじっくりと見る機会はなかったね…やはりこうしてみるとアナタの体は、思ったよりもがっしりしているんだね…」
P「そ、そうか?まあ、オフの日はたまに筋トレしたりもしてたからな…」
咲耶「フフ、道理で均整の取れた体つきをしている訳だね。しかしこれは、本当に…」
P「…ふぅ。分かったよ。でもあんまり長いと体が冷えちゃうから少しだけな?」
咲耶「すまないね、プロデューサー。んっ…♪」
そう言うと俺たちは向かい合った姿勢のまま、リビングの座椅子に腰掛け、向かい合うような形で座り直す。
俺としてもかなり恥ずかしいのだが、咲耶としてはこうしているとお互いの体温を感じられて安心するのだとか。
P「…ほら、これでいいか?」
咲耶「んっ…♡ああ、とても落ち着くよ、プロデューサー…あ、あたま…」
P「…ん。」
さっきまでと打って変わってすっかりおとなしくなった咲耶を、俺はゆっくりと頭を撫でてやる。
きめ細かく手入れされた髪の毛にゆっくりと触れ、手で梳くようにゆっくりとなでなでする。
咲耶の方はというと、目をトロンとさせて、とても気持ちよさそうだ。
咲耶「はぁ…プロデューサー…♡うぅん…いぃ…♡」
P「よしよし…じゃあ、ここはどうだ?」
咲耶「ひゃうっ!?」
さっきされたお返しとばかりに俺は、咲耶の耳たぶの周りをねっとりと撫でる。
途端、咲耶は飛び跳ねんばかりに身を捩らせたが、お互い腕の中にすっぽりと収まっているため、身動きは取れない。
咲耶「ふっ…♡ぷ、プロデューサー…!んゅ…そ、そこは反則…っ♡」
P「ん?よく聞こえないな?」
咲耶「んんっ、そん、な…♡意地悪、しな、いで…ふぅぅっ♡」
片手だけじゃなく、両手を使って咲耶の耳をゆっくりと愛撫する。
耳なんて普段は誰にも触られることはないだろうし、こそばゆいだろう。
そうしてしばらく咲耶を弄り回すと、少し手を休めることにした。
P「ふぅ…」
咲耶「はぁーっ、はぁーっ…♪」
咲耶はというと、息こそ絶え絶えと言った様子だが、顔は蕩けそうなばかりで、まさに恍惚といった表情を浮かべていた。
咲耶「はぁーっ…フフ、やっぱりプロデューサーは意地悪だね…♪」
P「そうか?まあ先に仕掛けてきたのは咲耶だからな、これでおあいこだ。」
咲耶「おや、これは一本取られてしまったね…。そういう事にしておこう…」
そう優しく呟いた咲耶は、顔を近づけてきたかと思うと、頬と頬をゆっくりと、それでいてぴったりとくっつけてきた。
こうなると俺たちは正真正銘、ゼロ距離になる。
P「…どうだ?落ち着くか?」
咲耶「ああ…プロデューサーの鼓動、声の響きさえも感じられて…満たされていくのを感じるよ…♪」
P「ん。そうか…」
俺は頭をさすりながら、ぎゅっと咲耶を抱きしめる。
咲耶もそれに応えるように、俺の背中に手を回して、さっきまで以上にしっかりと抱き返してくる。
そうして2人でいて、どれほどの時間が経っただろう。
どちらともなく、ぐぅ、とお腹の鳴る音がした。
咲耶「フフ、さすがに肉体の欲求には逆らえないみたいだね…?」
P「ああ、俺も腹が減ったな…あと、そろそろ本格的に着替えてもいいか?少し冷えてきたよ。」
咲耶「おや、そういうことならもう暫く、私の体で温まっていくかい?私は一向に構わないよ?」
P「いや、今はもう十分だよ…それに、今日も遅くまでここにいるんだろ?」
咲耶「ええ、アナタさえ良ければ、是非ともお願いしたいね。」
P「よし!そうと決まれば、まずは朝ごはんだ!咲耶も食べるよな?」
咲耶「では、頂けるなら私もご相伴に預かるとしようかな。勿論、アナタと一緒に作らせてもらうよ。」
P「…料理中は普通に危ないから、ほどほどにな?」
咲耶「ああ、そこは当然気をつけるよ。その前に…」
咲耶「もう一度、私に温もりを与えてくれるかい…王子様?」