歌姫伝承〜ホロの異能大戦ストーリー〜   作:炎駒枸

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10話 勧誘・侵入

 

「ねえフブキ」

「ん、何?」

 

 放課後の教室、ライブに向けてのレッスンが控えるフブキは帰宅準備を素早く済ませていたが、友人であるミオに声を掛けられて動きを止めた。

 

「なんか最近のフブキ凄く忙しそう……」

 

 心配そうに視線を落としながらミオが尋ねるように言った。

 だが、フブキからすればその言葉には「何か隠し事してない?」の意味にも取れる。

 実際に隠すーー正しくは言っていないので、友達を欺いているような罪悪感が僅かにあった。

 

「あー、まあちょっと忙しいかな」

 

 表向きはそう答える。

 現実は本当に忙しい。

 ただ、それがフブキにとって苦であるかと言われるとそれは断じてノーだ。

 本当にただ忙しいだけ。

 だから心配はある意味杞憂だ。

 

「バイトやってるの?」

 

 余程放っておけないのか、いつもより少し圧がある。

 

「あー、まあ似たようなものをね」

 

 視線を揺らしながら、そうだとは言わずにはぐらかす。

 嘘でもそうだと言わないのは、フブキがもつ罪悪感の具現化だ。

 言えない事実と嘘をつきたくない感情の中心にあるのがその選択だ。

 しかし、これでミオは確実にフブキが裏側で「何か」をしている事を見抜いた。

 珍しく今日のフブキはポーカーフェイスや言葉選びが下手くそだ。

 しかもミオであれば獣人特有の尻尾の動きまでも言葉や感情に変換させてしまう。同じ獣人として、何より友人として既にフブキの行動の特徴や性格は知られている。

 耳が跳ねたところも、尻尾の毛が微かに逆立ったのも、言葉に合わせて尻尾が隠れるように動くのも、何もかも。

 

「……詰めすぎじゃない?」

 

 しかしそれでも正面からの直接的な表現を避けるのはミオの性格か。

 

「ううん、忙しいけど楽しいし、実際にこれだけ元気だから!」

 

 片腕に力を入れて活力を見せつける。

 瞳は揺らいでいるが、嘘をつけていない眼だった。

 フブキの心拍数が上がっていく。

 

「なら……いいけど」

 

 不服そうにミオは一歩引いた。

 

「うん、なんか心配させてごめんね、でも今日もこれから用事あるからまた明日」

 

 フブキは駆け足で荷物を背負って教室を出て校門を抜けた。

 そのフブキの胸は何故か高鳴っていた。

 

 

 一方、教室に残っていたミオ。

 フブキとの会話に集中しすぎて気が付いていなかったが、既に生徒は全員散っていた。

 窓の外を眺めると校庭がある。

 その先の校門を飛び出していくフブキがいた。

 なんだか最近のフブキは忙しそうなのに楽しそうだ。

 毎日に幸せが溢れているようで、とても羨ましい。

 隠し事をされることが残念だとは思ってもいない。

 プライベートなど、どれだけ親しい中でも侵入も介入もできない領域は必ず存在する。だから、そこに不満はない。

 不満があるのは自分自身。

 仲良しでずっと一緒にいたフブキは、遂に夢中になれる何かを見つけたのに自分は果たしてどうだろうか?

 顔を上げてみろ。

 進む道が未だに見えない。

 得意の占いでつい先日自分を占ってみたが、将来の栄光を示すカードは出なかった。

 

「…………」

 

(でもそう言えば、占いの時に『逆位置の聖杯の4』が出ていたはず……)

 どうなるかは分からないが、進展のない現状に新鮮味のある何かが起きるかもしれない。

 

 事態の発展はその矢先だった。

 帰宅路、ほぼ無心で歩いている中何人もの人とすれ違う。

 その内のとある二人の男性の言葉だけがやけにミオの耳に強く飛び込んだ。

 それは「今度のフブキちゃんのライブ行くよな⁉︎」から始まる会話だ。

 驚愕して立ち止まり振り返るが、その男性二人は会話と歩みを進めて遠ざかっていく。

 拘束されたように固まっていたミオは次の瞬間弾かれるように飛んで家に帰った。

 何故だろう?

 「ふぶき」なんて名前は良くあるはずだ。

 「ふぶき」や「フブキ」や「吹雪」などがあるが、ミオの頭では「フブキ」以外の変換はできなかった。

 アイドルに強い興味はなかったが、多少の知識はある。

 その知識の中に同じ名前がなかったからだろうか?

 いや、そんなことはどうでもいい!

 

 ミオはパソコンの前に座り検索欄に「白上フブキ」と打ち込む。

 

 震える手と5秒間決闘し、カチッ、とEnterキーを強く押す。

 

「これは……!」

 

 その日、遂にミオは真実を知った。

 

 

 

          *****

 

 

 

 翌日の朝、フブキは思い悩んでいた。

 正直、ミオにこれ以上隠すことは不可能。

 いや、ミオに限らない。

 今の仕事はアイドル好きよりもゲーム実況好きに刺さるものだ。

 女子校とは言え、いずれフブキは校内で名を轟かせることになる。

 友達はミオだけではないが、ミオには誰よりも早く知ってもらいたいと思うし、そうでなくてはいけない気がする。

 だから、話す事を決めた。

 悩みはそこではない。

 フブキが困っているのは、自分の感情だ。

 

 昨日ミオに詰め寄られて理解できた。

 

 フブキは……ミオを誘いたいのだと。

 

 誘うのは簡単だ。

 相手の答えを無視すれば。

 だが、もし断られた時……そう考えると、亀裂なんてものは生じないことは分かっていても、なんだか怖くなってくる。

 そしてそんな自身の感情を見つめ直した時、自分の思想がとても傲慢にみえるのだ。

 

(そう見えるだけなら……別にいいんだけど)

 

 登校中も考え事。

 授業も集中力不足。

 

 いつも二人で食べる昼食。

 普段はフブキから弁当を持ってミオの席に駆け寄るが今日は動けずにいた。

 ミオからは来ない。

 異変には気がついているはず。

 

(……だめだ、こんなラブコメチックな! しっかりしろ白上!)

 

 フブキは不動で己を奮い立たせ、弁当を持ってミオの席に遅刻した。

 

「ミオ、今日はちょっと……外で食べない?」

「ん」

 

 まるで待っていたようにスッと立ち上がる。

 

 ノリで教室を出たものの目的地が決まっていない。

 屋上は未開放。

 中庭には他にも人がいる。

 グラウンドの隅なら人がいないが、正直食事をするには適さない。

 

 無心で歩いたフブキ。

 気がつけば校舎裏だった。

 上手く日陰になっていて本格的に告白ムードだ。

 フブキは一人紅潮していたが、ミオは何も咎めずこの場所に唯一存在するベンチに腰掛けてその横に弁当を置いた。

 ミオはわかっているはずだ。

 何故フブキが人気のない場所に呼び出したのかを。

 フブキは自分が本心を隠すためにわざと緊張しているのではないかと自分自身に疑心暗鬼をかけてしまう。

 ミオの様子を見ていると、次第に怒っているように見えてきた。

 

「……」

「……はぁ」

 

 考えれば考える程言葉が出ない。

 立ち尽くして動けないフブキにミオがため息をつく。

 それに過敏に反応したフブキ。顔を上げるとミオが立ち上がって目前まで迫っていた。

 顔が近い。

 瞳に映る自分がいた。

 

「ウチから切り出すのはおかしいでしょ? ほら、フブキはなにしてるの?」

 

 と、あくまで話を切り出すきっかけを与えるだけに留める。

 もはや逃げられない包囲網のような圧迫感のある言い方で、ミオが切り出したと言っても過言ではないが、ここでは互いに目を瞑る。

 核心に触れていなければよし。

 ここでフブキが語らなければこの話は永遠に凍結したままだ。

 

「……うん、えっと……」

 

 口を開き始めたフブキに一度頷きミオは一歩下がって適切な距離感を保つ。

 近すぎても遠すぎても会話はし難い。

 会話の内容に応じた適切な距離感がある。

 勿論、場所や雰囲気もそうだ。

 

「もう知ってると思うけど……ホロライブってとこで『アイドルみたいなの』やってる……の」

 

 喉に引っかかっていた内の一つがようやく吐き出せた。

 俯き加減の顔を少し上げてミオの顔を確認すると呆れたようだった。

 

「うん、調べたからね」

 

 ミオはテッキリこのカミングアウトだけがフブキの悩みだと思い込んでいるため、ベンチに戻り弁当を開き始めた。

 フブキは戸惑いながらも流れに合わせてミオの隣にゆっくりと座った。

 その時、誤って自分の尻尾を踏んでしまった。

 もう一度尻尾を払い座り直す。

 ミオの弁当を覗き見るといつも通り綺麗な彩りと並びで中身が詰まっていた。

 フブキも弁当の蓋を開ける。

 昼休憩はまだまだある。

 食事して教室に戻る余裕はある。

 

「あ、フブキの弁当は今日も美味しそうだねぇ」

「あ、あげないから! これは白上のなんじゃ!」

 

 箸をカチカチならせてハイエナのようにフブキの弁当を狙う。狼のくせに。

 フブキが弁当を守るようにミオから遠ざける。

 いつもの調子に少しだけ安心する。

 なんならいっそ、野菜を盗まれてしまえば本当に気が楽かもしれない。

 

 そんな想いは中々行動に移せない。

 ただただ弁当の具材が口に運ばれる。

 美味しい。

 

「フブキはさ、アイドルやってみてどんな気持ちなの?」

 

 口にまだ食べ物が残ったままミオが少し興味持って聞いてきた。

 

「うーん……どんなかぁ~」

 

 純粋に考え込む。

 箸の動きを止め、腕を組んで悩む。

 

「まあ楽しくて面白いのは当然とすると……画面越しだけど名前も知らない素敵なすこん部の人たちに出会えることかな」

「なんほどねぇ~」

 

 ふふっと笑ったフブキにミオはもぐもぐしながら返事する。

 

「聞いときながらなんか上の空ぁあああああ! 折角残してた唐揚げが!」

 

 箸で弁当の空白を掴み、見てみるとそこにあったはずの唐揚げが無くなっていた。

 犯人はミオ。

 証拠など必要ない。

 

「美味しかったよ」

「それはどうも!」

 

 頭に怒りマークが浮かび上がりそうな声量でフブキが吐く。

 以降フブキは、頭の中でミオをホロライブに誘おうか戸惑うと同時に常時弁当の具材を盗まれないよう警戒していた。

 そこそこに会話をしていると弁当の残りも少なくなってきた。

 会話もひと段落つき、落ち着いてきたところなのでこのまま食べ終わると教室へ帰る流れになってしまう。

 

「ーー」

 

 唯一ミオの手から逃れた唐揚げを口に入れて咀嚼もそこそこにグッと飲み込む。

 

「ミオ……!」

 

 少し強めの語調。

 ミオは不思議そうに食事を続ける。

 

「あのさ……」

「ん?」

 

 青春漫画では桜吹雪が起きるようなムードが漂う。

 

 

「もし……もしよかったらーー‼︎」

 

 

 

          *****

 

 

 

 とある昼。

 あくあとシオンが事務所に来た時、一人の来訪者がいた。

 その人の姿はアイドル事務所には全く似つかわしくないものだった。

 遠目からでも漆黒と銀の防具が光を反射しているのが分かる。

 腰には長過ぎず短過ぎない適度な長さのメイスが添えてある。

 

 そんな女性にえーちゃんが対応していたが、やがてその女性との話のケリが付くとスタスタと去って行った。

 

「えーちゃん今の誰?」

 

 あくあが去りゆく女性の背を控えめに指さす。

 あくあが声をかけて初めて存在に気がついたえーちゃんは、

「あ、あくあさんにシオンさん、こんにちは」

 と丁寧に挨拶した後、

 

「今の方はよくわからない騎士団の団長さんです」

「騎士団? この国に騎士団なんかないでしょ」

「だからよくわからないって言ったじゃないですか」

 

 手にしたボードを持ち直してメガネをあげるとそう言った。

 

「それで結局なんだったの?」

「あー、はいはい、それですね」

 

 あくあの繰り返しの質問に面倒くさそうに相槌を打って、

「今度のゲーマーズのオーディションの一次選考を受かったらしいんですけど、どうやら応募が本人の意思じゃないらしくて、辞退を申し出てきたんです」

「ん? どういうこと?」

「あーもう! めんどくさいですね!」

 

 あくあのくせに質問攻めが鬱陶しい。

 誰を相手にでもこんな風に口煩ければ周囲の人も楽だと言うのに……。

 いや、でもそれはそれであくあの個性を一つなくすことになる。

 

「なりすましかなんかじゃないですか? 私も詳しくはわかりませんよ!」

 

 少し語気を強めて怒りをチラつかせる。

 多分実際は大して怒っていないだろうが。

 

「ねえ、じゃああの人は?」

「あ?」

 

 苛立ちを含んだようなトーンで振り返る。

 シオンが指さしているのは窓の外。二人が遅れて視線を向けると、そこには一人の業者服を着た男性が段ボールを社内に運んでいた。

 作業用の帽子で上から顔は見えない。

 

「……さあ、社長か誰かが頼んだんじゃないですか」

 

 あまり興味なさそうにえーちゃんは答えると仕事に戻ると言って去って行った。

 

「……ねえあくあちゃん、今日ってあやめちゃんも来る予定だったよね?」

「ん? そうだね、もう来てるかも――ってシオンちゃんどこ行くの?」

「んー? ちょっとトイレ」

 

 トイレ方面に向かってゆっくり歩き出すシオン。

 

「じゃああてぃしも」

「えー、ちょっとやだー。トイレまでストーカーしてくるじゃん」

「そんなこと言って嬉しそうじゃん」

「うそ、あくあちゃんシオンのこと好きすぎー」

「いや、逆でしょ~。シオンちゃんあてぃしのこと好きすぎー」

 

 噛み合っていないような気のする会話をつなげて二人は歩く。

 その際、シオンが所々で歩みを緩める。

 多少不自然に思いながらもあくあは合わせて歩いた。

 

「そういえばあくあちゃんさ――っと」

「おっと」

「シオンちゃん⁉」

 

 曲がり角で視線をあくあに向けたせいで前方不注意になり丁度先程シオンが見た作業員と接触してしまう。

 接触と言ってもシオンの肩が男性の段ボールに当たった程度。

 互いに負傷はない。少し驚いただけだ。

 

「すみません」

 

 シオンはすぐに頭を下げる。

 

「いえ、こちらこそ不注意でした。それでは」

 

 それだけ互いに謝罪を済ませると男性はまた歩き始めた。

 

「……何であくあちゃんが緊張してんの~」

 

 今のわずかな時間端で小さくなっていたあくあを見てシオンが笑う。

 

「だ、だって……」

 

 知らない男性が……と言いたいのだろう。

 あくあのコミュ障は女性相手でも容易く発動する。

 男性相手ならその効果と速度はきっと絶大だ。

 

「ほら、置いてくよ」

 

 シオンがあくあを放って歩き出すとあくあは焦って駆けてシオンの横についた。

 

 

 

 

 

 

 

 作業服の男性は荷物を誰もいない部屋に持ち込んだ。

 手慣れた作業で空いた空間を見つけ出しそこにその段ボールをそっと置く。

 そして段ボールを開き始めるのだが……。

 

「――くっ! なんっ!」

 

 ガムテープを剥がそうにも剥がれない。

 段ボールを破こうにも破れない。

 いろいろな方法を試みるがなぜか絶対にあかない。

 

「開くわけないじゃーん」

 

 突然、その男性を嘲笑う声が聞こえる。

 男性が驚き部屋の入り口を見るとそこにはシオンがいた。

 その目は確実に相手を馬鹿にしている。

 

「どうしてかな?」

「裏見てみなー」

「……」

 

 シオンの煽り調な発言に男性は怒りを覚えながらも段ボールを静かに引っくり返すと、その裏には小さなシールのような何かがあった。

 

「今その段ボールの制御権限はシオンにあるから」

「クソッ、魔法使いか」

 

 男性は様相を豹変させ段ボールをシオンに向かって蹴り飛ばす。

 制御権限をシオンが持っているため、段ボールに傷は一つもつかないが、その箱は真っ直ぐシオンに向かって飛来する。

 シオンはそれを不動で床に叩き付け、右手を男に向かって翳す。

 すると魔方陣のような摩訶不思議な円が展開される。

 それが攻撃系統の魔法であることは誰がどう見ても直感する。

 男もまた然り。

 

「チッ」

 

 男は舌打ちすると自信の真後ろにある窓を突き破り飛び降りた。

 その男の腰にはいつの間にか一つの刀が添えられていた。

 

 そして、ヒュッ、と一筋閃光が奔る。

 シオンが放った光線だ。

 その光線は飛び降りる男めがけて一直線に飛んでいく。

 男の回避は一歩遅かった。

 窓の外、建物にして約三回分の高さで滞空しているタイミングで光線が飛翔する。

 あわや塵になるかと思える瞬間。

 しかし男はそこで刀を抜いた。

 光の速度をも凌駕するような素早い抜刀術で刀を手にすると、目前に迫った光線を上から下に向けて一閃――。

 シオンの砲撃は形を持たないにも関わらず見事に真っ二つ。

 本来なら光線はシオンが止める意思を持たない限り放出し続けるのだが、男のこの斬撃が光線を伝い最終的に魔方陣が破壊される。

 特殊な斬撃技を使うようだ。

 飛ぶだけならまだしも、どうやら無形物質をも切り裂いてしまう模様。

 魔法攻撃を相手にするのが苦手な剣士にとって革命的な力だ。

 それが本人の能力か、刀の持つ霊力のようなものかは不明だが、シオンのアドバンテージが一つ消滅したことは確かだ。

 窓から飛び降りた男は相当な高度にもかかわらず難なく着地した。

 シオンはそれを見ていながらも動かなかった。

 

「躊躇いなく撃つと思えば……いつの間にこんな小細工を」

 

 周囲を見渡してようやく悟る。

 シオンが部屋に突入したときには既にこの状況だったというわけだ。

 

「一体どこまで覆っていやがる……っ」

 

 男が「この空間」から抜け出すために走り出そうとしたとき――

「聞いていた話とまるで違う。何が虚弱貧弱軟弱の女どもの集まりだ……血気盛んすぎだ」

 

 男が愚痴る。

 手にした刀を構え目の前に現れる一人の少女に敵意を向ける。

 いや……本当は少女と呼ぶには年齢が高すぎるのだが。

 

「シオンも鬼使いが荒すぎるんよ、全く予定にない仕事を頼んでからに」

 

 ふう、と軽く息を吐いて腰に添えられた二本の刀『大太刀 妖刀羅刹(ようとうらせつ)』と『太刀 鬼神刀阿修羅(きじんとうあしゅら)』を抜き取る。

 それと同時に少女の周囲に漂い続けている式神たちがそれぞれの刀に纏うように溶け込んでいく。

 

「一応聞くけど、段ボールの中身は?」

「……さあな」

「ここに来た目的は?」

「さあな」

「お縄につく気は?」

「あるものか!」

 

 強気の言葉とともに一刃の風が吹き抜ける。

 その風は容赦なく鬼神――あやめを狙っている。

 近接と遠方の対決。

 武器はどちらも刃。

 一見あやめが不利だが、鬼神として持つ素質が活きてくればわからない。

 まずは挨拶代わりの一閃を軽く遇う。

 

「余もまだまだ活動したいし、ホロライブにはお世話になっとるからね。少しは手伝うよ」

 

 あやめが一言言って刀を構える。

 戦闘態勢に入り、迎撃準備は完了。

 むしろ自身から斬りかかろうと――

 

 ビシッッ‼

 

 突如、世界がひび割れる音が響いた。

 

「何⁉」

 

 あやめが空を見上げると、そこに大きな亀裂が入っていた。

 十階建てのビルの高さのあたりに亀裂が走りそれが次第に拡散していく。

 罅割れる音が何度もなり、やがて天が割れた。

 そして天から何かが剛速であやめに降りかかる。

 高さこそあれど急な展開とその速度に遅れをとったあやめは逃げ遅れた。

 隕石のごとく飛来するその物体。

 そして下から見上げるあやめ。

 その距離が残りわずかとなったとき、間に割り込む影があった。

 シオン以外他にいない。

 

「ごめんあやめちゃん、侵入された!」

 

 シオンが後方のあやめに叫ぶ。

 その声は謎の侵入者とシオンを中心に展開されたバリアとの激突の轟音でなんとか聞こえる程度だった。

 

「っ!」

 

 あやめが言葉を返そうとしたが、そこに風の刃が飛んできた。

 ギリギリの判断で吹き飛ばしたが。

 

「あやめちゃんっ!」

 

 シオンがバリアをその場に放置しその輪から抜け出すとあやめを引いて距離をとった。

 すると謎の飛来人もバリアとの対決をやめ作業服の男の下へ飛び、直ぐさま二人で割れた空から逃げていった。

 

 

 

 




 どうも、作者でございます。
 今回は初めてのバトル描写がありました。
 ようやくタグがつけられる……。
 取り敢えずバトルと言えば、な二人でしたね。
 ですが将来は意外な人たちもきっと……。
 それと、基本的に敵キャラには本名を付けないようにしようと思います。ホロメンの印象を強くしたいので。
 そうするとまあ、読みにくくなるかもしれませんが、どうかご理解ください。

 うっし! まだまだがんばんでぇ!

 それではまた。
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