歌姫伝承〜ホロの異能大戦ストーリー〜   作:炎駒枸

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101話 落ちる

 

 塔内、第4層にたどり着いたみこ、ラミィ、ロボ子、ころね。

 そこへ、マリンの計らいで見事後続として侵入したノエル、スバル、メルが合流した。

 

 お互いに簡易的な情報共有を行う。

 

「マリンたん、上手くやったみたいだにぇ」

「船長がいなかったのはそう言う……」

 

 ようやっとマリン不在の真意に合点がいき、ラミィは手をポンと叩いた。

 

「ああ、マジ救世主だ」

「でも……1人で大丈夫かな……」

 

 あの背中は信頼できると、1人置いてきたが、今になって不安感が押し寄せる。

 メルは下の方を向いた。

 

「あのマリンが任せてって言ってたし、大丈夫だと思う」

 

 通常のマリンなら、ビビっているところを、今のマリンは珍しくクールに決めていた。

 ノエルは誰よりもマリンを信頼しているようだ。

 

「おっし……」

 

 ころねが、ばんっと強く拳を打ち鳴らせた。

 到底人間の腕力でなる音ではなかった。

 

 ノエルはメイスを眺める。

 メルは拳を握る。

 ロボ子は右腕を回したりして、破損部分を少々修復。

 みこは人形を2枚取り出し確認、懐に腕を突っ込みさらに何かを確認。

 ラミィは右半身から冷気を放ち余力を確かめる。

 

「…………」

 

 一瞬の沈黙と戦闘へ向けた調整。

 スバルだけは手持ち無沙汰でする事が無かった。

 だから、少し痛む肋の辺りを触れてみた。

 ……痛い。

 多分、折れてる。

 1本ほど……。

 

「……いける?」

 

 先頭はみこ。

 みこの問いにみなおもむろに頷いた。

 万全ではないが、準備は万端だ。

 

「魔王に余力を残そうとしない方がいい」

「……おーけ」

「いくど」

 

 計7名は、第5層へと繋がる階段を駆け上る。

 

 そして、扉の前へ到着。

 外見から重々しさを感じる重厚な扉。

 だがそれは、人の力で簡単に開ける両開きの扉。

 

 みこが右を、ころねが左を内側へ押し込んだ。

 ゴゴゴゴゴ、と壮大な音を立ててただの扉が開く。

 

「本当にきましたね……随分と大勢」

 

 開門した扉の先、システマーがいた。

 かなり広い部屋だが、奴は進行路の扉を守るように立っていた。

 みこ達から見て左右の壁には窓がある。

 部屋の作りは他の層と同じで、部屋が全方位に拡がった物と認識していい。

 

「どう? やられる準備はできてる?」

「ええ、できています」

「――――」

「どうしました?」

 

 負ける事を否定しない。

 早速不穏さが部屋に充満する。

 

「負ける気?」

「本気は出しますよ。ですがこれもゲームですし……何より、デ――魔王様が退屈されますので」

「――?」

 

 意図が汲み取れない。

 本気を出しても、勝てる見込みが無いのか?

 随分と謙虚だな。

 

「黙れ」

「ッ――!」

 

 牽制と探り合いを兼ねた序章となる会話。

 それを切ってころねが拳を打ち込んだ。

 目にも留まらぬ速さ。

 まさに俊足。

 システマーは俊足の不意打ちに対して石壁をぶつけ相殺を狙った。

 

 しかし――

 

「っく――」

 

 石壁をも破り、拳はシステマーに命中。

 衝撃の勢いに乗ってシステマーは扉へ衝突するが、あまり激しい音は聞こえない。

 崩壊する突出した壁。

 

 システマーは背後の大扉にぶつかっていたが、その扉は軟体物質になっていた。

 

「卑怯とは言いませんが……まったく……」

 

 扉から離れると、スライムのような材質から、先ほどまでの石材へと回帰する。

 やはり、システマー2人の分別には意味がある。

 こちらが主にオブジェクト支配。

 もう一方が主に非オブジェクト――即ち、法則などの原理支配。

 

 それぞれのシステマーを見た物たちなら、もう分かっただろう。

 

「折角なので生存人数でも開示しようと思いましたが……やめときますか?」

「「――⁉︎」」

 

 一同は絶句した。

 単なる気分にしても、またとないチャンス。

 生存人数を知って得があるか、と聞かれると微妙だが……。

 知りたいと誰もが思うだろう。

 可能であればそれが誰なのか、までを。

 

「その情報、信憑性はあるのかな?」

「事実を明かすつもりですが、信じるか否かはあなた方次第ですので」

「時間稼ぎが目的とか?」

「時間を稼いでも、特に利点はないので、ただの気まぐれです」

 

 心情は掴めないが、嘘ではなさそうだ。

 コイツを倒せばもう、そんな情報は手に入らないかもしれない。

 万が一にも、今後の行動の指針にできるのなら、入手すべきか。

 

「じゃ、参考までに聞いとくよ」

「話中に攻撃しないでくださいよ」

 

 そう言ってシステマーはホログラムを展開した。

 最後の一言はフリか?

 何にせよ、その言葉が意味を為すとは思えない。

 

「こちら側の生存者は計4名――あ、私は2人で1人の計算です」

 

 補足しつつ公開する。

 これは予想通りで、目玉を倒しただけの事。

 他は生きている事の再確認。

 

「それで本題のあなた方ですが……」

 

 ごくりと息を呑んだ。

 妙な緊張感が走る。

 

「この場に7名、門前広場に2名……」

「――⁉︎」

「その他の場所に4名で、生存者は計11名ですね」

「「――⁉︎⁉︎」」

 

 門前広場に2人?

 それ以外で4人?

 誰だ。

 

 門前で、マリンと共闘する誰かがいる。

 それ以外にも、まだ4人が生き残っている。

 希望はまだある。

 ここで差し違えても、後続がいる。

 

「因みに誰かは教えてくれるの?」

「いえ」

「はいどうも!」

 

 虚をつく攻撃。

 メル、ころねの連携がシステマーを圧迫する。

 

「プロテクト」

 

 2度目となれば、ころねの俊足にも目が慣れ、反応が間に合う。

 システマーの全身はプログラムで保護された。

 よって、ころねとメルの怪力を持ってしても、傷付くどころか、一ミリたりとも動かない。

 寧ろ、殴った衝撃が、拳に伝わり反動が痛い。

 

「アンデッドは厄介ですので、チートを使わせていただきます」

 

 ホログラムを展開し、パネルを操作。

 その間が隙だったが、反応が遅れ、手を伸ばす頃には操作を完了していた。

 

「チートだと?」

「ただの照明ですが」

 

 天井にLEDライトのような発光物質が出現し室内を漏れなく照らす。

 ただの照明なら、丁度いい明るさでありがとうと言うところ。

 が、残念ながらこれは非常に有り難く無い。

 

「うっ……これ、聖なる光……!」

「ほんとだ……」

「――?」

 

 メルとみこのみが感じ取る波動。

 聖なる光は聖力に似た性質を持つ光の事で、稀に天界人が使用する。

 天界人から見れば、力の源になるが、魔界人からすれば己が能力やスキルを果てしなく制限する凶器となる。

 その光を発する照明が、室内に複数個出現し、メルが力を失う。

 

「しかし、噂通りの種族のレパートリーですね」

「それがどうしたっ!」

 

 負けじところねがまた駆け出す。

 だが、プロテクトで防御される。

 

「さて、それではステージも整った所で、始めましょうか」

「は?」

 

 挑発するような言い回し。

 まだ何も始まっていないと言っている。

 ここまでは序章にも入らない。

 

「まさか私の本気がこの程度と?」

「んだと……」

「早期決戦が勝利の鍵」

 

 とシステマーはぼやく。

 ホログラムを展開し、尋常では無い速度でパネル操作を始める。

 

「フィールド武装」

 

 次の瞬間、四方八方から大量の剣が矛先を向けて出現する。

 まるで雨後の筍のよう。

 天井、床、壁の全面で鋭利な刃が構える。

 地面にいては、全身を貫かれ一発KOだ。

 ラミィとスバルは浮遊し、みこは大幣に飛び乗る。

 浮く事ができない者は力業で凌ぐ他ない。

 生えてくる剣を悉く殴り、蹴り、破壊したり、その自慢のボディで攻撃を弱めたり。

 だが、聖なる光で弱まったメルはそんなパワーもない。

 空を飛べない羽がこん時に憎らしい。

 みこが手を差し伸べ、大幣へ引き上げるが、その際右足に剣が刺さってしまう。

 

「い゛っ……!」

 

 パワーで凌ぐノエルところねも、次第に処理が間に合わなくなる。

 スバルが向かおうとするが、浮くだけの能力なため、空中での加速ができない。

 その上、光の影響で他の物を浮かせる余裕がない。

 聖なる光は魔力を使用する全てに関して有効である。

 

 ラミィも、冷気を使って自分自身を浮かせているが、他人浮かせる技術はない。

 

 みこが大幣で2人を回収する必要がある。

 

「攻撃はとめどなく」

 

 ホロメンが次なる行動を起こす前に、フィールドはさらに変化する。

 空中に、大量の拳銃が出現して包囲し、その銃口をそれぞれに向ける。

 逃げ場などない。

 

 バババババババババババババッッッッ――!

 

 一斉射撃が始まる。

 数多の発火の光は眩しく、幾重もの射撃音は耳に痛いが、目や耳を塞いでいては全身穴だらけ。

 

 誰の叫び声も、銃声に掻き消される。

 

 土埃が舞い視界が悪くなるほど、銃の発火がよく光る。

 的を外す弾丸も多かったが、天井、壁、床、照明に傷は付かず、剣は砕けても再生していた。

 

 10秒ほど連射が続き、やがてシステマーが一時停止させた。

 軽くパネルを操作して、舞い上がった土埃を全て削除――一瞬で視界が晴れる。

 

 今の一斉射撃の負傷者は……。

 ノエルとロボ子だけだった。

 

「ラミィたん、すげぇな……」

 

 2人の負傷よりも、ラミィの健在にみこは感嘆の声を上げた。

 皆の内心を代弁するように。

 

「ノエルちゃん!」

「ん、ありがとうございます」

 

 浮遊させた大幣をノエルに寄せると、みこではなくメルが手を伸ばし引き上げた。

 そこにはみこ、メルの他にスバルも乗っていた。

 この3人は結界で身を守ったようだ。

 ノエルは致命傷になる箇所を極力守ったが、装甲を破って腕や脚、腹などに数発喰らっていた。

 

 ラミィは空中に漂ったまま、眼前で腕をクロスさせているだけ。

 あんなポーズで、どうして無傷なのか。

 

 ころねもどう凌いだのか、付近の剣を全て砕いて立っていた。

 

 そしてあと1人、ロボ子。

 破損していた右腕が、遂に切断され、激しく漏電していた。

 断線した内部コードやオイルが漏れている。

 だが、今負った怪我はそれだけ。

 傷口には有効だったが、表面からは銃弾も通用しなかった。

 

「ころにぇとろぼちも」

「うん……」

 

 ころねも幣に乗せる。

 続けてロボ子に近づくと、左手を伸ばされた。

 その手を掴もうとしたが、空かして大幣を押し少しだけ遠ざけた。

 僅かだが、急な揺れに全員が一瞬ぐらつき、体幹がブレる。

 

「何やって――」

「おかえし」

 

 破損した右腕を付近の剣に当てた。

 ロボ子は自身の体の作りを、ある程度理解している。

 心拍の上昇はつまり、モーターの急激な稼働。

 内部のモーターがフル稼働すれば、当然体内に仕込まれたコードを通じて物凄い電圧と電流が発生する。

 そして、丁度右腕は壊れてそこから漏電している。

 更に好都合な事に、一帯には電気を通す鉄具が無数に存在する。

 

 味方も丁度空中にいて、感電する範囲内に居るのは、ロボ子とシステマーの2人だけ。

 

「ロボルトギフト」

 

 刹那の内に電気は巡る。

 四方を電気が囲い、眩く発光する。

 

「ッッッッーーーーー‼︎‼︎‼︎」

 

 さしものシステマーも、この一撃に対応できる速度は持ち合わせていない。

 何をするにしても、ホログラムを操作する極僅かな時間を要するからだ。

 反射速度は電流の速度に勝てなかった。

 

 負傷からのカウンターショック。

 これは多大なダメージだ。

 倒せるまで流電したかったが、モーターがうまく動かないし、頭がバチバチと鳴っている。

 反動が大きすぎる。

 

 ――電気が止まる。

 

 がっ、と剣に寄りかかるロボ子の足元から、メラメラと小さな炎が発生していた。

 電気が油に触れ、発火したようだ。

 

 システマーはガクンと膝をつき、口から煙を吐いていた。

 ずっと痙攣しており、そのダメージの大きさが窺える。

 

 討つなら今だ――

 

 ころねが幣から飛び降りる。

 足元の剣なんて無視。

 腕力で破壊できるにしても、その際に怪我をするのは確実だ。

 

「もう、ころねぇは!」

 

 ラミィが呆れ顔で右腕を一振り。

 その先から冷気が放たれ、みるみる剣たちが凍りつく。

 壊す手間を省くため、剣の高さに合わせて氷で新しく床を構築した。

 ついでにシステマーの腕も凍結させ、パネル操作を封じた。

 それと、オイルの炎上も凍りついて、火は収まった。

 

「超しばきあげパンチングラッシュ」

 

 俊足でシステマーに接近し、拳を何度も撃ち抜く。

 万が一、プロテクトされた時の保険に、狙うは顔面。

 オブジェクトのない顔は、絶対にプロテクトできない。

 無数の拳がシステマーのショートした脳を呼び起こすが、同時に果てしないダメージと疲労を蓄積させる。

 

 ピシッと氷に亀裂が入る。

 すると、その綻びは一瞬で広がり、システマーは力づくで氷を破壊して両腕を解放した。

 その間に数発貰い、更に追加で打撃を顔面に受けながらパネル操作。

 一面の氷と大量の剣、宙に浮いた銃が全て消滅した。

 足場が消え、ころねのバランスも崩れる。

 

「ぎぃっ――」

 

 珍しく、システマーが近接攻撃を放つ。

 右脚を回してころねを蹴り飛ばす。

 腕力は並の男性より少し強い程度。

 ころねにとってはまだ甘い。

 崩れた体勢でもしっかりと防御を入れ、うまく後方へ滑走した。

 

「じゃ、ぁ、て、す」

 

 感電した挙句顔面をフルボッコにされ、呂律が回らない。

 カタコトで読み取れない単語を発し、またパネルを操作した。

 手だけは感電が引いてきたのか、動きがあまり衰えていない。

 本能的に最重要な部分の修正を急いだのかもしれない。

 

 操作終了と同時にころねの足元が迫り上がる。

 その頂上が伸び、一直線にころねへ直撃。

 ガードしても跳ね返せない途方もない力にころねは吹き飛ばされ――

 

「まずいそっちは――‼︎」

「ッ――⁉︎ やべ――」

 

 窓を突き破り、ころねは場外へ弾き飛ばされてしまった。

 地面とはかなり鋭角に飛ばされたが、この高さだ、到底助からない。

 

「何が起きても、攻撃をやめない!」

 

 続いてノエルがボロボロのまま駆け出す。

 踏み込めば脚が、メイスを握れば腕が痛む。

 痛みに涙が滲むが、絶対に動きを止めない。

 

「も、お、ぉい」

 

 痺れた舌を動かして、言葉にならない言葉を発する。

 そんな感電の後遺症はまだまだ残っているシステマーだが、やはりもう腕だけの動きは元通り。

 

「弱点は手!」

 

 氷が一般オブジェクトに含まれる以上、ラミィの攻撃はほぼ無効化されるが、腕さえ拘束して仕舞えば何でもできる。

 同じ理由で、照明や銃や剣は破壊しても再生されていたが、腕を抑えればそれも解決する。

 逆にホロメンや敵キャラ、そしてみこの幣やノエルのメイス、その他諸々服などを含む装備品は固有のオブジェクトとされシステマーの操作の対象外。

 操作可能オブジェクトと操作不可能オブジェクトが存在している。

 

 システマーを打破するには、腕を拘束するか、操作不可能オブジェクトを巧みに使用するか。

 力業は通用しない。

 

 弱点を見て、ラミィが冷気を再放出し氷漬けを狙う。

 冷気は先行して駆け出したノエルを一瞬で追い越して、システマーヘ。

 

 ガシン、と巨大な鉄板が現れ、冷気とノエルの道を塞いだ。

 大きすぎて、お互いが見えなくなる。

 鉄板の表面が凍りついた。

 

「よっさん!」

「すっさん!」

 

 無力化された2人が聞き慣れない掛け声で大幣から飛び降りる。

 

「2人とも!」

 

 みこの静止も聞かず鉄板の両脇へと走る。

 

「これで、おわり、です」

 

 滑舌に回復が見られる。

 部分部分で言葉が止まるが、聞き取れた。

 バトルは更にヒートアップするようだ。

 

 その一言の終わりと寸分のズレもなく地面から大量の剣が生成される。

 またコレか!

 なんて愚痴るまもなく空中から影が堕ちる。

 

「ヤッベ」

 

 至る所に岩が出現し、落下する。

 剣に刺さり砕ければ消滅し、新たな岩が出現し……と延々とこのサイクルを繰り返す。

 

「何でみんなして!」

 

 対策も練らず地に降りた3人に、みこは呆れつつも必死に救出に向かう。

 ロボ子も動けないでいるが、彼女はオブジェクトによる攻撃くらい基本へっちゃらだろう。

 

「さあ、みせて、ください」

 

 何を?

 システマーの声は、まるで飛んでくるみこに言っている。

 

 しゅーーー……

 

「「――‼︎」」

 

 導火線が焼ける音が突如響き渡る。

 それもひとつじゃない。

 

「おまっ――!」

 

 岩の雨が、いつの間にかダイナマイトの雨に変わっていた。

 全部が爆発したら、この部屋が丸ごと吹き飛んで、塔が崩壊する。

 誰1人助からない。

 

「ラミィたん!」

「北のまほろば」

 

 みこの掛け声を聞くよりも先に、ラミィは行動を起こしていた。

 全てを凍らせればなんとか――

 

「フィルターボックス」

「な! なによ!」

 

 ラミィとシステマー、それぞれを囲う箱が出現し隔離する。

 ラミィの力はボックス内で完結し、ダイナマイトを消火できない。

 

 そして――

 

 誰の耳にも音は響かなかった。

 皆の鼓膜は音速で破裂し、全身に大爆発を喰らった。

 

 5層の爆散によって支えを失くした上階は崩落し、下階を巻き込んで崩壊していく。

 

 爆発により、7名はゲームオーバー……にはならない。

 

「人形」

 

 みこの手元から3枚の人形が塵となって消滅した。

 自分と、最も近くにいた2人を生かすことに成功。

 

 だが、そこは空中。

 幣を出現させても瓦礫で粉砕される。

 身を任せるしかない。

 

「――!」

 

 落下中、視界にひとつのボックスが目に入った。

 

「すばちゃん! ノエル!」

 

 命を繋いだ2人は、何故かくっ付いている。

 ノエルが反射的にスバルを庇った結果だろう。

 ナイスだ。

 

「あれん中に、ヤツがいる!」

 

 腹の底から声を振り絞る。

 ここで討てなきゃ、死に損だ。

 みこの目が煌めいて見えた。

 

「スバル先輩!」

「オラっ――行けぇ‼︎」

 

 ノエルとスバルが体を捻って足裏を合わせる。

 反発でノエルをボックスへ送った。

 勿論、普通ならそんなパワーなどでないが、スバルの浮遊を付与させる事によって、ノエルの体重を実質ゼロにしているために可能となる。

 

 届く!

 行ける!

 

「ッがぁ!」

 

 反発直後、スバルの呻き声が鈍く響く。

 落下中の瓦礫に直撃してしまったのだ。

 スバルは速度を増して垂直落下していった。

 

 そしてその現象は、ノエルにも起こり得る。

 現に、このままでは瓦礫と衝突し、同じ末路を辿る。

 だが、どうする事も――

 

「――――――――」

 

 さくらが舞う。

 はらりはらりと、大量の瓦礫を潜り抜け――

 

「んに゛ゃ――‼︎」

 

 みこにも瓦礫が直撃し、真っ逆さま。

 しかし、刹那の間に、ノエルはボックスに足を付けていた。

 

 ――泣き言も、苦言も、後悔も、全部全部後回しだ。

 

 メイスを振り上げ、ボックスを叩き割る。

 どんなバリアも、このメイスには通じない。

 

生命(いのち)の重さを、思い知れェッッ‼︎」

「――⁉︎⁉︎⁉︎⁉︎⁉︎」

 

 ボックスを砕いた後も、その腕は止まらず、勢力は増すばかり。

 粉砕したボックスの破片に紛れて、メイスがシステマーの腹部を撃ち抜く。

 防ぎ用のない渾身の一撃が炸裂。

 直撃で気絶したしステマーは瓦礫も人も、全てを抜き去って、何よりも早く地上へと叩き落とされた。

 

「やっ――っだ‼︎」

 

 そしてノエルも、瓦礫を喰らい、地上へ。

 

 大量の塔の残骸が豪雨のように降り注ぎ、敵味方合わせ、計7名を埋めてしまった。

 

 増してゆく謎を解明出来るものは、今はもういなくなった。

 だが、ただ一つ。

 

 

 システマー(オブジェクト)――ゲームオーバー。

 

 

 どれほどの犠牲が出ようと、これは、大きな功績である。

 

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