門前広間で対峙するマリフレとシステマー。
大門は開かれたままで、塔は壊れる前だ。
広大な敷地をたった3人で占領し、これより戦を始める。
「ファイアエルフとオッドアイキャプテン」
呼びにくい呼称で2人を示し、視線を送る。
併せてホログラムも展開。
一足先に戦闘態勢を取るとは、なんたる小心者。
「マリン。なんか雰囲気変わったけど、何ができる?」
「さあ。正直まだ掴みきれてないけど、危機察知はできる」
「ほうほう」
マリン以上に豹変したフレアは何度も頷いた。
フレアは炎の鎧に身を包んで、炎の獲物を握っている。
あの時と、同じだ。
「てしっ!」
フレアが突然、マリンの額にチョップした。
普通に命中して、フレアの右手にも衝撃が走る。
「痛いっ……」
「っ……」
額を押さえて屈み込むマリンと、右手を押さえて顔を歪めるフレア。
勝手な仲間割れ?で小さな傷を与え合う。
「な、何すんのフレアぁ」
「危機察知できるって言うから……」
お互いに恨み節のように呟いた。
でもまあ、多分フレアが悪い。
「意識してないと無理なの。この力はまだまだ発展途上なの」
「えぇ、でもマリンはもう……」
「年齢は関係ないでしょうが!」
言及する前にマリンが圧迫するように詰めた。
炎が少し熱い。
「ごめんって。ほら、じゃあ集中して」
「始めたのどっちかなぁ⁉︎」
「どっちでもいいじゃんそんなの」
「フレアちゃーん。冷たいよー。マリフレの絆を大切にしてー」
「ならあたしの熱、あげよっか?」
「恋の炎なら喜んで貰うんだけどね」
直火はごめんだ。
戦場で和む2人を、システマーは黙って見つめていた。
「ジョークタイムは、もうオーケー?」
談笑が一段落つき目が合うと、尋ねてきた。
何を律儀に。
「システマー、ソードマスター、ファイアファイターとコンティニューしているようだ」
1人だけ命名がおかしい。
ファイアファイターは消防士だろ。
「フルスロットルでいくぞ」
本気のシステマーに、マリンの目と、フレアの力で立ち向かう。
「レッツエンジョイ」
ホログラムの操作を開始する。
まつりの花火で多少のシステムが破損したと明言していたが、その上でどれほどのものか。
重力システムが壊れた事だけはわかっている。
「バキューム」
手始めに引力。
先までと同様の引力が働き、マリンとフレアは引き寄せられる。
2人には、抵抗する力がない。
「そればっかですね!」
マリンはバリアや反射に警戒を散らしながら、引力に乗って接近する。
パワーがなく、決定打に欠けるとしても、そこからフレアが連携して攻撃できれば大きな一撃となる。
走るフォームでさえだらしないマリン。
だが、バリアや反射壁を展開されればそれが見える逸材。
未だにオッドアイの性質すら掴めないが、稀に見たいものが見える。
ここで言う「みたいもの」とは、下着などではない。
うまく言語化できないが、その時最も重要なものだったり、敵の弱点だったりと、かなり実用的な力だ。
制御できない今はギャンブルなスキルだが、意識的に発動させることができれば、唯一無二の武器になる。
距離が詰まる。
システマーがホログラムに触れた。
来る――反射壁。
「――ゃ! そんなんずるい!」
見えた反射壁の位置。
それは敵の正面だけでなく、自身を完全に覆うような箱型に展開される。
唯一足元にはバリアも反射壁もないが、モグラとかでなければ穴は掘れない。
「ナイス、マリン」
背後で抵抗していたフレアが動く。
バリアと反射壁の存在は、マリンたちと同様に、システマーにも障害となる。
「縛りプレイで舐めプか?」
「ドMer」
「ニューボキャブラリーをつくるな」
フレアの一言からマリンが造語を発する。
システマーは毅然と返しながらホログラムに触れていた。
「炎柱」
「テレポ」
火柱が四角いバリア内を埋め尽くす。
が、攻撃が一歩遅かったか、システマーは瞬間移動で回避する。
同時に、引力は切れた。
「ファイアがスキルか」
「相変わらず人を見下ろすのが好きですね」
「随分と余裕そうじゃん」
空に立つ相手に、2人は口撃する。
特に効果はない。
「無形物は全て、非オブジェクトに含まれる」
「英語使えや」
「分かるのか?」
「分からん」
「はぁ……」
マリンの愚痴に嘆息した。
敵の正体を見抜いているからこそ、マリンは言葉一つで調子を狂わされる。
「キャラ付けするならする、しないならしないで、どっちかにしろ」
「人の苦労も知らずに……全くガキが……」
「え! そんな若く見えます?」
「じゃあババアだ」
「んだとゴラァッ!」
「はいはい、燃やしますよー」
お子様2人の口喧嘩に、フレアが炎で割って入る。
空高く火柱を立てて、システマーを焼き切ろうとした。
しかし、火柱はシステマーに届くことなく消滅した。
「火も水も風も、無形物は全てが非オブジェクト。つまり私の操作範囲だ」
「――――」
「残念ながら水はさっき壊された一部に含まれてたから、今は使えないが、じきに直る」
「――⁉︎ 直る⁉︎」
「システム自体が非オブジェクトなんだ。当たり前だろ」
「チーターかよ」
「ああ、走るのも速いぞ」
まつり達の命の結晶とも言える一撃を、そんな容易く癒されていいのか。
いや……問題はそれだけではない。
ゲーム設定や設計が全て操作範囲内なら、能力の強化も数値という非オブジェクトの操作で可能。
身体能力の上昇は、2人にとって純粋な脅威となる。
「走るのも速い」という今のセリフとも繋がる。
「マジで勝てるんか?」
「大丈夫。ヒントは貰った」
「凄いじゃんフレア。船長は、色々見えても頭はアレなんで」
「あたしも別に良くはないよ」
「良くないと悪いは違うの」
「マリンも別に悪くないでしょ」
「多方面への配慮はいいから、ほらいけフレア!」
マリンの指示に従うようにフレアは飛び出した。
今度ばかりは、システマーも安易な攻撃を行ったりしない。
「火は効かないが、どうする?」
「あたしを見て、何も気づかない?」
疑問に疑問を返した。
無形物は全てシステマーの管理下にある。
だが、今この場に、奴の管理下に無い炎が存在している。
炎の鎧。
メラメラと燃え滾る炎が鎧という形を持っている。
無形物である火によって生成された、形ある物。
これは、歴としたオブジェクト。
フレアは、形而下の炎を生成できる。
炎の槍や、以前から使用している炎の矢も同様に。
「火焔武具」
フレアの周囲にありとあらゆる武器が現出される。
剣、斧、鎌、弓矢、槍、銃、槌、鞭、棍、ハンマー……。
炎の武器達が矛先をシステマーに向けた。
「――」
フレアが手を翳すと、それを合図に一斉に襲い掛かる。
切り裂き、撃ち抜き、殴打し、串刺し……。
「それはそれで無意味」
全方面からの攻撃をバリア一つで防ぎ切る。
周囲に球型のバリアを張っている。
「ネット弁慶志望か?」
武器を操る様を比喩するが、ネット弁慶は意味が違う。
結局形ある者は全てバリアに弾かれる運命。
だが、これも狙いだ。
状況はさっきと同じ。
ならば、バリア内に武器を生成すればいい。
「串焼き一丁」
バリア内を炎槍が埋め尽くす。
「それも無意味」
テレポートで回避。
その移動先はフレアの背後。
自身の危険でなければ、マリンも常に察知はできない。
「ショックウェイブ」
右腕から衝撃波を放つ。
テレポートからその動作まで1秒にも満たない。
誰であっても回避は不可能。
「ゔっ……」
纏う鎧も貫通して衝撃波は全身に響き渡る。
「丈夫な体だな」
強い衝撃が全身に伝達されれば、粉砕骨折や心肺停止も発生する。
それが起きないだけ、フレアは強い。
もしこれがマリンに当たれば、一撃でノックアウトも十分有り得る。
フレアは口と鼻から血を流して、膝をついた。
暫くは反動で動けまい。
「フレ――っ!」
マリンが一歩踏み込むと、瞳から不思議な感覚が脳へ伝達される。
反射的にマリンは踏み込んだ足を軸に90度回転、危険を回避した。
「リアルに凄いな……」
マリンの真横を、システマーが通過していた。
速すぎて見えない。
身体能力の強化なんて比じゃない。
今の身体能力だけ見れば、魔王と同等。
そこから放たれる拳や蹴りは、マリンには重すぎる。
一発だって受けられない。
「っ――!――!――!――!」
「少しずつ反応も遅れているが、大丈夫か?」
システマーの脅威的な物理の連撃を危機察知からの反射だけで回避するマリン。
だが、運動神経の悪さが起因して、回避行動も次第に遅れを取りはじめた。
頬、脇腹、背、脚、腕。
様々な箇所を攻撃が掠る。
速度による摩擦だけで、ちょっと痛い。
何度も回避を繰り返し、火傷痕が幾つもでき、もう回避も出来なくなった頃、突然シナプスが切れたように感覚遮断が起きた。
危機察知が働かない。
反射もできず立ち尽くすマリンの前に、フレアが飛び込んできた。
「捕まえた」
拳が腹に命中して、吐き気を催すが我慢だ。
その腕を掴んで拘束――
「それも無理だな」
パシッ、と赤子のように手を撥ねられた。
「くっ……‼︎」
払われた方とは逆の手で腹を押さえる。
死ぬほど痛い。
比喩ではなく、本当に、打ちどころが悪いと死ぬ。
鎧が無かったら確実に死ぬ。
「フレア……」
「1人じゃ勝てん! 死ぬな!」
「――! マジで、愛してる!」
護られた事に対する感謝と心苦しさの衝突を名前一つで届けた。
それを、察してかは不明だが、フレアは苦言を吐いた。
戦場でときめくマリン。
「この戦いが終わったら、結婚しよう」
盛大なフラグ。
「いや」
フラグは折れた。
「でも、どう倒す?」
「ん……それ、思案中」
切り替えの早いマリン。
フレアも一瞬で頭を切り替え、案を巡らす。
弱点自体は複数個確認できた。
正確には、攻撃が命中するタイミング。
だが、そこを突く能力や技術が2人にない。
「でもとにかく、生に執着しよう」
「……?」
「生き物ってのは、死に際にこそ覚醒する」
まるで実体験。
だがそれは事実。
死に際に走馬灯が見えたり、世界がスローモーションになるのは、あらゆる記憶を集約させ、生きる術を模索するから。
その時、秘めたる力が目覚める……かもしれない。
しかし、フレアも最近スキルが覚醒したばかり。
マリンに至っては覚醒したてホヤホヤだ。
そんな短期間で、覚醒の連鎖を起こせるだろうか。
いや、起こすしかない、今ここで。
覚醒――否、奇跡を。
「死を体験したいか? ならこんなのはどうだ?」
プログラムを起動する。
「――っ! スゥーー‼︎」
危機感知したマリンが大きく息を吸う。
次の瞬間――
「ッ――!」
マリンとフレアの周囲から何かが消滅し、呼吸ができなくなる。
(空気が……!)
喉を押さえるが、酸素は送り込まれない。
マリンは口と鼻を塞いでいた。
フレアは脳が霞む前に攻撃に出る。
運動量を減らし、手元に炎槍を……
バチっ。
「ッ――」
発火しない。
それ以前に、炎の鎧が消えている。
「酸素を無くしたんだ。お前の火は炭素と酸素の結合だろ?」
原理を理解した上で、酸素だけを消滅させているのか。
しかも、システマーは呼吸している。
一定空間内の酸素が消滅している……という事は、その空間を出ればいい。
「…………」
でも、自分が動けば合わせて無酸素範囲を変更してくる。
ならまず……。
フレアはシステマーの周囲を発火させた。
システマーは大きく息を吸い、テレポートする。
移動先はフレアの背後。
「ッッッッィ――ごッァ――!」
先程の衝撃波を喰らう。
全身を波が伝い、骨髄まで振動が走る。
粉砕しそうなほど痛い。
呻吟し声を漏らすと酸素がさらに枯渇する。
脳が霞む。
視界に靄がかかって、うまく頭が働かない。
また、膝をついた。
「ん?」
突如、砂埃が吹き付けてきた。
フレアの発火で起きた小さな爆発が砂を巻き上げ、それが爆風に乗ってきた。
僅かに視界が遮られた。
フレアはもう、酸素不足で脳が弱っている。
頭が使えないと、体も動かせないし、火も起こせない……。
せめてもう少し、酸素があれば……。
(酸素があれば、なんとかできるんだろ、フレア!)
呼吸器官を塞いだマリンが、砂塵に紛れてフレアに駆け寄る。
下心なんて無いから、今は許せ。
これは、生存本能だ。
「っ…………」
這い蹲るフレアを仰向けに返す。
そして、口と口を……。
「んっ…………」
マリンからフレアへの、酸素のプレゼントだ。
「…………!――――――!」
血の味がする。
数秒の遅延を要して、フレアの脳が酸素を得た。
持ち時間は10秒も無い。
この10秒だけ活性化する頭で、乗り切る。
砂塵の先で、バチバチと発火音が響き、火花が散っている。
「ショックウェイブ」
「ッ――!」
「――⁉︎」
フレアを狙った一撃は、マリンが受けた。
シナプスが弾けるような感覚。
危機感知が反応している。
「ッ――! ッ――! ッッッィィ――!」
「おま……くっ――」
もう3発ほど、瞬間移動で位置を変えつつフレアを狙ったが、危機を感知したマリンが自らその危機に飛び込み、遮る。
「……本当に花開くモノだな」
窮地にこそ人は、本来の力を得ることができる。
今ここで証明された。
システマーは一足早く自身をバリアで覆った。
数秒後――
誰にも影響しない位置で、大爆発が起きた。
爆発自体に意味はない。
フレアの狙いは、その爆風。
爆風でフレアとマリンの体は飛ばされた。
「っはぁ、はぁはぁ、はぁ、っぅ……」
その勢いで無酸素エリアを抜けた。
必死に喘いで、酸素を吸収する。
フレアは、吹き飛ぶ際に抱えたマリンに視線を落とした。
右脚と右腕が痛々しく、青く腫れていた。
「……許すから、起きてマリン」
「………………はい」
マリンと目が合う。
悪びれた表情の中に、照れ臭さが紛れている。
逆にフレアはキッパリと割り切っていた。
マリンはサッと視線を逸らす。
「だいじょぶ?」
「いや……全然」
紅潮するマリンは、先程の攻撃で手足をやられ、もう自力では動けない。
フレアに抱えられたまま、マリンは地面を見た。
「い、いざって時は見捨てても……」
「何言ってんの」
「だって……」
マリンを守りながら闘うなんて、不可能だ。
マリンへの攻撃に意識を割いていては、まともに戦えない。
「1回降ろすよ」
「え、うん」
自立力の乏しいマリンに配慮しつつ、ゆっくり地に降ろす。
右半身を庇いながら、マリンは傾きつつも地に立った。
その間、システマーは黙って行く末を見守っている。
優しさではない。
「ほら」
「ぇ?……っと……?」
しゃがんで背中を向けるフレア。
マリンはきょとんとして左に首を傾ける。
「おんぶ」
「そ、それはちょっと……」
先刻の行動が脳内にフラッシュバックし、ますます赤面するマリン。
「マリンって、そういうとこピュアだよね」
呆れ混じりに苦笑する。
普段からずっとこうしていれば、もっとトキメクのに。
ま、それは個性の消失で勿体無い。
「ほら、早く乗る」
「でも……」
「いいから」
「ぅ……」
根負けしたマリンが、覚束ない足取りで寄り添って、フレアの背にしがみ付く。
右腕と右脚が痛いが、少し我慢して力を込めた。
フレアの背中にマリンの胸が押し当てられ、右肩には頭が乗る。
最後にマリンのお尻あたりに手を回して、落とさないように抱えた。
「っよッ……と」
渾身の力で脚を伸ばし立ち上がる。
流石に重い。
「ふ、フレアぁ……」
「いいから黙って。舌噛むよ」
「え、舌……?」
不穏な発言に、胸鼓動が別方面に高鳴る。
「それでファイトするのか?」
「見縊ってると、足掬っちゃうよ」
マリンの心情は蚊帳の外。
フレアにはその鼓動が伝わっているが、あまり気にならない。
「マリン、集中して」
「できるわけないでしょうが」
「敵から目を離すな。キズナ、信じてる」
「――――」
フレアの語気で、気持ちが少しだけ切り替わる。
マリンは深呼吸する。
目を閉じる。
大きく息を吸う。フレアのいい匂いがする。
大きく息を吐く。
目を開く。
敵を直視した。
凝視、注視、刮目を止めるな。
フレアの信頼は大きくマリンに伸し掛る。
マリンを背負う事による機動力の大幅低下。
そして炎の鎧も制限され、耐久力と防御力も低下。
それでもマリンを背負って闘う。
ただの情で済む話ではない。
戦え。
ここは、マリフレの戦場だ。
マリンの色の異なる双眸が、敵を捕らえて離さない。
「レッツ、リファイト」
「「来い」」
システマーが消えた。
弾けるシナプス。
「ショック」
フレアの背後から波動を一直線に放つ。
ボッ、とフレアの体が発火すると同時に全身が右方向へ流される。
見事に回避。
「ファイターと同じロジック」
発火をエンジンにして身体を動かしている。
システマーの分析は早い。
「しかも……」
違和感を確信にするため、システマーは更に仕掛ける。
何度もテレポートとショックを繰り返すが全て躱す。
バキュームを発動、その瞬間フレアが物凄い火力で飛んで来る。
予見していたような動き。
バリアは張らずにテレポートで逃げる。
今度は身体能力でバトる。
パワーからスピードまでを遜色なく上昇させる。
目にも止まらぬ速度でフレアの傍を通り背後に回ると拳を撃つ。
「っ」
身体を回して回避。
次に右脚を下から上に蹴り上げる一撃。
それも回避。
数回繰り返すが、フレアが遅れを取る気配は無い。
システマーは一旦距離を置こうと――
「ヅぃ――」
その背後から、1本の炎槍が貫く。
ピンポイントで狙い撃ちされ、命中した。
ギリギリで察知して、なんとか急所は外れたが、土手っ腹に突き刺さった炎槍が腹から焼いていく。
「テレポ」
瞬間移動して槍を体から抜いた。
移動先で血を流す。
「お前ら、同期したな?」
ついに確信へと変わる。
同期――言い換えれば、感覚共有。
「一心同体か」
傷口に手を当て、口の中に滲みる血を味わう。
2人は何も言わない。
もう、完全集中状態に落ちて、他に意識を割くつもりがない。
マリンの視覚を原理不明でもフレアが扱う事で、2人の武器を掛け合わせて闘う事を可能としている。
2人の「絆」が境地に達した。
ここからの闘いは、ほんの一瞬で決着しそうだ。
システマーも遂に思考を切り替える。
もっと高次元な戦いへ。
「グラビティ」
ガゴン、と足への負荷が強まる。
いつの間にかシステムを修復していやがる。
炎で作った槍や矢、剣などがシステマーを囲う。
瞬間移動して回避――
グサっ。
「っ――⁉︎」
槍が再びシステマーを貫いた。
(移動先を予見した⁉︎ どちらにとっても危機ではないはず……)
次から次へとスキルのレベルを上げてゆく2名に驚きを隠せない。
腹部に二つの穴が空き、いよいよ生死に関わる域まで負傷した。
「ウィンドブラスト」
風が刄となり、多方面から2人を襲う。
重力も展開中。
それなのに、フレアは尽く回避して見せる。
風という、目に見えない凶器を、しかも負荷が何倍にも増す重力下で、マリンを抱えながら。
「イカれてる……!」
単調な攻撃は全て操作容量を圧迫する悪手。
ならば――
「デッドプール」
大量の水を生み出して、位置を固定し四角いプールを形成する。
もちろん、中央に2人が埋もれるように。
機動力もなく、発火もできない状況下ではどうにも……
「は――?」
水中で定期的に発光が起き、同時にポンポンと気体が浮上する。
それに合わせて、フレアの体も自在に水中を巡る。
水中で、火を起こしている。
「――! どうなっている⁉︎」
さしものシステマーも、コレばかりは解明できない。
だが、原理自体は単純で、ただ単に、水分子に含まれる酸素を強制的に燃焼に使用させ、水素爆発を起こしている。
エルフの精霊術は、意外と細かく理論が存在している。
だが、フレアやラミィは、特に原理など理解してはいない。
というか、エルフの殆どが理解せずに使っている。
生活の中で、少しずつ活用の幅を広げていくのだ。
今回のように。
さあ、決着だ――。
フレアが水中から飛び出た。
「エルフの一撃『スペシャルこうげき』」
全てのエルフが持つオリジナルの、最強技。
反動は大抵でかいが、威力も絶大。
気温が上がる。
大量に発汗する。
固定された太陽が照りつける。
快晴の空から、突如炎槍の雨が降り注ぐ。
逃げ場など、この場にない。
「これは……」
流石に捌けない。
なら、少し卑怯だが、この場を離れてしまおう。
テレポートに制限などない。
「テ……あれ……?」
ホログラムが開かない。
気付けば、水は消え、重力も戻っている。
炎槍が降り注ぐ。
「そうか……」
システマーは、最期を悟り静かに目を閉じた。
その死に際に、フレアの瞳が青白く燃える光景を目にした。
システマーが串刺しとなり――消滅。
その光景を見た途端、炎槍の雨は止み、フレアとマリンは急激な疲労感に苛まれ、その場で脱力した。
意識を取り戻すまで、それから数分要したが、何度目を擦っても、そこにはもう、敵の姿は無かった。
2人は、どちらも欠ける事ない、完全勝利を収めた。
皆様どうも、作者です。
また投稿期間が空きましたが、文字数多いので許してください(関係ない)。
さて今回、システムを操るシステマーも理不尽そのものなのですが、それを上回る理不尽を見せつけたマリフレのコンビネーション。
これは未来有望か、それともこれ以上の進化はないのか。
しかしまさか、ちゅっちゅ、しちゃうとはね。
所で今回の題名、どこかで似たような物が……?
おっと、それではまた次回。