歌姫伝承〜ホロの異能大戦ストーリー〜   作:炎駒枸

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111話 ロボの実験場

 

 新たな増援は敵対するロボットにタメを張るような戦闘機。

 背中に巨大な刀を装備し、腕や足にも様々な仕掛けが見受けられる。

 そんじゃそこらのカラクリではない。

 

「なんじゃこりゃぁ」

 

 たまげた声を上げるホロリス軍。

 目の前に想像を絶する巨大ロボが2機もあれば当然だ。

 まるでガン◯ムやエ◯ァのように。

 

「お前ら」

 

 交戦が一時的に停滞したこの一瞬の間に、「箱推し」がこの場へ飛んで来た。

 

「何だよコレ」

「holoXっつってたな。多分秘密結社だ」

「秘密結社⁉︎ こんな堂々としてどこが秘密だよ」

「俺に言うな」

 

 裏世界の際の潜入は「暗躍する組織」のような、謎めいた雰囲気があったが、今回は結界もなく、白昼堂々と巨大ロボで登場して、名乗っている。

 隠す気配すら感じない。

 

「でも、あれ、いけるんじゃね?」

 

 ロボ対ロボなら勝てるかも。

 全ホロリスがそう感じた。

 

「一旦下がって見守ろう」

 

 「箱推し」は全員に一時撤退の指示を出す。

 この場にいるホロリス軍が、「箱推し」の背後で待機する。

 

「こより、周囲の人は離れてるから、今なら暴れていいよ」

「りょーかい。いくよ、クロちゃん」

「はいはい」

「こよりロボ、戦闘態勢だ」

 

 無駄に拡声される声が街中で反響する。

 併せてウィーン、という機械音が響く。

 敵対ロボは早々にこよりロボを敵と見做し、右腕を伸ばした。

 

「ミサイル発射〜!」

「――! ちょっと待てッ」

 

 拡声されたセリフに、顔には出さないが「箱推し」が焦燥感を持つ。

 街を破壊しないよう、攻撃に合わせて物質を固定していたが、強すぎる衝撃は抑えきれない。

 ミサイルは破壊力が高く、威力相殺など到底できまい。

 しかし、ミサイル発射直後からそれを止める手段は――無くはないが、消耗やら周囲への影響が絶大。

 

 敵ロボとその周囲がミサイルで爆破され、爆炎を立ち上らせた。

 

 からっ……がらがらっ……。

 

 敵ロボの最も付近に位置していたビルの外壁が微かに崩れた。

 

「っぶねぇ……」

 

 肝を冷やすとはこの事か。

 初めて体感した。

 

 少し粗暴だが、黒煙が止み、ロボへの跡を見れば、苦情は喉の奥へ引っ込んだ。

 

「効いてんなぁ」

「おお、いいぞー!」

 

 外野となったホロリス軍から声援が上がる。

 

 そのまま二機のロボは近接戦へと入る。

 敵ロボが近接戦を仕掛けたため、こよりロボも近接に移行した。

 鉄腕を振るったり、鉄剣を振るったり、鉄脚を振るったりする風圧などはやけに大規模な戦い。

 

 「箱推し」的には少々焦ったい戦いではあるが、国のためだ。

 必死こいて街を守る。

 

 しかし、近接戦へと移行してからは、互いに中々ダメージを与えられない。

 ミサイルこそ強力だったが、腕力や装甲などは、両者五分五分といった様子。

 距離を詰められては、ミサイルなどの爆撃は自爆につながるため扱えない。

 

「こより、何かないの?」

「あるにはあるけど、5秒は動きを止めないと」

「聞こえた? 行けそう?」

「……だ…………ご、あ……、で……ざ……」

 

 機内で会話する2人と、無線機か何かで通じる誰か。

 無線機の相手は、拡声器を通してでは聞こえない。

 

「――! ん……?」

 

 不意に「箱推し」が空を見上げた。

 何かを見つけたように天を仰ぎ、その何かを目で追うように見詰める。

 

「……誰か見てるな」

「え、誰かって?」

「さあな」

 

 その場に人はいない。

 特殊な視覚を使用して見ている。

 シオンの千里眼に近い。

 

「――そこの私を見てる人」

「――?」

 

 どうやらこよりロボの内部の誰からしい。

 しかも、あの距離で見られている事に気付いている。

 

「5秒だけ、あのロボットの動きを封じられますか?」

 

 との事だ。

 それさえ実行すれば、勝利をくれるのなら。

 

 「箱推し」は視線に向かって親指を立てた。

 

「こより、一旦距離取って」

「クロちゃん、一旦距離とって、てルイ姉が――」

「聞こえてる!」

 

 こよりロボが距離を取ろうと周囲に気を配りつつ後退するが、敵ロボはそれを逃さない。

 

「聞いたろお前ら、5秒だ。それだけ稼げばいい」

「足止めだな」

「おー、任せろー」

 

 後方待機していたホロリス軍が飛び出す。

 

「ごほっ……風切火羽」

 

 「エルフレ」の風切羽が敵ロボの目前で破裂し視界を塞ぐ。

 光認証でもサーマル認証でも一時的に視覚を封じた。

 その間にこよりロボは距離を取り、ホロリス軍は距離を詰める。

 

「ササ、作戦通りやるのサ」

「まーかせろー」

 

 「座員」の号令で「雪民」以外が動き出す。

 「根っこ」は道路に穴を開けて地へ潜る。

 煙が晴れぬうちに「おにぎりゃー」が「はあとん」を抱える。

 そのやや後方で刀を構える「百鬼組」。

 

「いいですか、痛いですよ」

「我慢する、それくらい」

「では……」

 

 強く刀を握り込むと、軋んだ。

 その音を合図に、「おにぎりゃー」は軽く跳躍。

 

「神風」

「っ――ぁあ!」

 

 足に風の斬撃の衝撃を受ける。

 その吹き上げる風と、斬撃を蹴り返す勢いを糧に爆発的な跳躍を見せる。

 それでも高々ロボの腹あたり――だが充分。

 

「ほらよ、一球入魂――行ってこい‼︎」

 

 更にその位置から「はあとん」を空高く投げ飛ばす。

 鬼のパワーで吹き飛び、高度はロボットを数十メートル程越した。

 その頃には流石に煙幕も履けたが、どうって事はない。

 

「その巨大、何キロまで耐えれるか」

 

 勢力を失い、「はあとん」は落下を始める。

 落下地点をロボの頂点に定めると、体重を増加させ落下速度を上げる。

 こんな巨大、例え100キロの重さで潰しても、普通なら跳ね返されるが、今は仕込みがある。

 

「その上で、1(トン)(t)だ」

 

 衝撃波が国中を伝う――。

 

 ドガァァー。

 

「ヒュー、強烈!」

「街の事ももう少し考えてくれよ」

「必要経費サ」

 

 波紋が付近の建造物にヒビを入れ、世界を震わせる。

 そして、1tの重圧を喰らった敵ロボは右足を道路に陥没させていた。

 

「『根っこ』ごといってないよな……?」

「生きてるから気にすんな」

 

 地中で地盤を緩めた「根っこ」が顔を出さず杞憂する「雪民」に、魔力感知による生存報告して安心させる。

 さあ、コレでロボの動きは止まった。

 動きを止めろ、とは、位置を固定しろの意味。

 上半身が動こうが、攻撃が避けられなくなれば同じだ。

 

「「「今だ‼︎」」」

 

 ホロリス軍が叫んだ。

 こよりロボが呼応するように動き出す。

 

「いろは!」

 

 名前か?

 

 ――――!

 

 突如強風が――。

 

「なんだ?」

「風が――」

 

 電光石火、疾風迅雷。

 一筋の光が風となり道路を抜ける。

 ただの風だと、誰もが錯覚する速度。

 

「――?」

 

 誰だ?

 見えないし、感じないが、誰かいる。

 こいつが「いろは」か――。

 これは――――化け物。

 

 人間の視覚では追えない速度に加え、「箱推し」ですら読めない魔力。

 いや――違うな。魔力を持たないのか。

 生まれ持った、天性の身体能力だけで風と一体になれる。

 なんたる曲者。

 魔法使いの、天敵だ。

 

「今回の敵はロボだけど……」

 

 いくら速かろうと、あの硬さを人間の力でどうにかできるのか――

 

 スパン。

 

「「「………………」」」

 

 ビジジジジっ。

 

「「「え…………」」」

 

 埋まったロボの右脚が、突如膝から抉られた。

 ギリギリ切断されない程度に切り開かれ、殆どの内線が断線して放電していた。

 誰にも理解できない、謎多き一撃。

 

「「「ええええ⁉︎」」」

 

 バランスを崩した敵ロボが右半身を傾け倒れ始める。

 そこへこよりロボが被さるように襲いかかる。

 

「ひっさーつ! こんこよレーザービィーーーーーム!」

 

 こよりロボの両腕が丸型を作り、それを口元へ添える。

 手と口から、甲高いエネルギー音が響き、熱く眩しく発光する。

 照準完了後、出力上昇とエネルギー装填に5秒を要した。

 足止めの必要な理由はコレか。

 

 ガガガ……と敵ロボが出力を上げ、充電中のこよりロボを押し返そうとする。

 

「あぁーん! 発射まであと5秒かかるのにぃ!」

 

 妙にセンシティブな声を拡声する。

 男どもが「おお……」と小さな歓声を上げた。

 

「いろは!」

 

 また呼ばれるあの名前。

 刹那――

 スパッ、と風が敵ロボの右腕を切断した。

 

「んなバカな……」

 

 あのロボットをいとも容易く破壊して見せる。

 「いろは」とか言う風人間、得体が知れない。

 

「こんこよレーザー、発射〜!」

 

 決め台詞を耳にし、「箱推し」は身構えた。

 その瞬間――爆音が耳を裂き、耳鳴りが響く。

 街が揺れ、付近の建造物が複数倒壊。

 更に、レーザーの形跡として円形の焼け跡がロボを貫通し、地盤さえ貫いていた。

 

「街への……被害が……」

 

 「箱推し」でさえ防ぎ切れない超破壊力。

 嘆いたところでもう遅い。

 

「ふぅー、お仕事完了。動作実験も完了」

「「実験⁉︎」」

「じゃあ、片付けよろしくお願いしまーす」

「「はぁぁぁああああ⁉︎⁉︎」」

 

 こんこよロボはエンジンを蒸して、全ての被害を放置して、遥か彼方へと飛び去ってしまった……。

 

「……あのロボ、必要だったか?」

「聞いたろ、動作確認の実験だ」

「んな事言ったって、どうすんだよコレ!」

「片付けるぞ、ホロメンが起きる前に。ほら早く!」

「何だよそれぇ……」

 

 こよりロボに搭乗する3名と、『いろは』が去り、ロボの残骸や、倒壊した建造物の瓦礫が散らばる道路。

 ホロリス達は、ホロメン防衛戦という格好良い職から、戦後の瓦礫処理班という格好悪い職へと移ったのだった。

 

 

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