新たな増援は敵対するロボットにタメを張るような戦闘機。
背中に巨大な刀を装備し、腕や足にも様々な仕掛けが見受けられる。
そんじゃそこらのカラクリではない。
「なんじゃこりゃぁ」
たまげた声を上げるホロリス軍。
目の前に想像を絶する巨大ロボが2機もあれば当然だ。
まるでガン◯ムやエ◯ァのように。
「お前ら」
交戦が一時的に停滞したこの一瞬の間に、「箱推し」がこの場へ飛んで来た。
「何だよコレ」
「holoXっつってたな。多分秘密結社だ」
「秘密結社⁉︎ こんな堂々としてどこが秘密だよ」
「俺に言うな」
裏世界の際の潜入は「暗躍する組織」のような、謎めいた雰囲気があったが、今回は結界もなく、白昼堂々と巨大ロボで登場して、名乗っている。
隠す気配すら感じない。
「でも、あれ、いけるんじゃね?」
ロボ対ロボなら勝てるかも。
全ホロリスがそう感じた。
「一旦下がって見守ろう」
「箱推し」は全員に一時撤退の指示を出す。
この場にいるホロリス軍が、「箱推し」の背後で待機する。
「こより、周囲の人は離れてるから、今なら暴れていいよ」
「りょーかい。いくよ、クロちゃん」
「はいはい」
「こよりロボ、戦闘態勢だ」
無駄に拡声される声が街中で反響する。
併せてウィーン、という機械音が響く。
敵対ロボは早々にこよりロボを敵と見做し、右腕を伸ばした。
「ミサイル発射〜!」
「――! ちょっと待てッ」
拡声されたセリフに、顔には出さないが「箱推し」が焦燥感を持つ。
街を破壊しないよう、攻撃に合わせて物質を固定していたが、強すぎる衝撃は抑えきれない。
ミサイルは破壊力が高く、威力相殺など到底できまい。
しかし、ミサイル発射直後からそれを止める手段は――無くはないが、消耗やら周囲への影響が絶大。
敵ロボとその周囲がミサイルで爆破され、爆炎を立ち上らせた。
からっ……がらがらっ……。
敵ロボの最も付近に位置していたビルの外壁が微かに崩れた。
「っぶねぇ……」
肝を冷やすとはこの事か。
初めて体感した。
少し粗暴だが、黒煙が止み、ロボへの跡を見れば、苦情は喉の奥へ引っ込んだ。
「効いてんなぁ」
「おお、いいぞー!」
外野となったホロリス軍から声援が上がる。
そのまま二機のロボは近接戦へと入る。
敵ロボが近接戦を仕掛けたため、こよりロボも近接に移行した。
鉄腕を振るったり、鉄剣を振るったり、鉄脚を振るったりする風圧などはやけに大規模な戦い。
「箱推し」的には少々焦ったい戦いではあるが、国のためだ。
必死こいて街を守る。
しかし、近接戦へと移行してからは、互いに中々ダメージを与えられない。
ミサイルこそ強力だったが、腕力や装甲などは、両者五分五分といった様子。
距離を詰められては、ミサイルなどの爆撃は自爆につながるため扱えない。
「こより、何かないの?」
「あるにはあるけど、5秒は動きを止めないと」
「聞こえた? 行けそう?」
「……だ…………ご、あ……、で……ざ……」
機内で会話する2人と、無線機か何かで通じる誰か。
無線機の相手は、拡声器を通してでは聞こえない。
「――! ん……?」
不意に「箱推し」が空を見上げた。
何かを見つけたように天を仰ぎ、その何かを目で追うように見詰める。
「……誰か見てるな」
「え、誰かって?」
「さあな」
その場に人はいない。
特殊な視覚を使用して見ている。
シオンの千里眼に近い。
「――そこの私を見てる人」
「――?」
どうやらこよりロボの内部の誰からしい。
しかも、あの距離で見られている事に気付いている。
「5秒だけ、あのロボットの動きを封じられますか?」
との事だ。
それさえ実行すれば、勝利をくれるのなら。
「箱推し」は視線に向かって親指を立てた。
「こより、一旦距離取って」
「クロちゃん、一旦距離とって、てルイ姉が――」
「聞こえてる!」
こよりロボが距離を取ろうと周囲に気を配りつつ後退するが、敵ロボはそれを逃さない。
「聞いたろお前ら、5秒だ。それだけ稼げばいい」
「足止めだな」
「おー、任せろー」
後方待機していたホロリス軍が飛び出す。
「ごほっ……風切火羽」
「エルフレ」の風切羽が敵ロボの目前で破裂し視界を塞ぐ。
光認証でもサーマル認証でも一時的に視覚を封じた。
その間にこよりロボは距離を取り、ホロリス軍は距離を詰める。
「ササ、作戦通りやるのサ」
「まーかせろー」
「座員」の号令で「雪民」以外が動き出す。
「根っこ」は道路に穴を開けて地へ潜る。
煙が晴れぬうちに「おにぎりゃー」が「はあとん」を抱える。
そのやや後方で刀を構える「百鬼組」。
「いいですか、痛いですよ」
「我慢する、それくらい」
「では……」
強く刀を握り込むと、軋んだ。
その音を合図に、「おにぎりゃー」は軽く跳躍。
「神風」
「っ――ぁあ!」
足に風の斬撃の衝撃を受ける。
その吹き上げる風と、斬撃を蹴り返す勢いを糧に爆発的な跳躍を見せる。
それでも高々ロボの腹あたり――だが充分。
「ほらよ、一球入魂――行ってこい‼︎」
更にその位置から「はあとん」を空高く投げ飛ばす。
鬼のパワーで吹き飛び、高度はロボットを数十メートル程越した。
その頃には流石に煙幕も履けたが、どうって事はない。
「その巨大、何キロまで耐えれるか」
勢力を失い、「はあとん」は落下を始める。
落下地点をロボの頂点に定めると、体重を増加させ落下速度を上げる。
こんな巨大、例え100キロの重さで潰しても、普通なら跳ね返されるが、今は仕込みがある。
「その上で、1
衝撃波が国中を伝う――。
ドガァァー。
「ヒュー、強烈!」
「街の事ももう少し考えてくれよ」
「必要経費サ」
波紋が付近の建造物にヒビを入れ、世界を震わせる。
そして、1tの重圧を喰らった敵ロボは右足を道路に陥没させていた。
「『根っこ』ごといってないよな……?」
「生きてるから気にすんな」
地中で地盤を緩めた「根っこ」が顔を出さず杞憂する「雪民」に、魔力感知による生存報告して安心させる。
さあ、コレでロボの動きは止まった。
動きを止めろ、とは、位置を固定しろの意味。
上半身が動こうが、攻撃が避けられなくなれば同じだ。
「「「今だ‼︎」」」
ホロリス軍が叫んだ。
こよりロボが呼応するように動き出す。
「いろは!」
名前か?
――――!
突如強風が――。
「なんだ?」
「風が――」
電光石火、疾風迅雷。
一筋の光が風となり道路を抜ける。
ただの風だと、誰もが錯覚する速度。
「――?」
誰だ?
見えないし、感じないが、誰かいる。
こいつが「いろは」か――。
これは――――化け物。
人間の視覚では追えない速度に加え、「箱推し」ですら読めない魔力。
いや――違うな。魔力を持たないのか。
生まれ持った、天性の身体能力だけで風と一体になれる。
なんたる曲者。
魔法使いの、天敵だ。
「今回の敵はロボだけど……」
いくら速かろうと、あの硬さを人間の力でどうにかできるのか――
スパン。
「「「………………」」」
ビジジジジっ。
「「「え…………」」」
埋まったロボの右脚が、突如膝から抉られた。
ギリギリ切断されない程度に切り開かれ、殆どの内線が断線して放電していた。
誰にも理解できない、謎多き一撃。
「「「ええええ⁉︎」」」
バランスを崩した敵ロボが右半身を傾け倒れ始める。
そこへこよりロボが被さるように襲いかかる。
「ひっさーつ! こんこよレーザービィーーーーーム!」
こよりロボの両腕が丸型を作り、それを口元へ添える。
手と口から、甲高いエネルギー音が響き、熱く眩しく発光する。
照準完了後、出力上昇とエネルギー装填に5秒を要した。
足止めの必要な理由はコレか。
ガガガ……と敵ロボが出力を上げ、充電中のこよりロボを押し返そうとする。
「あぁーん! 発射まであと5秒かかるのにぃ!」
妙にセンシティブな声を拡声する。
男どもが「おお……」と小さな歓声を上げた。
「いろは!」
また呼ばれるあの名前。
刹那――
スパッ、と風が敵ロボの右腕を切断した。
「んなバカな……」
あのロボットをいとも容易く破壊して見せる。
「いろは」とか言う風人間、得体が知れない。
「こんこよレーザー、発射〜!」
決め台詞を耳にし、「箱推し」は身構えた。
その瞬間――爆音が耳を裂き、耳鳴りが響く。
街が揺れ、付近の建造物が複数倒壊。
更に、レーザーの形跡として円形の焼け跡がロボを貫通し、地盤さえ貫いていた。
「街への……被害が……」
「箱推し」でさえ防ぎ切れない超破壊力。
嘆いたところでもう遅い。
「ふぅー、お仕事完了。動作実験も完了」
「「実験⁉︎」」
「じゃあ、片付けよろしくお願いしまーす」
「「はぁぁぁああああ⁉︎⁉︎」」
こんこよロボはエンジンを蒸して、全ての被害を放置して、遥か彼方へと飛び去ってしまった……。
「……あのロボ、必要だったか?」
「聞いたろ、動作確認の実験だ」
「んな事言ったって、どうすんだよコレ!」
「片付けるぞ、ホロメンが起きる前に。ほら早く!」
「何だよそれぇ……」
こよりロボに搭乗する3名と、『いろは』が去り、ロボの残骸や、倒壊した建造物の瓦礫が散らばる道路。
ホロリス達は、ホロメン防衛戦という格好良い職から、戦後の瓦礫処理班という格好悪い職へと移ったのだった。