歌姫伝承〜ホロの異能大戦ストーリー〜   作:炎駒枸

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112話 次のステージへ

 

 デスゲームが終わり、ホロメンがゲームから帰還すると、えーちゃんと警察が施設で待機していた。

 ゲームマスターは既に連行され、「箱推し」と「ろぼさー」も身を隠した後。

 えーちゃんの案内のまま施設を出て、その日は1日休息を取るよう指示が出た。

 幸いにも、精神に異常を来した者はおらず、強いて言うならマリンがフレアに対して羞恥心を抱いていたり、すいせいがほんの少し自身を見失っていただけだ。

 

 ホロメンは帰宅して、静かに1日を過ごした。

 

 そして翌日、会社から招集がかかり、一同は事務所で介した。

 一同が集結すると、えーちゃんが前へ出て深々と頭を下げ、開口一番にこう言うのである。

 

「今回はこちらの不注意で皆様に多大な被害を与えてしまい、申し訳ありませんでした」

 

 我々の不徳の致すところ、と社のマネジメントを代表して謝罪した。

 

「仕方ないよ、こればっかりは……」

「相手が相手だし」

 

 と、擁護の声が多かった。

 

「皆さんなら、そう答えるとは思いましたが、こればかりは謝罪だけで済ませるわけには行きません」

「「――?」」

「ですので、後日改めて告知致しますが、お詫びをさせて頂きたいと考えております」

「お詫び……って?」

「いやいや、今後日告知って聞いてた?」

「焦んなよ」

「気にしなくても、ほら。みんな元気だよ?」

 

 わやわやと団欒が和を広めていく。

 その温かさにえーちゃんは涙を流しながら笑う。

 

「はい。そんな皆さんへの、お詫びと感謝の気持ちです」

 

 こうして、会社内で「何か」が決定した。

 

 

「それよりもえーちゃん、ゲームマスターはどうなったの?」

 

 責任問題の話題がひと段落つくと、早速とシオンが切り出した。

 

「え、ええ、ではそちらの話に移ります」

 

 と、えーちゃんも切り替え早く話題転換する。

 そして、用意していたモニターに画面を映す。

 

「ゲームマスターは現在、求刑の受理待ちですが、懲役10年は堅いでしょう」

 

 あの規模で10年はやや短いが、死者が出ていない事を鑑みると妥当なのかもしれない。

 刑が言い渡されれば、間違いなく「大監獄」送りになる。

 

 が、そんな事より、ホロメンたちは皆、映し出された画面を見て戦慄していた。

 

「うっ、そ……」

「待って、手回し早すぎない? 昨日の今日だよ?」

「誰がこんな……」

 

 モニターに投影される画像――それは、裏社会の手配書。

 まるで活躍を予言したかのように、一部のメンバーの賞金が既に上昇していた。

 そのメンバーは次の通りの遷移を遂げていた。

 

 『海賊』宝鐘マリン、50万→200万。

 『桜花の巫女』さくらみこ、100万→300万。

 『永久の悪魔』常闇トワ、100万→300万。

 『最悪のハーフエルフ』不知火フレア、100万→500万。

 『協賛の星』星街すいせい100万→『協賛の歌姫』星街すいせい、1000万。

 

「この手配書更新から分かるように、今回の事件もまた、黒幕がいる可能性が高いです」

「黒幕か……」

「それってやっぱ、国家転覆の時と同じ?」

「――恐らく」

 

 しかも黒幕は、ゲームの進行を随時確認していた筈だ。

 国家転覆を目論む連中の指揮、そして相当有能なゲームマスター、更に敵役を行っていた魔神――サタンとの関係。

 大きな組織や存在と関与できる大物が、陰で動いている。

 しかも、尻尾すら掴めなていない。

 

「調査……した方が良くない?」

 

 シオンが進言する。

 同調して皆が首肯する。

 それにはえーちゃんも賛成だ。

 だが、ホロメンの役目ではない。

 なんせホロメンは、見ての通りの賞金が掛かってしまっている。

 

「そちらは既に調査中です」

「――誰が?」

「専門の方です。心配は入りません」

「……」

 

 その調査員とはホロリス軍だ。

 だが、えーちゃんと「箱推し」は協定を組み、その契約の中に、ホロメンにホロリスの情報を一切流さない、と言うルールがある。

 ホロメンを含み、他言は厳禁だ。

 

「皆さん、手配書が裏世界で出回り、額も高騰してしまいました。今後の私生活、十分にお気をつけて」

 

 えーちゃんからの注意喚起に、賞金首のメンバーは恐る恐る首を縦に振った。

 

「……あの、さ……いや、単なる疑問なんだけど……その裏社会指名手配で捕まったらどうなんの?」

 

 と、マリンが興味本位で首を突っ込む。

 深入りすれば、突っ込んだ首が飛ぶ世界。

 でも残念なことに、賞金は既にかかっている。今更だろう。

 

「場合によりますが、生け取りの場合は『大監獄』へと送られます」

 

 ホロメンは全員「生け取りのみ」の手配。

 つまり、捕まればその「大監獄」へ送還される。

 この国の東の海岸に位置する港から出港し、ずっと東へと進めば、それはそこにある。

 この国ほどの島が鋼鉄を纏って海に佇んでいるのだ。

 島そのものが巨大な檻となり、世界のあらゆる囚人を内側に閉じ込めている。

 

「でも大監獄って、世界公認でしょ? 非公認の手配書が通るの?」

「確かに……」

「監獄の主が、裏社会にも通じているそうで……」

 

 凶悪な犯罪者を獄内へと封じ続ける実力や、一部の兵を統率するカリスマ、そして各国の王たちなどと幅広く利く顔と融通から、黙認される裏稼業。

 

「じゃあ、もし捕まったら……」

「十中八九、出て来れない」

「……」

 

 沈黙が走る。

 悪行は何一つしていないのに、何故監獄へ送られなければならない。

 そんなの……間違ってるじゃないか。

 

「……この世界は間違った事だらけです。50数年前の事件だって、まだ新しい話です。世界はまだ、穏やかではないんです」

「この国は確かに……中枢の国として、発達してるし、取り締まりもしっかりしてるけどね」

「うん、エルフの森や魔界、天界、その他沢山の国々は無法地帯だって多い」

 

 ホロライブは、そんな世界情勢の中で始まった新型のアイドル。

 今ではもう、その名を知らぬ者は居ない程、成長した。

 今こそ、この影響力を持って、世界に少しでも和を届けなければ。

 

「確か3rd.fes、決まってたよね?」

「Link Your Wishですね」

「そこだ。そこで何か……」

「だね」

「おうよ!」

 

 次のライブへ向けて――ホロメンが動き出す。

 ホロメンが動けば、ホロリスも動く。

 その動きは人を伝い、国を伝い、世界へ届く。

 

 一同は、会議を終えると続々と仕事や配信準備へ動き出す。

 

「あ、あやめさん、ちょっといいですか」

「――? なーに?」

 

 緊張感が解け、ほわほわなあやめがえーちゃんに呼び止められ、小走りに駆け寄る。

 

「割れた刀――まだ持ってますか?」

「え、ああ……羅刹ね、持っとるけど、今は家にあるよ」

 

 えーちゃんの問いに僅かに顔を強張らせた。

 

「知り合いに、刀鍛冶もできる方がいるんですが……その方に、見てもらいませんか?」

「羅刹を?」

「はい」

「いやでも…………割れた刀は、修理できないんじゃ……」

 

 刀が割れれば、簡単に再生はできない。

 凄腕の刀鍛冶であろうと、元通りの硬度までは持ち直せない。

 それに、一度割れた刀は、以後同じ部分が破損しやすくなる。

 正直望み薄だ。

 

「直せるか否かは、見てもらわないと何とも……」

「…………」

「どうします?」

「……」

「……」

「……明日、持ってくるよ」

「――分かりました。知り合いにも伝えておきます」

「ん」

 

 こうして、ホロライブは次のステージへ。

 

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