ホロライブ6期生、holoX。
それが、新たに入社したメンバー。
計5人から成る、全く秘密要素のない秘密結社だ。
個性豊かなメンバーがさらに増え、ホロライブは一層勢い付く……かと思いきや、ここ最近、過去のリスナーがホロを離れているようだ。
チャンネル登録は外さず、ホロから徐々に離れ、幽霊部員の様なアカウントが数多点在する。
ホロライブと似た活動が世界に広まったからか、もしくは動画配信アイドルを追いかける事に飽きたのか……。
真相は、当人にしか分からない。
それでもまだ、新規ユーザーの方が数を上回り、プラスになっている。
しかし、このままではこの業界は次第に衰退してしまう。
それが自然の摂理である事は、明白だが、やはり、ファンが消えて行く事は悲しいだろう?
だから、早く何とかしたいのだが、早々に解決は出来ないものである。
時間をかけて少しずつ、この業界を再発展させて行く。
それこそ今の、ホロライブの命題の一つとなる。
*****
さて、前述の事は全く関係なく、場面は大きく変わる。
ある日、ラプラス・ダークネスが事務所に来た時のこと。
holoXのミーティングのため、面倒くさいが、会議室へ来た。
すると、誰もいなかった。
稀にラプラスが早く到着する事はあるが、それでも必ず1番はルイである。
一瞬眉を顰め訝しむが、特に連絡もせず、1番偉い人が座りそうな席についた。
待つ事30分――。
「誰も来ねぇじゃん」
誰1人、一向に来る気配が無い。
集合時間を大幅にオーバーしても、ルイすら来ない。
まさか、日程を間違えた?
そんな筈はない。
電話でもかけてみようかと、ゲームを起動していたスマホの画面を切り替える。
そしてコールボタンを押しかけて指が止まる。
コンコン。
「失礼します」
えーちゃんが丁寧に入室してきた。
「あれ、ラプラスさんだけですか?」
「来ねぇんだわ、あいつらが」
「そうなんですか……」
珍しいですね、と軽く足しながら歩み寄ると一枚の手紙をラプラスに手渡す。
「これ、事務所の郵便に入ってたんですが、差出人の名前が無いんですよ」
「はぁ……」
それは、困るな。
困るが、何故ラプラスに?
「吾輩宛なんすか?」
「いえ……中身を見れば分かると思ったら、読めなくてですね」
手紙の封は一度剥がされていた。
その跡をなぞってラプラスは本文を取り出した。
「おお……」
そこには、アルファベット2文字と、大量の数字が羅列してあった。
文字は鉛筆の様な亜鉛で書かれているが、その字は出力した様に美しく並び、記されていた。
えーちゃんにはサッパリだったその一文を見て、ラプラスはやる事を察する。
「RSA暗号だな。ちょっと待ってくれ、今……」
と、断りを入れながら、数字と格闘を始めた。
数百桁もある数字の羅列を見て、ラプラスは何をどう脳内処理しているのか……。えーちゃんには想像すらできなかった。
それが、僅か1分後。
ラプラスが目を見開いた。
「……道理で来ないわけだな」
「お、分かったんですか?」
額に右手を当て、不敵に笑った。
「分かった。ただ……」
ラプラスは珍しく一度熟考した。
アレコレと今のスペックで可能な限りの展開を想像、予測して、手の打ち方を思案する。
クソみたいな奴が目の前に立ちはだかっても、ラプラスは大抵の敵を瞬殺できる自信がある。
しかし、今回ばかりは、少々面倒だ。
流石に、タイマンのフィールドを用意する必要があるし、恐らく向こうもそれがお望みだ。
作戦が決まって、ラプラスは「よし」、と頷いた。
「えーちゃんさん、ありがとうございます」
「はい?」
「それで、悪いんですけど、今からある3人を至急ここに呼んで欲しいんっすけど、いっすか?」
「――はぁ……相手が応じれば、ですけど」
ラプラスの要望に従って、えーちゃんは3人のホロメンを緊急招集した。
その、呼ばれたメンバーとえーちゃんを交えて、ラプラスを中心に作戦会議、基、作戦説明を始める。
まず、呼ばれたメンバー。
さくらみこ、宝鐘マリン、紫咲シオンの計3名。
共通点は特に無い、様に見える。
「なんなん? この会議」
「これがここの郵便ポストに入ってたって」
「……?」
「何です、これ」
最初に手紙の暗号文を皆に提示する。
読める者はおらず、それがRSA暗号と分かったのはシオンだけ。
魔術と科学に関する研究や論文などに目を通す時、偶に目にする程度だから、簡単な計算もできない。
こんな何百桁もの暗算なんて到底不可能。
「これを計算してアルファベットに変換するとM、A、X、W、E、L、Lと導き出される」
「えーっと……マックス……ウェル?」
「――! マクスウェル?」
やはりシオンだけ、一足早く答えに辿り着く。
この名前は、魔界では――特に悪魔の間で有名な名前。
「科学的魔神。吾輩と、もう一方の存在。それが、マクスウェルの悪魔だ」
魔神と聞いてピンとは来ない。
ラプラス以外に魔人を見たことがないから。
「4人はコイツに捕まった可能性が高い」
「――何でそうなんの? 名前が届いただけで」
「勘だ。大方、目的は吾輩を倒すか懐柔するか……そんなとこだろ」
「ええ……」
「それに、アイツらは簡単に捕まったりはしない。なのに、誰1人時間内にここへ着いていない。そこへタイミングよくこの暗号文」
関連性を疑わない方がおかしい。
「……んで、ラプラスはシオンたちに助けるの手伝えって言いたいわけ?」
「ああ」
「ま、待って! この2人はまだしも、船長はおかしくない?」
「こっちの都合っすね。基本皆さんが戦う事はないと思うんで」
本当はもう1人、お呼びしたい先輩がいたが、今回の作戦には向かない。
それでも、アイツらはこれで十分だろう。
「アイツら、本気出せば強いのに、吾輩と同じでそう言うの面倒くさがるんっすよ」
「そりゃあ誰だってにぇえ……いざこざはヤだと思うよ」
「でも今回はちょっと頑張ってもらうために、先輩たちです」
「――?」
自覚のある者とない者がいる。
この3人はholoXの各メンバーを動かすスパイスになる。
そう、だからもう1人、すいせいにも居てほしかった。
「って事なんで、これからマクスウェルの拠点へと向かいます」
「え、いきなり⁉︎」
「作戦は『成り行きでどうにでもなるだろ』作戦です」
(((これだから最強は……)))
最強であり、クソガキであり。
「まあ、後輩の頼みくらい、聞いたりますけど」
「吾輩、人生のウルトラスーパー大先輩ですけどね」
「はいはい」
えーちゃんに仕事関連の事は任せて、4人はマクスウェルの拠点へと向かった。