歌姫伝承〜ホロの異能大戦ストーリー〜   作:炎駒枸

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12話 Called by the GAME

 

 ライブまであと一月。

 ホロライブの活動は楽しい。

 素敵な仲間に恵まれ、素敵なファンに愛され。

 正直不満はない。

 でも、本来の目的――いや、夢は少し違う。

 このライブを終えると、あと2ヶ月もせずに一周年だ。

 そろそろかな?

 当初の予定通り、もうそろそろ夢に向かって動き出すときだと思う。

 みんなにはギリギリまで黙っていよう、止められる気がするし。

 ファンには……いつ言おうかな。

 

 まあ、もうしばらくは放置しておいてもいいかな。

 

 よし!

 今日も普段通り配信だ‼

 

 

 

          *****

 

 

 

 春。

 そんな暖かみを感じる風が吹く。

 もうこんな時期か。

 一期生がデビューして後数ヶ月で一周年だ。

 とてもそうは思えないほど充実した濃厚な時間だった。

 

 そんな暖かい風と生ぬるい日差しの中、フブキとミオは他愛ない会話をしながらゲームセンターに向かっていた。

 今日は配信も含めて互いにオフ。

 偶然仕事のオフが重なったため一緒に遊びに行くことにしたのだ。

 

 ミオは活動を始めてまだ数日なため大した知名度はないが、フブキはライブの成果もあって変装の必要があった。

 チャーミングポイントの内の一つである耳は帽子で無理矢理隠せるが、尻尾が相当手強い。

 こんな時、あくあのような身を潜める力が欲しい。

 

「もう春だねえ」

 

 空を一瞬見上げてミオが目を細める。

 

「そうだね。まだまだ涼しいけどこれからきっと暑くなるんだろうね」

 

 フブキが尻尾をちらと見ながら言う。

 まだ服は長袖、長ズボン。

 でもきっと一ヶ月後には半袖半ズボンだろう。

 そうなったらいよいよ変装が大変そうだ。

 そしてその頃にはミオもこの大変さを知るに違いない。

 

「あ、そういえば聞いた? 不審者の話」

 

 ぱっ、と思いだし声が大きかったが、すぐに声を潜めてミオに聞く。

 

「あー、作業服を着た男性?」

 

 軽く聞いた記憶の中から引っ張り出しながら答える。

 フブキもそうそうと頷く。

 

「シオンちゃんとあやめちゃんが気付いてなんとかしてくれたらしいけど、聞けばもう一人いたらしいよ」

 

 誰に聞いたのか、情報の仕入れが早い。

 フブキは少し警戒しながらミオに伝える。

 

「もう一人?」

「そう」

 

 人差し指を立てて少し格好つける。

 

「シオンちゃんが魔法で空間を歪めてこの世界と隔絶させた世界に閉じ込めたのに、それを割って不審者を連れ帰った協力者がいたんだって」

「……ごめん、よくわかんない」

「つまりは不審者は一人じゃないって事」

 

 ミオの目の前に立てていた人差し指を向ける。

 ミオは「うーん」と唸っている。

 理解できてないのか、それとも何かが気になるのか……。

 

「ふーん、でも、不審者は何しに来たんだろうね」

 

 どうやら後者、そこが引っかかるらしい。

 顎に手を当て、耳をピクッと動かして思考を巡らす。

 

「それは段ボール含めて調査中らしいぞい」

 

 つまりそれは考えても仕方がない、と言うことだろう。

 ミオの前に立って歩き始めるフブキ。

 ミオは距離をそのままに同じ歩速で歩く。

 

「まあ分かったらその時はまた情報が入るでしょ」

「ま、そうよね」

 

 二人は並んで歩いた。

 

 不穏な会話はその程度にとどめてもっと楽しい話をしながら目的地へ向かう。

 よく行くゲームセンターへ。

 

 ようやく到着した。

 直ぐさま店内へ。

 いつも通りの騒々しい様々なゲームから奏でられる軽快な音楽達。

 店内外の環境差に微かに耳が震えるがこれはもう慣れたもの。

 ここへ来るとまず最初にやるゲームは決まっている。

 ミオとはこの空間だけ確実に以心伝心できる。

 言葉なしに二人は同じ台に向かって足を速める。

 

 格ゲーに、レースゲーム、定番のクレーンゲームにリズムゲームまで、幅広く遊んだ。

 対戦も協力もソロでさえも遊び尽くす。

 ゲーマーズの名に恥じないゲーマーっぷり。

 

 あっという間に夕刻。

 最後に銃撃戦ゲームで協力プレイして帰ろうと話が決まり、その目的のゲーム台まで行った。

 が、残念ながらそこには先客がいた。

 二人ペアで同じように協力プレイで遊んでいる。

 長くはないはずなので側の待期席に二人腰を下ろして待つことに。

 いつもならミオとの会話に花を咲かせるのだが、今日はその二人から目が離れなかった。

 

 その理由の一つはゲームのプレイスキル。

 ゲームのプレイスキルは動体視力などの関係から男性と女性との間に差があるのだが、その男性の上手い人並みに上手い。

 二人ともだ。

 一人は体力に自信があるのか体を大きく使って銃の攻撃範囲を広く持つ事ができている。

 もう一人は落ち着いており、あまり動かないが細かな動きが本当に丁寧で冷静に瞬時にエイムを合わせられている。

 

 二つ目の理由は二人の仲の良さ。

 言うまでもなく今日この時初めて見た二人だが、その中の良さは見るからに明らか。

 可愛い声とクールな声が仲睦まじく二人の間を横行し二人の空間を作り上げている。

 

 三つ目は変質者的な思考だが、そのルックスの良さ。

 まず、普通に二人とも可愛い。

 時々横を向くだけなのでしっかりとは見えないが、その時々見える横顔が完璧だった。

 どちらもフブキ達と同じ獣人で、しかも片方はネコ科、片方はミオやフブキと同じイヌ科だろう。

 この二人ほどではないが、まるでフブキとミオのペアがもう一つあるみたいだ。

 

「フブキ、あんまりじろじろ見ないの」

 

 あまりの素晴らしい光景に視線を奪われていたフブキにミオがそっと耳打ちして注意する。

 曖昧に「うん」と返事しつつも結局視線は動かない。

 

「あはは……ん?」

「ぉヵゅ?」

 

 じろじろ見すぎた。

 とうとう気付かれてしまった。

 紫髪の猫少女がフブキの視線に気がつき目を合わせてきた。

 その反応にもう一人の犬少女も視線を向けてきた。

 が、茶髪の犬少女はすぐに視線を落として目を逸らせた。

 丁度ゲームが終わったため辺りを見回したようだ。

 なぜ見られているのかは分からずとも、二人が空き待ちであることは分かる。

 

「もしかしてうるさかった? 終わったのでどうぞ~」

 

 荷物を持って場所を空ける。

 

「あ、いや……もしかして、ゲーム大好き?」

「――?」

「ちょっとフブキ、ナンパみたいだよ」

 

 変態のような語りかけに少し困り顔を見せる。

 それを見兼ねてミオが注意に入り込むが、相手方の困り顔はそんな理由ではないようで、

 

「寧ろゲーセンのこんな深くに入り込む人で大好きじゃない人はいないんじゃない?」

 と、当然だろと肯定した。

 

 感じる。

 感じる。

 感じすぎる。

 ビリビリと肌に伝播する。

 ひしひしと心に染み渡る。

 

 ミオは猫少女の後ろに隠れる犬少女と一瞬目が合った。

 が直ぐに逸らされてしまう。

 

「じゃあ僕たち行くね、またどこかで会おうねーー『白上フブキ』ちゃん」

 

 手を振って笑いながらフブキの横を通るが、その去り際、悪戯っ子な笑みを浮かべて名前を耳打ちする。

 バレていた。

 一瞬驚いて絶句したが、すぐに考えを改める。

 敢えてこの耳打ちをすることで周りの一般人にバレないようにしてくれたのだ。

 猫少女の陰に隠れながら犬少女がフブキをまじまじと見つめる。

 見つめながら距離をとっていく。

 二人が離れていく。

 

 ……いや!

 自分の目を信じろ!

 

「ねえっ!」

 

 フブキは二人を呼び止めた。

 ゲーセンの中とはいえ少し声量が大きかった。

 周囲の注目を3秒ほど集めてしまう。

 が、その集めた視線もまもなく散り散りになる。

 周囲の注目も散漫になり始めたのを肌で確認し、フブキは二人との距離を詰める。

 

「アイドル、やってみませんか?」

 

 自分の直感を信じて、勧誘してみた。

 猫少女は割とゆるい表情で言葉を受け止めていたが、犬少女はおどおどと困惑していた。

 

「ふ~ん……それってホロライブでって事~?」

 

 目を細めてフブキの真剣な眼差しを見つめる。

 それにコクリと小さく頷く。

 息をのむと、その音が自分の耳によく響く。

 

「――いいよ~」

 

「「「えっっ‼」」」

 

 迷いなく、同意した。

 そのあっけなさに、フブキも驚愕。

 

「いいの⁉ そんなにあっさり⁉」

 

 今までほぼあきれ顔で傍観者と化していたミオもとうとう口を挟む。

 この選択は各の人生を大きく左右するからだ。

 簡単に選べる道ではない。

 

「いいよ~、面白そうだし」

 

 本当に迷いがない。

 

「それにオーディションとか受けて決まるんでしょ?」

 

 まだ決まっていないからと気楽に笑う。

 なんだか能天気で掴めない性格だ。

 こうして一人は早速決まった。

 

「……えっと、君は?」

 

 後ろに隠れる少女にも視線をずらした。

 例により視線をそらされる。

 

「まあ、ころさんは――」

「やる」

「本当に⁉」

 

 猫少女が庇うように少し前に出るがその後ろからボソッと呟いた。

 フブキはその声を聞き逃さず少し声を大にして聞き返す。

 

「うん」

 

 陰で小さく頷く。

 

「……」

「ウソでしょ……」

 

 ミオは信じられないと頭を横に振った。

 

 その間にも、フブキは連絡用の電話番号を交換したり、オーディションに関する簡単な説明をしていた。

 

 そこで初めて二人の名前を聞いた。

 見た目に合わせてそれぞれ「猫又おかゆ」「戌神ころね」と言うらしい。

 改めて二人を見ると、獣人の特徴的な見た目に加え、おかゆにはキラキラな瞳、ころねにはお下げと骨の髪留めという特徴もあった。

 

 そこで二人は別れた。

 

 フブキとミオは当初の予定通りその場でゲームをして帰った。

 

 

 夕日が傾く中歩く、先程のペア、おかゆところね。

 

「ころさんにしては意外だったかな~」

 

 フブキとミオから離れたことにより、ころねもようやくおかゆの背後から出て普通通りに歩く。

 そのころねに素直に感想を述べる。

 人見知りのころねが圧に負けたわけでもなくホロライブ入りを決意したのが意外だったらしい。

 

「だってぉヵゅがやるって言うから」

 

 それは即ち、会える頻度が減ることがいやだと言うことか。

 

「僕もころさんと一緒にやりたいから、断ってたら誘ってたけど……いいの~?」

 

 意外な告白に「うーん、ぉヵゅ、好き」と軽々しく求愛するが、続くおかゆの心配に首をかしげた。

 

「スカウトだから入りやすいとは思うけど、片方だけが落ちる可能性もあるんだよ?」

「はっ! 確かに」

 

 言われてそうだと発覚。

 後戻りする気はないが、一人だけが受かることだけは避けたい。

 無論二人が落ちることも避けたい。

 結局、受かる以外にあり得ない、ということか。

 

「まあ僕が受かるくらいだったらころさんも受かるよ」

 

 気楽と言うよりころねの方が向いていると判断。

 素質的には案外そうかもしれないが、面接の際に人見知りが強く出てしまうと不合格材料にされる可能性も出てくる。

 

「でもそれだったら逆になる可能性も――」

「まあその時はまた考えればよくない?」

 

 悲観的に考えるころねと楽観的に考えるおかゆ。

 この二人は大事なところできちんと正しい方向に傾く。

 今日はころねが揺れる日。

 

「ねえぉヵゅ、ぉヵゅ――好き」

「じゃあね~ころさん」

「ぉヵゅー!」

 

 ころねの唐突な求愛をスルーし、異なる帰路をゆく。

 いつも面倒見がいいのはころねだが、こんな時に妙な気が利くのはおかゆ。

 二人はそれぞれ違う方向へ歩き始めた。

 

 




 どうも、またしても作者です。
 後書きは鬱陶しいかもしれませんが、一応書くようにしておりますのでどうか我慢してください。無視してもいいので……。

 さて、今回でゲーマーズまでの全員が参戦して一区切りついた感じがします。が、章的な区切りで言えばもう少し。
 言ってしまえばホロファン追加までですかね……。
 でも、リアル時間で換算するところさんの初配信からべこらの初配信まで約3ヶ月ありますのでね、色々ありますよ。
 ホロファンはおそらくガチ恋勢が沢山いると思います。
 ですのでもう少し、もう数話だけ待ってください。

 因みに作者は箱推しですが、強いて言うならの推しはいます。
 この作品から当てられます?
 多分無理ですよね。
 まあ、いずれは私の推しも公開されますよ。
 多分、作中で!
 え、どうでもいいって? ですよね。

 はい、それではまた。
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