今現在、事務所にはゲーマーズとスバルとあやめがいた。
特にメンバーに意味はなく、ただ単に三期生と顔合わせしたいだけ。
ゲーマーズはフブキ以外が初の後輩と言うことで、スバルとあやめはそれに便乗してきた。
ネクロマンサーを楽しみにしていた他の魔界三人組は、二人が仕事、一人が昨日の疲れで睡眠中と、来れる者がいなかった。
対面まであと少し時間がある。
「ミオしゃミオしゃ、みてみて」
ころねが時間を持て余している。
いや、全員が持て余しているのだが。
「……ボクシンググローブ?」
両手に赤いグローブをはめてそれをミオに見せつける。
それをミオが不思議そうに見た。
それがどうかしたのか?と言う視線で。
「見てて見てて……びよーん」
「うぉぅ!」
「だひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!」
突然ころねのつけていたグローブがミオの眼前まで伸びる。
その急な挙動に反射と驚きが重なり、妙な声と妙な動きを見せる。
それを見てころねが独特な笑い方で笑った。
大笑いするほど面白いかと言われるとそうでもないが、何故かころねにはウケている。
「ころさんころさん」
「ひゃひゃっ――な、何ぉヵゅ?」
そのころねの肩をトントンと叩くおかゆ。
ころねが腹を抱えながらゆっくり振り返ると――
パァンッ‼‼
「ひゃぎぃゃぁっ‼」
「あははは」
これまたどこで手に入れたのか、銃弾のない音だけが鳴る拳銃のモデルの引き金を引いて驚かせた。
振り向きと銃声がほぼ同時なため、音に驚いた後にその音源がおかゆの拳銃モデルだと気付く。
何が言いたいかというと、ころねは単に音に驚いただけ、と言うこと。
「おいおかゆ、普通にこっちもびびるからマジでそれ気をつけろ」
「えー? でもスバルちゃん、これびっくり用の小道具だよ?」
「それがどうした」
「いっぱいの人を脅かせた方がこの銃も本望じゃない?」
「何言ってんだおめえ」
「でもころさん笑ってるよ」
おかゆのドッキリに驚いた自分に対して笑い転げているころね。
その様子を尻目にスバルに笑いかける。
「じゃあターゲットを完全に驚かせれてねえじゃねえか」
「あー……まあいいじゃん」
正論に一瞬詰まったが、即開き直る。
スバルも流石にもういいわと諦める。
そもそもこの猫に悪戯を止めさせることは不可能だ。
ドMの癖して悪戯好きという、何とも奇妙な性格をしていやがる。
「二人ともそれどこで買ったん?」
悪戯現場を離れてみていたあやめが率直に尋ねる。
が、雑貨屋で見つけたと言われる。
妙な雑貨屋があったもんだ。
全く、世に迷惑な店だ。
「――ふいー」
唯一この場を離れていたフブキがようやくトイレを済ませて部屋に戻ってきた。
「あ、おかえりフブキ先輩」
「あ、フブキちゃん」
スバルとおかゆが反応した。
スバルは純粋な感情だが、おかゆは表情に含みを持たせている。
しばしおかゆとフブキは見つめ合う。
そしてやっと察する。
「あ、まさか!」
急いでこの部屋の冷凍庫に走る。
そして折角買ってきたあのアイス?がないことを確認。
「でぇふくって、小腹空いたときにいいよね~」
「白上のでぇふくがぁー!」
大好きなアイスが勝手に食べられて非常に悔しそう。
だが待て。
冷静に考えるとあれは一つに二つ入っている。
買ったばかりで手をつけていなかった。
おかゆが一人で二つとも食べたのか……?
「二つ、二つあったはずなのに……!」
「え、そうなの? 僕が見たときには既に一つだったけどなあ……」
「しれっと当然のように食べた発言してるけどそれ一応犯罪やからね?」
「あやめちゃん、おかゆにそんなこと言っても今更だよ」
「いや、ミオも白上の弁当盗んどるやろがい」
「フブキちゃんは狙いやすいから気をつけてね~?」
「おまえが言うなや」
「スバルちゃん、我々はどうやら狙われているようだ」
「いや、ホントそうッスよ。気をつけましょう先輩」
自由気ままで笑いが絶えない。
必ず誰かが笑っていて実に微笑ましい限りである。
このまま三期生との対面を忘れてしまいそうなほどだ。
扉をノックする音さえなければ、永遠に話し続けていただろう。
全員、その場で楽な姿勢をとりながら入り口に視線を向けた。
「こ、こんぺこ~……」
「こんるしー」
扉から、一人が自信なさげに控えめに、その後ろからもう一人が声は控えめに入室してくる。
一人は話しに聞いていた通り、兎の獣人だ。普通の兎の獣人と違うのは、その両サイドの空色の三つ編みに生のにんじんが刺さっている。
そして、視線がなかなか合わないため気付きにくいが、目の中に兎がいる(瞳が兎の形)。
もう一人は話によればネクロマンサーだが、外見は非常に小柄で美しい蝶の装飾をしている。
この子も瞳の中に蝶がいた。
室内に入ると、二人は目と目を合わせコンタクトをとる。
「ほら、ぺこらが最初って言ったじゃん」
「こ、こんなにいるなんて聞いてないぺこ……」
こそこそと耳打ちし合い、自己紹介の順序について話し合うが、やがて兎少女が断念して一歩前に出ると――
「う、兎田ぺこらぺこ~」
頑張って笑顔を作り簡単に自己紹介。
見た目通りの名前だ。
どうやら語尾に「ぺこ」がつくらしい(正確には少し違うが)。
名前がぺこらだからそうなのか、それともそうだから名前がぺこらなのか……。
そこは触れるべきではないか。
「よろしくぺこです」
控えめに敬語で挨拶すると、また一歩引いた。
先輩方(フブキ達他)はぺこらの挙動を見て笑っていたりする。
「こんるしです。潤羽るしあなのです」
こちらも控えめだが、ぺこらよりは視線が合う。
その視線がおかゆとスバルに向いたように見えたのは多分偶然。
小さな体でちょこんと丁寧なお辞儀。
礼儀が良い。
「ねえ、もう三人来るって聞いたんだけど、いないの?」
ミオが見当たらない名も知らぬ三人の姿がないと、辺りを見回しながら二人に尋ねる。
特に質問相手は定めず、二人に。
「……るしあたちも来るって聞いたんですけど――」
「まだあったこともないし知らないぺこな」
すると意外、まだ二人も他の三人と出会ったことがないらしい。
聞けば、二人と同じ三期生だが、デビューに約一ヶ月の差があるらしい。
そのため今日が初対面のようだ。
まだ時間ではないが、三人とも来ない。
来るまで待機か……。
取りあえず二人と交流を――
ダンッ、と扉が勢いよく開いた。
それに仰天したのは、最も近くにいたるしあとぺこら。
二人して大声を上げて先輩方の下へ逃げた。
「Ahoy~、ただいま到着しました!」
新たに登場した謎の少女?
海賊っぽい黒の帽子に眼帯。
髪はどこぞの海賊を思わせる赤髪で二つ結び。
その一人を前に一同は愕然とする。
「Ahoy~、ホロライブ三期生、宝鐘海賊団船長の宝鐘マリンです~」
謎のポーズとともに台詞を決める。
三期生――。
と言うことは、今日来る三人の内の一人。
「この会社、ついに海賊に乗っ取られるのか」
いよいよメンバーの個性が強まり始め、そう言うほかなくなる。
この海賊団船長さんが、義賊であることを願おう。
どちらにせよ賊は賊で、盗みを働くため、悪だが。
「海賊? そんなん問答無用で逮捕よ逮捕」
「へ?」
ガチャ。
マリンの背後から、鎧を着た一人の女性が入ってきて、そう言い放つとマリンに手錠をかけた。
「はああああ⁉ ちょっと何するんすか!」
両手にかけられた手錠をガチャガチャと鳴らして必死に外そうと試みるが、この手錠は本物に近い作りでまず手は抜けない。
抵抗も虚しくその女性に捕まった。
「こんまっする~、ホロライブ三期生、白銀ノエルです」
ガッツポーズを決めて自己紹介。
その後、
「さあ、お縄につきなさい」
「もうついとるがな」
マリンの手錠をつかんで外に引っ張っていこうとする。
「待って待って! 船長もホロライブ三期生! 同期同期!」
腕を引き、必死に抵抗しながら反抗する。
「あれ、そうなん? ならいっか」
と言うと、易々と見逃す。
逮捕理由も解放理由もテキトーで、見た目以上に胡散臭い。
「「……あ」」
マリンとノエルの背後に更にもう一人女性が現れる。
それを見て二人以外が一斉に声を漏らす。
その女性は開いている扉を敢えてこんこんとノックし注目を集めると、
「三期生の不知火フレアだけど、ここであってる?」
と確認をとる。
褐色の目立つハーフエルフだ。
服装も微かに民族のようなそれを感じる。
「話に聞くとおりファンタジーだね」
「でもなんか陰と陽の差を感じる……」
5人の新規メンバーを前に率直な意見。
陰と陽の差、とは、ぺこらとるしあ、ノエルとフレアとマリンの性格の話だろう。
控えめな二人と、大胆に決める三人。
これが三期生だ。
三期生の各の性格が分かるのは早かった。
ぺこらが案外悪戯好きなこと。
るしあがヤンデレで危険思想の持ち主であること。
マリンがセンシティブ発言を頻繁に行うこと。
ノエルとフレアがかなり本気でてぇてぇこと。
5人は同期内でのコラボが他の期に比べて多かった。
やはり先輩方とのコラボは少し先だったが、それでもコラボは多かった。
特にマリンの積極性は群を抜いていた。
そんな三期生が加入して、更に勢いづいたホロライブ。
そこへ飛び込む大ニュース。
「大変‼‼」
事務所の扉をぶち破るように突入してきたのは、柄に似合わずあくあだった。
*****
「シオンさんが失踪?」
えーちゃんが眉をひそめて問い返した。
「ううん、いなくなっただけ、多分だけど場所は分かる」
持ってきた一つの魔導書を机の上に置き、ぱらっと開く。
それはまるで、その魔導書がシオンの行き先かのようだ。
「シオンさんの魔導書ですか?」
見ただけでそれが魔導書と分かるほど異質な書物。
「うん。でも、シオンちゃんの魔導書は魔法使い以外には開けない」
「……つまり、偽物と」
コクッと顎を引く。
「……この本、地図になってますね」
えーちゃんがあくあの開いたページを見て気づきを得る。
分かった理由は、この国独特の歪んだ円の概形と記された五色のマーク。
五色のマークが示すものが国の五石であることは分かるが、記されている位置はすべてが嘘だ。
そして何より気になるのは五色とは別で、国の外にある紫色のマーク。
縮尺的にこの事務所から約10キロ離れた森。
色と本の存在理由、そしてシオンの行方不明から推察するに――
「これがシオンさんの居場所と考えて良いですね?」
「あてぃしはそう思ってる」
「でも確かにシオンさんが一晩帰らないとなると……」
何か臭う。
臭うが……
「相当ですよ、その場所」
「……でも、行かなきゃいけない気が」
あくあは使命感に駆られる。
魔法能力に特化したシオンが、何を目的としてその森にいるのか、そして何が起きてその森にとどまっているのか、最後に、何故偽物の魔導書が存在し、それが自分の位置を示すようになっているのか。
実を言えば、この本はシオンの部屋に隠されていたもの。
シオンが帰らず心配したあくあが部屋を詮索した際に偶然見つけたものだ。
「……そうですよね、分かりました。あくあさんの数日間の休み、了解しました」
そう言ってスマホに何かを打ち始める。
いつもメモ帳に書くのに……。
ピコン。
「――?」
あくあのスマホがなった。
何の通知か確認するために開くと、ホロライブの全体チャットに一件の通知。
「――っ! ちょっとえーちゃん⁉」
チャットを見れば、えーちゃんが全員に招集をかけていた。
身を乗り出しって抗議するが、えーちゃんが対応する前にチャットにいくつものスタンプが送られてきた。
すべてが了解の旨。
「――――」
皆が来るというなら……。
自分のことではないから、来たければ来ると良い……。
「……えーちゃんも来る気?」
「ええ、そのつもり」
えーちゃんもやる気だ。
招集がかかって全員が集まるまでに30分かからなかったのは感動した。
さあ、ファンタジーのはじまりだ。
みなさんどうも、作者です。
ようやくホロライブファンタジーの登場です。
そして、ホロライブサマーと言う神時代は……なしです!
描きたかったのですが、今はアーカイブも殆どがないので……。
まったく「つべくん」さー……。
まあ、それに私には文字で色気を表現する技術などありませんし、ホロライブサマーを小説で書いても、という問題もあります。
この先、全員登場した後にちょっといい感じの描写はあるかもしれませんが、表現が下手くそかもしれないので、場合によっては断念します。
まあまあ、皆さんは残っているアーカイブか、船長の150万配信でも見てくださいな。
あ、それと最近投稿頻度が速いのに理由は特にありません。
気分がいいだけです。
気が乗らなくても週一は出す予定ですが。
もう一ヶ月か……と、時の流れの早さをしみじみと感じながら、私は執筆活動しております。
この流れで来て、あの偉大な方を登場させないはずがないですからね!
次回から一応新章。
でも直ぐ終わるかも。
バトルが増えるため、敵キャラが喋ったりして少しホロライブの空気が変わっちゃうかも……。
そうなったらごめんなさい。
それではまた、次回。