歌姫伝承〜ホロの異能大戦ストーリー〜   作:炎駒枸

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20話 第二ラウンドの始まり

 森の中、数カ所だけ小さく開けた空間がある。

 

 各場所に塔への侵入を防ぐための見張りがいる。

 

 森の入り口付近にいた爆弾魔。

 マリンが遭遇し、即行逃げた後ノエルと対峙したエネルギー男。

 おかゆところねが出会った狂人。

 

 他にもいるが、まだ誰も遭遇していない。

 

 そして、それとは別で様々な場所に駆けつけられるよう、臨機応変に対応できる者達もいる。

 

 スバルとちょこが遭遇しあやめと剣撃を繰り広げる紳士。

 メルが暴れたことにより対抗しに現れた扇子女。

 

 

 敵陣は戦闘慣れしている。

 

 

 では戦闘慣れしていないホロライブ陣営。

 

 現在、戦線に出ている者達。

 

 ノエル・シオン・メル、まつり、アキロゼ、はあと・あやめ・ころね、おかゆ。

 

 現在、何らかの理由で戦線にいない者達。

 

 ぺこら、るしあ・フレア・マリン・ミオ・スバル、ちょこ・ロボ子・えーちゃん、そら、みこ。

 

 そして、行方の分からない者達が二人……。

 

 あくあ・フブキ。

 

 

 現在の戦況はそんな感じ。

 

 

 だが、戦況は常にめまぐるしく変化する。

 

 

 作戦立案からある特定の行動までが第一ラウンド。

 任務の遂行が第二ラウンド。

 任務完了から帰還までが第三ラウンド。

 

 

 そう区切ると、これより始まるは第二ラウンド。

 

 

 いざ、ネクストステップへ――。

 

 

 

          *****

 

 

 

 あやめと共に爆弾処理に時間を使い、少し出遅れたフレア。

 森の中を歩くことは慣れているが、暗いところはあまり好きではない。

 しかも、ここはエルフの森とは違いジメジメしていていかにも何か出てきそうな気味の悪さがある。

 

 一人散策なので、特に喋ることもなく無言で森を進む。

 

 きんつばなら一応いるが、話し相手にはならない。

 

 そんなフレアもようやくとある小さな空間に出た。

 静かな空間。

 そこの中央で一人の男が天を見上げてタバコをふかせていた。

 

「ああ? なんだまた女か、つまらねえな……」

 

 タバコを地面に落とし、それを足で踏みつける。

 

「また……? 他に誰か来たの?」

 

 男の発言から、別のメンバーがここに来たと思われる。

 

「一人は赤髪の女だ。すぐ逃げてどっか行ったがな」

 

 マリンだ。

 赤髪で逃げる者と言えば彼女だけ。

 一安心だ。

 マリンは海賊だが、大砲も剣もなければ、当然腕力もない。

 こんな見た目から豪傑そうな男を相手に逃げるのは大正解。

 ノエルが戦っても苦戦しそうな見た目。

 

「もうひとりはそいつだ。俺を痛めつけやがった骨のある奴だった」

 

 ポケットに手を入れたまま顎でフレアの後方を示す。

 丁度フレアがこの空間に入ったとき、木々が邪魔で死角となっていた位置。

 妙な過去形に違和感を持ちながら、男が示す先を見た。

 

 視界に入るその姿。

 銀髪に銀と漆黒の鎧。

 傍らに放られた一つのメイス。

 その人は木に身を預けて気絶している。

 

 その光景に戦慄した。

 そして、それを超える憤怒が頭を駆け巡った。

 

「のえちゃん‼」

 

 その意識のないノエルの下に駆け寄り叫ぶが、返答はない。

 まず生命確認。

 息はある。

 言い方は悪いが、ただの気絶。

 

「やっぱお前ら仲間か……面倒なやつらだな」

 

 大きくため息をついて早々に敵対意識を向ける。

 最初に出会ったマリンへの対応とはまるで違う。

 それもそう。

 ノエルに計二度もメイスをぶつけられ、二ヶ所に痣ができている。

 相当痛いはずだ。

 そして、能力故に滅多に攻撃を受けることのない男からすれば、ダメージを受けることは、怒りの壺の刺激に十分すぎる。

 現在、このエネルギー男、当たりが強い。

 もし今マリンが来ても見逃さない可能性が高い。

 

 だが、頭にきているのは、フレアも同じ。

 いや、寧ろフレアの方が温度が高い。

 

「あ? やる気か?」

 

 フレアがノエルの姿勢を整えた後、静かに立ち上がり、文字通り体から湯気を立たせて闘志を燃やす。

 その後ろ姿から、戦意を読み取る。

 敵に出会ったら逃げる、なんて話、もう忘れた。

 

 こいつ――許さん。

 

「お前じゃあ俺に一撃も当てられねえよ」

「絶対に焼き尽くす!」

 

 フレアが弓を構え、即行で矢を放つ。

 その動作、約一秒。

 矢の速度は当然人間の移動速度を超える。

 先端に火のついたその矢はエネルギー男の腹を狙って襲いかかる。

 

 だが、男は例の如く全く動じない。

 そして、まもなく矢が男を射抜き、炎を伝染させようかというところで矢が停止する。

 男の目の前で、ほぼすべてのエネルギーを失い真っ逆さまに地面に落ちる。

 その地面に落ちた矢の先端を男は踏み潰し、小さな炎を消火する。

 

「分かるか? 俺の力が?」

 

 消火した矢を拾い上げながらそっと語りかける。

 

「俺は様々なエネルギーを操る。あらゆる物質の運動は俺によって支配される。こんな風に!」

 

 偉そうに自慢してくるかと思えば、突如手にした矢を投函した。

 その矢は、真っ直ぐ、高速でフレアの顔の横をすり抜けて、背後の木に突き刺さる。

 

「ノーコン」

 

 わざと外されたことを理解して煽る。

 脅しのつもりか?

 小賢しい。

 

「あの女みてえに逃げれば良いというのに。無駄に仲間思いだな」

 

 ノエルを一瞥してそう小馬鹿にする。

 バカにされている。

 自分のことも、マリンのことも。

 

「あんたを焼き尽くしたら、別に無駄になんかなんないから」

「はっ、不可能だな、お前には、絶対」

「炎も操れない分際で」

「……ほう、鋭い野郎だな」

 

 フレアの一言に感心する。

 だが、優位性は揺るがないとまだ自信満々。

 フレアも炎が操れるかと言われると答えにくいからだ。

 

 炎はエネルギーを持たないことはないが、それは他の物質などに働くエネルギーに比べると極めて難解。

 そのため、男にも操作できない域にある。

 

 そしてもう一つの気づきがある。

 それは、男が恐らく人体レベルの質量は操れないこと。

 理由はノエルの鎧の傷の付き方。

 もし男が能力で体を吹き飛ばしたら、鎧の傷は背中のみにできる。

 しかし、鎧の腹の位置に小さな罅、そしてそばに転がった丁度よいサイズの木の棒。

 ノエルはその棒の衝撃で吹き飛んだと見るべきだ。

 つまり、ノエルのメイスも男の操作の対象外。

 

 これらより、男をしばきあげるために有用なものは、自分自身の肉体、きんつばに力を借りての炎術、最後にノエルのメイス。

 

「俺の弱点を見つけたようだが、それが活かせなきゃ意味はない」

 

 エネルギー男がニヤッと笑うと、フレアの腰元に装備してあった矢がすべて男の下に浮遊して集まる。

 位置エネルギーと運動エネルギーの操作により可能だ。

 

 男が手を翳すと、フレアの矢が一斉に持ち主に襲いかかる。

 

 それを見越してフレアも同時に行動を起こす。

 矢を掛けずに弓を引くと、そこにきんつばの力を借りて炎の矢が生成される。

 

「龍神の灯火」

 

 敵が放つ何本もの矢を焼き尽くさんとばかりにその炎の矢を放出。

 火が龍の吐く炎の如く燃え盛り、押し寄せる矢の悉くを焼き払う。

 しかし、男もバカではない。

 多角からフレアを狙って矢を放っているため、一度の放火で全てを消し炭にすることは敵わない。

 

 余った矢が、佇むフレアの体を射抜く。

 はずだったが、フレアの体に刺さった矢は全てが燃える。

 いや、そもそもフレアに刺さっていない。

 フレアのように見える炎だ。

 

「何人たりとも不知火に近寄ること叶わず」

 

「肩代わりか、ちょこざいな」

 

 炎で作られた分身の後ろに本物のフレアがいた。

 遙か昔から、海上の怪火として恐れられ、謎を呼んだ不知火。

 その不知火になぞらえた火の精霊を使った偽造工作。

 

 何度もは使えないが定期的に行える。

 

「お前は肉弾戦に不向きなようだな」

 

 男が木の枝を拾い空高く投げる。

 そして次の瞬間、何の捻りも変哲もない拳をフレアに向けた。

 あらゆる物質を凶器に変貌させるこの男の能力。

 どうしても注意散漫になりがちだ。

 その散乱する意識の中でもフレアは確実に男の拳を身を引いて躱し、また弓を引く。

 

 そして、炎の矢を天に放つ。

 

 その矢は、男が撃った布石を焼き焦がす。

 

「視野が広い野郎だ。力と業ってところか?」

 

 ノエルとフレアを見比べて男が対比的な表現をする。

 

「お前こそ視野が狭いんじゃないの?」

 

 フレアが男に忠告する。

 随分と自分の実力を評価しているようだが、その慢心が逆にありがたい。

 フレアがただ男が投げた枝を燃やすためだけに矢を放ったりしない。

 そう、火であっても形のある矢だ。

 木の枝と同じ原理で落下するのは当然。

 男の慢心とフレアの計算により、炎が男に突き刺さる。

 

「がああああああああああああああ、あっちぃぃぃぃぃ!」

 

 男の肩に刺さった火は火が接している面から徐々に焼き焦がしていく。

 何度も火元を叩いて消火を試みるが、そんな程度で消滅するような弱い火ではない。

 

「あああ!」

 

 一向に収まることのない火に痺れを切らし、とうとう荒療治にでる。

 周囲に落ちている木の枝を勢いよく浮遊させ、自ら肩に貫通させる。

 不衛生だが、消火にはもってこい。

 炎の矢を上書きするように木の枝が突き刺さる。

 そして、引き抜くと既に消火完了していた。

 その代償として出血が目立ったが。

 

「なんて無茶苦茶な……」

 

 フレアはその雑な消火に少し引く。

 そして唖然と男の怒り顔を見る。

 

「テメエ、もう許さんからな……ぶっ殺す!」

「許さんのはこっちだから」

 

 互いの闘志が燃え上がる。

 

 先手は男。

 またしても木の枝を浮遊させる。が、今度は先程までとは訳が違う。

 と言うのも、その木の枝の数が異常。

 加えて、石や土までも浮遊の対象にされている。

 その瓦礫達が竜巻のように渦巻く。

 

「千火・不知火」

 

 暴力的な質量には同じく膨大な質量で対抗するべし。

 百火よりももっと強く。

 水平線上で分裂する不知火の如く。

 

 フレアの対抗手段。

 一本の火矢を天に放ち、それを分裂させる。

 そして、渦巻く瓦礫を燃やし尽くさんと火矢の雨を見舞う。

 

「いいか、頭脳戦ってのはこうやるんだよ!」

 

 力量で圧倒するエネルギー男。

 それに対し、相手の弱点を探ったり、上手く自分の技を活かしたりと、頭で戦うフレア。

 その差に対して物申すように男が嗤った。

 降り注ぐ火矢は全て瓦礫の燃焼に使用されるが、それでもこの大きな森だ。瓦礫という名の凶器は幾らでも調達できる。

 

 底尽きない凶器を振りかざす男。

 そんな男の発言の意図が一瞬分からなかったが、次の瞬間――全てを理解した。

 男が非道なことに瓦礫を意識のないノエルに向けて放つ。

 

 まずい――!

 

 火矢を撃つ隙もない。

 体を張って護る意外に方法がない!

 

「――――‼‼」

 

 間に割って入ったフレア――の形をした炎が瓦礫を受け止める(正しくは燃やす)。

 ここでも上手く分身を使って下劣な猛攻を凌ぐが、そこを突かれた。

 

「本体が隙だらけだ!」

 

 分身とノエルとの間に更に割って入っていたフレア。

 男はそれに気づき、その本体に枝を飛ばした。

 

「ぐっ――!」

 

 今回ばかりは避けきれず、フレアの右肩に一本の枝が突き刺さる。

 痛みにより一瞬目眩が襲い、その蹌踉けた瞬間衝撃までもが押し寄せる。

 

「うっ――!」

 

 体が吹き飛んだ。

 背が木に衝突した。

 頭を撃った。

 吐き気がした。

 意識が朦朧としてきた。

 

 それ以上の攻撃は何故か飛んでこない。

 

「――!」

 

 誰?

 

「――!――!」

 

 聞いたことあるような声が何かを叫んでいる。

 耳が遠い。

 見覚えのあるような赤色の髪が薄らとちらつく。

 視界がぼやけている。

 分かるはずなのに、誰だか分からない。

 意識が遠のく。

 

「――――‼‼」

 

 男も何か怒鳴っている。

 

 あ、ダメだ。

 私、負けたんだ。

 もう、闘えない。

 ごめんね、ノエル。

 

 フレアの意識は、そこまでだった……。

 

 

 

 

          *****

 

 

 

 

 現在絶賛迷い中。

 

 宝鐘マリン。

 

 男に怒鳴られて、急いで指示通りにその場を離れたが、結局また迷子。

 理由は無鉄砲に走ったことと、純粋に木々が邪魔で真っ直ぐ走れないこと。

 二度も同じ場所に帰り着いたのはある意味奇跡だったが、男に言われてからはなんとかあの場所に戻らずにすんでいるが、いずれ帰り着く可能性は十分にある。

 こればかりは方向音痴だけの問題ではないため、バカにできない。

 

「はあ~ん……のえちゃーん、フレアー、ぺこらー、るしあー、それ以外でも誰かー」

 

 体力も走りすぎによりまもなく限界を迎える。

 そんな中未だに独りで誰とも出会えずに彷徨うマリン。

 一縷の望みに掛けて名前を叫ぶが、木霊もせずただ虚しく声が消える。

 

「はあ……塔へ行かなきゃいけないのに帰りたい。でも帰りたくても道が分からない……」

 

 絶望的な事態を呟きながら草をかき分けてテキトーに歩く。

 

 パンパンになった足をなんとか動かして、歩いて歩いて歩いて……。

 

 なんだか明るい場所が見えてきた。

 

「……またあそこじゃ……」

 

 二度あることは三度ある。

 疑心暗鬼になりながら恐る恐る近づく――その間に。

 

「うっ――!」

 

 少し前にある明るい空間。

 その端にある木に、一人の顔見知りが激突して呻き声を上げる。

 まさか!

 と雷に打たれたような速度でマリンはその人の下へ走った。

 恐怖も何もかも忘れて。

 

「フレア‼」

 

 駆け寄ってその満身創痍の姿を目にして驚愕した。

 

 目が細く開いているが声を出さない。

 もう既に意識が飛び始めている。

 駆けつけたのがマリンだとも気づけていないかもしれない。

 肩からの出血も痛々しい。

 顔や服には煤や泥が付着していた。

 

「フレア‼‼」

 

 マリンがもう一度叫ぶ。

 

「ああもう! 何なんだよさっきから! 今度はまたテメエか! しつこいんだよ‼」

 

 度重なる敵の登場に徐々に怒りを溜めていた男の堪忍袋の緒が切れる。

 何度も地団駄を踏み怒りをあらわにする。

 

「俺ア今腹ア立ってんだ! テメエは!――雑魚はさっさと消えろ!」

 

 男が大量の瓦礫を地面に打ち付けて威嚇する。

 それでマリンが今まで通り怯えて逃げ去ると思って。

 

 だが、マリンはフレアをそっとその場に寝かせて男の方を向いた。

 その途中、視界に倒れ込んだノエルも映り込む。

 

「はあ⁉ 意味が分からん、お前が消えろ」

 

 マリンの雰囲気が突然に変わる。

 

「あ?」

 

 ずっとずっと逃げ惑っていたマリンとの違いに男も少し判断が遅れた。

 

「じゃあお前も消す!」

 

 男が瓦礫を纏う。

 そして、不動のマリンにその瓦礫全てを吹き飛ばす。

 本気で殺しに掛かる勢い。

 だというのに、マリンは怒りに震えて動かない。

 自分には何もないと分かっているはずなのに、何故か動かない。

 怒りという感情に全てを預けている状態。

 マリンの全てが怒りに支配される。

 

「絶対ぶっとばす!」

 

 マリンがバッと顔を上げて宣言。

 すると、瓦礫の動きが全て停止する。

 マリンの瞳が怒りに揺らめく。

 左右で異なる瞳の色が、際だって煌めいてる。

 

「な、何故⁉」

 

 いくら男がエネルギーを操作しても、空中で停止した瓦礫はびくともしない。

 まるで時間が止まったようだが、エネルギーの流れは感じる。

 時間停止ではない。

 

 マリンが激情を表すように一歩一歩確実に地を踏みしめながら男に近づいていく。

 停止した瓦礫達の間をくぐり、ゆっくりと。

 

「このアマァッ!」

 

 怒り狂った男がマリンを直接殴り飛ばそうと勢いよく襲いかかる。

 しかし、マリンが男を鋭い眼光で睨むと、男の体までもが停止する。

 

「くううっ、このっ、何故だっ!」

 

 藻掻こうにも動かない全身。

 頭も固まっているのに、目も鼻も耳も口も、動く。

 こんなにエネルギーを強化しても全く動かない。

 こんな屈辱は初めてだ。

 

 マリンが近づく。

 

「お、おい、テメエ……!」

 

 マリンが近づき、倒れたノエルの脇を通る。

 その時、無意識にメイスを拾い上げた。

 

「待て、落ち着け!」

 

 マリンが近づく。

 

「今、動けないんだぞ!」

 

 マリンが近づく。

 

「今殴ると吹き飛べないんだぞ!」

 

 まだまだ近づく。

 

「こんな時に殴るとどうなるか、分かるだろ!」

 

 近づく。

 

「おいバカ、止めろ」

 

 メイスを振り上げた。

 

「バカバカバカ、マジで止め――」

 

 メイスが男を上から下に撃ち抜く――。

 腹を撃ち抜く――。

 両頬を撃ち抜く――。

 脇腹も撃ち抜く――。

 

 最後に腹を撃ち抜くと、その瞬間に全ての停止状態が解放される。

 そのため、男は何かにぶつかるまで吹き飛んだ。

 

「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……」

 

 マリンは過呼吸になり、男は血まみれで気絶。

 今の今まで怒りに支配されていたマリンの心はようやく解放されたが、それと同時に体の限界が訪れた。

 それは、「魔法」を使用した事による反動。

 

 意味不明の一瞬の覚醒で力尽きたマリンは、その場に倒れ込んで意識を手放した。

 

 結局、この場に立っていられた者は、いなかった。

 

 

 

          *****

 

 

 

 

 誰も立っていられなかったその小さな空間に、一人の男性が現れる。

 

「……すげえな船長」

 

 意識のないマリンの顔を見ながら呟く。

 

「ふーたんも団長もお疲れだ」

 

 周りの仲間も見回して一言労うと、マリンの首元に付けられたペンダントをすっと盗むように取る。

 

「シオンちゃんも策士だな。錨と怒りをかけたわけか」

 

 手にした錨のペンダントを眺めて言うが、少し不満そうだ。

 死なないように小細工はされているが、あまりいい作りではないようだ。

 

「錨は摩擦を利用して船を停留させる道具。そこから派生させて摩擦力を操作させる能力を入れた訳か」

 

 そう分析する。

 実際に、その通りだ。

 マリンが解放していた力は、摩擦力の制御能力。

 シオンがペンダントに込めた魔法。

 そして、男や瓦礫が動けなくなったのは空気との摩擦によりエネルギーを超える力で押さえつけられたから。

 

「だが、このペンダントは没収だ。装備するなら完成度の高い物でな」

 

 その男性は森の奥底へ消えていった。

 

 

 

 

 

 森の南東の空間。

 

 マリン対エネルギー男――マリン逃亡。

 

 ノエル対エネルギー男――エネルギー男の勝利。

 

 フレア対エネルギー男――エネルギー男の勝利。

 

 マリン対エネルギー男――マリンの勝利(但し、マリンも倒れる)。

 

 

 よって、

 

 ホロライブ戦力、ホロファンお姉さん組、『一時』脱落。

 

 敵戦力、エネルギー男、脱落。

 

 




 ご愛読?頂き、感謝しまくっている作者です。

 ここまで読んでくださっている方はきっと1から読んでくださっている優しい方だと思っております(勝手に)。
 どうか、飽きずにお付き合いくださると嬉しいです。

 さて、今回は船長の活躍でした。
 まさかの団長とフレアが破れてしまう結果に。
 そして船長も力尽きて意識を失いました。
 でも、文章で分かりやすく表記した通り、「一時」脱落です。
 再び立ち上がる3人に期待です。

 最後に、船長、ふーたん、団長、シオンちゃんと呼び、船長のペンダントを持ち去ったあの人は一体何者でしょうか?
 もうほぼ敵ではないですよね。

 では、また。
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