「よくもやりやがったなお前ラあああああああ!」
森から飛び出した塔の主。
ほうきにも乗らずに宙に浮いている。
しかし、それでも飛行速度が異常で、追いつくのが早い。
バンッ、とコンテナの扉が開いた。
全員が乗るので精一杯なはずのコンテナ。
そのコンテナ内は、実は空間が歪められているために空きはまだまだある。
しかし、ここでは全力が出せない。
シオンが、ロボ子が、フレアが、るしあが、コンテナの上に立つ。
「皆は危ないから中にいても――」
「なに言ってんの、今更でしょ」
「そうですよ」
「みんな、力になりたいんですよ」
シオンが危険だから退けと、遠回しに言うが、誰一人聞き入れない。
正直、罪悪感で一杯だ。
自分のミスでこんなに仲間を巻き込んでしまって……。
「気にしてるんなら、帰ってからちゃんと言いな」
下からあくあが叫んだ。
何をするにしても、このファイナルフェイズを超えてから。
まずは、
「「死守する‼」」
誰一人、漏れることなく口を揃えて叫んだ。
「大概にしろよテメェら!」
塔の主もとうとう本性を見せてきた。
いきなり魔方陣を展開。
すると特大の闇色の光線がトラック丸ごと消し炭にするべく、襲いかかる。
こんなもの、対抗できるのは一人だけ。
全くと言って良いほど同じ技をシオンも使い相殺。
その隙にフレアが矢を放つ。千火・不知火だ。
しかし、どれも男の前で消滅する。
続けて男の背後に一人の幽体が。
その幽体は全力で鎌を振り下ろす。
完全なる不意打ちだったが、バリアを張ってその一撃をも無視する。
シオンが抑えていた敵の光線が次第にトラックに迫り来る。
ダメだ、火力が足りない。
「シオンちゃん!」
ロボ子さんが走って、その光線に飛び込んだ。
刹那、シオンが魔法を切り、光線がロボ子の身に降り注いだ。
だが、ロボ子さんに魔法は無意味。
全てを受け止めて……くれない。
塔の主だけあって火力が高すぎて、ロボ子だけで受け止めきれない。
光線はロボ子の身に当たって、余りが弾け飛ぶ。
弾けた魔法の球は、コンテナの上はシオンが、コンテナの中はノエルがメイスで受け止める。
空中に投げ出されたロボ子。
車から足が離れ、捨てられるかと思いきや、大麻がその体を拾う。
「何人居ようと、俺には敵わん!」
男が瞬間移動のようにコンテナの扉前に移動。
入り口に構えていたのは、
「バンッ!」
効果音を口で放ち、おかゆが偽拳銃の引き金を引くと、パンっ、と銃声のみが響いた。
男は怯まなかったが、回避の予備動作を一瞬ちらつかせた。
「おらよ!」
そこにころねのストレートパンチ。
当然当たりはしないが、男に回避の動作は強制させる。
仕上げはこの人。
「マリン、開眼!」
中二病っぽく右目の眼帯をしゅっと後ろに投げ捨て、ふっと笑う。
オッドアイを見て危ない香りを感じ、男はコンテナから離れた。
「…………」
「バァ~カ、何もねぇよ!」
マリンに魔法的な力は勿論、肉体的な力も何も無い。
あったのは、ハッタリの発想と煽り能力だけ。
「くっ、おのれ貴様ら……!」
怒りが更に積もる。
今度こそコンテナを破壊してやる、と再び移動した。
「お帰り!」
それを狙った、見事なノエルのメイスでの一撃。
回避ではなくバリアを展開した男。
メイスの力でそのバリアは破壊、しかし究極の瞬発力と判断力で男はそれすらも回避。
間近のノエルに狙いを定める。
「鎌鼬」
その男の背後から、大麻に乗ったあやめの斬撃が。
バリアも破壊され、瞬発力でもどうにもならないタイミング。
男は右手に刀を出現させて、それで軌道を逸らせた。
「神風」
あやめの追撃。
男は退いた。
この場所、まだ闇因子が微かに残っている。
それ即ち――
「ッよっと」
退いた男の足を掴み、遙か遠くへ投げ飛ばしたのは、怪力吸血鬼メル。
日光は当たっているが、闇因子のお陰で少しは力が解放できる。
「時間稼ぎが!」
男は瞬く間に戻ってきた。
そんな男の前にシュッ、と一つの白い影が飛び出した。
「愚かな」
その影を男は光線で焼き払う。
確実にその影は焼け焦げたことだろう。
「金色神楽」
白い影が、光線の中から男に突撃してきた。
流石の塔の主も、どうしようもなかった。
白い影――白上フブキの両手から白く見える金色の波動が男に衝撃を与える。
「ぐっ――」
男がまたしても吹き飛んでいく。
「フブキ⁉ いつから起きてたの⁉」
コンテナの中から、落下中のフブキに目を剝いて仰天するミオ。
「いや、てか何で無事なの、それに何今の!」
疑問が更に増えていく。
闇因子も狂気の束縛もどちらも解放されたフブキが、何故魔法のような技を繰り出せたのか。
それに、どうやってさっきの光線を凌いだのか。
「神具・人形……ラストだにぇ」
コンテナの中、倒れたまま微かに笑って左手を少し上げるみこ。
その手の中に一枚の人型。
それがぱらぱらと塵になって消えていった。
落下中のフブキはみこの大麻がキャッチ。
大麻に現在三人が乗っている。
「出口見えました!」
車窓を開いて、えーちゃんが大声で叫んだ。
見える者達が、先を見れば、確かにあの仮面男がいた入り口(出口)が見える。
もうまもなくだ。
「させるかァァァッッ!」
何度でも塔の主が復帰してくる。
耐久力が高すぎる。
一体どんな生活を送ればそんな力が身につくのか。
「みんな、中に入って!」
シオンが号令を掛けた。
これでえーちゃんが思い切りアクセルを踏んで、本気のドライブテクを披露できる。
ただし、迎撃用にシオンだけはコンテナの上に。
「逃がさん!」
男の怒りの一声で、出入り口に巨大な壁が聳え立った。
「そんな……!」
ここまで来て、先が無くなった。
誰か壊せるか?
急いでコンテナ内の力自慢が扉を開けようとした。
『そのまま進みな』
えーちゃんの脳に直接何者かの声が響く。
誰だ!
信じて良いか⁉
もう信じるぞ!
「みなさん、そのまま!」
えーちゃんは踏みかけたブレーキから足を離してアクセル全開で突進。
コンテナ内は騒然としつつもきちんと指示に従う。
衝突数秒前、トラックが異次元に突入した。
そして、異次元への入り口は即閉口した。
だが、その閉口の直前、シオンだけは目の前に塔の主と対峙するような形で一人の男が現れるのを目撃した。
異次元に突入したトラックは一瞬で世界へ帰還。
トラックが放り出されたのは、壁の反対側。
つまり脱出成功と言うことだ。
何が何だか分からないが、コンテナ内は沸き立っていた。
ただ二人、シオンとえーちゃんは、あの男は誰だったのか、疑念を持ち続けた。
*****
壁の前で塔の主に立ち塞がる別の巨壁。
シオンを相手に圧倒していた塔の主。
そんな彼すらも凌駕する、化け物級の存在。
その男は、喜怒哀楽を模した仮面をそっと外しながら塔の主と目を合わせた。
「何故邪魔をする。約束が違うぞ」
塔の主は額に血管を浮かべて怒鳴る。
「俺も約束したときはこんなことするつもりは無かったんだ」
「どういうことだ」
「事情が変わったんだ」
会話を進めながらゆっくりと二人は地上に降り立つ。
互いに視線は合っているが、その表情が全く逆だった。
「あの子の本は今後狙うな」
「何故だ! 何故あいつらの肩を持つ!」
「好きなんだよ」
「戯れ言はいい!」
「マジなんだけどな……」
本心を否定されて少し落ち込む仮面男。
その落胆から、それが本心だと思い知らされる。
「お前さ、ホロライブって知ってるか?」
「知らん」
仮面男の世間話のような切り出しに塔の主は怒りを露わに即答する。
「ネット配信を主軸に活動する次世代アイドルの形を実現した新たなアイドルグループの最先端を行くグループだ」
「だからなんだ」
「彼女たちがそうだ」
「だからなんだって言うんだ!」
「俺さ、ホロライブ箱推しになっちまってさ」
「そんな理由で……!」
「十分な理由だ。推し活は決して馬鹿にしちゃいけない」
仮面男が誇るように言う。
塔の主は相当ご立腹のようだ。
「俺はこれからあの国に行って静かに暮らそうと思う」
「ふざけるな、自分が強者だからって――!」
「ほら」
「っ――」
怒鳴り散らす主に仮面男が一冊の分厚い本を投げる。
途端に主が言葉に詰まる。
「俺の研究した特殊能力に関する文献の全てだ」
塔の主は突然言葉を失ってその本を眺める。
「その本はやる、俺は暗記してるからな。その代わり、今後決してホロライブに手を出すな」
「……何故そこまで奴らを庇う。あいつの書よりも、お前の書の方が確実に貴重だぞ」
内容的に護るに値しないと主が疑問を投げかける。
「言っただろ。推し活は行動を起こすのに十分すぎる理由なんだよ」
変わらない抑揚のない口調、でも眼が座っていた。
まるで、揺るがない決意を秘めているような。
「……いいだろう」
塔の主は急に機嫌を取り戻し、仮面男との契約に同意した。
「分かってると思うが、もしホロライブに手を出したら――」
「俺の組織を消し炭にしてくれて構わない」
「……ならいい」
「成立だな」
こうして、今後この塔の主から狙われる心配は消え去った。
ホロライブ箱推しの魔法使い、通称、箱推し君の影からのバックアップによって。
どうも皆様、作者です。
ようやくこの章の終わりですね。
とは言っても、もう一話だけ後日談的なのを入れますが。
さて、今回はこの章の能力orその他の集大成でした。
でも、やっぱりバトル向きでない、とか、ストーリー展開上の問題であまり目立たない方が出てしまいました。
そんな方々にも花を持たせる時は来ます。
そう、第四章で再び戦闘パートに入ります。
その時は、きっと5期生まで……。
4、5期生推しの方、今章で推しの活躍が無かった方、ご安心を。
第四章はあんなコンビやこんなコンビ、あんなネタやこんなネタを仕掛けていきますので、乞うご期待!
っても、かなり先の話なんだよな……多分。
えー、はい、では、また。