歌姫伝承〜ホロの異能大戦ストーリー〜   作:炎駒枸

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31話 星、街(待ち)望む新世界開拓

 フブキのライブ。

 あれは実に好評だった。

 

 メンバーからも、リスナーからも、スタッフからも、社長からも!

 

 最近、本当にホロライブに流れが来ている気がする。

 その中でも特にそら、フブキ、あくあの三人がこの社会の波に乗れている。

 

 その後のノエルのデビューライブも反響を呼んだ。

 

 まあ、ノエルはもう少し……何というか……伸びしろがあるかな……?

 

 そんなビッグウェーブは、更に強くなる。

 

 そう、こんな報告によって。

 

 

『当会社の運営する動画配信アイドル事務所を統合し、ホロライブプロダクションとする』

 

 

 これが表す意味とは?

 

 実は、この会社には当初いくつかプロジェクトが存在していたように、今でもあと一つ、別のチームがあった。

 このタイミングでその二人チームで活動していた『イノナカミュージック』の「星街すいせい」と「AZKi」もホロライブプロダクションの一員として、更にすいせいに関してはホロライブに移籍した。

 

 この統合は、るしあのライブの日に発表された。

 

 イノナカミュージックは、歌う事を目的として創られたチーム。

 

 ……え?

 ホロライブはアイドルだから、歌うのは当然だって?

 何を言うか!

 ホロライブに加入した者の殆どは、当初アイドルをやる意思など無かったに等しいぞ。

 

 そらやAzkiの方が寧ろレアケース。

 ゲーム実況、雑談配信、ASMR、中にはエロライブを目的として入ったものまでいる始末。

 

 だが、この統合により、ホロライブプロダクションとしての目指す道も確立された。

 

 すいせいとAzkiの参入はホロライブに新たな波を起こしたと言えよう。

 

 

 

          *****

 

 

 

 時をかなり巻き戻す。

 

 とある昼下がり。

 一人の青髪少女がホロライブの事務所に訪れていた。

 

「お願いします。どうかここに置いてください」

 

 半分程度ダメ元で懇願する。

 彼女の名は、星街すいせい。

 ソロで活動している動画配信者。

 

 個人勢として今まで活動してきたが、そろそろ限界……と言うか……。

 ともかく、一人ではもうこの世界で生きていくことは厳しいと判断した。

 それもそのはず。

 いくつもの大型の会社がこの業界に参入してきたため、会社の経営と個人の機材等の差が顕著に表れ置き去りにされてしまう。

 だから、すいせいもどこかの会社に入れてもらえないか考えていた。

 そして、目を付けたのがホロライブ。

 目を付けた、だと少し印象が悪いかな?

 実は存在を知ったときから、良い会社だなって想っていたのだ。

 

 

 まあ、見事に断られたが……。

 

 でも諦めない。

 私はホロライブに入りたい!

 楽しむだけだったこの動画配信にも、遂にそんな感情を持つようになった。

 

 正直歌は上手い方だ。

 他人に聞かせれば、多くを魅了できるに違いない。

 でも、個人だとどうしても拡散力が足りず、「他人に聞かせれば」の課程が果てしない難関となる。

 もっといろんな人にこの声を聞いてほしい。

 もっと私を認知してほしい。

 自我が表面に出始めた瞬間だった。

 

 一緒に暮らしている姉街もよく応援してくれる。

 期待しているかは知らないけど、頑張ってねと。

 

 

 すいせいは考えた。

 どうすればあの会社に拾ってもらえるかを。

 この場合は一般応募とは話が違うため、倍率もなければ、拾ってもらう確立も限りなく低い。

 ゼロ期生として加入するために、自分の何をどう売り込めば良いのか。

 彼女たちにあって、自分に無いもの。

 そして逆に、彼女たちには無い、星街すいせいが保持する個性は。

 

 ひたすらに考えてまた数日。

 予想外の連絡が入った。

 

 間もなくもう一度掛け合いに事務所へ訪れようかと思った矢先、ホロライブ側から呼び出しが掛かった。

 名刺交換……では無いが、流石に電話番号程度は交換しておいて正解だった。

 

 ソワソワしながら会社へ行くと、えーちゃんがいた。

 掛け合ったときに話した人はえーちゃんではなかったが、配信でたまに顔を出すので彼女だけはアイドル以外でも顔と名前が一致する。

 すいせいが来ると迷わずに近づいて声を掛けてくれた。

 

 配信等で見ていて想っていたとおり、親切な人だ。

 実に温厚そう。

 

 案内されるままにとある部屋に行き着くと、もう一人、見知らぬ女性がいた。

 少しダークな色合いのマントが特徴的で、彼女も呼ばれたらしい。

 

「どうも、AZKiっていいます」

「あ、どうも、星街すいせいです」

 

 社交辞令の挨拶を交わし、静かに席に座る。

 人前で恥ずかしいので、二人ともウキウキした気持ちを抑えながら。

 

「それでは早速なんですが……」

 

 と、状況が整ったところでえーちゃんが切り出した。

 

「この会社に新たに『イノナカミュージック』という歌をメインにした動画配信型アイドルチームを作ろうと考えています」

「「――‼」」

 

 察しの良い二人はもう気がついただろう。

 二人とも、強いて言うなら自分の売りはこの声だ、と自負している。

 歌をメインにしたチーム、そして二人がここにいる。

 このたった二つのパーツでもう決まりだ。

 でも、騒いで内定取り消し、なんて無いだろうが、まだ静かに……。

 

「それにつきまして、まあ、お察しの通りそのメンバーに入りませんかというお誘いです」

 

 少し軽めに勧誘する。

 二人はぱあっと笑顔になった。

 

「「是非」」

 

 こうして二人はこの会社で『イノナカミュージック』所属のアイドルとして活動を始めた。

 それは、ホロライブゲーマーズの活動が本格始動しておよそ一ヶ月後の事だった。

 

 AZKiは他の配信ではあまり目にしない音楽に関する活動を主に、すいせいはそれと平行して、以前から得意だったゲームの配信も行った。

 

 そんな二人が、遂にホロライブとして全体統合され、更に認知度をあげる。

 心なしか、それにより更にホロライブに勢いがついた気がした。

 今までアイドルと言うよりも芸人だったチームに、そらの他に歌に特化したメンバーが加入したからだろうか?

 いや、何でかなんてどうでもいいことか。

 兎に角変わったんだ、この世界が。

 

 

 

 聞いたか?

 星街すいせい、AZKiもやっぱりNSSに出るってよ。

 やったな。

 二人の歌唱力を交えれば大成功間違いなしだ。

 比較的ダンス能力の低いホロメンのだが、二人はそこまで悪くない。

 これは期待できるぞ。

 

 とある街の一角で、そんな声を聞いた。

 初めてだった。

 見知らぬ人が自分の話をしているなんて。

 普通に生活していれば、まず無いこと。

 遂にそんな大きな存在にまでなってしまったのか。

 

 NSS……。

 ホロライブ初の全体大型ライブ。

 会場も他のソロライブなどと比べても大きな場所。

 そのステージに立たせてもらえるそうな。

 嬉しくて仕方が無いことは言うまでも無いだろう。

 

 三期生が入ってきたときは、自分も入りたてで何も出来なかったから、もしこの先誰か一人でもメンバーに加入してくるなら、是非とも役に立ちたい。

 

 と、想っていたところ……ふふふ……来たか!

 

 四期生!

 

 あと一人まだ決まっていないらしいが、既に四人の加入が決定している。

 あと数日で顔合わせができる。

 ウキウキしながら練習に勤しむ。

 そう、誰もが。

 

 初めての大舞台での失態は、許されないではなく、自分が許さない。

 絶対に。

 

 今日はまず事務所に来たすいせい。

 出会ってはいないが、二期生、ころね、メル、アキロゼ、ロボ子、そらが事務所に来ているらしい。

 殆どが後にダンスやボイスレッスンが控えている。

 

 それじゃあ早速打ち合わせでも……

 

 

 キンッッッッ‼

 と言う音とほぼ同時に窓の外が弾けたように光った。

 

 

「なに⁉」

 

 そして、軽い地震のような揺れが事務所含め、辺り一帯を伝った。

 揺れが収まると、急いで窓側に駆け寄り外を見回すが、何も変化が無い。

 普通の街の景色が一望出来るだけ。

 

「何だったんでしょうか……」

 と、マネージャーも少し気がかりな様子。

 

 落雷では無いことは、音から分かる。

 でも、だとしたら今の光、音、揺れは一体……?

 

 バンッ!

 と勢いよく扉が開いた。

 

「やべえぞ!」

 

 叫びながら、許可無く突入してきたのはスバルだった。

 

「び、びびった……何があったん?」

 

 きっと今の事に関してだろうと思い、すいせいも聞き返した。

 

「屋上!」

 

 そう言うと、スバルは事務所内の人全員に伝えるつもりなのか、ささっと去って行った。

 

「「屋上……?」」

 

 マネージャーと目を合わせて首をかしげた後、うんと頷いて屋上へ走った。

 直通のエレベーターはないので、二つ下の階で下りて、残りは階段で。

 向かう途中で殆どのホロメンと出くわした。

 

 そして、屋上の扉を開くとそこには――

 

「――――」

 

 言葉を失う光景が……。

 

 

「いやー、マジすんませんねー! まさか飛行中に落下するとは」

 

 シオンを相手に背の高い女性が礼を言いながら笑っている。

 集い始める見物人も気に咎めずに。

 ただ、喋り方や口調に多少の訛りを感じる。

 出身国の言語が恐らく違う。

 

「いや、何も無かったから良いけどさ……あんた誰?」

「あー、桐生ココっすー、dragonッすねー」

 

「「ドラゴン⁉」」

 

 観客が一斉に声を上げた。

 世界に数少ない幻獣種。

 その中でもドラゴンと言えば、一度は出会ってみたい夢のような存在。

 一見は人だが、よく見れば確かにあやめと同等かそれ以上に硬質そうな角や、地に座っていながらもちらっと背後に見える大きな尻尾がある。

 

「お? なんかgalleryが多いっすね。where is the here?」

 

 外国語弱々戦士たちのホロライブの中でも、数名は対応が出来る。

 特にはあととえーちゃん。

 今日ははあとがいないので、えーちゃんが出る幕か?

 ……いや、流石に今のは分かるかな。

 

「ここ?」

「ココっす」

「ここはホロライブ事務所だけど」

「Ah……hololive? あの、アレっすよね? 動画でよう見るやつ」

 

 ん? よく見る?

 意外にも好きなのか?

 

「auditionってまだやってます?」

「「へ?」」

 

 何その質問。

 ま、まさかとは思うけど……。

 

「私も受けに来たんっすよね」

 

「「ええええええっ!!」」

 

 その日、桐生ココはオーディションを受け、ホロライブ四期生残りの一枠としてデビューすることが決まったのであった。

 

 




 どうも、作者でございます。
 遂に……遂に……!
 遂にすいちゃんとあずきち、そして!
 ゲボカワドラゴン!

 会長の登場を待っていたのではないですか?
 4期生も次回来ますよ!

 乞うご期待!
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