歌姫伝承〜ホロの異能大戦ストーリー〜   作:炎駒枸

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35話 羊も焼けない暖かさ

 

 フレア、ココ、かなた、わため、ルーナ、トワ。

 この順で発表通りデビューライブを行った。

 それぞれの日にあまり間隔が無く、運営側は準備や会場のセットなど、対応に追われたことだろう。

 

 まあ、紆余曲折ありつつも、なんとかなった。

 

 フレアが3期生の区切りとしてライブを完成させ、4期生に華麗にバトンを回した。

 それをココが受け取り、4期内でのパス回し。

 ラストバトンはトワが受け取った。

 

 そのバトンは果たして誰に繋がれるのか?

 

 それはまだ謎のまま。

 

 それはまだ秘密のまま、少し誰かの日常でも覗いてみよう。

 

 

 

          *****

 

 

 

 とある羊は、いつもゆるゆるふわふわしている。

 マイペースとも言えるが、それは表現的に何となく違って聞こえる。

 彼女には別の言葉の方が似合う。

 ただ、肝心の「別の言葉」が浮かばないが……。

 

 でも、悪い言葉では無いことは絶対。

 それだけは!

 

「……」

 

 毎日の長時間配信。

 暖かい言葉に包まれる、幸せな配信。

 類は友を呼ぶ。

 わための配信には、彼女に似た性格の者が集まる。

 

 見ているととてもほっこりとして、笑顔になれる。

 そんな空間。

 

 いつも夜遅くまで、皆付き合ってくれる。

 

 この仕事を始めたときは、収入とかあまり入らないと思っていたから。

 ……と言うより、自分がこんなに人を集められると想像していなかったから。

 だから、バイトと両立していく方向性で考えていたけれど……。

 皆がいて、皆が応援してくれるから。

 夜も寝ないで(寝てるけど)配信が出来ている。

 

 クソ雑魚回線の間は、中々配信がうまく出来ず、どうしたものかと思っていたけど、わためいとが優しすぎたから。

 ホロメンが暖かすぎたから。

 本当に泣くほど優しい世界だったから。

 

 泣き虫羊には、ちょっと――いや、かなり涙腺に来る過去と現在で。

 

 相棒もいるし、たくさんの仲間も、たくさんのファンもいる。

 

 最強無敵の羊になれる気がする。

 

 夢の武道館ライブも……いつかきっと――!

 

 

 

 それまでに、やることと気をつけること。

 まずオリ曲。

 いっぱいだそう。

 

 次にメンバーと楽しく関わっていこう。

 

 そして……最後に、食べられないように……ね?

 

 この間だって、肉食系獣人からの危険な視線を感じたし、何なら社内でも感じる。

 先輩に食べられる日が来てもおかしくは……いや、おかしくはある。

 でも、草食系獣人はそういう存在なのだ。

 弱肉強食の世界で生きるのだから。

 

 弱肉強食か……アイドルもそうだよな。

 数多いるアイドルの中でも人一倍目立って、煌めいて。

 そして夢である武道館ライブに向かって歩んでいって。

 

 まだ挫折せずに進められるけど、大半のアイドルが夢半ばで届かないことを知り、そして諦める。

 ホロライブは今成功の渦の中にいる。

 だから夢が薄く光り輝いて見える。

 でも、慢心してたら足を掬われる。

 そして転んで、大けがして、立ち上がれなくなる。

 

 この世界には、足を掬おうと狙っている奴が少なからず存在するから。

 善と悪がはっきりしているから。

 

 それもまた、世界の中の、人間という括りの中で起きている弱肉強食。

 人望、夢、希望、良心。

 金、権利。

 持つ物を持っていようと、屈すればそれまで。

 

 だから、屈しない力を皆必要としている。

 

 わためは、泣き虫な羊だから。

 温かい言葉に泣かされているのだけど、勘違いしてくる悪質な輩もいるんだ。

 そんな奴らに、そんな『畜生共』に負けてなるものか。

 わためには暖かさが味方してくれている。

 わための存在は、親切心で生きられるという象徴だ。

 本物のナイフは受け止められなくても、言葉のナイフは受け止められる。

 形がない悪質さと裏腹に、形がないからこそその傷を優しさで塗り替えてもらうことが出来る。

 

 素敵な世界に生を受けたのだ。

 

 世界には、こんな考え方がある。

 「未来は生まれた瞬間から既に決まっていて、人々はそれを知らないだけだと」。

 いつ夢が叶うのか、はたまた挫折して泣いているのか。

 いつまで生きているのか、はたまた死んでいるのか。

 それが分からないからこそ、我々は明日のために必死に道を選ぶ。

 その選択一つ一つが積み重なって、その人の人生となる。

 

 因果応報と言うが、この考え方で言うと、そんな言葉は意味を成さない。

 先が見えないだけで、決まった未来に進んでいるのだから、何をしても結果は同じ。

 善行でも悪行でもやってくる未来は決まっている。

 

 でも、わためはどちらかで括ると、圧倒的な善。

 わためがこの思想を持って動いてるはずもないが、とても美しいことだ。

 

 人生が善の積み重ねで出来ている人。

 人生が悪の積み重ねで出来ている人。

 

 善で出来ていた方が、ちょっとだけ素敵で誇らしいよね?

 

 人が見て無くても、とか、ちりつも、とかってこういうことなのかな?

 

 わためがそんな優しい存在であったら、「「「私たち」」」も誇らしいよ。

 

 勿論、ホロメン皆優しいから、言うまでもなかったかも知れないけどね。

 

 

 

 ……。

 

 

 

「あ」

 

 急に近くに居たフブキが小さく声を上げた。

 

「……? どうした急に」

 

 もう一人、少し離れた場所にいたフレアがちょっと驚いていった。

 ただ普通にバカタレ共で集ってゲームをしていたのだが、フブキがハッとして表情を変えたから、考え事をしていた二人は少しびっくりしていた。

 

「……いや、大したことじゃ無いけど、5期生来るらしいね」

「あー、そうだったねぇ」

「いやいや、かなり大したことでしょ」

 

 内容の濃さ的には重大。

 場が落ち着いていられるのは、全員が既に知らされていたから。

 

 今までの通り、どんな人が来るのか、そしていつでビュー配信があるのかは一切知らされていない。

 ただ一つ、出ている情報があるとすれば……

 

「今回は4人らしいね」

「みたいだねぇ」

 

 そう、今までは基本的に五人同時デビューだったが、今回に限り四人デビューらしい。

 理由は特にない。

 強いて挙げる理由があるとすれば、選考で適合する者がいなかった。

 それだけ。

 

「わためも遂に先輩だ~」

 

 わためが静かに目を光らせる。

 多分他の4期生もそう。

 皆が歩む道。

 先輩になる自覚と責任。

 

「先輩としての威厳を見せていかないとねぇ?」

「ホロメンで威厳って……あんま無いんじゃない?」

「言ってそらちゃんとかぐらい?」

「まあ……創始者で代表だしね」

 

 まだ入りたてのわためとフレアに加え、大先輩となり始めているフブキでさえも認めるそらの圧倒的な偉大さ。

 きっと皆の共通認識だ。

 でも、だからと言って近寄りがたい存在って訳でもない。

 

「でも、そらちゃんは威厳がありつつも、凄く親しみやすいよね」

 

 そう。

 それでもって一緒に居ても、場が緊迫しないのは彼女のコミュニケーションの取り方の上手さなどがあるのだろう。

 いや、寧ろそんな存在だからこそ『威厳がある』と言えるのかも。

 

「それにしても、どこまでホロメンって増えるんだろうね」

 

 フレアがふと疑問を口にする。

 視線はゲーム画面に向いているから、特に気にしてないのかも。

 

「う~ん……来年にはもう募集を止めちゃうかも知れないしね……」

「え、でもそれだったら、5期生の四人に後輩が出来ないって事になるよ」

「そんなこと言い出したら永遠に止まらないよ」

「止まらないホロライブ」

「そう言うのじゃなくて」

 

 まずい。

 いや、ある意味普通だからまずくは無いけど……。

 このままだと深夜テンション脳死トークに突入してしまう。

 

「……今日はこの辺にしとく?」

「うーん、わためはまだいけるけど?」

「あたしはいつまででも良いよ」

「そう? じゃあまだ居ても良いよ」

 

 特に理由あってでは無く、何となく集う三人。

 本当にバカタレだ。

 このバカタレに敵うバカタレは存在するのだろうか?

 バカと天才は紙一重って言うし、バカタレ共って天才共って言えるのか?

 

 何となく、この三人に敵う存在はいない気がする。

 一人一人が挫けそうなときも、三人寄ればきっと最強になれる。

 

 なんてのは妄想だ。

 でも、そんな気はする。

 

「そう言えばバカタレのオリ曲の話はどうなってる?」

「ああ、それなら今依頼中」

「申請までは通ったんだ」

「まあそこはね、流石に」

 

 脳死になる寸前の所で会話を繋げて、頭を動かす。

 

「そう、それで曲名くらいは自作したいと思ってるんだよね」

「おぉ~、いいね~」

「いんじゃない?」

 

 フブキの案に乗り気な二人。

 曲の方向性もまだ決まってないが二人とも快諾なら有り難い。

 

 まあ、そんなこんなで結局朝まで……。

 

 そんなの日常茶飯事さ。

 

 早朝、適当な時間で切り上げてそれぞれ仕事やら帰宅して就寝やら。

 

「……!」

 

 その帰宅路、わためは何かを目にしたらしい――。

 

 

 

 

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