歌姫伝承〜ホロの異能大戦ストーリー〜   作:炎駒枸

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37話 兎の恩返し

 hololive 2nd fes. Beyond the Stage。

 

 間もなく開催される、ホロライブの大型ライブ。

 規模の大きさから、以前とは異なり、2日に分けて開催される。

 

 残念ながら5期生は準備期間がないため、出演はできない。

 盛り上げ役として、応援含めしっかり活動していく予定だ。

 

 いよいよホロライブもこの国屈指の大型企業として数えられるようになりはじめた。

 そして、それとほぼ時を同じくして、ころねとフブキがチャンネル登録者100万人を突破した。

 アイドルの動画配信者がこの数を記録したのは過去に約3名。

 とても偉大な歴史となった。

 

 さらにその数日後、もう一人、ホロライブでチャンネル登録者100万人を突破した者が現れた。

 

 

 

          *****

 

 

 

 夢はでっかく100万人!

 

 そこが配信者でいえば、大きな節目になるから。

 でも、今の自分には到底不可能な世界。

 夢のまた夢。

 だと思って、設定した仮の目標。

 

 ホロライブで、まさか自分が三人目の達成者になるとは。

 感慨深いと言うより、衝撃が強すぎる。

 でも、この目標を達成してしまったら、この先の目標は……?

 

 

 勿論、3期生ライブは3期生の全体目標として、永遠に望む。

 でも、何だろう……。

 早く新しい目標を見つけないと、この「燃え尽き症候群」は解消されない。

 

 ここまで行けば、きっとホロライブの顔になりつつあると言っても良いはず。

 創始者のそら、最速のころね、ホロライブの顔――フブキ。

 ここに兎田ぺこらの名前も並ぶようになったことは素直に嬉しい。

 

 それもこれも、先輩たちの作り上げたこの場所と、野うさぎたちの応援あってこそ。

 

 でも、どうすれば?

 目標を失って現れるこの喪失感。

 簡単に新目標なんて立てられないし。

 目標が簡単すぎると、すぐに達成してまたこの症状が起きる。

 逆に難しすぎると、達成できない絶望感から無力感に苛まれる。

 今すぐに適度な目標が浮かばない。

 

 このままずるずると燃え尽きた状態を引き摺っていると仕事に熱が入らなくなる。

 メンバーや野うさぎたちに迷惑を掛けてしまう。

 

 自己解決は難しいだろうか?

 誰かに相談すべきだろうか?

 でも、そこまで重大なことだろうか?

 忙しいメンバーへの相談は、やはり気が引ける。

 どのホロメンもよく思っていること。

 

 ……そうだ!

 こんな時は、原点を想起するんだ。

 

 自分がこの界隈に踏み込んだあの日を。

 それから、どんな経緯で、何が起こって、ここまで辿り着いたのか。

 自分を見つめ直すことも、解消のきっかけとなるから――。

 

 

 

          *****

 

 

 

 始まりは、本当に突然だった。

 人見知りであるぺこらが、静かに町中を歩いていると、突然声を掛けられた。

 驚きの余りに、挙動不審になりながらも用件を聞けば、ホロライブでアイドルをやってみないか?と言う誘いだった。

 特に何かをしていたわけでもないぺこら。

 まだどんなアイドル事務所なのかも確立していない時代での勧誘ではあったが、乗ってみることにした。

 人と話すことを不得意としながらも、面接をきちんとこなし、合格した。

 

 どうやら、ホロライブ3期生――ホロライブファンタジー、としてデビューすることになるらしい。

 同期が他に四名もいると聞いたときは、上手く付き合っていけるか不安だった。

 

 でも、初めて出会った同期はとても親切で可愛い子だった。

 

 そう、三期先行デビュー組の仲間、るしあだ。

 本人曰く、人見知りのコミュ障と言うが、ぺこら的には十分積極的な方に思えた。

 よく話しかけてくれたお陰で、不安な感情がいつも心の隅にいた。

 

 初配信、どちらが先か、と言う問題もあった。

 

 二人とも、当然トップは緊張するから、二番手がよかった。

 「どうする?」「どうする?」って何度も言い合って。

 最終的には、「ぺこらがいくよ」と、自ら進んだ。

 なんでかな?

 

 二人がデビューして約一ヶ月後にもう三人が初配信をした。

 後発の三人は、先発の二人に比べて大人の魅力?ってやつが強かった。

 年齢で言えばるしあ、フレア、ぺこらの順で高いのに……。

 でもそんなこと関係なく、皆仲良しになれた。

 他の先輩方も勿論優しいし、一緒に居て楽しいけど……3期生でよかったなって思う。

 これはきっと、各期生が自分の期について思っていること。

 

 それから、色々あった。

 

 ホロライブサマーは、自分が関与する機会は無かったけど。

 デビューから間もなく、4期生の加入。

 非常食扱いされて大変だった。

 けど、4期生加入からそのポジションは変わった。

 カートレース大会もあった。

 1st.fes 「ノンストップ・ストーリー」にも出演させてもらえた。

 そして近場で誕生日――初めてあんなに多くの人に祝ってもらえた。

 前から好きだったゲームに更にどんどんのめり込んでいった。

 そこから、あっという間に1周年で。

 5期生も入ってきて、後輩が増えちゃって。

 ホロライブ大運動会なんて、大きな行事が開かれたり。

 近々2nd.fes Beyond the stageの開催まで……。

 

 そして……今のチャンネル登録100万人に到達――。

 

 暖かい日、暑い日、涼しい日、寒い日。

 年中無休で活動していたのに、すごく幸せで居られる。

 

 やっぱり、支えてくれる仲間と野うさぎたちが居たからこそ。

 

 彼ら、彼女らがいなければ、自分はどうなっていたんだろう。

 

 あの日のスカウトが、初配信の先陣を切ったあの勇気が、側で笑い合った仲間たちが、いつも見守ってくれている野うさぎたちが、今の自分を作り上げたと言っても過言ではない。

 よく数には拘らない、って思想の人もいる。

 それはそれで素敵だけど、数はわかりやすい指標だ。

 縋って、固執することは無くても、自分を夢へ導く存在の一つとすることは悪いことでは無いと思う。

 

 100万まで届いたってことは、それだけの人に見られているって事。

 つまり、それだけ自分は世界に影響を及ぼす存在であるって事。

 そこの所を自覚していかなければ。

 

 

 そうだな……なら……。

 

 

「たくさんの人が自由に集まって、楽しめる場所にするってのはどうぺこですかと!」

 

 

 配信で、そんな目標を掲げてみた。

 『いいね』『ええやん』『ぺこらっぽい』『いいこというやん』

 なんて、色んなコメントが目についた。

 

「野うさぎのひとも、そうじゃないひとも、気楽にこのチャンネルに来て、少しでも楽しめたらいいぺこな」

 

 すこしドヤっとするが、それだけ良いことを確かに言っている。

 

 ふふふ、皆ぺこーらの言葉に沸いてるぺこな。

 そうでしょうそうでしょうと。

 あんたたちに掲げる目標としては、結構な事ではないぺこでしょうか。

 

 

 たくさんのことがあった。

 色んな事をした。

 大変な時も、楽しいときも、悲しいときも、嬉しいときも。

 どんなときも、仲間とリスナーが居てくれた。

 

 でも、人見知りには、面と向かって伝える勇気は中々わかないもの。

 だから、この感謝の気持ち、活動で返していこう。

 

 返せない程の恩は、返しても再び受けることになる永久機関。

 この新しい目標は、決して達成できない目標だけど、リスナーに返すたびに、彼らが反応をくれる。

 その喜ぶ声を聞いて、返せていることが実感できる。

 そうすれば俄然、気力が増してくる。

 この新たな目標は、兎田ぺこらを無限に強化する永久機関。

 

 恥ずかしいから、絶対誰にも言えない、彼女だけの密かな目標。

 

 そんな目標を彼女が持っているとしたら?

 

 『私たち』の『するべき事』は、永遠に決まっている。

 

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