0期生。
AZKi不在により、メンバーは4人。
そら、ロボ子、みこ、すいせい。
事務所からスタジアムまでが、最も距離がある。
その理由もあり、このメンバーが一番に現場に向かった。
しかし、重要視したのは事務所にある石の防衛。
確実にその場にある一つを守るために。
まず0期生が出て、次にゲーマーズ 、一期生、4期生、5期生の順で目的地へ向かう(実際はほぼ誤差の範囲だが)。
4期生に石を持たせ、できる限り、存在不明の敵を撹乱する。
早速作戦決行し、停止した街中を駆け抜ける。
フォーメーションは特に無し。
もし何か起きれば、その時はその時。
……のつもりでいたが。
「にぇぇ(ねぇ)、ほんとにみこたち以外にも人いると思う?」
神の遣いとして持つ力、これを持ってしても感じ取れない生命の気配。
それが妨害故のものか、本当に無人なのか。
このモヤモヤが酷く気持ち悪い。
勿論、これを陥穽と仮定して行動するのが常套であるのは言わずもがな。
しかし、本当にいる、と、いるかもしれない、では心の持ちようも在り方も必然変化する。
生物はそういうものだから。
こと人間に関しては特に。
「正直僕もこの静けさを前には同じことを感じるけど……」
ロボ子もみこと同義。
彼女もまた、ある種の直感から。
高性能とエリートの発言をどう捉えるか。
ポンの目立つ二人だが、いざと言う時頼りになるのだ。
「どちらにせよ、すいちゃんは基本事大主義で行かせてもらうから、そこんとこ宜しく」
そらと並んでロボ子とみこに挟まれて走るすいせいが割と真顔で苦笑する。
まあ、二人がシオンに貰った能力を活かせない限りは、戦力としてはまずカウントできない。
常に消極的な態度であっても、それを否定できない。
「私も自信ない……かな?」
そらも右に同じ。
因みにすいせいは本当に右隣にいる。
「…………。おっけー!」
みこが難しい顔をして、数秒後テキトーに答えた。
「事大主義。強者に付き従って自身の安全を確保する姿勢や態度のこと」
根絶丁寧な解説。
すいせいは後ろのみこによく声が届くように独り言を言った。
「知ってっし!」
みこがムッとして声を荒げた。
すいせいは「はいはい」と雑にあしらう。
更に反抗してみこが「おい星街ぃ!」とキレ始めるが、そらが苦笑いしながら「ま、まあまあ」と宥めた。
そんな所が本当にばぶちだ。
そんなばぶちでも、事大主義で、と言われるということは、頼りにされているということ。
本人は豪もそんなこと気が付いていなかったが。
「みんな体力は持ちそう?」
ロボ子が先頭で振り返ることなく尋ねた。
三人同時にうん、と答える。
活力旺盛だ。
まだまだだな。
「もう半分は行ったけど、スタジアムは山のほうにあるから、最後に坂があるの。気を付けようがないけど、覚えておいて」
と、ロボ子は息を切らすことなく続けた。
「知ってるよ。みこちの務めてる神社が近くにあるとこでしょ?」
「そうだよ!」
そらが自前の神社知識をもとに連想する。
そうやってリンクさせると、何故かみこが嬉しそうに叫んだ。
「……なんか緊迫感が薄れるね、こんないつもの雰囲気じゃ」
すいせいが眩暈がする時のように額に手を当てて一言溢した。
至極当然のように会話をしているが、現実は裏空間での国家防衛戦線だ。
誰も微塵も、そんなことを思わないことが、なによりも危機的。
弛緩した空気に流されて、不意打ちを喰らえば、即全滅だ。
どこかが崩れれば、全てが崩壊する。
「……もっと、気を引き締めないと」
全員の表情が、一変して凛々しくなる。
表面上、事大主義などと口走ったが、内心では、自力で乗り越えて行こうと僭越ながらに思っていた。
無人、無人、無人、無人、無人…………。
まるで無人の街、しかも大通りを走り抜け、辿り着いた最後の坂。
目の前に立ちはだかる傾斜は早速枝分かれしている。
右手に進めばみこの務める大神社。
左手に進めば目的のスポーツスタジアム。
既にスタジアムの石には何らかの接触があったとシオンが言っていた。
スタジアムには何者かが潜んでいるはずだ。
もっともっと、気を引き締めないと……。
「行くよ!」
ロボ子の掛け声で僅かな休憩は終了。
再び駆け出したのだが――
「なっ!」
「ちょっ、ええ!」
「ナニコレ!」
「っ!」
駆け出したと思えば身体への負荷が突如無に帰り、全身が宙へ浮いた。
四肢どころか、顔の方向を変えることすらも制限される。
完全に拘束状態。
こんなことをするのはもはや、敵以外の何者でもない。
「ほーら言っただろ、手間が増えるだけだって」
一人の男が右手の通路からてくてくと坂を下ってくる。
飄々とした態度で4人以外の誰かに話しかけている。
その相手が今度は左手の通路からつかつかと歩いてくる。
生真面目そうな身なりでしばし無言を貫くと、やがて――
「まあ、来るにしろ来ないにしろ、俺たちがここで見張ることは決まっていた。どうせなら暇つぶしになって助かる」
と、4人から目を離さずに返答した。
「裏世界に転換してもう20分は経つ。そろそろ動くと思ってたんだ。歓迎するよ、歌姫」
右手の通路の入り口に立つ男が、そらを見上げてへらっと笑う。
どうやら、歌姫と分かっている。
「しかし分からんな、わざわざメンバー全てをこちら側に閉じ込めるのは危険だ。魔法使いや鬼神もいると聞く」
なんだ?
事務的な話か?
「だーかーらー! エース曰く、歌姫である確実性に欠けるから、ってよ」
「それは知っている。が、どう考えてもロボットは対象外だろ」
ロボ子を指差して愚痴る。
え、ロボットは歌姫に……まあ、なれなさそうではあるが。
「調べによれば、到底歌姫には向かぬ者も数名いるではないか。そいつらまで引き入れた意味がわからん」
「んなこと俺に言うな……。だったらお前がエースに昇格すればいいだろ?」
「できるなら疾うに昇格している。できないからダイヤなんだ」
「まあ、俺ら同じ身分同士仲良くやってるし、いいじゃねえか」
内輪揉めでも始めたかと思えば、案外温かい様子の帰趨で愕然とする。
敵同士は仲が悪い、なんて勝手な印象が改められるやり取りだった。
いや、そんなことは到底関係のない話。
謎に愚痴りあっている隙に……。
「三人とも、能力が解けたらスタジアムに走って」
数少なく動く部位、喉を動かして小声で伝達する。
4人は宙に浮いており、高さはそこそこある。
変わらず左側の男、ダイヤと自称した男は4人を凝視しているが、細かい口の動きまでもは捕らえられない。
声も小さく、相手方には届いていない。
三人は頷くことも、目を見ることも出来なかったが、小さくうんと答えた。
「なあ、どうするよ。永遠にこのまま吊し上げとくのか?」
右手の男が退屈そうに4人を見て、ダイヤを見た。
今すぐにでも解放して、一戦交えたいようだ。
いや、そんな互角な戦いになるとも思っていないか。
ある程度の力で嬲り、弄び、揶揄い、そして最後に殲滅する。
そんな極悪な内心が退屈そうな態度と笑いから見て取れる。
改悛させてやる。
みこが無言で、凝然とさせられたまま神具を現出させた。
神具・大幣。
みこたちを束縛していると思われるダイヤの背後に大きな大きな大幣が出現。
それが回転し、ダイヤの身体を撃つ。
「そう言うとこ、やっぱ抜けてんだよ」
はずが、その大幣がダイヤに当たる直前でもう一人の男がその動きを止める。
刹那の間に大幣とダイヤの間に割って入り、片手で大幣に触れるとその威力が完全に失われる。
「……すまない。助かったよハ――」
「ハートは止めろって。俺には似合わねぇって言ってんだろ」
振り返り、ダイヤに警鐘を鳴らしたかと思えば、呼称が引っかかるという野暮な話。
「せめてラヴで頼むよ」
「……それも十分不釣り合いだがな」
二人は互いに苦笑し合う。
ダイヤは相変わらず4人と見合い、ラヴはダイヤを見る。
「トゥインクルスター!」
突然の勇ましい掛け声。
刹那、目にも止まらぬ速さでダイヤの横からそこそこ大きなサイズの星が2人纏めて吹き飛ばす。
「うがっ!」
2人がそんな呻き声を上げたかと思えば――
「ひゃぁぁ!」
「おわぁっ!」
「「やべっ!」」
4人の桎梏が剥がれ、空中へ解き放たれる。
そして始まる自由落下。
急展開に怯みつつも、しっかりと対応をとる優秀なメンバー。
みこは真下に大幣を出現させてそれに乗る。
すいせいは真下に大きな綺羅星を出現させてそれに乗る。
ロボ子は空中で見事にそらを捕まえ、そのまま直に着地。
「ロボち!」
すいせいがロボ子を呼ぶ。
ロボ子が振り向こうとすると、その前に一つの綺羅星が現れる。
直感で上に乗ると、その星が一気に目前の坂を登った。
すいせいの見える距離までだが、これで2人の男を超えた。
そのままロボ子はそらを下ろすと、2人で坂を登っていく。
「させるか!」
岩壁に衝突し、瓦礫に埋もれた2人の男が飛び出す。
瓦礫がみこに向けて飛翔し、ダイヤがそらとロボ子を能力で縛ろうとする。
「神具・注連縄。超結界」
「クリニス!」
みこが神具を活用して結界を展開。
内部にダイヤとラヴ、みことすいせいを隔離。
そして内部からも外部からも干渉できない『超結界』を展開。
これによりダイヤの能力の影響はみことすいせい以外には与えられない。
そして、みこに向かって飛翔する岩石はすいせいの生み出した複数の星で相殺される。
この隙にそらとロボ子が一気に駆け上がる。
もう山道を曲がり姿は見えない。
そして敵二人は追えない。
「ナイスみこち」
「てんきゅー星街」
予定調和も無く息が合う。
さすがは営業。
「へえ、いいじゃんいいじゃん。中々面白いじゃん!」
「……またエースにどやされる」
呼吸一つでさえ息ぴったりのmiCometに対し、相反する表情で相反する発言をするダイヤとラヴ。
「お前らが暇つぶしでいいか?」
「そもそも、そうしないと出られそうに無いがな……」
敵のやる気が僅かに向上。
ダイヤの能力は恐らくサイコキネシスだ。
しかし、ラヴは一体?
「暇じゃなくてウチら潰すきで掛かってきな」
「営業は恐ろしいで?」
大神社とスタジアムへの坂道前、第一フェーズ。
miComet対ダイヤ&ラヴ。
ダイヤ――能力・サイコキネシス。
ラヴ――能力・???。
さくらみこ――神具の本領発揮能力(非特殊能力)。
星街すいせい――能力・スター彗星。