夜の空、一つの流れ星を見た。
不思議な光だった。
その流れ星は、宇宙から飛んできたものではなかった。
その流れ星は「あそこから」飛んできて、どこかへ向かっていく。
「石持ってるからって、逃げ続けるのもな……」
夜のとある家の屋根瓦。
ぺこらは静かに呟いて空を見上げた。
その時に、流れ星を目にした。
「あっちは確か……」
ノエルに託された石は守り抜く必要がある。
あるのだが……何故だろう?
まるで呼ばれている。
これより、ホロライブの、怒涛の奇跡が始まる。
*****
miCometの状況を覚えているだろうか?
そう、そらとロボ子をスタジアムに送るため、二人の強敵を相手に、営業の力を振るっていた。
みこの神具とすいせいのスター彗星。
ダイヤのサイコキネシスとラヴの「???」。
攻防の末、4人は大神社へと行き着いた。
本当に偶然。
誰が意図したわけでもなく。
「ここは……」
みこが鳥居をチラッと見上げた。
見慣れた景色に囲まれるが、見慣れていないし、見慣れたくもない存在が二つある。
「……へぇ、でっけえ神社だな」
「綺麗な造りだ」
ラヴの感嘆とダイヤの賞賛。
「そりゃどうも」
みこは苦笑で誤魔化した。
「あんたの神社? へぇ、洒落たモン持ってんじゃん」
「いや、洒落てはいないだろう? これは寧ろ質素に近い」
「洒落てはないけど、賽銭箱にゴミを入れると騒ぎ立てるみこがいるよ」
「おい、そんなことすんな! それにここはみこの神社じゃねぇ!」
すいせいの冗談にみこがぷんすかと怒る。
そして、重要な反論もしておく。
巫女とは、その神社で世話になっているだけで、別にそこに住んでいたりはしない。
当然、所有権もない。
神社は神のものであり、公共施設として良識ある皆のものである。
なので、賽銭箱にゴミを投げ入れる事はやめましょう(土や木の棒など)。
エリトラ入れると喜ぶかも?
「へぇ、そりゃあ見てみたかったな」
「いや、それはモラルやマナーの問題でアウトだろ」
なるほど、ラヴの狂言をダイヤが抑えている、と言ったところか。
しかし、こんな事をしておいて、ダイヤがモラルやマナーを語る事は間違っているのでは?
「それより……いいの? 私たちに構ってて」
すいせいが、ふとそんな挑発じみた言葉をかける。
「成果なしにAの元へ行けば、余計にどやされるから」
素直な回答をされた。
つまらない。
「コンジャンクション」
すいせいが互いの視界を遮るように星を一直線に並べた。
これはサイコキネシス対策。
サイコキネシスの最低発動条件は、「視認する事」である。
究極、ダイヤの両目を潰せば、もう戦力にならないだろう。
「意味ねぇよ」
ラヴの声と共に、幾つか並べた星の内の一つが吹き飛ぶ。
刹那、全ての星が無差別に弾けた。
「うおっ、なんじゃこりゃ!」
ラヴが弾けて暴れ回る星たちを見回し、目を見開く。
「何故そう容易く触れようとするんだ、お前は」
ダイヤが呆れたように呟き、全ての星を視界に捕らえるとその動きを止めた。
そして、その全てがみこ目掛けて押し寄せる。
それに対し、みこは一切の防衛手段を取らない。
いや、寧ろダイヤ本体を狙いにいく。
天から、ダイヤの脳天を目標としてやや大きな大幣が落下してくる。
動じないみこに命中すると思われた星々は、約ゼロ距離で消滅した。
すいせいが現出した星だ、本人に消滅させる力があっても不思議はない。
動かぬダイヤの脳天をかち割ると思われた大幣は、約ゼロ距離で跳ね返された。
ラヴがダイヤの頭上に手を翳し、片手で軽々と押し返したのだ。
類似した構図で、相対する。
「星街!」
「くっ!」
すいせいの身体が宙へ浮く。
みこの警告は、何の意味もなせない。
みこもすいせいも、ダイヤに姿を見せた瞬間、死へと近づく。
「このっ!」
みこが大幣を飛ばす。
ダイヤとすいせいとの間に割り込ませ、能力を阻害するために。
「邪魔すんなって」
が、ラヴにより妨害を阻まれる。
大幣を片手で受け止めて、分断を防いだ。
しかも、その大幣を跳ね返し、勢いよくみこに返品した。
「みこち!」
すいせいが叫ぶ。
同時に新たな星がすいせいの真横に出現し、ダイヤの能力が切れた。
そして、落下しそうなすいせいの足下にも。
なんだ、案外自己解決できるじゃないか。
「制限ないのか、あいつの星には」
次々と自由に現れる星々にダイヤが呆れる。
すいせいは星に乗り、辺りを旋回したり飛び回るのだが、付属品として星が纏わり付いており、ダイヤが本人を視認できない。
「なさそうだな」
ラヴも同じ見解。
「おいダイヤ、本人に念力を使うのは諦めようぜ」
「そうだな」
もはや、本人を直接狙う事は無駄だと悟ったよう。
そして、ダイヤの目がまた光る。
その目が捕らえたのは、みこの側にある大きな岩。
瞬く間に浮遊し、真横のみこへの直撃を狙う。
「結界!」
みこの周囲を怪しい輝きが覆う。
結界が形成され、岩石と衝突。
激しく火花が散っているような錯覚さえ生まれる。
熾烈な争いが目元に浮かんだ気がした。
「ティンクルダスト」
すいせいが星に乗ったまま、幾つものスターダストを放出。
その矛先はみこの結界に迫るラヴ。
あいつは、みこの結界を簡単に破ってくる脅威だ。
坂道にいた時も、あいつが触れて数秒後、超結界が崩壊した。
とにかくラヴは、物に触れさせてはいけない。
推測だが、あいつは接触により能力発動を起こすから。
すいせいが星に乗り、ラヴに迫りながら、自分の運動方向と平行にスターダストを幾度も放つ。
が、どれもラヴに傷を与えることすらできなかった。
ラヴに触れた星屑は全て、跳ね返ってくるのだ。
それでも、足止めにはなってよかった。
お陰で、みこの結界と岩石の衝突の決着がついた。
岩石の粉砕によって。
「なるほどな、分かったぞ、お前の限界が」
みこの側に降り立ったすいせいを指して、ラヴが笑った。
自分の慧眼さに酔っているようにも見えた。
「へえ、聞いてあげるよ」
「星の現出数に制限は無いが、星を動かせるのは一方向のベクトル方面だけだろ?」
「……???」
みこが頭に幾つもの疑問符を浮かべていた。
「さっき大量の星が多方面に弾けたけど、それはどう説明するの?」
「簡単だ、俺が触ったことにより引力が暴走したんだろ? 星とはつまり天体。星一つ一つは重力という引力を持っているからな」
「つまり、私の能力支配じゃなく、勝手な星の暴走ってこと?」
「そうだろ?」
「ふーん……ま、正解」
予想以上にラヴの化学脳は発達しているようだ。
一方、ダイヤとみこは、全くと言っていいほど理解できていなかったが。
しかし、ネタバレしたのなら余り下手に動けない。
なんせ、すいせいの能力がバレても、ラヴの能力が未だ不鮮明なのだから。
「じゃあ、ようやく種明かしも済んだわけだし、そろそろ遊びは終わるか?」
ラヴがそばの岩に触れた。
刹那、岩が砕け、幾つかのパーツに分かれる。
ダイヤも足元に散らばる木の枝や、大きい石を浮かせる。
現在、ラヴとダイヤに、みことすいせいは挟まれている。
そして、次の瞬間、両方向から様々な凶器が降り注ぐ。
その勢力に呑まれそうになった。
「ティンクルダスト!」
「神器・八咫鏡!」
すいせいが星屑で凶器を相殺。
みこが八咫鏡で凶器の攻撃力を無に帰す。
だが、延々と止まない攻撃で、身動きが取れない。
背中をビジネスの仲間に預けて、ただひたすら攻撃が止むのを待つ。
巫女服がはたはたと揺らめき、すいせいの星型の瞳が白く輝く。
二人の表情は同様に苦悶だ。
「みこち、やばいよ!」
「分かってる、けど!」
防衛に徹しても突破できない。
攻めの姿勢を見せなくては、きっと勝てない。
間違いなく、能力適性は相手の方が上手なのだから。
「何とかできない⁉︎」
「できたらやってるよ!」
既に手いっぱい。
やはり強敵すぎる。
神の遣いが、人間にこうも押されるなんて……。
「……みこち、作戦がある!」
「なに⁉︎」
「あの二人を引き剥がす」
「そんなの無理だよ!」
そんなことができれば苦労しない。
「2対2だと連携力で負けるけど、1対1ずつなら、何とかなるかもしれない」
「そうかもだけど! どうやって!」
「ならみこち……」
この場凌ぎの方法を伝授した。
ビジネスは、そろそろ限界だ。
間もなく定時、解散の時。
凶器の雨の猛攻は止まない。
こんな天気予報、なかったのに。
「みこち!」
「死んでもしらにぇーから!」
二人が急遽、作戦を変更。
八咫鏡も星屑も消滅し、全ての攻撃が二人に直撃する。
重たい雨に、大量の土煙が舞いがった。
「……潔すぎやしねぇか?」
「妙だな……」
土煙で暗幕に包まれるが、ラヴもダイヤも警戒心を強める。
突然の方針変換は不自然極まりない。
まさか、容易く死んだとは思えない。
「タキオン!」
土煙から光速を超える速度で飛び出す何かがあった。
それはダイヤの下へ直行し、姿を現す。
すいせいだ。
「アルコバレーノ」
そのまますいせいは星に乗り、目の前に出現させた幾重もの星でダイヤを空へ掻っ攫う。
能力対策だ。
「ダイヤ!」
「超結界!」
遥かへと離れゆく二人をラヴが追い始めるが、それを阻止するバリアのようなフィールドが展開。
「チッ、やっぱ策有りだったか」
「……神具・人形、だにぇ」
大量に穴の空いた2枚の小さな白い依代が粉となって、光となって、散りゆく。
「みこち、生きろよ!」
「おめぇもな、星街!」
遥か彼方へと姿を消してゆく星。
ダイヤもすいせいも、戻ってきそうにない。
「あいつ、抜けようと思えば抜けれるくせに……」
ラヴは、相方の意図を悟ったようで、やれやれとため息をつく。
どうやら、敵側もわざと流されているようだ。
みこは背後に結界を感じ、強い眼差しを脅威に突き刺した。
「で? この盤面で俺に勝てるとでも?」
「……さあ」
みこがこの盤面を作ったのは、すいせいの要望があったから。
相棒が、それなら勝てると、豪語したから。
言えば、みこはタイマンでコイツに勝てる自信など、零。
「へぇ、仲間に絶大な信頼があるんだな、いいチームなこった」
「そりゃどうも」
「だが俺の仲間はそんなに弱くはないぜ? ちょっと抜けてるがな」
「しらにぇーよ」
信頼度では負けない。
ビジネスは、信頼関係なしには成り立たない。
パートナーを信頼できないと、営業なんて到底できない。
ここが正念場。
せめて、すいせいが勝利してここに戻るまで……。
二人で相手すれば、さすがに敵うはずだから……。
「神器・天叢雲剣」
巫女服を靡かせながら、一つの刀を現出する。
みこも、初めて現出した。
「予想はしてたが……似合わねぇな」
巫女剣士、なんて、まずいない。
「おりゃあ!」
「おいおい!」
「とぉりゃ!」
「マジかよ」
「やっ! とりゃっ! おりゃあぁっ! てあっ!」
ど直球で脳筋。
誰が見ても分かる、不慣れ感。
まるで初めて触れたよう。
「まるで話にならんぞ」
最低限の動作で回避、呆れを通り越して笑えるような粗々しさ。
ラヴの安定さに比べ、みこは何故か息切れしている。
「はぁ……はぁ……」
ラヴの奥に見える鳥居が、とても大きい。
無駄な体力消耗だった。
やっぱり、使い慣れないものは使うべきでない。
ちょっと、黒の剣士とか閃光とかに憧れたからって、良くない。
「……?」
なんだ……?
「驚きの余り反撃も忘れてた!」
ラヴが額に手を当て、小馬鹿にする。
忘れていたのは事実だが。
あれって……。
何かが見える。
あれは……。
「アレなんだ?」
みこは、ラヴの遥か後ろを指差した。
誘導するように。
「乗らねえよ!」
「神具・大幣!」
全く見向きもせず、突撃してくる。
それを見てみこは大幣を大きくして現出、向かいくる敵にぶつける。
そのサイズから、回避を諦め、ラヴは片手で受け止める方法を選択。
見事に受け止める。
「かかった!」
「あ?」
受け止めた阿呆を見て、みこが笑う。
その笑みは、どこか視点がズレていて……。
何だか、少し嬉しそうで……。
微かに安心感が溢れていて……。
「何を……グハッッ‼︎」
何かが、ラヴを後方から強力な一撃で撃ち抜いた。
その何かは、遥か遠くの空から、飛んできた。
そう、まるで月から舞い降りた……兎のよう。
「月下のすーぱーぺこちゃんキック」
悪友との戦いは終わり、戦友との戦いが幕を開ける。
作者です。
最近投稿ペース遅くて申し訳ないです。
多分気にしてないと思いますが。
私が気にしているので。
さて、miCometもこれにておしまい……?
どうやらぺこみこが始まるようですね。
そして、すいちゃんはどこまで飛んだのでしょうか?
今回、小ネタとして、すいちゃんの技名は殆ど「ぷよ」か「テト」の連鎖ボイスから貰ってます。
怒られないかな……。
と、言いつつも、次回はもっと怒られそうなネタ仕込みです。
では。