歌姫伝承〜ホロの異能大戦ストーリー〜   作:炎駒枸

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49話 定時

 

 夜の空、一つの流れ星を見た。

 不思議な光だった。

 その流れ星は、宇宙から飛んできたものではなかった。

 その流れ星は「あそこから」飛んできて、どこかへ向かっていく。

 

「石持ってるからって、逃げ続けるのもな……」

 

 夜のとある家の屋根瓦。

 ぺこらは静かに呟いて空を見上げた。

 その時に、流れ星を目にした。

 

「あっちは確か……」

 

 ノエルに託された石は守り抜く必要がある。

 あるのだが……何故だろう?

 まるで呼ばれている。

 

 

 これより、ホロライブの、怒涛の奇跡が始まる。

 

 

 

          *****

 

 

 

 miCometの状況を覚えているだろうか?

 そう、そらとロボ子をスタジアムに送るため、二人の強敵を相手に、営業の力を振るっていた。

 

 みこの神具とすいせいのスター彗星。

 

 ダイヤのサイコキネシスとラヴの「???」。

 

 攻防の末、4人は大神社へと行き着いた。

 本当に偶然。

 誰が意図したわけでもなく。

 

「ここは……」

 

 みこが鳥居をチラッと見上げた。

 見慣れた景色に囲まれるが、見慣れていないし、見慣れたくもない存在が二つある。

 

「……へぇ、でっけえ神社だな」

「綺麗な造りだ」

 

 ラヴの感嘆とダイヤの賞賛。

 

「そりゃどうも」

 

 みこは苦笑で誤魔化した。

 

「あんたの神社? へぇ、洒落たモン持ってんじゃん」

「いや、洒落てはいないだろう? これは寧ろ質素に近い」

 

「洒落てはないけど、賽銭箱にゴミを入れると騒ぎ立てるみこがいるよ」

「おい、そんなことすんな! それにここはみこの神社じゃねぇ!」

 

 すいせいの冗談にみこがぷんすかと怒る。

 そして、重要な反論もしておく。

 巫女とは、その神社で世話になっているだけで、別にそこに住んでいたりはしない。

 当然、所有権もない。

 神社は神のものであり、公共施設として良識ある皆のものである。

 なので、賽銭箱にゴミを投げ入れる事はやめましょう(土や木の棒など)。

 エリトラ入れると喜ぶかも?

 

「へぇ、そりゃあ見てみたかったな」

「いや、それはモラルやマナーの問題でアウトだろ」

 

 なるほど、ラヴの狂言をダイヤが抑えている、と言ったところか。

 しかし、こんな事をしておいて、ダイヤがモラルやマナーを語る事は間違っているのでは?

 

「それより……いいの? 私たちに構ってて」

 

 すいせいが、ふとそんな挑発じみた言葉をかける。

 

「成果なしにAの元へ行けば、余計にどやされるから」

 

 素直な回答をされた。

 つまらない。

 

「コンジャンクション」

 

 すいせいが互いの視界を遮るように星を一直線に並べた。

 これはサイコキネシス対策。

 サイコキネシスの最低発動条件は、「視認する事」である。

 究極、ダイヤの両目を潰せば、もう戦力にならないだろう。

 

「意味ねぇよ」

 

 ラヴの声と共に、幾つか並べた星の内の一つが吹き飛ぶ。

 刹那、全ての星が無差別に弾けた。

 

「うおっ、なんじゃこりゃ!」

 

 ラヴが弾けて暴れ回る星たちを見回し、目を見開く。

 

「何故そう容易く触れようとするんだ、お前は」

 

 ダイヤが呆れたように呟き、全ての星を視界に捕らえるとその動きを止めた。

 そして、その全てがみこ目掛けて押し寄せる。

 それに対し、みこは一切の防衛手段を取らない。

 いや、寧ろダイヤ本体を狙いにいく。

 

 天から、ダイヤの脳天を目標としてやや大きな大幣が落下してくる。

 

 動じないみこに命中すると思われた星々は、約ゼロ距離で消滅した。

 すいせいが現出した星だ、本人に消滅させる力があっても不思議はない。

 

 動かぬダイヤの脳天をかち割ると思われた大幣は、約ゼロ距離で跳ね返された。

 ラヴがダイヤの頭上に手を翳し、片手で軽々と押し返したのだ。

 

 類似した構図で、相対する。

 

「星街!」

「くっ!」

 

 すいせいの身体が宙へ浮く。

 みこの警告は、何の意味もなせない。

 みこもすいせいも、ダイヤに姿を見せた瞬間、死へと近づく。

 

「このっ!」

 

 みこが大幣を飛ばす。

 ダイヤとすいせいとの間に割り込ませ、能力を阻害するために。

 

「邪魔すんなって」

 

 が、ラヴにより妨害を阻まれる。

 大幣を片手で受け止めて、分断を防いだ。

 しかも、その大幣を跳ね返し、勢いよくみこに返品した。

 

「みこち!」

 

 すいせいが叫ぶ。

 同時に新たな星がすいせいの真横に出現し、ダイヤの能力が切れた。

 そして、落下しそうなすいせいの足下にも。

 

 なんだ、案外自己解決できるじゃないか。

 

「制限ないのか、あいつの星には」

 

 次々と自由に現れる星々にダイヤが呆れる。

 すいせいは星に乗り、辺りを旋回したり飛び回るのだが、付属品として星が纏わり付いており、ダイヤが本人を視認できない。

 

「なさそうだな」

 

 ラヴも同じ見解。

 

「おいダイヤ、本人に念力を使うのは諦めようぜ」

「そうだな」

 

 もはや、本人を直接狙う事は無駄だと悟ったよう。

 

 そして、ダイヤの目がまた光る。

 その目が捕らえたのは、みこの側にある大きな岩。

 瞬く間に浮遊し、真横のみこへの直撃を狙う。

 

「結界!」

 

 みこの周囲を怪しい輝きが覆う。

 結界が形成され、岩石と衝突。

 激しく火花が散っているような錯覚さえ生まれる。

 熾烈な争いが目元に浮かんだ気がした。

 

「ティンクルダスト」

 

 すいせいが星に乗ったまま、幾つものスターダストを放出。

 その矛先はみこの結界に迫るラヴ。

 あいつは、みこの結界を簡単に破ってくる脅威だ。

 坂道にいた時も、あいつが触れて数秒後、超結界が崩壊した。

 とにかくラヴは、物に触れさせてはいけない。

 推測だが、あいつは接触により能力発動を起こすから。

 

 すいせいが星に乗り、ラヴに迫りながら、自分の運動方向と平行にスターダストを幾度も放つ。

 が、どれもラヴに傷を与えることすらできなかった。

 ラヴに触れた星屑は全て、跳ね返ってくるのだ。

 

 それでも、足止めにはなってよかった。

 お陰で、みこの結界と岩石の衝突の決着がついた。

 岩石の粉砕によって。

 

「なるほどな、分かったぞ、お前の限界が」

 

 みこの側に降り立ったすいせいを指して、ラヴが笑った。

 自分の慧眼さに酔っているようにも見えた。

 

「へえ、聞いてあげるよ」

「星の現出数に制限は無いが、星を動かせるのは一方向のベクトル方面だけだろ?」

「……???」

 

 みこが頭に幾つもの疑問符を浮かべていた。

 

「さっき大量の星が多方面に弾けたけど、それはどう説明するの?」

「簡単だ、俺が触ったことにより引力が暴走したんだろ? 星とはつまり天体。星一つ一つは重力という引力を持っているからな」

「つまり、私の能力支配じゃなく、勝手な星の暴走ってこと?」

「そうだろ?」

「ふーん……ま、正解」

 

 予想以上にラヴの化学脳は発達しているようだ。

 一方、ダイヤとみこは、全くと言っていいほど理解できていなかったが。

 

 しかし、ネタバレしたのなら余り下手に動けない。

 なんせ、すいせいの能力がバレても、ラヴの能力が未だ不鮮明なのだから。

 

「じゃあ、ようやく種明かしも済んだわけだし、そろそろ遊びは終わるか?」

 

 ラヴがそばの岩に触れた。

 刹那、岩が砕け、幾つかのパーツに分かれる。

 

 ダイヤも足元に散らばる木の枝や、大きい石を浮かせる。

 

 現在、ラヴとダイヤに、みことすいせいは挟まれている。

 そして、次の瞬間、両方向から様々な凶器が降り注ぐ。

 その勢力に呑まれそうになった。

 

「ティンクルダスト!」

「神器・八咫鏡!」

 

 すいせいが星屑で凶器を相殺。

 みこが八咫鏡で凶器の攻撃力を無に帰す。

 

 だが、延々と止まない攻撃で、身動きが取れない。

 背中をビジネスの仲間に預けて、ただひたすら攻撃が止むのを待つ。

 巫女服がはたはたと揺らめき、すいせいの星型の瞳が白く輝く。

 二人の表情は同様に苦悶だ。

 

「みこち、やばいよ!」

「分かってる、けど!」

 

 防衛に徹しても突破できない。

 攻めの姿勢を見せなくては、きっと勝てない。

 間違いなく、能力適性は相手の方が上手なのだから。

 

「何とかできない⁉︎」

「できたらやってるよ!」

 

 既に手いっぱい。

 やはり強敵すぎる。

 神の遣いが、人間にこうも押されるなんて……。

 

「……みこち、作戦がある!」

「なに⁉︎」

「あの二人を引き剥がす」

「そんなの無理だよ!」

 

 そんなことができれば苦労しない。

 

「2対2だと連携力で負けるけど、1対1ずつなら、何とかなるかもしれない」

「そうかもだけど! どうやって!」

「ならみこち……」

 

 この場凌ぎの方法を伝授した。

 ビジネスは、そろそろ限界だ。

 間もなく定時、解散の時。

 

 凶器の雨の猛攻は止まない。

 こんな天気予報、なかったのに。

 

「みこち!」

「死んでもしらにぇーから!」

 

 二人が急遽、作戦を変更。

 八咫鏡も星屑も消滅し、全ての攻撃が二人に直撃する。

 重たい雨に、大量の土煙が舞いがった。

 

「……潔すぎやしねぇか?」

「妙だな……」

 

 土煙で暗幕に包まれるが、ラヴもダイヤも警戒心を強める。

 突然の方針変換は不自然極まりない。

 まさか、容易く死んだとは思えない。

 

「タキオン!」

 

 土煙から光速を超える速度で飛び出す何かがあった。

 それはダイヤの下へ直行し、姿を現す。

 すいせいだ。

 

「アルコバレーノ」

 

 そのまますいせいは星に乗り、目の前に出現させた幾重もの星でダイヤを空へ掻っ攫う。

 能力対策だ。

 

「ダイヤ!」

「超結界!」

 

 遥かへと離れゆく二人をラヴが追い始めるが、それを阻止するバリアのようなフィールドが展開。

 

「チッ、やっぱ策有りだったか」

「……神具・人形、だにぇ」

 

 大量に穴の空いた2枚の小さな白い依代が粉となって、光となって、散りゆく。

 

「みこち、生きろよ!」

「おめぇもな、星街!」

 

 遥か彼方へと姿を消してゆく星。

 ダイヤもすいせいも、戻ってきそうにない。

 

「あいつ、抜けようと思えば抜けれるくせに……」

 

 ラヴは、相方の意図を悟ったようで、やれやれとため息をつく。

 どうやら、敵側もわざと流されているようだ。

 みこは背後に結界を感じ、強い眼差しを脅威に突き刺した。

 

「で? この盤面で俺に勝てるとでも?」

「……さあ」

 

 みこがこの盤面を作ったのは、すいせいの要望があったから。

 相棒が、それなら勝てると、豪語したから。

 言えば、みこはタイマンでコイツに勝てる自信など、零。

 

「へぇ、仲間に絶大な信頼があるんだな、いいチームなこった」

「そりゃどうも」

「だが俺の仲間はそんなに弱くはないぜ? ちょっと抜けてるがな」

「しらにぇーよ」

 

 信頼度では負けない。

 ビジネスは、信頼関係なしには成り立たない。

 パートナーを信頼できないと、営業なんて到底できない。

 

 ここが正念場。

 せめて、すいせいが勝利してここに戻るまで……。

 二人で相手すれば、さすがに敵うはずだから……。

 

「神器・天叢雲剣」

 

 巫女服を靡かせながら、一つの刀を現出する。

 みこも、初めて現出した。

 

「予想はしてたが……似合わねぇな」

 

 巫女剣士、なんて、まずいない。

 

「おりゃあ!」

「おいおい!」

「とぉりゃ!」

「マジかよ」

「やっ! とりゃっ! おりゃあぁっ! てあっ!」

 

 ど直球で脳筋。

 誰が見ても分かる、不慣れ感。

 まるで初めて触れたよう。

 

「まるで話にならんぞ」

 

 最低限の動作で回避、呆れを通り越して笑えるような粗々しさ。

 ラヴの安定さに比べ、みこは何故か息切れしている。

 

「はぁ……はぁ……」

 

 ラヴの奥に見える鳥居が、とても大きい。

 無駄な体力消耗だった。

 やっぱり、使い慣れないものは使うべきでない。

 ちょっと、黒の剣士とか閃光とかに憧れたからって、良くない。

 

「……?」

 

 なんだ……?

 

「驚きの余り反撃も忘れてた!」

 

 ラヴが額に手を当て、小馬鹿にする。

 忘れていたのは事実だが。

 

 あれって……。

 

 何かが見える。

 あれは……。

 

「アレなんだ?」

 

 みこは、ラヴの遥か後ろを指差した。

 誘導するように。

 

「乗らねえよ!」

「神具・大幣!」

 

 全く見向きもせず、突撃してくる。

 それを見てみこは大幣を大きくして現出、向かいくる敵にぶつける。

 そのサイズから、回避を諦め、ラヴは片手で受け止める方法を選択。

 見事に受け止める。

 

「かかった!」

「あ?」

 

 受け止めた阿呆を見て、みこが笑う。

 その笑みは、どこか視点がズレていて……。

 何だか、少し嬉しそうで……。

 微かに安心感が溢れていて……。

 

「何を……グハッッ‼︎」

 

 何かが、ラヴを後方から強力な一撃で撃ち抜いた。

 その何かは、遥か遠くの空から、飛んできた。

 そう、まるで月から舞い降りた……兎のよう。

 

「月下のすーぱーぺこちゃんキック」

 

 悪友との戦いは終わり、戦友との戦いが幕を開ける。

 

 




 作者です。
 最近投稿ペース遅くて申し訳ないです。
 多分気にしてないと思いますが。
 私が気にしているので。

 さて、miCometもこれにておしまい……?
 どうやらぺこみこが始まるようですね。
 そして、すいちゃんはどこまで飛んだのでしょうか?

 今回、小ネタとして、すいちゃんの技名は殆ど「ぷよ」か「テト」の連鎖ボイスから貰ってます。
 怒られないかな……。

 と、言いつつも、次回はもっと怒られそうなネタ仕込みです。
 では。
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