「ロボ子さんは、社長のスカウトで入社したアイドルで、ポンコツロボットだそうですよ」
「ボクは高性能です!」
登場早々、えーちゃんの手厳しい評価に鋭く反論するロボ子。
「えっ、えっ、ってことは、最初の仲間ってこと?」
「そう、だからそらはちょっとだけだけど先輩としてよろしくね」
そんなやり取りには目もくれず、そらはただ仲間ができたことに歓喜する。
早速そらはロボ子に接近した。
「私、ときのそらっていいます。ロボットって事は、腕とか取れたりするんですか?」
「勿論、高性能だからね」
そらの輝く目に嬉しそうに応じて右腕を回す。
すると、それらしい機械音を立てて腕が外れる。
取れた部分の接合部から、それが本当に機械である事は一目瞭然だった。
機械人間なら腕が取れることなんて当然だが、それを高性能と自称するあたり、あまり高性能とは思えないが、そんな事はどうでも良かった。
「じゃあ、そのメガネには何か機能があるんですか?」
「ないよ」
「へえー、高性能なのに目が悪いんですね」
そらが意図せずにロボ子を挑発していた。
それを意識的な発言と捉えたロボ子は、対抗するように、
「ボクのこれは伊達メガネだから」
とそのメガネを下ろした。
意図しない安い挑発に乗ってくるあたりも含め、やはり高性能とは思えない。
ポンコツとは断定できないが、高性能は誇張表現だと思う。
「一応まだ打ち合わせだから、そらもポンコツさんも座ってくれる?」
「はい」
「ロボ子です!」
えーちゃんの指示にそらはいつも通りに、ロボ子は少し頬を膨らませて答えると席に着く。
ロボ子はメガネをかけ直しその位置を丁寧に整えると未だに膨れたままえーちゃんの方を向く。
「えー、今日からロボ子さんがメンバーとして加わったわけですが、現在ホロライブではオーディションの方も進んでいます」
「「オーディション‼︎」」
「はい、何名を受け入れるかは未定ですが、その中から数名が更にメンバーに加わると思って結構です」
これから後輩が増えると言う通達にそらもロボ子もテンションが上がる。
声を出しきれないような表情で目を光らせてえーちゃんを見つめる。
「そして、今回のライブはそらの単独ライブですが、それぞれのメンバーの単独ライブに加え、コラボライブ等も検討しています」
「ーー!」
もはや本当に声も出ない。
そらはコラボと言う言葉の響きに絶句している。
ロボ子は単独ライブもまだ決まっていない上に、配信すら一度もしていないのであまり実感が湧いていない様子。
まあ、そこは日を重ねるにつれて現実味を増してくるだろう。
「恐らく、そらの初ライブよりも前にオーディション結果も新メンバーも入ってくるだろうから、それだけは知っておいて」
最後にえーちゃんは何かを忠告するようにそらに向かって言った。
きっとライブ前日にはしゃぐな、と言う意味だろう。
「それじゃあ今日は解散、各自仕事や練習に行って」
「「はい」」
*****
とある闇の世界。
魔界とは違う、闇の中の闇。
決して別世界ではないが、そこはまさしく闇と呼べるに相応しい。
「おい、何をやっている。早く行ってこい」
複数の男女で構成された、組織のような何か。
その蠢く何かの、誰かが怒っている。
「例の魔導書と四石を探してこい」
周囲の仲間に命令するが、まともに従おうとするものは少ない。
「いやいや、探しにいって簡単に見つかるもんじゃないっしょ、それ?」
「そうじゃぞ、そもそもワシらは何の手がかりも持っておらん、探そうにもあの土地を巡れば人目につく。それは危険じゃとお主も分かっておるじゃろ」
「そうねぇ、だから他人に行かせてぇ、自分は逃げるのねぇ」
寧ろ、反発する声が多い。
「手掛かりならある」
「……ほう?」
「文献を漁ったところ、過去に一度四石の一つが盗まれる事件があった」
「それでぇ?」
「その時、石が隠されていた場所は南門側にあった元世界一のテーマパークの地下」
「ああ、昔潰れた場所だな?」
「そうだ、そして盗まれた石は返還された後、その付近にまた戻されたらしい」
「…………なるほど、たしかにそれなら探せるのう。じゃが何故そんな大事を今まで見逃しておったんじゃ?」
「知るか、俺の知ったこっちゃねぇよ」
「……でもだとしたら、何となぁく全ての石の在処はある程度範囲を絞れるわねぇ」
「まあ言いたい事は分かるな、んじゃもう面倒だし、一人一箇所行ってくりゃいんじゃね?」
「そうじゃのう」
闇に蠢く四人がその地を離れ、遠く離れた一つの国を目指した。
彼ら彼女らの、私利私欲のために。