歌姫伝承〜ホロの異能大戦ストーリー〜   作:炎駒枸

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63話 飛龍鋤雲

 

 だって、僕は星だから〜。

 

 ステラ〜、ステラ〜。

 

 

          *****

 

 

 ここは、町外れにある小さな丘。

 本当に小さ過ぎる丘。

 気も何もない丘で、周囲に建物もないので、表世界であろうとも人は滅多に近寄らない。

 その丘で、かなココは、重力師……その名もジョーカーCと対峙する。

 

 経緯を話せば長くなるが、まあ、互いの名誉と親友のためだ。

 

 当初は重力に力業で対抗できるココのみが残る予定だったが、かなたが残って果たしてお荷物にならずに済むのか。

 

 そんな心配は意外も意外、超御無用。

 

 かなたにも、特別な力はあるから。

 

「変わっているな、お前らは、多方面から見て」

 

 Cが浮遊しながら2人を睥睨していう。

 かなたもココも空は飛べるが、眉を顰めながらそれを見上げた。

 

「現世で分類される種族は、人、獣人、超獣人、妖怪族、魚人族、エルフ族の系6種族」

 

 人種についての解説を丁寧に始める。

 言わずもがなだが、何か、役立つ情報が拾えるかも知れない。

 有り難く黙って聞こう。

 

「天界で分類される種族は、天使、巫、天神の系3種族。魔界で分類される種族は、悪魔、鬼、魔神、アンデッドの系4種族」

 

 こうして全ての種別名を挙げる。

 何のつもりか。

 

「今のお前たちの中には、その全13種族の内、10種族がいる。しかも関係は極めて良好」

「なんなら、含まれない3つの新種族もいるけどね」

 

 かなたはロボ子やアキロゼ、ねねを浮かべて軽く笑った。

 

「なら16分の13だ。そして、世界の創りを見て分かるように各種族は、それぞれ済む土地が異なり、幅広く分布する種族は人や獣人など極一部の種族」

「よく調べてんなオメェは。情報戦ってか?」

 

 ココは自分のことや仲間のことをまるでリスナーのように知っているCに僅かな嫌悪感を覚えて、皮肉混じりに吐いた。

 

「探れば手に入る敵の情報を、何故事前に取得しない?」

 

 まあ、尤もな意見だが、なら、相手にない知識を今ここで語る意味は?

 若干矛盾しているような気もするが……スルーしておこう。

 

「まあいい、そんなことより、問題は種族の多さと特殊な力の多さだ」

「……」

 

 かなたもココも、ため息を吐きかけて、顔を見合わせた。

 

「世界に約100人しかいない内の、評価第10位の魔術師。巫女の一割が持つ神具の本領発揮。悪魔と天使の3%が持つ加護。真の鬼神だけが使える鬼神の覇気。動物の長の証。一年に2人ほど転移する異世界人」

 

 ホロメンの誰かしらが扱える、希少な力を列挙してその異様性を説く。

 が、一つだけ上がっていない、重要な力がない。

 

「そもそもお前たち2人がこの国にいること自体、不自然極まりないことだ」

 

 かなたとココの存在を例に挙げて、更に異様性を説く。

 その不自然さは2人がよく分かっているはずだ。

 

「何故ここまで、世界のあらゆる「種族」が集うのか。何故ここまで、「力」を持つものが集うのか……なんて疑問を抱き、そして読み解いた」

 

 先程の列に足りなかった力。

 それがこの集合の正体だ。

 

「歌姫は、人を集める」

 

 辿り着いた結果、それをハッキリと口にした。

 なるほど、そうして、彼らはホロメンの中に「歌姫」が潜んでいると推察したわけだ。

 

「どうかな? 人がいっぱいいる所は他にも沢山あるよ」

 

 かなたはより多くの人が集まる場所を沢山知っている。

 

「歌姫が人を集める、と言われる所以を知らないのか?」

「所以だと?」

 

 それは、人が常に周りにいるからではないのか?

 

「西暦以前に存在した歌姫。世界初の歌姫である、始祖の歌姫。その力は不明だが、その歌姫が全種族を従えて世界を救ったからだ」

 

 かなたとココはまた、顔を見合わせた。

 

「後にも先にも、全種族を集めた存在はその歌姫だけ。それが謂れの所以だ」

 

 それが根拠なら、多種族が集い、その仲も比較的良好なホロライブが臭うのも頷ける。

 

「もし、オメェの言ってることが真実なら、私たちが勝っちまうなぁ? かなたそ?」

「そうだね」

 

 現在の状況、規模こそまだ国の規模だが危機であり、仮説歌姫が存在するグループが敵を返り撃つ。

 その構図が正しく、文献一つ残らない伝承の事実に準えてある。

 過去に歌姫が世界を救ったなら、ここで国を救うのはホロメン、と言うことになる。

 

「ふっ、面白い冗談だ。俺たちの望む世界が未来の正しい世界だとしたら、それは俺たちの勝利こそ世界を救うことだ。善悪の反転だ」

「じゃあ、僕たちが勝ったら?」

「まあ、その時はその時だ。どちらにせよ俺の裁量で決めれる事ではない」

 

 未来は行ってみなければ分からない。

 未来予測なんて、まずできないし、未来視なんて力はない。

 いれば是非とも力になってもらいたいものだ。

 

「まあ、ここまで踏まえて一応聞こう」

 

 何故か、Cは地表に降り立った。

 ココと同じ程度の身長。

 2人は睨み合う。

 

「誰が歌姫だ?」

 

 石の奪取失敗を歌姫情報の取得で補うつもりか。

 どうせ言っても信じまい。

 そもそも、まだこちら側ですら不明瞭だ。

 なら、何と言ってもいいだろう。

 

「んなモン答える義理ゃぁ……」

「僕だよ」

「「は?」」

 

 Cもココも、同時に顔を歪めた。

 おいおい、なんだその反応は。

 バカかお前はみたいな……。

 

「嘘だな」

「根拠は?」

「……勘だな」

 

 一瞬Cは難しい顔をした。

 かなたは、その表情の僅かな変化を見逃さない。

 

「おい、何言ってんだよオメエは」

 

 ココが腰を低くしてかなたに耳打ちした。

 

「万が一にも、コイツがここを逃げにくくするため」

 

 かなたはそう耳打ちを返した。

 かなたが歌姫である可能性は極めて低いながらも、確定排除もできない。

 もし、Cが何かの召集などで呼ばれても、かなたが歌姫だった時、そのまま見逃すわけにはいかないだろう。

 恐らくこれで、Cはかなたを倒すまでは、逃げないと読める。

 

「にしてもハッタリがすぎんだろう」

 

 ココは嘘であると知っている。

 かなたは嘘であると知っている。

 Cは嘘であると直感している。

 

 この小さな違いがもどかしいことに人の心を惑わせる。

 

「しかし、なるほど、多少は頭が働くらしい」

 

 Cもかなたの思考を読んで心を決めたようだ。

 

「ったく……」

「なんだよ」

「なんでもねぇよ」

 

 言葉での探り合い。

 何故か伝わる互いの感情。

 短く濃い付き合いだから。

 

「さて、参った事に妙なハッタリらしきものをかけられた上に、お前らはそこそこ強い」

 

 頭を抱えて首を振る。

 だが、言葉の節から感じる僅かな余裕。

 つまり……

 

「さあ、本気で来なければ、負けるぞ? 歌姫、もしくはその仲間たち」

 

 今までとは比にならない圧倒的な負荷がかかり、足元が窪んだ。

 地面は簡単に凹まない。

 その圧力が如何なる強さか、軋む足、地面からひしひしと全身に伝わる。

 

 コイツとの勝負は短期決戦に限る。

 時間がかかるほど、常時かかる負荷のダメージが蓄積し、敗北への道まっしぐら。

 言われた通り、早速フルパワー解放だ。

 

「「「ん……?」」」

 

 3人が同時に反応するほどの光の明滅が何度も起きる。

 突如として起こる謎の光の点滅は空から。

 見上げた空、光る流れ星が、次第に大きくなってくる。

 

「流星だと?」

 

 星を扱う人など、敵陣にはいない。

 ホロメンでも、1人しかいない。

 

 その流星は明らかに落下している。

 予測落下地点、およそこの丘。

 

「なるほど?」

「なるほどな」

「なるほどね」

 

 3人とも、全く同じ反応をした。

 全員、仲間の飛来を見切ったようだ。

 

 落下まで3、2、1。

 

 落下の瞬間、軌道が大きく変更、というより、勢力を一度失う。

 地面と並行に二手に分かれた、落下人の2人。

 

 1人、星街すいせい。

 能力、スター彗星。

 

 1人、ダイヤ。

 能力、サイコキネシス。

 

「やっぱ抜けれるんかい」

 

 すいせいがダイヤの一撃K.O.回避に文句を言った。

 空を飛ぶ間、不思議と静かだと思えば案の定。

 

「抜けれるに決まってるだろう、俺があんな分かりやすい一撃を諸に喰らうわけがないんだ」

 

 弾けた2人は睨み合う。

 そして、お互い、相手の背後に仲間と思わしき人物がいるのを発見する。

 その表情から2人は、背後を見た。

 

「ジョーカー!」

「かなたん! ココちゃん!」

 

 自分の後ろにいる仲間に、大層驚くすいせいとダイヤ。

 展開が、これまた大変な事だ。

 と、誰しもが思う。

 しかも例に漏れる事なく、空からやってくるという。

 もはや、空から来ないものは邪道とも取れる。

 

「2人もこんな感じだったんだ?」

「まあ成り行きっすね」

「ゆうて今は話してただけだったけど」

 

 空から飛来するほどの戦いを繰り広げた2人とは全く異なる戦場に立っていたかなココ。

 中でもこの瞬間は、敵のアホが露呈するようなタイミングで、無駄に情報を流してくれていた。

 

「ダイヤ……ハートとスタジアム前の坂の番だろ」

「アイツと、巫女服の女に妨害されたんだよ」

「エースに怒られるぞ、お前が」

「だから参っているんだ。せめてどちらかでも倒さなければ……」

「ふん、まあ、俺がある程度庇ってやるよ」

 

 また、敵同士で仲良くしている。

 やはり、敵という存在への偏見は見直したほうがよさそうだ。

 

「偶然にも、俺とダイヤの能力は近しいものがある」

「だな、足りない部分をカバーしよう」

 

 サイコキネシスと重力、どちらも相手を拘束する力がある。

 そして、抵抗し難いという点も似通う。

 

「重力!」

 

 Cが正面の空間の重力を上げる。

 その重さは、普通の人間だと地面に這い蹲る程。

 特殊な力を持つ、かなたは加護により、ココは龍の力で何とか耐える。

 だが、すいせいは……。

 

「重力?」

 

 側で必死に圧力に耐える仲間に首を傾げた。

 重力変化による負荷を一切無視するように、というより変化に気が付いてない。

 無関心や無頓着ではなく。

 

「おい、ダイヤ、アイツはどんな能力だ?」

 

 Cは自身の重力操作の効果が発揮されない事に多少驚きつつも、冷静に相方に情報提供を求めた。

 

「星などを現出して撃ってくる」

「それだけか?」

「今のところは」

「訳が分からん」

 

 本人すら理解できない無効化を他人が簡単に解釈できるか。

 

「すいちゃん……感じないの……?」

「何を?」

「私でも、こんなに……重い、ってのに……」

 

 ココやかなたの力技ではなく、効果無視。

 これほど相性の良い能力者は、彼女を抜いて他にいない。

 

「なんか分からんけど、アイツだな!」

 

 すいせいは味方の行動制限を見て、Cに幾つもの星を飛ばした。

 

「重力、リバース」

 

 Cは飛びくる星に重力をかけ、ベクトル方向を変換する。

 全ての星が反転してすいせいを襲う。

 

「おっと」

 

 圧力から一瞬解放されたココとかなたがその星を素手で蹴散らした。

 冷や汗が一滴ほど、すいせいの頬を伝った。

 小さな丘の重力が、全て元通りとなる。

 

「すいせい先輩は重力無視って事っすか?」

「さあ、分からんけどそうなんじゃない?」

「ならもう、先輩に任せても……」

「ココ、小さな事だけど、アイツは僕が何とかする」

「……ったく、胸に加えて器もちっせえな」

「関係ないわ」

「……へ、へへ」

 

 かなたを揶揄うといいツッコミが来た。

 すいせいは何故か渇いた笑いを……あ……ははは。

 

「俺もいることを忘れるなよ。俺の能力が効くことは実証済みのはずだ」

 

 勝手にすいせいが相性がいいと決めつけていたが、ダイヤの能力は普通に効果がある。

 ならば、重力をかけて、すいせいはダイヤが束縛。

 これで終わりだ。

 

「それで突破できるなら、かなたんもココちゃんも既にここにいないんじゃない?」

 

 すいせいがCに視線を向けた。

 素晴らしい、的を射ている。

 すいせいだけに慧眼だ。

 

「そうだな、それで完結するなら、こちらもそちらも、既に決着がついてるはずだ」

 

 ダイヤがすいせいを、Cがかなココを。

 その構図で戦闘を繰り広げた結果がこれだ。

 

「俺とダイヤが2人揃ってこそのパワーがある」

 

 Cは、まるで仲間を過大評価するように腕を広げた。

 

「ならあたしらも、ねえ?」

「うん」

「そうっすね」

 

「同居ーず、だからこそのパワーがある」

 

 ホロハウス計画。

 そんなものはもはや幻想だが、この3人はその先端を行くもの。

 かなココの同棲計画に便乗して、すいせいも参戦、姉街の介入により、3人の同棲は断たれたが、限りない近場に住み、同居とも言えよう(言えない)。

 

「同居ーず結成って、フッ軽な所からじゃん?」

「そうだね」

「気軽になんか、こう、っていう感じ」

 

 語彙の怪しい部分が見え隠れするが、そんな事は気にしない。

 

「だから、まあ気軽に背中合わせで、勝手に大技放ったりとか、そんな感じで行こうか」

 

 作戦? 立てても簡単に実行できない。

 共闘? 一緒に戦うだけなら容易い。

 

 人には人の魅力、歌い方があるように、戦い方も人それぞれ。

 この3人は、自由に動いてこそ、本領を発揮する。

 味方の攻撃の範囲内だと思えば、勝手に避けてくれる。

 そう、信頼して。

 

「信頼の勝利、となる訳だ」

「あと、自信過剰」

 

 仲間への信頼と同時に、己の実力への自信。

 二つを伴って達する勝利。

 比較的、過小評価しがちなホロメンだが、すいせいとココは自分自身への正当な評価が可能だ。

 かなたは、少し引き気味だが、悪人に怖気付いたりするような性格ではない。上手くやるだろう。

 

「すいちゃんって、何曜日生まれ?」

 

 唐突にかなたがすいせいに生誕曜日を尋ねた。

 年月日ではなく曜日。

 意図が全く把握できない。

 

「え、分かんない。2018にデビューして18歳で、2000年生まれだから、西暦2000年3月22日の曜日かな」

「今年(2021年)、つまり再来週の3月22日は月曜日で……」

 

 かなたはぶつぶつと言いながら曜日の計算を始めた。

 暗算するほど重要か?

 そこまで計算は早くない。

 

「重力」

「キネシス」

 

 全体の重力負荷が増し、すいせいはダイヤによって念力で捕縛される。

 

「21年で閏年が計5回になるから26日分前に曜日をずらしたら、すいちゃんの誕生曜日は……」

「おいかなたそ、変な計算してる場合じゃねえぞ!」

「あ、でもあたし、今は18.3歳だから!」

 

 重圧に抗うココが、同じ状況下で必死に頭を働かせるかなたに警告するが、かなたは計算をやめない。

 加えて、すいせいまで妙なことを言い出す。

 

「水曜日だ!」

 

 計算結果は水曜日。

 計算方法は単純だ。

 1年で曜日は1日分ずれる。

 閏年は2日分。

 つまり「年数+閏年の数」だけ目標の日の曜日を後日にずらせば、将来のその日の曜日が割り出せる。

 今回はこれの逆算、即ち前日にずらす。

 21日で1週間、プラス5日分。

 5日前の曜日は2日後の曜日と同様。

 よって、月曜の2日後は水曜日、と算出だ。

 

 この計算での必須情報は、どこからの年の、その日の曜日。

 今回は何年のでも、3月22日が何曜日か分かる必要があった。

 再来週だった偶然が読んだ結果だ。

 

「曜日……?」

 

 ダイヤとCは重力に圧迫されながらも必死に算出した結果に警戒の色を見せていた。

 

「ティンクルダスト」

 

 すいせいが敵に向かって現出した星を吹き飛ばすが、全て重力で地面に突き刺さって消滅した。

 やはり、すいせいの能力すべてが、ではなく、すいせいが、重力を無視しているようだ。

 

「うわっ……っとと」

 

 かなたの天使的な心願と同時にすいせいを捕らえていたサイコキネシスが破壊された。

 すいせいを一時的に何者かが守護しているようだ。

 かなた以外、その存在が何なのか、分からない。

 否、守護者の存在すら、知らない。

 目にも見えず、肌でも感じれない、神々しい形而上の存在だ。

 

「何の力だ?」

 

 ダイヤは魔法以上に不可解な力に慄くような素振りを見せた。

 

「何やら、妙な力を使うらしいな。お前から溢れ出る聖力が痺れさせてくる」

「聖力……?」

 

 すいせいが頭を少し傾けた。

 聖力、という聞きなれない単語に疑問を抱いたのだろう。

 

「聖力とはいわば魔力の対角に位置する力だ」

「おいジョーカー、俺ですら聞いたことないぞ」

 

 ダイヤも初耳のようだ。

 ココも知らないようで、眉を寄せていた。

 

「当たり前だ。魔力に比べて所有者が極めて少ない。天上に住む一部の者が所有する力だ。普通は目にできない」

 

 空を指差して、かなたを指差す。

 地界では容易にはお目にかかれない代物。

 天上に住むものとはいえど巫女は聖力を持てないため、聖力を持つものを見るとは即ち、地界にいる天使……「堕天使」に遭遇した時。

 しかも、その僅か3%ほどしか、聖力を持たない。

 天神もまた、天上の存在であるとされるが、その姿を目にできるものはいないと言われるほど所在不明の存在。

 まず出会えない。

 因みに、天神には100%聖力が備わっている。

 

「そう、聖力は魔力を制圧する力」

 

 かなたは、キッパリと言い切った。

 魔力は、聖力との対面勝負で勝ち目はないと。

 

「問題ない、俺もダイヤも魔力を使うが、能力は無形だ。それも、水や炎といった無形ではなく、重力や念力と言った触れることすら許されない力」

「確かに……触れなければ、聖力に制圧されることはない」

 

 Cもキッパリとかなたに返した。

 運良く2人が、聖力に対抗できる存在であると。

 実際は、有形無形に関わらず、能力者本人に触れなければ、制圧はできないのだが……。

 

 しかし、これでハッキリした。

 

 一瞬でかなたは、2人の強敵となったのだ。

 

「ココは誕生曜日覚えてる?」

「ああ? 知るわけねぇだろ。それとも3000年分ほど計算するか?」

「いや、めんどくさい」

 

 かなたは一応ココにも発問したが、竜族にとってそんな瑣末な事を記憶していない。

 いや、そもそも、確認したこともないだろう。

 

「曜日……守護天使か」

 

 Cはようやくかなたの意図と絡繰を把握したようだ。

 案外知識豊富だ。

 

「そっかそっか……じゃあもう、いっか」

 

 突然すいせいが頷いて、狂気的な笑みを浮かべた。

 まるで、殺人鬼のような笑み。

 勝機を見出したと見て、まず間違いない。

 

 つまりは、かなたにパンチでもキックでも決めさせれば、ノックダウンは狙える。

 

「何を笑っている」

 

 まだ、時期尚早だと怒気を見せたダイヤ。

 すいせいは笑みを絶やさない。

 

「え、みんなまだ気付いてないの?」

 

 ココもかなたも、ダイヤもCも、敵も味方も、気付いていない。

 

「ほら、空」

「空……」

 

 すいせいの指先は天を指す。

 その遥か先から飛来してくる一つの物体が、赤く見える物質が、ようやく目についただろうか。

 

「ま、まてまて……」

「すいちゃん⁉︎」

 

 かなたもココもすいせいにしがみ付き、静止を促すが、そんな気はない。

 

「これが大技……メテオ」

 

 超巨大な隕石が、大気圏突入から赤く発光し、熱を帯び、流星としてこの丘へ向かいくる。

 あれが直撃すれば、どうなるだろうか?

 この距離で見えるサイズだ。

 街はなくなる。

 

「お前らも死ぬぞ!」

 

 ダイヤは共死にになると叫ぶが、やはり止まらない。

 

「は? 自分の能力の仲間への影響くらい、何とかできるけど?」

 

 すいせいはさも当然のように鼻で笑った。

 その一言で、かなたとココは冷静になる。

 あ、ならよかった、と。

 ま、そんなことないけど。

 

「おい、ジョーカー!」

 

 隕石……名をメテオ。

 それがもう、地を穿つ。

 皆が死ぬ。

 ダイヤは叫んだ。

 

「くっ、俺が何とかする!」

 

 サイズから、ダイヤでもサイコキネシスで止められないと判断して、ジョーカーCが一歩前に出た。

 

「反転、超重力ホール」

 

 メテオが地に触れる間近で超重力空間が発動。

 隕石は空中で留まる、ように見える。

 しかし、威力が強く、なかなか押し返したり相殺したりできず、Cは必死の表情で能力を操作していた。

 今がチャンス。

 ダイヤの目が、ジョーカーに向いている。

 背後を取るには好機。

 

 全員が一斉に動く。

 

「おら! 吹っ飛べクソサイコ野郎!」

 

 ココがダイヤをテキトーに蔑称して拳を握り、迫る。

 今から殴るぞ、と脅迫、宣言するように。

 同時にすいせいもココと同じ方面からまっすぐダイヤに向かう。

 

「……! キネシス!」

 

 ダイヤは緊急で能力を発動し、すいせいとココの動きを止めた。

 2人の拳が炸裂する事はなし。

 

「敵に塩を送る真似……」

 

 ダイヤは冷静に口にしてハッとした。

 簡単な策に、簡単にかかるなんて、と自身を憎んだ。

 振り返り、目に捕らえた光景、それはもはや手遅れのものだった。

 

「ジョーカー!」

 

 落下するメテオへの対抗に意識を注ぎ、周囲に気を配れないジョーカー。

 その真横から駆け込むかなた。

 が、聖なる拳を振り翳して渾身の一撃をCの横腹に打ち込んだ瞬間が目に焼きつく。

 クリティカルヒット、会心の一撃だ。

 

「ぐぅっ……がぁっ!」

 

 聖なるストレートパンチでジョーカーは吹き飛んだ。

 背後には何も無く、そのまま遠くまで吹き飛ぶかと思ったが、突如現れたスターに激突して地に落ちた。

 ジョーカーはその場で吐血して気絶。

 

「うそだろ……」

 

 ジョーカーのノックダウンにダイヤは真っ先に空を見た。

 メテオはない。

 

「……」

「あんなのが落ちたら、誰も生きてられないから」

 

 端から、すいせいはメテオを落とす気などなかった。

 相手に強制的に抑えさせて、動きを封じるためだ。

 ハッタリがうまく効いている。

 

「あとはお前1人だけ」

 

 ココが嘲笑った。

 

「……」

 

 能力が解けた。

 ココとすいせいは、サイコキネシスから解放された。

 

「参った……もう1人ではどうしようもない」

 

 ダイヤは両手を上げて静かに目を閉じた。

 

「……なんのつもり?」

「諦めた、それだけだ」

「……潔すぎねぇか、そりゃあ」

 

 完全無抵抗を口頭で宣言するが、ココもすいせいも全く信頼していない。

 

「おい天使! どうするよ!」

 

 ジョーカーがいた位置に立ち尽くしていたかなたを呼び寄せるココ。

 そんな何気ない質問にかなたは、

 

「どっちでもいいよ」

 

 と、回答した。

 

「僕の私情はもう、終わったから」

 

 更にこうも付け加えた。

 すると、興味を無くしたようにかなたは街の方角に目をやった。

 

「……天使公はこう言ってんで、まあ、正直私も見逃してもいいっすよ」

「ふーん、優しいじゃん2人とも」

 

 すいせいは後輩の親切心に感銘を受けたように目を光らせた。

 これで、最終決定権はすいせいに委ねられた。

 

「じゃあ……」

 

 すいせいは背を向けた。

 それに合わせて、ココも背を向けて歩き出す。

 

「オラァッ!」

 

 結局、ダイヤの顔面にすいせいの右ストレートが炸裂し、鼻血を出して倒れた。

 すいせいは優しくない。

 いや、甘くない、が正しい。

 

「うっし!」

 

 ガッツポーズを決めるすいせい。

 光っていた目は、優しさへの感銘ではなく、狂人的な狂喜の目だったのかもしれない。

 

「容赦ねぇ」

「たりめぇよ」

「まあ、ヤクザのケジメみてぇなモンってとこっすね」

「違うと思うけど」

 

 戦の終幕に、和やかな空気が漂い始めた。

 ココのパッとしない例えにかなたが突っ込んだ。

 きっと、殴ったのはすいせいのサイコパス的感情の露出した部分だ。

 

 3人は、一先ず事務所に戻ることにした。

 

 こうして同居ーずもまた、勝利を収め……

 

「すいちゃん!」

「よくも……」

 

 すいせいの背後から真上へ移動する影。

 一瞬で起き上がったジョーカーだ。

 重力で落下速度を上げることにより、放つ回し蹴りの威力を上げてすいせいを脳天から地面に蹴り付けた。

 まるで隕石が落ちたような爆発的な陥没が起きる。

 かなたやココならまだしも、一般人は頭蓋が粉砕される威力。

 

「このっ!」

「はっ!」

「いずれ借りは返す!」

 

 ジョーカーCはダイヤを連れて逃げ去った。

 かなたとココの迎撃を回避して、遥か遠くへ。

 

「すいちゃん!」

「すいせい先輩!」

 

 陥没した土地、舞う土煙。

 その中央にいるはずのすいせいの元へ駆け寄る。

 生きてさえいれば、事務所へ救急搬送して何とか……

 

「っぶねぇー……」

「「あ……え?」」

 

 土煙の中立ち上がる人影。

 他に、いるまい?

 

「……無事なの⁉︎」

 

 かなたが驚愕に声を大にした。

 今まで、出したこともないような。

 

「みこちからパクっといた」

 

 そう言って2人に突き出したのは白い人形。

 その人形の頭の部分が粉々になって崩れて、最終的に消滅した。

 みこちと別れる際、みこちの懐から一つだけ盗み取ってきたのだ。

 自己防衛用として。

 

「怒られますよ。お陰で助かりはしましたけど」

 

 かなたが呆れたように苦笑した。

 みこの怒った顔を浮かべたのだろう。

 全く怖くなくて笑えた。

 むしろ可愛いのでは?

 

「いいよ、みこちだし」

 

 すいせいもノリが軽い。

 まあ、みこも大して咎めては来ないだろう。

 

「……でも、なんか締まんねぇっすね」

「……そうだね」

 

 2人に逃げられた、という事実の話だ。

 3人とも、ジョーカーの逃げ方に違和感を覚えている。

 

「まるで、この事件が片付いたみたいだった……というか」

「もう、今日は会わなさそうな雰囲気」

「でも次があるようなクセェ終わり方」

 

 全く締まらないし、気が晴れない。

 

「……取り敢えず、戻ろっか」

「そうだね」

 

 纏めは帰路で。

 あの2人との戦いには幕が降りたが、国家防衛戦線はまだまだ継続。

 幸い3人の移動速度は極めて早い。

 次なる舞台へすぐさま向かえる戦力だ。

 

「ところで、結局すいちゃんは、なんで重力効かなかったの?」

「あ、それは私も気になりますね」

 

 すいせいの重力無視問題へと戻る2人。

 しかし、すいせいもやはりイマイチ噛み砕けていない。

 

「正直すいちゃんも分かんない」

 

 さしづめ、行き着くのは謎。

 これ以上は考えても無駄だと判断して、3人は会話をやめた。

 そして、今後の行動を検討しながら事務所へ飛んだ。

 





 皆様どうも、作者でございます。
 さあ、奇妙な終結を迎えた同居ーずのバトル。
 3人が向かう先は事務所ですが、果たしてここで役目が終わるでしょうか?
 あ、因みに、補足しますとあの3人はねねちの放送が聞こえない域にいた数少ないメンバーです。
 丘には放送が届かないんですね。

 さて、次回は、剣士あたりかな?

 あ、6期生3D化、めでたいなぁー。

 ではまた。
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