歌姫伝承〜ホロの異能大戦ストーリー〜   作:炎駒枸

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68話 バカとカオスのサーカスショー

 

 火の扱いは人並み以上に慣れている。

 ハーフでもエルフとして精霊との会話能力はあった。

 ラミィがだいふくと話せるように、フレアもきんつばと会話ができる。

 それはエルフの殆どが持つ、決して珍しくない力。

 アキロゼは、異世界から来ているため、こちらの精霊と会話はできないようだが、これはまた希少な例外。

 

 とにかく、フレアは生まれつき火の扱いが得意だった。

 だから、精霊術を特化させることを重要視した。

 エルフは、古くからの習わしに従い、一定以上の戦闘技術を叩き込まれる。

 それに沿って、フレアも精霊術を特化させて、かなりの力を手にした。

 けれど、限界があった。

 精霊術だけでは力不足と判定されて、何かしらの武具を扱う事を勧められる。

 それ自体は仕方がなかった。

 実力不足だ、仕方ない。

 

 でも、武具なんて言いながら、選択肢なんてなかった。

 エルフだから。

 それだけの理由で握る弓。

 思い返せば、エルフ族で弓以外の武器を持つものを、見たことはなかった。

 詳しい理由は知らないが、何となく嫌だった。

 でも、いざと言う時、弓に救われた。

 直近で言えば、シオン救出に行った時。

 もし、あの時手にしていたのが剣だったら、斧だったら、銃だったら……。

 間違いなく守れないものがあった。

 それが悔しくて仕方なかった。

 

 ラミィは武器を持っていない。

 それは、ラミィが精霊術だけで基準を満たしているから。

 なら、もしフレアの精霊術が基準を満たせば、武器の所持も自由になる。

 

 そんな思いと葛藤を続けていた矢先、フレアは弓を失っていた。

 死ぬような苦痛の中、体が燃え上がり、まるでヒーローのような変身を遂げた。

 立ち上がった時、弓も矢も全てが燃え尽きていた。

 そして代わりに手にした炎の槍。

 槍は本当に形を持たず、炎が輪郭だけを整えていた。

 

 つまり、今のフレアは火の精霊術のみで対峙するハーフエルフ。

 Kという大物を、今討ち取ることができれば、それは基準を満たしたと言えるのでは?

 俄然とやる気が満ち溢れた。

 2度とない好機。

 引くわけには行かない。

 再生したカラクリはフレア自身把握してないが、今までにない高揚した感情に、笑みが溢れていた。

 自分らしく選択するために、フレアは火の精霊術で戦い抜く事を、誓った。

 

 

 

          *****

 

 

 

 腕には相当の自信があるが、近年まともに術を扱う事は少なかった。

 それこそ、森の一件以来であり、それ以前にも大した使用例はない。

 対するKは戦闘慣れした狂人。

 力量差も相まって、中々に手強い。

 

「それにしてもしぶといねぇ」

 

 定期的に攻撃を喰らうも、決して膝を付かないフレアにKがまた薄ら笑いを浮かべた。

 

「その顔ももう見飽きたよ」

「おっと、いやいや手厳しい。ウェッヒ」

 

 攻撃回避や迎撃に全身を使い、肩で息をするフレア。

 しかし、Kは悠然と不敵な笑みを浮かべフレアの猛攻や回避を愉しむ。

 

 道路も腐り、フレアが少し足に力を込めると崩れそうな音を立てる。

 周囲の建造物は炎上し、木造建築物は灰となっている。

 かろうじて骨組みを保っている建物もそっと触れれば崩れそうな程。

 

 また一つ、近くの建物が倒壊し火の粉と灰が舞う。

 そして、その衝撃で腐ったコンクリートが一部陥没した。

 焦げる匂いとコンクリートの腐敗臭が鼻を突く。

 コンクリートの腐敗臭なんて、初めて嗅いだが、この臭いは表現し難い。

 

「これでも私は本気ぞよ」

「……あっそう」

 

 信憑性の低い申告にフレアは素っ気無い返答。

 自分からの軽いジョークは投げれても、相手の言葉にイチイチ諧謔的な言葉を返せるほど心身共に余裕がない。

 手元の炎の槍を一度消滅させる。

 程なくして姿を消していたきんつばが側に出現した。

 

 チラッと横目にきんつばを見る。

 見た目で感情は読めないが、精霊術師として会話を図ることで思いが伝わる。

 

 本当に、どうしてこんなに精霊術の力が上昇したのか。

 今ならラミィにも圧勝できるほどだ。

 

「後輩とやり合う気は、ないけど……」

 

 ボソッと口にした。

 口元の血を袖で拭ったが、火で既に水分の一部が蒸発して跡が残ってしまっている。

 気を紛らすために、腹に手を当てた。

 一度受けた莫大なダメージも、やはり形跡がない。

 夢を見ていたように。

 

「独り言かい、ファイアーガール」

 

 心を腐敗させるように、名を呼ぶ。

 耳障りな、男性としては高い声。

 こんなに力が漲っているのに、Kを討てる気配がない。

 挑発と分かっていても、乗りそうになる。

 

「独り言に、割り込むなよな」

 

 パッと浮かんだ適当な返しはそんな意味不明なものだった。

 頭もまともに回らない。

 

「ふひひ、へひひ、ヒッヒッヒ……ココロがユカイで溢れるネェ」

 

 残像が目に映るほど見飽きた不敵な笑みを浮かべ、Kが奇襲を仕掛ける。

 フレアの足元がひび割れ、大きな触手が顔を出す。

 Kが足元から地中に成長させたと見られる触手。

 それがフレアの足元から攻撃を仕掛けてきた。

 

「くっそ!」

 

 反応は決して悪くない。

 それでも、勢いある触手の速度には敵わず足が絡めとられる。

 だが、フレアはその後の判断も対処も冷静であった。

 脳内の活動を活発にして最善策を導く。

 足に炎を纏い、触手を焼き切ることに専念。

 振り回す気配などはなく、捕まえて拘束することが目的と見たからだ。

 しかし、足に炎を纏い焼き切るまでの約数秒間、触手の絡まる脚に焼けるような痛みが迸った。

 

「相も変わらず厄介だネェ」

「いっ……」

 

 見事に魔の手から抜け出し、地に降り立つフレア。

 だが、その片足には焼け痕があった。

 

「火でも燃えないのに――!」

 

 熱に対抗できる自分が火傷を負う。

 そんな想像できない事態に動揺を隠しきれない。

 

「……おや? ウェヒッ! これはカオス。カオスだこれは!」

 

 遥か遠方の空を見上げて、Kは悦楽に口元を綻ばせる。

 その姿こそ、不気味という単語を形容したものであると言えよう。

 

「……あれは」

 

 焼けた右脚――正確には溶かされた右脚に軽く触れて痛みを感じた後、フレアは落ち着かない心を宥めるようにKの視線を辿った。

 闘志と実態のある炎に燃える瞳。

 そこに映るのは、とうとう暗さも増して闇深くなった夜の空を飛ぶ船。

 夜の空で揺らぐ、ハートを射抜いた模様の旗。

 マリンの船。

 

「……一体誰が」

 

 真っ先にマリンが頭に浮かぶが、あんな芸当できる人ではない。

 何たって普通の可愛い人だから。

 規模を考えるとシオンや敵陣営辺りの成せる所業。

 敵が行う理由が見当たらず、シオンと仮定する方が自然。

 だが、場合によっては、複数名で動力を発生させる事も可能かもしれない。

 ……いや、肝要なのは、乗員が敵か味方か、行動理念が何か。

 そして、あの軌道上に、この上空が含まれるであろう事。

 

「向かうつもりか、巨大戦艦」

 

 Kの発言からフレアも目的地を察した。

 しかし、このままここを通るなら、巨大すぎる弊害がある。

 

「……」

 

 フレアは黙って目線を移した。

 Kは船を眺めて気付いていない。

 

 腐食されたコンクリートに手を当て、力を込める。

 地中に張り巡らされた敵の触手は厄介極まりない。

 根絶やしにしよう。

 

「地獄変相」

 

 地中が赤く光り、地から熱気が溢れ出る。

 煮え立つ音がして、コンクリートが沸騰するように暴れ出す。

 

「ほほぅ、こりゃあまあ、大変だネェ」

 

 ボコボコとマグマの弾けるような音を立て、地面から焼けた触手が幾つも顔を出す。そして、灰と化してゆく。

 その灼熱の炎に焦がされた触手の放つ異臭たるや……。

 

「天地躍動」

 

 フレアが地に着けていた手を空に掲げると天地共々朱の色を帯びる。

 小範囲ながら、大規模な一撃を繰り出す。

 自身は炎の影響を受けない事を駆使して、この小範囲内に火柱を作り出す。

 天と地が躍動するかの如く火柱を作り上げた。

 Kもフレアもきんつばも、範囲内の存在が灰すらも残らぬであろう煉獄に身を溶かされる。

 仲間にも、この炎は見えるはず。

 ここは通るな、と言う意味を込めて。

 フレアからの注意喚起だ。

 

 かなりの大技を決めた。

 殺す気で戦って勝てるかどうかの敵に出し惜しみはできない。

 死んだ時は、るしあに何とかしてもらおう。

 

 さて、この程度死んでくれるなら、初っ端の必殺技で死んでいるはずだが。

 

「……は? なに……あれ」

 

 焼け野原となった街道。

 1人の佇む身体が……。

 いや、半人の佇む姿が……。

 

「……」

 

 Kの上半身が完全に焼失し、下半身だけが路上に佇んでいる不気味な絵面。

 本来なら直立状態での死亡はあり得ない。

 だが、あの状態での生存も本来あり得ない。

 

「――っ!」

 

 カタカタ、とマリオネットのように足が動き出す。

 やはり、容易く息絶えない、造りが混沌とした生物らしい。

 しかし、意志が宿る形状には到底思えない。

 動く道理が不明すぎだ。

 

「っ! ファイアーブレード!」

 

 フレアが右手を薙ぎ払う。

 手の動きに合わせ火が空を斬る遠距離攻撃。

 作動し始めた下半身を狙った理由、それは上半身が再生成を始めたから。

 やがて完成するであろうもとの姿。

 それを阻止するための妨害として。

 

 焼き払っても、熱で焦がしても、いくら融解させようと昇華させようと、下半身が消滅することはない。

 ただ、再生する上半身が消えてまた形成を始め、消えてを繰り返すのみ。

 

 しかも、たった数センチだが、残る身体のサイズが大きくなりつつある。

 埒が開かないどころか、自身に対して不利であると判断しフレアはその手を止めた。

 

「ウェーっヒッヒッ! 慧眼だネェその瞳」

 

 段々とKの動きや攻撃から、能力を紐解けてきた。

 しかし、想像が正しければその脅威度は厄介の域を超えている。

 しかも、時間がかかるほど敵はフレアに適応していく。

 

「細胞を自在に操る、ってとこかな」

「ヒッヒッ、明察明察、ハッピーだよネ?」

「寧ろアンハッピー、超サイアクな気分」

「さあ、振り絞れ、我の力よ、溢れ出ろ」

 

 Kがポケットに手を入れて不快な笑みを浮かべると、背中から幾つにも枝分かれした触手が生え、攻撃を始める。

 

「どこを……!」

 

 フレアを狙わない触手に違和感を覚えたのは刹那。

 脳の理解は早く、行動はそれに続く。

 

「ファイアーブレード!」

 

 瞬間だけ遅れた一撃は大量の触手を焼き切る。

 触手には熱耐性がないようだ。

 しかし、フレアもそうだが、Kにもほぼ限界がない。

 こんな強敵に限って魔力消耗で隙を見せるとは思えない。

 フレアの精霊術も、自然界に漂う微精霊を交代で使役しているため精霊自体の数が減らない限り限界はない。

 

「可能性は無限大」

 

 よく聞くようなセリフの意味は分からず。

 そして、直後に意味は具現化される。

 

 触手から水が噴き出し始めた。

 微量ではあるが、触手全体が濡れる。

 

 もう一度、触手が船を狙い、その触手をフレアが狙う。

 だが、今回は触手が焼けない。

 触手が纏った水分が、燃焼の邪魔をしている。

 炎の温度低下とわずかな酸素の遮断による、燃焼の阻害だ。

 触手の動きは早い。

 数秒の無効時間が命を絶つ結果に繋がる。

 

「畜生、船が!」

 

 数多の攻撃が船を多方面から襲撃。

 乗組員が、危険だ。

 

「……ほほう、ほほほう?」

 

 すべての触手が船を破壊し尽くす直前、空中で停止する。

 フレアは振り翳す手を困惑しながら下ろす。

 掌に、汗が流れてきた。

 追いつかない理解に頭を悩ます余力は必要ない。

 

「だめ……来ちゃ」

 

 彼方を飛んでいた船はもはや頭上までに接近し、フレアの警告も無意味と化した。

 奇跡的に触手が止まったが、それはきっと偶然で……。

 

「……!」

「自由の使徒となり得るかな?」

 

 甲板から二つの影が飛び出し、彗星の如く、降り注ぐ。

 姿がなぜか、よくよく見える。

 フレアには分かる。

 

「バカ……」

 

 バカタレの血が共鳴を起こし、闘志が燃え上がる。

 好機を逃したくない、そんな邪な感情に揺さぶられて大切な仲間の手を振り解くなど、愚かなことはしない。

 バカとは決して愚者ではない。

 フレアはバカタレの一員であるが、決して無知蒙昧でなければ、野放図な性格でもない。

 ただの、バカ。

 

 そして、高所から舞い降りる知音2人。

 バカ仲間、即ちバカタレ共。

 そのバカさはここで早速露呈する。

 

「ギィァァァァァァァ! し"ぬ"ぅ"ぅ"ーー! ぱ、パラシュートぉ!」

「あ、だめフブちゃん、そんなに早く開いたら……」

 

 高所恐怖症でありながら船から紐なしバンジーという奇行。

 フブキは枯れるほどの涙を撒き散らし、勢いよく背中のパラシュートを開いた。

 行動が早すぎて、かなり高所で滞空を始める。

 それは格好の標的となることを意味する。

 

「弱点特攻なんのその」

 

 Kは躊躇なくフブキを狙う。

 助太刀には感謝するが、登場の仕方が戦犯級だ。

 フレアがカバーに回るが、すべての攻撃に対処しきれない。

 船からの援護も出来ず、フブキ本人は恐怖のあまり強く瞼を閉ざしている。

 着地したわためがK本体に突進しようと踏み込むがもはや手遅れ。

 フブキに迫る圧倒的物量の触手。

 骨すら溶けてしまうかもしれない。

 

「「フブちゃん!」」

 

 ガガガッ、と触手がフブキ一点に食らい付いた。

 そこに割って入る、不審な影を見逃すものは1人もいない。

 触手で覆われフブキの様子はわからないが、一体……。

 

「カオスだよ、カオスだね」

 

 Kは触手の力を強めた。

 まだ、内部でフブキが生存している証だ。

 わためが迷わずKに突撃する。

 

「愉しむます、その曲芸」

 

 Kはわために目もくれず空中で蠢き固まる触手に意識を集中する。

 Kに攻撃を当てることは容易い。

 それに効果を持たせることが、極めて難しいのだ。

 

 フブキの相手に熱心なKにわためは激突した。

 

「つのドリル」

 

 自慢の巻いたツノを勢い任せにKに差し込む圧巻の頭突き。

 ツノや頭蓋への衝撃はなく、まるですかしたように空を切る感覚。

 そして、Kを通り過ぎる耳元にじわりと滲む、残忍な音。

 言葉で表現するなら、グチャッ、といった感じ。

 それでも、まだ音が不足しているような、そんなグロい音だった。

 

 音の原因はKの首より下の部分が千切れたから。

 わための頭突きに合わせて首とそれ以下を自己的に切断、わためのツノに頭以外の身体をくっ付けて、愉しげに笑い声をあげる。

 異形さや不気味さ、そして決して感じない混沌さが闘うものの戦意を喪失させていくのだ。

 

「うえぇ、なにこれぇ!」

 

 ツノに刺さったKの胴体が器用に畝り、わための身体を絡め取ってゆく。

 足を止め、踠き抗い、わためは必死に引き剥がそうと奮闘するが、あり得ない力と粘性で剥がせない。

 そのまま、Kの胴体は地に足をつき体を反らせると、わためを持ち上げて地面にぶつけた。

 柔道の裏投げのように。

 しかし、柔道と違い頭から真っ逆さま。

 伴う危険性と威力は桁違い。

 

「わため!」

 

 迂闊に炎を放てばわためが焼けるため、フレアも手出しできない。

 しかも、炎の効力が水分のせいで薄れ始めている。

 

「お?」

 

 Kの珍妙な声にフレアは弾かれるようにフブキの方を見た。

 そのフブキを覆う触手が固まっていた。

 水分の存在が仇となり、冷気で氷付けになったようだ。

 そして、氷はやがて音を立てて割れ、砕け散る。

 

 中から飛び出すのはフブキともう一人、突如現れた救世主。

 ゲリラライブの達人。

 

「レディース、アーンド、ジェントルメーン!」

「ひぃぃぃ!」

 

 フブキを抱えて高所から降り立つ一人のサーカス団座長。

 元気溌剌と挨拶が始まる中、フブキは某おにぎり君のような悲鳴をあげる。

 

「やあやあ皆様お待たせいたしました。これより、街頭ゲリラサーカスショー、『バカタレサーカス』の開幕でーす!」

「ポルカ!」

「え? ポルカちゃん⁉︎」

 

 フレアに数時間ぶりの笑みが戻る。

 わためは頭……というか角が地面に刺さり、ポルカを視認できずに困惑していた。

 だが、あの独特の声とテンション。

 間違えようがない。

 

「フブちゃーん!」

 

 ポルカが未だ震えが体に残るフブキの背をビシッと叩いた。

 そして、がんじがらめのわためを指差した。

 

「ぅぅ……コントラストスノウ」

 

 時折明滅する微細な雪が周囲を、大気を、冷却し、水分を強く含むあらゆる触手が凍結する。

 固まった隙にわためが力ずくで抜け出す。

 一度4人はKから距離を取り、一箇所に固まる。

 

「ウェーンヒッヒッ、これはホントにカオスだよカオスだね」

 

 Kの愉快は最高潮へ到達し、不快な微笑は今までよりも色が深い。

 

 ワールドオブザカオス。

 

「ポルカちゃん、ラミィちゃんは?」

 

 わためは集合するなり間髪入れず聞いた。

 中央エレベーター付近でレッドを氷付けにしたのは結果だけだが確認した。

 ラミィも、一緒にいたはず。

 

「ああ、ラミィなら美味しい酒が飲みたいそうで」

「……?」

「居酒屋行ったの?」

「まあ似たもんよ」

「えぇ……?」

 

 ヘラヘラと笑って曖昧に答えを流すポルカに3人は怪訝そうに顔を顰めた。

 気が付けば、船はとっくにスタジアムのほうへ進んでいた。

 

「3人とも……ありがとう」

 

 フレアはパッと明るく微笑む。

 まだ、敵が残っているこの戦場の中、空気を弛緩させるような暖かい表状。

 フブキが、わためが、ポルカが、きょとんと目を丸くする。

 きっと、一人で戦っていた時の精神的負荷がフレアを壊していたのだろう。

 何かの衝動に駆られ、必死に何かを成し遂げようとして。

 

 そこへ現れたバカ3人が、熱く燃えたぎるフレアの心を温かい段階まで下げたのだろう。

 バカは集えば、最強だ。

 フレアはもう、自分の力に固執しない。

 仲間を信じて、自分の限界に拘らず、ただ、自分たちが楽しく生活を続けるために、戦う。

 

「ヒッヒッ、ファイアーガール、サーカスガール、シープガールにホワイトキャットガールかい?」

「む! それ猫やんけ! 白上は狐じゃい!」

「我からすれば同じぞよ? どちらも等しく動物さ」

 

 通るようで通らない筋。

 それは人=魚が成立することと同じだ。

 いくら大きく括っても、流石にそれに納得するものは少ないだろう。

 

「アンタはまあ、そういう生き物だもんね」

 

 フレアは相手の能力を理解した上で、そう発言する。

 すべての生物が細胞からできている。

 細胞から成る存在はすべて同じ細胞でできている。

 DNAこそ違えど「細胞」であることに違いない。

 この概念は、細胞を操るKだからこそ持てる発想であり思考。

 

「じゃ、ま、始めますか……」

 

 フブキの目に宿る焔が暗闇を照らす。

 同調し燃え盛るバカ達の心の炎。

 

「わため、無闇に突っ込んだら腐るからね」

 

 フレアが数分前の出来事を教訓にと注意した。

 

「ひぃ、気をつけますぅ」

 

 と、わざとらしく怯えて見せる。

 クスッと一同、苦笑した。

 

「正直言ってフレア、このメンツでの勝算は?」

 

 ポルカがお世辞抜きで、過大も過小も起きぬように評価してと。

 肌で感じ、実践に移し、この化け物にバカタレサーカスで勝てる割合。

 フレアの直感でその数値は如何程か。

 

 Kがフレアの内心を見透かしたように、ヒヒヒと笑う。

 

「正直に言うと……ほぼ0」

 

 決して謙遜もなく、フレアはバカタレサーカスとK1人との実力差をそう評した。

 手合わせして分かること。

 Kは能力上の不死身。

 アンデッド族ではない。

 

「へえ……勝ち筋、見えてるわけね」

「後は、運ゲー」

 

 フレアの冷静な分析とその結果からポルカは読み切る。

 後は、運がどこまで勝率上昇に貢献するか。

 そして、読み切れない自身達の強さを発揮できるか。

 

「アーユーレディ?」

 

 ポルカのセリフに合わせて空気がガラッと変貌した。

 

 バカタレサーカスのゲリラショー、インザカオス、開幕だ。

 





 最近投稿ペースが遅い作者でございます。

 今回は、まあ予想してたかもしれませんが、バカタレサーカスでした。
 サーカスまで予想できたかは、分かりませんが。
 さてさて、バカタレサーカスで、勝算の低いKに勝てるのでしょうか?
 そして、フレアの頭によぎる策とは?
 案外、バカタレ共の思考は、同じかもしれません。

 次回は、短めですが、もう片方のあの人の場面。

 残る敵は、A、K、クラブ、ブラック、そしてノーカード。

 わざわざここまで引っ張ってきた敵が、あっさり倒れるのかどうか。
 では、また次回。
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