舞う粉雪。
弾ける火花。
鳴る地響き。
光る照明。
腐る地表。
汚れる建物。
笑う混沌。
疾風迅雷、紫電一閃、電光石火。
滔々と流れ行く刻と戦況。
晴れることの無い暗闇に光を灯すバカタレサーカス。
勝負の均衡は崩れることなく。
笑うカオスは澱み蠢き。
また笑う。
回る曲芸。
火の輪くぐりに、空中ブランコ。
持ち合わせの無い闘争心で、翻弄する。
巻いたツノ。
マント靡かせ、快進撃のツノドリル。
持たぬ闘争心を、腹の底から煮えたぎらせる。
陰火よ、鬼火よ、猛火となりて。
爆炎よ、業火よ、烈火よ、煉獄となりて。
知らぬ命の灯火を、心に宿して焔となる。
雪降る闇夜の白狐。
吹き荒れる雪とその元凶はフブキと称し。
積もる雪を、想いを、武器とする。
戦場は眩く煌めき、暗闇を晴らそうとする。
4人のバカタレ達が、Kという敵を前に依然として後退せず、猛攻を仕掛ける。
蓄えている策略を放つタイミングも見計らうが、フレアから合図が出ることはない。
フブキとわためより齎された一つの策。
合図はフレアに託されたのだ。
「サッサ、ささっ。まだまだ続けよメリーゴーラウンド」
寒暖の激しいショーの中、汗一つかかず軽快に猛攻や防衛を行う。
フレアの炎槍に貫かれようと、フブキに氷柱にされても、わためのつのドリルを心臓に喰らおうと、ポルカの曲芸で首が弾け飛ぼうと、決して死ぬことなく果てのない再生を続ける。
「隙ひとつ作れない……」
フレアが流れ落ちる汗を拭い、荒れた呼吸で呟く。
首でも吹き飛ばせば、再生の数秒を稼げると思ったが……。
「首がなくても動くし、凍っても1秒経たずに壊しちゃうし」
3秒以上の隙を作れなければ、合図が送れない。
作戦を引き延ばすほど、勝利が遠のく。
何か、捨て身でも何でも、隙を作る策略が必要だ。
「フブちゃん、何か策ない⁉︎」
ゲームセンスの高さや普段の思考力、その他諸々からフレアは唯一頼りとなりそうなフブキを当てにする。
ゲームは戦闘中やその直前にヒントをくれるが、実際には観察して探るしかない。
一挙手一投足を注視し、自らの眼、耳、鼻、触、そして頭で情報を得て解読するのみ。
しかし、それに徹する時間をくれる程、甘い敵ではない。
「今考えてる!」
余裕のないフブキの力強い言葉にフレアは発汗が早くなる。
「ワタシを耐え忍ぶも、やるね、なかなか、キミたちも」
捻り潰したいほど見飽きた鬱陶しい微笑の深みが増し、大量の触手が暴れ始める。
それぞれのメンバーを、数本の色褪せたような小汚い触手が襲う。
フブキは身体とは異なり変温が難しい触手を凍らせ全力で蹴る。
衝撃を分散できない凍った触手は、蹴り込まれた部分でポッキリと折れる。
それを数度繰り返し、自分の周囲のものを殲滅。
フレアは立て続けに回避。
ある程度一箇所に触手を集め、巨大な火柱で焼き払う。
わためは能力で加速して回避を行う。
Kは目で追えるが、触手が速度で追いつけず途中で諦める。
そして、数多の蠢く物どもを掻き分け、わためは死角からKに突撃を仕掛けた。
が、K本体の動きは素早く、安定した動きで掠ることすら無かった。
ポルカはホロメン誰しも見覚えのある盾を現出し、一度身を守る。
その盾は、触手からの腐蝕で徐々に腐って行く。
しかし、幾らKと言えど、無限に攻撃は続かない。
乱れる攻撃が止む僅かな瞬間、現出物を盾からブレードに変更。
こちらもまた見覚えがある。
その剣で両断を繰り返し、微塵にしてしまう。
「ヒヒッ、やめじゃやめ! わしゃぁもうトヘトヘだ」
触手が突如焼き切れる。
溶けるように蒸発し、無防備なKが4人の視線を一身に受け止めている。
易々と与えられた絶好の機会。
きっと罠だ。
けれど、仕掛けるなら……。
今!
「コンスト・レイン」
Kを中心に竜巻が発生。
いや、竜巻に見えるが、ただの吹雪だ。
真っ白に渦巻く雪の嵐がKの視覚、聴覚、嗅覚を妨害し、更に行動をも制限する。
舞い散る雪が中心のKに纏わり付き、体温と体力を奪う。
「ひょぉ?」
パタリと収まる吹雪の竜巻。
晴れた暗闇に、背後から迫る羊が一頭。
「つ・の・ド・リ・ル、『衝』!」
背後を取られ対処ができないK。
背に直撃したツノが突き刺さり貫通、そして勢いのまま正面に吹き飛ぶ。
わためのツノが似合わない鮮血に染まる。
「頼むよポルカ!」
「おうよ!」
フレアの掛け声にポルカは姿勢を正す。
見様見真似の踏み込み、構え。
飛んでくるKに現出した金属バットを全力で振るう。
「ポルカ特大ホームラン」
偶然にもバットの芯下に直撃したのは顔面。
特大ホームランの如く上空へ打ち上がる。
とは言え、何故かほぼ真上。
いや、わざと真上になるようにした。
本当に狙い通りに打ち上がったのは、正直奇跡だが。
さあ、これで3秒以上の隙ができる。
「フレア!」
ポルカの掛け声に応じるように、フレアが炎槍を構える。
天空に向け、打ち放とうと――
「なぁんてね」
4人それぞれの視覚外から触手が襲う。
わため以外の全員が回避できず、攻撃が直撃。
強力な薙ぎ払いがフブキ、フレア、ポルカを弾き飛ばし、壁へ激突させる。
「みんな!」
間一髪、能力差で回避したわためは剣幕に表情を暗くし、思いきり叫んだ。
「よくもまぁ、うまく避けたもんだネェ?」
「っ!」
わためは背後から、混沌とした感情に圧迫される感覚に苛まれた。
真後ろに、Kがいる。
天空にも、打ち上がったKはいる。
……つまり。
「2人……!」
不可解な笑みがわためを見つめる。
冷静に考えれば、絡繰なんて大層なものはない。
だが、ずっとその手を隠されて、意識していなかった。
相手は細胞を自在に操る。
分裂も、破砕も、促進も、抑制も、何もかも。
分身体なんて、作れない方がおかしい。
「ぐっさり!」
わためを囲った触手が串刺しにすべく押し寄せる。
貫通する効果音を口で発し、Kは不可解な笑みを深める。
「わため……! だいじょぶ……か!」
強襲に介入し、ポルカが一撃必殺を防ぐ。
「ポルカちゃん」
「わため……悪い……もう、保たん……」
盾で無理矢理押さえているが、圧倒的な力量差に屈するのも目前。
婉曲的に逃げろと指示を出した。
「ファイアブレード!」
「コンデンスフリーズ!」
ポルカとわためを襲う触手が焼き切れ、凍りつき砕ける。
全ては破砕しきれないが、耐え切れる程度まで力は弱まった。
「ふーたん! フブちゃん!」
瓦礫が巻き上げた煙幕から血を流して立ち上がる2人の仲間に、わためは感銘を受ける。
ポルカの冷や汗と垂れる血も、一瞬、流れが止まる。
「大敵は油断だよ、油断は大敵だね」
「しまっ! うわっ!」
フブふれの寒暖攻撃を耐え忍んだ触手が、盾を構えていたポルカの足を捕らえた。
そのまま宙吊りにされ、振り回され、視界が旋回する。
世界がメリーゴーランドのように――否、超速で回るティーカップのように回転する。
酔いに耐性はあるが、何も見えず、抵抗できない。
「ぺしゃんこ潰れてさあ大変。引けや幕引き、幕弾けサーカス」
「「「ポルカ!」」」
投函され、眼にも止まらぬ速度で壁へ激突……する直前。
事態は大きく好転する。
――――――――。
「ナイスタイミングだろ! 後輩!」
――――――――。
ポルカをその腕で見事にキャッチしたのは、レジェンドドラゴン、桐生ココ。
「会長!」「「ココちゃん!」」「ココち!」
「ワレの自由を妨げる。ソナタは自由にナレルカナ」
「私ぁ不自由じゃねえから、そんだけで十分だ」
蠢く触手が猛烈な勢いでココとポルカを襲う。
飛行能力のあるココは空中を旋回し、回避を重ねる。
火を吹いて触手を焼き、一瞬掴まれようともパワーで引き千切る。
次第にKの狙いが完全にココ1人となる。
「オラ、後輩は下がっとれぇ!」
「どぁああああっ!」
ルーナのように、ポルカを投げ飛ばすココ。
ポルカの絶叫が流れるように広がり、遠ざかる。
パシッ、パシッ、とポルカの手をキャッチする2名。
「え⁉︎ すいちゃん⁉︎ かなたん⁉︎」
右手を取るのはかなた。
左手を取るのはすいせい。
遥か高所から飛来するポルカを、すいせいは星に乗り、かなたはその羽で空を飛び捕まえる。
「先に行け! オメエら!」
「待って会長! ポルカまだ――!」
「足怪我してんでしょ!」
「そうだよ、ポルカちゃんの得意な援護も、ここじゃもう活用できない」
今絡め取られた足は酸で焼けており、目立った火傷痕がある。
ココとポルカを交代させるように、すいせいとかなたは、ポルカをぶら下げてスタジアムへと飛んで行く。
「サーカスガールのお帰りに、ドラゴンガールの登場かい? カオスだよカオスだね」
Kの背に羽が生えたかと思うと、空中へ飛び出す。
ココに対抗するために、飛行能力を獲得させたのだ。
「ココち、気をつけて! その人、訳わかんない事ばっかだから!」
空中戦を開幕させられては、手出しできない。
「隙を作りゃぁいいんだろ。最強のドラゴン舐めんなよ」
「それはこちらのセリフです。地べたを舐めさせてやります」
聞き覚えしかないセリフばかりがフレアの耳を刺激する。
少し用途や意図は異なるが、セリフは完全なるパクリ。
……いやいや、そんな事、どうでもいいか。
「ちょっと
不思議な瞳が輝く。
不可解な笑いが響く。
「カオスフィールド」
腐敗臭を含めた暗雲が立ち込める。
暴力的な数の触手があらゆる場所から蠢き、湧いて出ている。
Kよりも高所でその光景を俯瞰するココ。
拳を強く握り、一瞬目を瞑る。
その一瞬の直後には、降下を開始。
一直線にKへ。
「オラオラオラオラオラ!」
触手を力で捩じ伏せながら猛進。
ドラゴンファイアで燃やし、更には――
「雷鳴!」
落雷までも発生。
高電圧により触手は焦げてスミとなる。
雷は、Kへの数少ない有効手段。
「ビリビリ痺れる。これは恋?」
「キッショいこと言うな、それは負けへの恐怖心だよ」
「負ける、私が? いつここで?」
「はっ、わっけわっかんねぇ言葉使いやがって! んなことどうでもいいからよ、男なら拳でタイマン張れやぁ!」
もはや触手は無力化され、ココとKの拳が空で横行する。
殴り合いではココが数枚上手。
やがて、ココのパンチはKを抉る。
「テメェが、地面でも舐めてろぉっっ!」
「がひっ!」
天から垂直に地面に叩き落とす。
翼を剥ぎ、汚い顔面に強烈なパンチを。
「やった!」
「雷鳴!」
オマケに落雷がKを標的に発生。
Kを中心に地面に電気が流れる。
「今っす、フレア先輩!」
地に落ち、感電したK。
今が、3秒以上の隙だ。
「花火!」
炎槍を天空へ放つ。
遥か上空へ飛び去る一本の槍が、空で華麗に破裂。
一つの花火が打ち上がる。
これが合図だ。
「「「後は任せた!!!」」」
――だから――
「「「後は任せて!!!」」」
シオンの魔法が超遠隔で発動し、選手交代。
場面は大きく反転し、勝利へ突き進む。
どうも、作者です。
中々決着つかなくて、焦ったいですか?
私もです。
ですが、そんなあなたに朗報です。
なんと、次回はとある一戦に終止符が打たれます。
どこでしょうねぇ。
いやぁ、しかし、8月に追い上げてこの章の完結間近までは行きたかったのですが……全くもって不可能ですね。
致し方ない、9月中には完結を……。
だって、holoXだってENだってIDだって、のどかさんだって出てないのに。
溜め込んだストーリーが、あんな味方やあんな敵まで考えて、こんな伏線も張ってるのに。
この小説、終わるのかな?
なんて言うと貴重な読者が減ってしまうので今のは見なかったことに。
では、また次回。