歌姫伝承〜ホロの異能大戦ストーリー〜   作:炎駒枸

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74話 絶望

 

 そらとロボ子は、ロボ子のセルフ改造を完了させ、漸く動き出す。

 

 スタジアム内の巨大鉄屑ロボット。

 その目前に備え付けられた台と、3つの石。

 空席となった台があと一つある。

 朱の石が鎮座するための空席。

 

 だが、残念ながら、そんなことはさせない。

 

「随分と遅かったな。聞くまでもないが、何しに戻って来た?」

 

 隠れず、堂々と姿を現すロボ子に、引けを取らず堂々と進み出るA。

 そらは一歩引いた位置で経過を見守る。

 未だに、Aの力を知らない。

 それが何よりの危険。

 

「勿論、石を取り返しに」

「ふっ、だと思っとよ」

 

 Aは鼻で笑って背を向ける。

 無防備に背中を晒して、巨大鉄屑ロボットへと向かう。

 

「取れるものなら取ってみろ」

 

 顔だけ振り返りロボ子をもう一度嘲笑う。

 

「ふっ!」

 

 ロボ子は台座へ駆けた。

 Aは台座から次第に遠ざかっている。

 この距離なら、足では負けない。

 

「無鉄砲にも程があるぞ」

 

 ガッ、と台座が全て地に埋まった。

 機械が通っているようにめり込み、蓋が閉まる。

 

「そんなつまらんやり方じゃなく、俺を直接倒してみろ。そうすりゃ、石なんていくらでも返してやるさ」

 

 Aは巨大ロボに続く階段を登る。

 搭乗席だろうか、階段の先は。

 

「尤も、如何にもポンコツそうな貴様と、この完全鉄製大型ロボでは、既に決着はついていると言えるがな」

「やっぱり、手動操縦式」

 

 ロボ子は巨大ロボを見上げ呟いた。

 あのロボットは外見からしても、自動で動くような賜物じゃなかった。

 しかも、ここに来た時に感じたあの電気信号。

 主電力が巨大ロボの背中に装着されている。

 主電力から放たれる電磁力で結合させた鉄屑の塊、それがこのロボットの正体。

 なら、その主電力を破壊すれば……。

 

「なるほどな、だからお前は一度撤退したのか。今はお前を電力で引き寄せられん。表面の部品を絶縁体に近い物と交換したのだろう?」

「知ってて逃したくせに」

「どうせ変わらんからな。時間稼ぎになると思ったんだが……」

「残念だけど、ウチの石は簡単に取れないよ」

 

 時間稼ぎの間に石が届く計算をしていたはずだ。

 だが、ホロメンは誰一人として引けを取ることなく、一定の成果を収めている。

 ロボ子はそれを知らないが、負けてないと信じている。

 

「もし、他の奴らが全員倒れたとて、俺だけは倒せんさ、貴様のような低能ではな」

 

 ロボット内部から音声が拡散されて聞こえる。

 わざわざ、ロボ子一人を対象として言葉を投げる辺り、やはり「そら」の内に眠る力を強く買っている。

 

「付け加えるなら、有能と思われるそこの歌姫候補も、今の様子からは力を微塵も感じない。危険な芽は早々に摘むに限る。少々手応えのない暴力になるが、まあ許せ」

 

 とうとう稼働を始める巨大ロボ。

 デカいくせして鈍間ではない。

 

「貴様を鉄屑にして、後ろの奴も塵にしてくれる!」

 

 巨大な腕がロボ子を狙う。

 見て動くようでは、到底逃れられないサイズ。

 ロボ子は懸命に駆けるも射程外へと飛び出せない。

 結局そのまま、潰された……。

 

「ロボちゃ……うっ……!」

 

 潰れる瞬間を目撃し、そらは声を張り上げかけ、遅れてくる風圧に飛ばされかけた。

 鉄の拳を中心に強力な風が起こったようだ。

 この風圧は強風級。

 台風の平均風圧ほどの強さだ。

 

「はっ、ブーストのない小型ロボなど相手にならん」

 

 ブーストとは何だろうか?

 火力エンジンのことか?

 確かに、ロボ子にそんな装備はない。

 

 持ち上げられる鉄腕。

 スタジアムの土屑がぱらぱらと舞い落ちる。

 

「ほう……?」

「地面が、柔らかいからね……っほ、ゴホッ」

 

 土煙の中に人影が浮かび上がる。

 煙が吹き消えた時、そこにはロボ子と、彼女の型に空いた穴が目に付く。

 

「この土が……柔らかい?」

 

 一般人のそらが屈んで土に触れる。

 スタジアムの土が、人の身体型に穴が空くほど柔らかいはずがない。

 そらの手にはザラザラとした土の触感と、押しても一切歪むことのない無弾力性が伝わる。

 

「小型故か、このサイズだと力が分散されてそうはいかない。意外な利点もある物だな」

 

 ロボ子はチラとそらを見た。

 最大の懸念点がそらの存在だ。

 そらには能力がない。

 特殊な力も、今のところ見当たらない。

 こんな化け物じみた敵でなければ、活躍の機会も多かったろうに。

 哀しきかな、この巨大鉄屑ロボ相手では、そらには太刀打ちできない。

 だが、ここで逃すにしても、一人投げ出すのは危険だ。

 

 先程ねねの放送があった。

 運が良ければ数名が助っ人に来るはず。

 そうすれば、もっと何か、コイツを討つ算段が立つ。

 

「あの放送に頼っているな? あれには俺も驚かされた。大方、ブラックがしくじったんだろうが……ま、何人増えようと、俺のこの結合じゃ、もう敵わなんさ」

 

 改造に時間をかけた事によるアドも、Aにすれば些細な問題。

 

「ボク一人じゃ流石に……」

 

 ロボ子はそらから一定の距離を保ちつつ、ロボとも距離を取る。

 まあ、ロボットとの間隔など、あってないものだが。

 

「後ろの女に気を遣っているようだが、意味などない」

 

 巨大な腕が翳される。

 

「分解」

 

 ロボットの一部が分解され、数多の鉄屑が宙を漂う。

 ロボ子の肌に感じるこれは、磁力だ。

 地面から、多少の砂鉄が浮遊していた。

 

「モルティステラ」

 

 分解された鉄は、Aの合図と共に豪雨のように降り注ぐ。

 攻撃範囲はスタジアム全域をカバーできる。

 ロボ子とそらを同時に範囲に抑え、鉄の星屑を燧無しに吹き飛ばす。

 

 ここで距離を取ったことが仇となる。

 ロボ子がそらを庇えない。

 

「くぅっ……!」

 

 ロボ子は顔を腕で隠して守る。

 しかし、それに手一杯。

 背後のそらは無防備だ。

 いくら鋼鉄のロボ子でも、勢力のある鉄屑の雨の中自由に身動き取れない。

 

 

 …………。

 

 

 そらの目には、世界がスローに見えた。

 脳が生き残る術を求めている。

 一つ一つの鉄屑が、鮮明に瞳の奥に投影される。

 隙がない。

 避けられない。

 身を守れない。

 何か、何か……。

 自分にできる事は……。

 

 鉄屑が、徐々に距離を縮めている。

 こんなに飛翔速度が遅いのに、体は動かせないし、頭も回らない。

 死を間近に控えている。

 

 走馬燈が脳内で再生されるけれど、殆どが、ここ最近の事ばかり。

 ホロライブに入った……いや、創った。

 初めての心優しい仲間と会社。

 初めての、輝かしいライブ。

 薄々とある、塔の記憶……。

 増える仲間に、心躍らせた時。

 初めての全体ライブで高揚感の抑えられない夜。

 続くライブ。

 仲間の涙に心を苦しめた数日。

 色々あった人生。

 明白に映る近年と、暗幕の掛かる遥か昔。

 そして今、この裏世界にいる。

 想う時間は無いが、メモリに残された想いが鮮やかになる。

 ここに来て、どうしたかったのか。

 まだ、終われない。

 夢がまだ、叶ってない。

 自分の夢も、仲間の夢も、ファンの夢も。

 誓った夢を、諦めきれない。

 生きろ。

 死ぬな。

 戦わなくていい。

 逃げなくていい。

 自分の力でなくていい。

 ときのそらには、戦う以外の、誰にも負けない、力がある。

 まだ人生ライブは、終わらない。

 

 

 ………………。

 

 

 現実に引き戻された。

 依然、目の前には鉄屑に覆われた空が広がる。

 生死の狭間に立って、そらは、心に誓う。

 みんなの夢を背負って、夢の舞台に立つ事を。

 

『ステキなユメだね』

 

 声が響いた。

 聞き馴染んだ声が。

 世界から? 心から? 脳から?

 どこから飛び込んできたのか、定かではない。

 でも、それは間違いなく、「自分自身」の声だった。

 正真正銘、「ときのそら」の唄声。

 

『ワタシもオウエンするよ』

 

 どこからともなく共鳴する「自分」の声に、そらは鼓舞された。

 激励された。

 

 胸の奥底から湧き上がる。

 彷彿と熱を帯びてゆく。

 これは、力?

 未知なるエネルギーが、全身を猛スピードで駆け抜ける。

 心地良い。

 

「……っ!」

 

 現実を目の当たりにした。

 降り注ぐ数多の鉄屑。

 眼前まで迫る鉄塊たちが巻き戻るようにAの元へ帰って行く。

 まだ、一つとしてそらには命中していない。

 何となく、好機と捉えて、そらはロボ子の背後まで走る。

 駆け出しと同時にまた、思い出したように鉄屑が放射された。

 

「背中借りるよ」

「えっ!?」

 

 ロボ子の影に隠れて、鉄の雨を凌ぐ。

 ロボ子には悪いが、最も近い雨よけがロボ子だったのだ。

 

「攻撃を、先読みした……?」

 

 Aはそらの未来予知のような行動の速さに驚愕する。

 ロボ子もそらの動きは信じられないと目を見開く。

 

「先読み……?」

 

 別に、先読みも何もない。

 だって、Aが勝手に鉄屑を引き戻して、また打ち出して……。

 

「まさか……!」

 

 巻き戻った?

 

「えいっ!」

 

 Aに手を翳してみた。

 何も起きない。

 バカに見える。

 

「……ふっ、偶然か」

 

 行動のタイミングが被っただけ。

 そう片付けて、Aは右腕を大きく振り上げた。

 

「撃てー!」

 

 ドドンッ!

 

 突如として、勇ましい号令と一つの砲撃が邪魔する。

 砲弾が大型ロボの右腕に命中し、破裂した。

 爆煙が上がるが、屁でもないように澄ました態度のまま佇んでいる。

 

「ぁ……!」

「……随分と、大所帯じゃないか」

 

 スタジアムの上空から影を落とす一隻の船。

 見慣れたマークが帆に掲げられ、あり得ない強風にはためく。

 いよいよ到着した、アクアマリン号。

 その船首で格好つけているのはマリン。

 片脚を乗せて睥睨するように巨大ロボに人差し指を突き立てる。

 大砲も、船首の設備だ。

 

「みんな!」

 

 ロボ子は天を仰ぐように見上げた。

 甲板から幾つもの影が飛び降りる。

 既に、船はUターンを始め、引き返そうとしている。

 

「「とう!」」

 

 まつり、はあと、あくあ、あやめ、おかゆ、ころね、ミオ、ルーナ。

 そして今ここにいる、ロボ子、そら。

 精鋭は計10名。

 

 あっという間に、船は旋回し、メル、スバル、シオン、マリンを乗せたまま事務所へと赴く。

 

「うひゃー、でっけぇ……」

「ロボットかっけー!」

「二人とも大丈夫?」

「ふう、今のバンジー怖すぎ」

「まだ10人か」

「アレって人なの?」

「石どこだでな」

「なんか、地面が大変な事にってない⁉︎」

 

 大人数でコラボした時、ホロメンの騒がしさは抜群だ。

 ここにその内10名が召集され、取り決まった纏め役は無し。

 喧騒を越える雑音がスタジアムで共鳴を起こし、耳から頭を掻き乱す。

 もはや、誰が何を言っているか、分からない。

 

「……聞くが、俺の仲間たちはどうした?」

 

 Aは喧騒に血圧を上げる。

 ロボットの操縦席で一人、勝手に頭に血を昇らせて怒気の篭った声を拡散させる。

 

「まつりたち、スペードやっつけた」

「ウチたちは、Qって人」

「あやめちゃんがJを倒したよ」

「あくたんはトランプだっけ?」

「しゅばたちと、ジョーカーC、捕まえたのら」

 

 Aは戦慄した。

 もし、倒せたとしても、精々J未満と踏んでいた。

 寧ろ、J越えのQ、トランプ、ジョーカーまでもが手に落ちている。

 

「……それで、その波のまま威勢良くここへ登場か? ヒーロー気取りか? こんな大勢揃って、ああ⁉︎」

 

 Aの張り上げた声が、拡声器を通してスタジアムを揺るがす。

 心臓に響く大音量の怒り。

 

「図に乗るなよ! 俺はAだ! 寄って集って潰せるほど、カスじゃねえぞ」

 

 地面に埋まっていた鉄屑が、ロボットへ集合する。

 電磁力が、付近の鉄を寄せ集め、我が身としていく。

 

「くっ! 待て……! い、く、な……!」

 

 あやめの刀までも吸い寄せられる。

 それをあやめは鬼神の力を解放して阻止した。

 

「ロボ子さん! そらちゃん! どうすればいい⁉︎」

 

 早速臨戦態勢へと入る両者。

 情報共有を求める。

 

「あいつの背中に動力源がある! ボクがそこへ行ければ、破壊できる!」

「ロボ子さんにしかできない⁉︎」

「分からないけど、ボクなら確実!」

「オーケー!」

「全員! ロボ子さんを動力源へ送るサポート!」

 

「「了解‼︎」」

 

 多勢に無勢、それが通用しないAに立ち向かう。

 一人の号令で、各々が散開し、自分の役割へと向かう。

 

「貴様らに、俺は倒せん! 思い知れ!」

 

 ロボの右腕が勢い良く引かれる。

 

「ポーダー・ディ・イエロ」

 

 隕石の如く、鉄拳が落下する。

 真下には、複数のホロメン。

 一部のものは、回避も間に合うまい。

 

「アクアフィルター」

 

 あくあが薄い水の層を空中に複数漂わせる。

 メンバーを守るように、水の層は拳の前に立ちはだかる。

 水から空気、空気から水への移動の繰り返しで速度は微かにだが弱まる。

 

「蜘蛛の巣」

 

 更に、水の最下層にはあとが赤い糸で巨大な蜘蛛の巣を構築。

 鉄拳は、蜘蛛の糸にかかり、減速。

 

 射程内にいたメンバーは、攻撃範囲から既に外れた。

 ただ一人……そう、あやめを除いて。

 

「鬼神一刀流、鬼門・閉」

 

 暴走する覇気を放出し、愛刀を力強く抜き取る。

 気魄、満ち溢れるその有様は、正しく鬼神。

 

 鉄拳が、地に落ちた。

 

 ピシッと、ひび割れるような弱々しい音。

 気付けば、柄に手をかけ、納刀したあやめが鉄腕の影に隠れていた。

 

「中々力強い覇気だが、制御できていないな。惜しいが、そんなんじゃ俺には傷一つつかねえ」

 

 Aは勝ち誇った声で片脚を軽く浮かせた。

 

「コソコソしてんじゃねえ!」

「うわっ!」

 

 背後に回ろうと身を隠しながら移動していたまつりたちに気づく。

 浮かせた足で踏み潰そうとしたが……

 

「あ? 足が動かねえ」

 

 その場には、ルーナもいる。

 ルーナに接触攻撃はできない。

 

「なら……」

 

 浮かせた足は、誰もいない所に下ろす。

 激しい風圧に吹かれる。

 

「モルティステラ」

 

 また、全身から鉄具が分離し、中空で漂う。

 標的は、地上のもの全て。

 

「みんな、気をつけて!」

 

 そらの叫びとほぼ同時に鉄の雨が押し寄せる。

 スタジアム内は射程内。

 回避の術はない。

 

「花車!」

 

 まつりが複数名を庇いながら、バチを振り回す。

 空を撃ち、弾ける花火が鉄を弾き返す。

 

「神風」

 

 あやめが刀を回すように振るう。

 飛び出す風の斬撃が、触れる鉄材を蹴散らした。

 

「繭玉」

 

 はあとが数名と自身を赤い糸の球で覆う。

 幾重にも纏った糸の塊は鉄の雨だろうと容易には崩れない。

 

「チクショ、やっぱこれじゃ火力不足か……ウゼェな」

 

 絶妙な具合に防がれ、舌打ちした。

 バラけた鉄材が、グッとロボの身体へと吸収されてゆく。

 

「タロットカード、正位置、No7、THE CHARIOT」

 

 ミオの一声に呼応するように、ロボ子の背が輝く。

 意味は、前進。

 

「ロケット花火!」

 

 更にその行動の隙間に、まつりが一本のバチを巨大な機体の顔面付近に投函した。

 まつりの腕力一つでは、決して届かない高さ。

 ロケット花火のようにバチの後部から小さなエンジンが噴射し、勢いに乗せてゆく。

 そして、機体の巨大な眼前で夏の風物詩が開花する。

 

「あ? なにがしてぇんだ?」

 

 チラと花火を見た。

 痒くもない、眩しくもない。

 鉄だから、引火もしない。

 

「ロボ子さん!」

「オッケー!」

 

 ロボ子は巨大重機の股くぐりを狙い駆け出した。

 今の花火一つで、Aのバランスも危険意識も揺らぎはしない。

 でも、ここで駆け出す。

 

「意味ねぇってんだよ!」

 

 怒れるAの巨大正拳突き。

 当たらずとも、風圧で弾かれる。

 これが続けば、道は開けない。

 

「アクアフィルター」

 

 水の膜を連ね、威力を殺していく。

 ある程度まで威力が下がれば、あやめの攻撃で更に速度を抑えられる。

 

「一刀流・鬼おろし」

 

 正面から衝突し合い、火花が散る。

 数秒間、その巨大な鋼鉄の腕を空中に止めることに成功していた。

 

「レッドストリング」

 

 はあとが硬質な糸を大量に放出し、滞空している腕を飛び越える。

 腕の更に上空を通過し、放物線を描いて地面へ。

 そこに待ち構えるは、この中では力のあるころね。

 

「持ったでな!」

「フレキシブル」

 

 簡単な単語一つ。

 その簡単な掛け声で、伸びた糸は収縮し、滞空中の腕を強引に地面へと引き落とす。

 多少の風圧はあるが、この風ならロボ子は耐えられる。

 

 軽い風に身を晒しつつも、前へ。

 ロボ子は地に落ちた腕に跳躍し、乗った。

 

「いっけぇー!」

 

 後方からの声援。

 これで、直接攻撃して来れば、自らの腕をも破壊する結果となる。

 

「稚拙だな。分解、変形」

 

 ロボ子が足を着いた腕。

 それを形作る鋼鉄たちが騒めき、震え、分解され……。

 動き回り、飛び回り、ロボ子を囲い圧縮する。

 

「ぐぁっ!」

 

 ロボ子は一瞬で手中に収まった。

 

「無駄な足掻きはよせ」

 

 顔だけ覗かせるロボ子の悲痛な表情に、機体内でAはほくそ笑む。

 それを予測して、そのロボ子もまた、苦笑する。

 

「無駄な足掻き? これでも?」

 

 ロボ子の姿が霞む。

 目に見えて、その身体のあらゆる部位が変化して、一人の別人がロボ子の身代わりとなって手中に収まっていた。

 

「ニセモノ……!」

「ただの……見間違いじゃない?」

 

 巨大な片手に絞められるのは、猫又おかゆ。

 花火を打ち上げた一瞬で、本物とすり替えた。

 なら?

 それなら、本物は?

 

「チッ」

「わっ……!」

「蜘蛛の巣」

 

 舌打ちし、おかゆを全力で捨てた。

 器用なはあちゃまが、おかゆを見事絡め取り、怪我はなし。

 

「本物は何処に……」

「テメェ! ぉヵゅに何してんだぁっ!」

「あ? はぁ⁉︎」

 

 計画、計算、算段。

 全く関係なく、おかゆに危害を加えかけたAへ制裁を。

 ころねの跳躍は、不思議と爆発的な威力を見せ、巨大ロボの腹の高さまで飛び上がる。

 拳を握り、目を赤く光らせ、全身から一つの拳にエネルギーを集中。

 ころねのワンパン宣言がまさかここで発揮は……。

 

「憑依神獣、しばきあげパンチング‼︎‼︎」

「ポーダー・ディ・イエロ‼︎」

 

 二つの対立する拳が、熾烈に衝突した。

 Aの鉄拳と激突したのは、正体不明をその身に宿したころねの拳。

 サイズ差からは想像もできない真っ向なぶつかり合い。

 数秒、ころねとAの力差は存在しないかと思えた。

 が、その数秒後、ころねが押され始めると、一瞬で後方に殴り飛ばされた。

 

「ころね!」

 

 誰の補助も間に合わず、ころねは目にも止まらぬ速度で壁に激突。

 

「ッ……‼︎」

 

 悶絶の声を上げる暇もなく、ころねは意識を削がれた。

 頭から流れる血が見えた。

 脳震盪が気絶の要因だが、何かが緩和剤となり、命は保った様子。

 壁にヒビを入れ、ころねがそこから地面に崩れ落ちる。

 

「ころねちゃん」

 

 それを抱き止めたのは、丁度後方待機していたそら。

 上手くはないが、ころねの容態を意識してキャッチできていた。

 

「……! ロボちゃん!」

 

 そらの、美しさ溢れる全力の叫びがスタジアムに木霊する。

 見えない、けど、見える。

 ずっと先……巨大ロボのうなじ辺り。

 高密電圧制御機器。

 それを捉えた仲間が。

 

 ころねとAの破壊の正面衝突で起きた強風が、ロボ子の被っていた帽子を吹き飛ばしてしまったようだ。

 よって、効果が解かれ、姿が露呈する。

 

 そう、あくあから借りた、陰キャップ。

 おかゆに自身の姿を投影させ、自身は視界から消える。

 この隙に、背後へと忍び寄り、ロボを登り、うなじ辺りの重要パーツを破壊。

 

「いつの間に……!」

「終わりだぁ!」

 

 Aの反応は一歩遅く、ロボ子の腕が数本のコードを握っていた。

 電流、電圧操作の核となるコード、それを引き千切った。

 

「……」

 

 静寂が流れる。

 

 …………。

 

「……止まった」

 

 巨大ロボの動作が停止し、静寂が長引く。

 

 これで、最大の脅威は消え去った……と、期待した。

 

「残念だったなぁ! そんな機械無くたってなぁ、この鉄人は動くんだよ」

 

 巨大ロボが再び息を吹き返し、胎動を始める。

 

「なんで! 機械の核はこれのはず!」

「ああ、それは間違いなく電気を流して機械を電力で作動させる小型機械だ」

「くっ、ならなんで!」

「それは俺が……電磁結合の能力者だからだ」

 

 ホロメンの顔に絶望が走った。

 

 

 戦いはまだ、終わらない。

 

 





 皆様、どうも、作者、です。

 さあ、今回でずって欠番だったロボ子さんとそらちゃんの戦い。
 更に他のメンバーも集結して、大詰め、に見えますが、どうでしょう。

 ロボの無力化、かと思えば再稼働。
 あやめの今の全力や、ころねの不思議な全力ですら攻撃を受け付けないあのロボを、どう攻略するのでしょうか。

 次回が、この章の最重要回です。
 遂に……あの人の覚醒?

 因みに、そらロボ以上に欠番の続いたあの人も、もうじき……。

 さて、それではまた次回。
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