歌姫伝承〜ホロの異能大戦ストーリー〜   作:炎駒枸

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77話 最後の偶然

 

 K、J、スペード、クラブ、ラヴ、レッドの計6名。

 最悪の事態を想定し、敵も動く。

 彼らは現在中央塔。

 側には捕らえられ、傷や血で我が身を汚すぺこみこの姿もある。

 

「随分と人手が少ないな」

「トランプとノーカードはもはや接触不可能、Aの元へ行けば邪魔になる。ジョーカーCに関しては場所が分からん」

「Qはやる気無くしたみたいだったぜ」

「俺たちを集めたジョーカーMとダイヤはどうしたんだー?」

「ヒッヒッ、己を閉じ込めたのさ、彼らは、その身を、その内に」

「全く持って意味不明だ。最終局面で責任転嫁し、銷鑠縮栗(しょうしゃくしゅくりつ)か」

 

 混沌とした会話の一部から展開は予測できる。

 ぺこらは耳をひくつかせて様々なことを思案した。

 

 因みに、敵の実際の行動はこうだ。

 同居ーずから逃げたダイヤとジョーカーM。

 Mが真っ先にスペードの安否確認へ向かい、縛られ拘束された所を解放。

 経緯を聞くとそこから次に、Kを探し始める。

 大きな花火や雷光などを目印に発見して、スペードがKを救出。

 後は場所の分る者たちを掻き集め、Kの能力で再生しこの場へと集う。

 

 そこで偶然、先行して石を返す時を待っていたぺこみこに遭遇し、呆気なく2人は敗北。

 こうして現状が完成した。

 みこは既に意識を失くしている。

 ぺこらも意識こそあれど傷は深く、呼吸はとても荒々しい。

 ただ、人質に使う予定なのか、2人とも生かされている。

 

 途中でぺこらの能力も切れ、もはや打開は不可能。

 ……だと、思っていた。

 

 しかし、ぺこらはその自慢の聴覚で察知した。

 とある2人がこの場に潜んでいる。

 小声も拾った。

 るしあとトワだ。

 2人を救出する算段を立てているようだが、中々そんな隙はない。

 

 やがて……

 

「悪いなウサギさん、客らしいから人質役、やってくれよ」

 

 ラヴがぺこらを連れて外へ出る。

 外へ出たのは、ラヴに加え、K、Jと精鋭揃い。

 

 気絶したみこは中へ残され、見張にはスペード、クラブ、レッド。

 

「うっせえ……歩くから触んじゃねぇ……ぺこだ……!」

 

 腕を掴もうとする手を払いぺこらは自らの足で塔の外へ。

 逃げればみこの命が無い。

 迂闊な逃亡はできないと踏んで、誰も咎めない。

 

 歩くと、ぺこらの腕に巻かれた鎖がチャラチャラと音を鳴らす。

 

 一度ぶちのめした男に捕まる。

 この上ない屈辱感。

 素直にスタジアムへ行けばよかったと嘆くのみ。

 

 みこだけでも助けてもらいたいが、トワたちが動けば、スペードの能力で即座に伝達され、ぺこらが殺される。

 逆もまた然り。

 彼らは常に小さく空間を繋げているし、常に殺す準備をしている。

 

 悪巧みが得意なぺこらも、これはお手上げ。

 今から参上するであろう仲間たちに、託す。

 

 

 正面から、大きな勢力が押し寄せてくる。

 先行して一人、角巻わため。

 あらゆる障害物を突き抜けて一直線に猛進して来た。

 

「ぺこら……先輩」

 

 疲れ、焦りに息を切らし、優しい目が少し吊り上がる。

 続いて数名も到着。

 

「すまねえぺこだ、捕まっちまった!」

 

 両者に下手な先手を打たせぬよう、ぺこらがまず口を開く。

 わためが駆け出そうとしているが、それはまずい。

 後ろのメンバーも臨戦態勢だ、まずい。

 

「落ち着いた方がいいぞ、他にも人質がいたらどうすんだ?」

 

 Jが全員を威圧し抑制。

 ホロメンの誰もが硬直した。

 力技でぺこらを救っても、他の人質がいれば危険。

 安易な考えや、安直な行動は仲間の命取り。

 悔しいが、手出し不能。

 

「K」

「つまらない重要暇つぶしだねえ」

 

 Kが触手を発生させ、ホロメンへ向ける。

 一瞬身構えたが、ぺこらを見せつけられ渋々と戦意をしまう。

 そして、その場の全員、触手で締め上げられる。

 

 この触手は危険だ。

 なんせ様々なものを酸のような液体で溶かしてしまう。

 Kたちの言う「腐敗」のことである。

 

「石はどこだ?」

 

 Jからストレートな質問。

 皆が口を閉ざし、触手の蠢く音だけが響く。

 

「1人くらい溶けても、開かせれる口はたくさんあるんだぜ?」

 

 ラヴの野蛮な発言。

 歯を食いしばる。

 誰かが……死ぬかもしれない。

 

「時間を稼ごうとしてるな、やっぱ戻しに行ったか」

 

 大勢で中央への突撃。

 しかもほぼ無策。

 四方の石を戻し、金の石もこの場へ返そうとしている証拠。

 

「だが残念ながら――」

 

 Jがポケットから一つの石を取り出す。

 それは暗闇の中、仄かに金色に輝く。

 

「金の石はここにある」

 

 スッと石を見せ、直様ポケットへしまう。

 警戒している。

 十分な危険因子と見做されている。

 

「いいの、アンタら」

「……?」

「アタシたちも、2人の命を預かってんだけど」

 

 ぼたんが口論で反撃に出る。

 キーパーソンである魔術師2人の生殺与奪権は、もはやこちらのもの。

 どうなっても知らないぞ、と言うハッタリに近い脅し。

 

「横暴キャットのライオンガール、どこ吹くそよ風な話だねえ」

「うぐっ!」

 

 ぼたんを締める力が強まり、呻きを上げる。

 Kは不可解な笑いを浮かべ、黒い風を浴びた。

 

「2人がいないとこの世界を閉めれないからな」

「それとは逆に、アンタらは1人くらい減っても、問題なそうだけどな」

 

 殺害予告とも取れる台詞に身の毛がよだつ。

 Kの笑みが深くなる。

 一部のものは、この恐怖心に既視感を覚えた。

 Aを前にした時と同じ。

 今ここで、コイツらに――敵わない。

 

「トワワ先輩!」

 

 ねねが叫んだ!

 

「「え⁉︎」」「なっ!」

 

 ねねの絶叫と共にぺこらの体が浮く。

 まるで誰かに、担がれている。

 

「スーパーねねちパンチ!」

「ぶへっ!」

 

 さらにさらに、Kが前触れなく吹き飛んだ。

 偶然だろうか?

 宙に浮くぺこらが丁度横切った時だ。

 

 勢いで触手が途切れ、全員が解放される。

 

「レッド! そっちを殺せ!」

『うわぁーー! なんだお前ら!』

「どうし――」

 

 スペードの小さな移動空間を通じて声が響く。

 レッドが何かに慌てふためく声。

 焦燥に駆られるラヴがふいにその空間に振り向く瞬間、真横にもう一つ。

 今度は人が通れるほどの移動空間が出現し、そこから現れるは――

 

「おらぁぁぁぁぁ!」

 

 トワ、の後ろからみこ、の後ろからるしあ、が飛び出してきた。

 

「J、頼む! スペードてめぇ、裏切ったのか!」

「くっそ! フラットォ!」

 

 ラヴが塔内へ向かい、同時にJが地面に能力を発動させる。

 地に立つもの全ての足場が揺らめき、転倒する。

 力が無に帰されている。

 無視して立てるのは、あやめ、メル、アキロゼ、ねねの4人。

 そして、地に足を着けない者、ちょこ、スバル、かなた、トワ、るしあ、そして担がれるみこ、ぺこら。

 他は全員が地に転倒し転がる。

 転倒時の力もゼロなため、ダメージはないが、体は一切動かせない。

 

「すまないラヴ、あの悪魔に、能力を使われた」

「何⁉︎」

 

 塔へ向かうラヴを引き留めたのは、他でもないスペード。

 トワに全く同じ能力を使用されたと断言し、レッドとクラブと共にこの場に姿を表す。

 

「うわった、ぺこら先輩!」

「えっ、ちょ」

 

 何かに担がれていたぺこらが空へ投げられた。

 腕に鎖は巻かれたままだが、足の自由は利く。

 訳も分からず、ぺこらは宙を蹴り、空へ飛び出して着地を回避。

 そして、ぺこらを担いだ者――そう、ねねの姿が可視化される。

 皆が不屈の心を再び取り戻したことにより、脱力して直立できなくなった。

 そのねねの頭から転がり落ちたのは、Aとの戦闘であくあが落とし、瓦礫に埋もれたと諦めた、陰キャップ。

 

「あてぃしの帽子……」

 

 実は、この場に誰よりも先に到達していたのは、ねねであった。

 ぺこらとみこ、トワとるしあの折れた心でパワーアップして、わためを超える速度で辿り着き、内部へ侵入。

 そこで、トワとるしあ、みこの存在を確認。

 常に助ける機会を窺っていたため、合図さえできれば、同時に奪還できると踏んだ。

 そして、運良くスペードが空間を繋げていた。

 敵が意思疎通のために開いたゲートが、ホロメンに味方した。

 

「おいK! 何してんだ! お前なら余裕だろ!」

 

 再生速度の速いKが中々復帰せずJがイライラしている。

 

「この人だけは、絶対に動かしちゃいけんけん」

「僕たちが押さえておく」

 

 ノエルとかなたがKを地面に押さえつけていた。

 ノエルはメイスの先端を背に押し付け、かなたは首根っこを掴んで、魔力使用を妨害する。

 2人を戦力から差し引いても、Kの足止めは大きなアドとなる。

 Kが今動けば、Jの能力で動けないメンバーは一網打尽にされる。

 適切な判断だ。

 

「畜生! 滅茶苦茶だ!」

 

 結局、使用可能な全戦力動員の全面対決。

 

「スペードはKをどうにかしろ! J、お前は石絶対に渡すなよ!」

 

 あのラヴが的確に指示を出す。

 意外に司令塔の素質が備わっている。

 指示に合わせ、敵も迅速に行動を開始。

 スペードは空間を開きKを通そうとする。

 Jは、指示に従うと言うより、プライドを優先している。

 

「新天地開拓」

 

 地に伏して動けないAZKiがぼそっと唱えた。

 Kの真下に、透明な地面が形成される。

 この透明な地面の上にいる限り、敵の攻撃も味方の攻撃も、一切の干渉ができない。

 つまり、Kはノエルとかなたが押さえ、空間移動のホールは繋がらない。

 Kは完全に無力化された。

 

 AZKiの機転が利きすぎるアシスト。

 敵はK奪還に手も足も出せなくなった。

 

「最終決戦するとしようや! 鬼神!」

 

 まるで眼中に1人しか映らない、そんな執着心でJが剣を手にあやめと決闘を申し込む。

 

「石は余に任せて」

 

 あやめは買った。

 そして、勝つと断言した。

 あやめも手負いで覇気すらまともに使えないが、Jもあやめが倒している。

 全力の衝突をした以上、体力は消耗しているはず。

 今のあやめは恐らく、Jと互角以下。

 なら、互角で押し切る。

 

 後は、あやめが石を奪還し、元の台座に戻すまで、敵を足止めする事。

 

「素直に一騎討ちより……!」

 

 ぼたんが拳銃片手に飛び出し、Jの肩へ銃弾を放つ。

 決して外れる事のない弾は、奇妙に弧を描き、Jの間近で弾かれた。

 

「邪魔すんな!」

 

 何の変哲もない剣に衝突した銃弾はどこかへ消え、その剣の背後からJの形相が現れる。

 それが大迫力で、流石のぼたんも気圧される。

 尻込みの一瞬に、Jの剣はぼたんの首元を狙い風を斬り始めた。

 

「一騎討ちなんよね」

 

 あやめが割り込み、一本の刀で食い止めた。

 Jの目を見上げ、ぼたんを含め、皆に言う。

 

「手出さんといてよ」

「……お前らも手ェ出すなよ!」

 

 互いに完全なる一騎打ちを所望。

 ならば野暮はよしておこう。

 

「ぼたんちゃん! これ撃ってぺこ!」

「あい!」

 

 ぺこらが腕の鎖を振り回して解放を乞う。

 ぼたんは銃口をぺこらへ瞬時にスライドし、二発。

 一発は右手首のチェーン。

 もう一発は左手首のチェーンを撃ち切った。

 

「おいハート! こっち向けぺこ!」

「クッソ!」

 

 ぺこらが真っ先に突撃したのは、やはり因縁を感じるラヴ。

 能力の類似といい、拘束された恨みといい、何かと縁がある。

 これはもう、倒せと神が暗示している。

 ぺこらの右脚とラヴの左手が激しく衝突し風を吹き起こした。

 

「え⁉︎ ぺこらちゃん呼んだ⁉︎」

 

 はあちゃまがハートに反応して駆けてくる。

 しかも呼び捨て。

 

「あ、すんませんぺこ! こいつの事で……」

「援護ね、オッケー!」

 

 ぺこらの謝罪そっちのけ、誤解もまんまで糸を放射。

 ぺこらと同様に一方向にのみ働く抵抗力は、糸に対抗できない。

 呆気なく両腕を抑えるのだが。

 

「すぅー……ファイアー!」

 

 糸が炎に焼かれ、千切れる。

 レッドの割り込みだ。

 

「ちょっと! 何なのよ」

「邪魔しちゃダメだって」

 

 炎の曲芸師、レッド。

 フブキやあくあと似た系統の能力で、炎バージョン。

 ただ、卓越した技術やトリックで、火の上を高速で移動したりできる。

 

 ラミィに氷漬けにされたが、Kに解放されてまたこの場にいる。

 

「相性最悪じゃない!」

 

 はあとの糸は炎に焼かれやすい。

 レッドとの勝負は避けるべき。

 幸いにも、この場に味方は多い。

 相性の良いメンバーなら、いる。

 

「うわ! 水々しい」

 

 レッドを囲う水分。

 みずみずしいではなく、水。

 炎に有効な手段は、水と氷。

 内の一つの水を無錬金生成する能力。

 あくあの力。

 水分は一塊になってレッドを包み込む。

 

「ラミィちゃん!」

「はい! フブキ先輩」

 

 ラミィとフブキが飛び出し、両サイドから冷気を放つ。

 凍てつく風で水はみるみる凝固し、レッドは氷漬けに、

 

「ならないんだなー!」

 

 ラミィの背後に回ったレッドが右手を翳す。

 掌から高熱の炎を放出し、焼き尽くそうとした。

 

「何だ! 強風⁉︎」

 

 放たれた炎は、近距離であるにも関わらず、ラミィに接触する前に風に乗って空へ軌道を逸らされる。

 熱は残るし、噴き出る汗は気持ち悪いが、ラミィへの被害はそれのみ。

 メルが天候を操作して、暴風を起こしている。

 

「ごめん、メル先輩!」

「全然!」

 

 メルはにかっと笑って応えた。

 

 

 ……………。

 

 

 ひたすらに乱戦が続いた。

 ぼたんの必中が、クラブの見切りに通用しなかったり。

 あくあとレッドの拮抗した水と火の争いがあったり。

 るしあとトワでみこを守ったり。

 ちょこがみこの怪我を治療したり。

 あくあの陰キャップを投げ回して、みんなで使いまわしたり。

 能力的にルーナが戦力にならなかったり。

 スペードの空間移動に翻弄されたり。

 ポルカの現出でミオの消滅したカードを無限に生成したり。

 途中からフレアが参戦したり。

 

 とにかく、人数差をものともせず、敵グループはホロメンと対等に渡り合った。

 

 戦局の変化は、あやめとJの一騎討ちの行方から。

 

 剣と刀の交わりが遂に終幕する時。

 

「一刀流・修羅威(しゅうらい)

「死屍累々!」

 

 熾烈を極めた決闘の末、2本の刃が切り裂く。

 

「…………」

「…………なんだ……!」

 

 Jは気迫に背筋を凍らせる。

 今まで、感じたこともない、鬼神として、剣士としてのその気迫。

 確かに斬った。

 あやめの右肩から左の脇腹にかけてキレ筋が入り、血飛沫を上げてその場に倒れた。

 決闘には勝っている、はず。

 剣を握っていた右手が痺れる。

 あやめはまたしても、Jの剣を破壊し、武器を奪った。

 

 いや、武器だけにとどまらない。

 

「…………」

 

 Jの冷や汗が、収まらない。

 痺れた右手から、震えが全身へ伝わる。

 

「おいJ! 何してる!」

 

 勝ったと言うのに、動かないJをラヴが呼び戻そうとする。

 だが、脚も震えて、動けない。

 

「あやめ!」

 

 血を流して倒れるあやめを、スバルが抱えて跳ぶ。

 浮遊を巧みに使って、ちょこのもとへ。

 

「弱ってる……今なら!」

 

 トワがコピーコードをJに繋ぎ能力を借りる。

 JとKは強すぎてコピーが出来なかったが、不思議と衰弱した今なら取れる。

 

「オールフラット!」

 

 トワが地面に能力を発動させた。

 その時、敵は全員地に足をつき、味方もほとんど地に足を付けていた。

 Jのように仲間を思えるほどトワはシビアな能力使用ができない。

 だが、一先ず敵戦力が直立できず地に倒れる。

 

 能力を無効化するのは、飛べるもの。

 AZKiの能力圏にいるK、ノエル、AZKi、かなた。

 力の強いアキロゼ。

 

 ぺこらは地についていたため動けないし、ねねも既に不屈の力は消えている。

 

「ラヴ!」

 

 スペードがラヴの真下にホールを展開し、空へ投げ出す。

 そこからラヴはぺこらから習った容量で空を跳ねる。

 トワは一旦無視して、Jに近寄る。

 コイツが、石を持っている。

 

「させません!」

「あっ!」

 

 動けないJをまたしてもスペードがホールを開いて空へ投げ出す。

 

「スペードぉ! 俺は?」

「お前は俺と同じで意味ないだろ!」

 

 レッドの文句に正論で返すのは、クラブだった。

 ラヴが空でJをキャッチしてポケットを弄る。

 石が……。

 

「これか!」

「オッラァ!」

「があっ!」

 

 石を発見したラヴを、殴り飛ばした。

 誰が?

 ココだ。

 神社から飛んできた。

 

「解除!」

 

 一時的に無の能力を解除し、ラヴとJを地面に落とす。

 見事にラヴは気絶し石を手放した。

 

「再起!」

 

 再び力がゼロへ。

 石は誰もいない場所へ転がり、キラキラと輝きを放つ。

 動けるものが、一斉に動いた。

 我先にと手を、足を伸ばして、石へ。

 

「石だけは!」

 

 幾度でも。

 スペードのホールに石は吸われた。

 

「どこだ――⁉︎」

 

 繋がる穴が、他にない。

 この場にあるホールは、その一つだけ。

 

「どこへやった!」

「ふっ、この街のどこかですが?」

「クッソ‼︎」

 

 遂に戦闘は厳しいと判断したスペードが、最終手段に出た。

 街のどこかに石を捨て、とにかく時間を稼ぐ。

 魔力の観点から、耐久面では敵側が有利。

 時間をかけてこそ、勝利は見える。

 

「さて、探し出せますか?」

 

 この大多数でさえ、土台無理な話。

 それでも、運や奇跡に賭けるなら、動くべき。

 そうでないなら、策を講じるべき。

 

 メンバーはとにかく無策でも駆け回ることを選択した。

 数名を敵の見張りと拘束に残し、それ以外は石の探索へ。

 石を見つけても、報告する時間さえ惜しいため、塔の台へ直行する事も決まった。

 そのため、捕らえた敵たち含め見張り組は、運良く石が見つかり、偶然にもトラブルなく台座へ収められた時を考慮し、表世界でも人気のない場所へ。

 

 索敵などが得意なメンバーもおらず、唯一物探しに使えるぼたんの補足能力も、まさかすぎる事態なため、石を捕捉対象にしていない。

 足と目を酷使して探す。

 これで終わりに、したいんだ。

 

 

 捜索開始から、20分。

 

 

 ……突如、塔が輝いた。

 各地で捜索していたメンバーが一斉に中央に視線を向けた。

 続いて、四方から4色の光が放たれ、中央へと吸い寄せられる。

 中央塔が金色に輝き、それを朱、蒼、翠、白の4色が囲う。

 黒々とした空で、鮮やかに光が踊る。

 

 次の瞬間、夜が晴れ、正しき夜が空を覆った。

 

「…………」

 

 世界が……戻った。

 

 

 誰が石を見つけたのか。

 それは誰一人として知ることができない。

 

 彼女たちが得た情報を共有できたのは、事後処理を終え、全員の疲労と傷が回復した、約5日後だった。

 

 





 みなさんどうも、作者です。
 さあ、これで遂に半年以上続いた4章が完結です。
 と、言いつつ、次回は後日談的な回です。
 意外と重要なこと言いますが。

 5章はやっと日常編に戻ります。
 ここからキャラも増えます。
 一先ず5章は……卒業までです。
 それと、5章の開始と同時、失礼且つ勝手ながら、るーちゃんの登場を失くします。
 何故会長は書くのに?と思うかもしれませんが、綺麗に卒業した二人と、契約解除や突然の引退になった他メンバーには、明確な違いがあると考えています。
 なので、誠に勝手ながら、5章以降、るーちゃんは登場しません。
 どうかご了承ください。

 さて……気が滅入る話はこの程度で。
 では、また次回。
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