歌姫伝承〜ホロの異能大戦ストーリー〜   作:炎駒枸

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第五章 卒業編
79話 リスナーって、何者?


 

 うさ建夏祭り。

 獅白ぼたん主導のもと開催が決定した、超大型イベント。

 この大型行事は当然ながら配信も行う。

 そして、実際に人を通して、屋台などの出店も設ける。

 しかも、自身の手で作り上げる。

 最後には、ヤグラの周囲で花火を上げる。

 

 今回は、今までとはまた少し異なる試みだ。

 土地はどうするのか?という疑問も多々寄せられた。

 なんと、先日の事件を経て、会社は事務所裏の広大な空き地を購入したのだ。

 国との契約のもとでの購入となり、金額は半額ほど国が負担することとなる。

 ここは、53年前にとある魔術師が事件を起こし、廃園と化した遊園地跡。

 以前はこの場所に石が眠り、遊園地を盛り上げていた。

 そんなテーマパークのような土地を再建するべく、社長は動いた。

 国も動いた。

 そこへ丁度、夏祭り。

 そして秋には、ミオとみこが既に新運動会を計画している。

 

 様々な行事を行うことができ、更に日頃から誰もが足を運べるテーマパークを目指してゆく。

 今後、ここを遊園地とし、自由な建設を行う会社を複数個編成し、各々の好みに合わせた娯楽施設を建設してもらう。

 更に、アクアマリン号のレプリカや、事務所出張版なども設営し、一層盛り上げていく予定だ。

 

 

 多忙な日々へと変化を続けるが、配信活動は止まらない。

 元来、配信型アイドルとして売り出したのだ。

 

 そんな頑張るメンバーと応援する者の、ちょっとしたお話を。

 

 

 

          *****

 

 

 

 歌はあまり、得意ではないと知った。

 歌は好きだが、アイドルを目指すような歌声は持ち合わせていなかった。

 でも、入ったのはアイドル事務所。

 

 理由は他とは変わってる。

 みんなは、歌を聴いてほしい、とか、アイドルしたい、とか……。

 まあ、例外もいたけれど。

 

 この世界は荒んでいる。

 目には見えない燻りや蟠りが積もりに積もって、蔓延っている。

 騎士団で活動する中で、気が付いた世界の悩み。

 

 この世界に足りないもの……それは癒し。

 癒しの時間が、憩いの空間が、疲労を忘れる瞬間が必要だ。

 だから加入を決意した。

 

 思えばあれが、きっかけだったのかもしれない。

 

 知らぬ間に通過していた一次選考。

 多分ゲーマーズのメンバー募集。

 誰かが送った要項が選考通過してしまい、それを取り下げに事務所へ出向いた。

 

 でも……いや、だから、その次の3期生募集時、本気で入社したいと思えた。

 書類選考を通過して、社長との面接で自分を売り込み、合格。

 マリンとフレアと、3期生後発組としてデビューした。

 入社して思い知る、メンバーの個性と自身の歌のレベル。

 

 配信に来る人を、癒せればいいと思った。

 

 それが次第に、大きくなった。

 

 今の夢。

 3期生のみんなとライブをすること。

 夢の中に、歌う事が入り込んできた。

 

 足りない。

 今の歌唱力では、足りない。

 もっと、もっと、もっともっと、パワーアップが必要だ。

 

 毎日歌やダンスのレッスン。

 過酷な日々となる。

 疲れて、疲れて、疲れ果てて。

 泣きたくなった事もある。

 そんな時でも、仲間がいたから……みんながいたから、頑張れた。

 

 頑張って、頑張って、頑張った先。

 

 

 

          *****

 

 

 

 白銀ノエル、チャンネル登録者100万人突破。

 

 カウンターに一瞬刻まれた100万の数値。

 やがて100万1、100万2……とカウントは増える。

 

 努力が報われたような、胸いっぱいの幸福感が押し寄せ、感無量といった様相。

 泣きそうだった。

 今まで、団員さんを癒す事を考え、世界を温める活動をして来た。

 テストを頑張った学生くん、仕事疲れの社会人さん。

 彼ら彼女らを癒して来たノエルが、返されるように、暖かい気分にされた。

 これが癒しだ。

 

「……」

 

 思った。

 ホロメンは、リスナーの心の支えになっている。

 遠隔的でも、リスナーを元気づけている。

 

 そんなホロメンが、辛い時、誰が助けるのだろう?

 今のように、リスナーか? はたまた、そばにいるホロメンか?

 

 過去にとあるメンバーがこんな事を発信していた。

 本当に大変なことが起きた時、リスナーは応援して待っていてね。そんな時は側にいる親友が何とかするから。

 こんな感じ。

 

 悲しくないか、リスナー諸君。

 なにもできないを実感、痛感して、ただSNSを眺めるのみ。

 でも実際、日頃側にいつつも、顔を知らないリスナーの言葉の持つ力など、高が知れている。

 

 アンチコメを見つけたら? ゲームにチーターが現れたら? メンバーに不幸があったら? 会社で事件が起きたら?

 

 もっとリスナーは活動できるべきである。

 

 やはり世界は間違っている。

 その間違いは、何もこの一つではない。

 

「……」

 

 俺はホロメンが大好きだ。

 だからこそ、気付いてほしいことが山ほどある。

 それが今の俺の……やりたい事。

 

 

 ピンポン、とチャイムが鳴る。

 備え付けのインターホンから。

 

「開いてる」

 

 1秒も満たない通話をして切ると扉が開く。

 

「お邪魔するよ」

「ほら」

「っと……合鍵?」

「好きに使っていい」

「……箱推しって、変わってるな」

「ろぼさーも十分変人だ」

 

 ここは箱推しが作ったリスナーズ拠点。

 超大型リビングとキッチン、そして複数の小部屋からなる、いわゆる豪邸。

 家主は箱推しで、訪れたロボさーは客。

 使用料無料で、リスナーが自由に出入りできる推しの語り場、そして配信視聴場。

 

「ろぼさー、お前にも仲間集めを頼みたい」

「各リスナーから1人ずつだっけか」

「ああ、箱推しの俺は除外して、ろぼさーのお前は第2号だ」

 

 箱推しの計画。

 未だに未知数だが、各ホロメンを推すそれぞれのリスナーを集め、いざという時動ける体勢にしておく。

 この家はリスナーに必須の様々を供給する施設。

 費用は莫大だが、箱推しにはそれを超える莫大な資金がある。

 

「研究で貰ったんだっけ?」

「ん? ああ、金ならな。魔術の研究発表でノーベルとか貰ってな。10億は超えた」

「ひぇ〜、お前まだ20歳くらいだろ? 頭イッてんだろ……」

「お前も科学や工学、情報面で資格とか表彰とか世界レベルって聞いたが?」

「一緒にすんなって、お前のと俺のでは現在の発展レベルが違うんだから」

 

 金や資格、表彰といった泥臭い話。

 やめだ、こんな話は。

 

「それよりも、さっきの続きだ」

「ああ……ま、数名目星はつけてるよ」

「俺もだ……と言っても、1人だが」

「因みに聞くけど、どんな奴でもいい?」

「構わんが、できれば変人がいい」

「箱推しで十分キャラは立つって」

 

 ろぼさーの豊かな表情に対して、箱推しは相変わらず表情が変化しない。

 変人がいいとは、それこそ変人。

 だが、この輪にぶち込むなら、それが妥当か。

 

「分かった。知り合いに風変わりな『はあとん』とそれっぽい『ねっ子』がいるから、そいつら今度連れてくるよ」

「俺はとある高校に面白い『わためいと』を見つけた。勧誘してみる」

 

 部屋を見回りながら仲間集めの進捗報告を行う。

 とある部屋のそばでろぼさーが立ち止まった。

 

「……」

 

 足元にあった微かな粉に触れ、臭いを嗅ぐ。

 鼻にくる、微量でも強烈な臭い。

 

「お前タバコ吸うっけ?」

 

 それは、タバコの燃えカス。

 捨てる際に落ちたほんの僅かな灰。

 

「ああ、それは第一号のやつだ」

「へぇ…………」

 

 喫煙者はホロメンにあまり好かれない。

 いや、これは語弊があるか。

 ホロメンはタバコ嫌いも結構いる。

 ホロメンのためにやめる者もいるようだが……例外にも漏れはない様子だ。

 

「百鬼組だが、アイツも癖強いぞ」

「1号って、いつ出会ったんだ? 俺も1年ほど前だけど、それより前だろ?」

「ああ、結構昔からだな。何年前かは覚えてない」

 

 幼馴染ではないのか。

 ろぼさーは指を服で擦ってリビングへ戻った。

 

「じゃあ、人員確保頼む」

「期待はすんなよ」

 

 リスナーが遂に、大きく動き始めた。

 

 





 皆様、作者でございます。
 とうとう始まりました第5章。
 この章からは遂にリスナー陣営も絡んで参ります。
 ホロメンの日常に加えて、我々リスナーの在り方や、特殊な生き様を描ければと思っております。
 当然ながら、例えば箱推しの像がそのままリアルにというわけではございません。
 作者が勝手にキャラ付けしているだけなので、誤解はしないでください。

 さて、次回は早速とあるリスナー物語を、その次はホロメンの物語でも描きましょうかね。

 では、また次回。
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