歌姫伝承〜ホロの異能大戦ストーリー〜   作:炎駒枸

8 / 122
8話 ファーストライブとその裏で

 

 大型車に乗って現在、ホロライブ所属の7名はエルフの森へと移動中だ。

 

「みんな良かったの? 今日と明日の配信に影響すると思うけど……」

「いいよいいよ、ボクたちだって生で観たいから」

「そうそう、私だってそらともの1人だからね」

 

 わざわざ配信を休みにしてまでそらのライブに付き添ってくれたメンバーを心配するそらだが、ロボ子やフブキを筆頭に皆が皆温かい言葉をかけてくれた。

 

「そらは他人の心配してるけど、自分の心配はいいの?」

 

 メンバーに加えて同乗していたえーちゃんが特殊な言い回しで聞く。

 普通なら「自分の心配をしたら?」と聞くところだ。

 だがそうしないのは彼女のことを知っているから。

 

「私は大丈夫。寧ろ早くライブがしたくて堪らないくらい!」

 と元気に拳を握った。

 

 車窓の外は未だに一般道が続いている。

 えーちゃんは車窓の外の景色を眺めながら苦笑した。

 

 天候は良好、ステージも申し分ない。

 きっと最高のライブになる。

 

「ねえー、まだ着かないのー?」

 

 そんなそらの期待を他所に、まつりは暇そうにしていた。

 いや、暇と言うよりは、早くエルフの森に行きたいのだろう。

 

「あと30分くらいはあると思うよ」

 

 宥めるようにアキロゼが対応した。

 まつりが口にしたためそちらに視線が向き、あまり目立たないが、実の所そらもそわそわとしていた。

 

「ねえ、暇だしなんかしない?」

 と早速限界に達したまつりから提案が入る。

 

「なんかって、何かある?」

 

 言葉を受け取り、メルが全員を見回す。

 多くが首を横に振る中、ロボ子は、

「ボク、トランプとかなら持ってるよ」

 と言って体の中からトランプを取り出した。

 

「なんで体の中からトランプなんかが出てくんのよ」

 

 はあとが冷静なツッコミを入れる。

 

「いや、ボク実はトランプとかそう言う系統のカードゲームが好きで、最近は持ち歩くようになったんだよ」

「それ微妙に回答になってない気がするけど……」

「細かいことはいいの! トランプあるならババ抜きしよ」

 

 ロボ子ではなくまつりが遮ってトランプを始めようとする。

 早速ロボ子の手からトランプの束を取りシャッフルすると自分を含めたメンバーとえーちゃんの合計8名にカードを裏向きにして配る。

 この大人数でのババ抜きともなれば開始時の一人当たりの持ち札も6、7枚と少ないため早々に手札内で揃うことはほぼない。

 数名が1セットほど捨てるとゲームが開始する。

 

 暗黙の了解のように全員が順序決めのジャンケンのために片手を出すと、

「ねえ、折角だし罰ゲーム決めようよ」

「罰ゲーム?」

「例えば?」

「うーん……最下位の人は一枚ずつ服を脱いでいく」

「おいアイドル!」

「それは却下です!」

 

 欲望全開のルールを提案するが、フブキの鋭いツッコミとえーちゃんの完全否定にアホ毛をしならせて脱力する。

 

「じゃあ最下位になった人は後日はあちゃまの料理を食す」

「「それは命に関わる!」」

 

 アキロゼの冗談に全員が反対。

 はあとも反対だったが、全員からの評価に少し不服そうだった。

 

「……もう負けた人が恥ずかしい話とかでよくないですか?」

 

 このまま変態に主導権を預けては大惨事になりかねないと判断したえーちゃんが、妥協点を探り出しこれを提示した。

 

「いいと思う」

「白上もさんせーい」

「いいんじゃない?」

 

 そら、フブキ、はあとと順に賛成者が手を挙げる中、

「待って!」

 

 まつりがただ1人、ストップをかけた。

 

「まだ何か下品な案があるんか」

 

 フブキが鋭く突っ込んだ。

 が、割とまつりはまともに考えたようで、

「一位の人が最下位の人に一つ命令」

 この案を発表。

 

 数秒間謎の沈黙が車内に充満したが、一瞬でその怪しい空気は晴れ、全員からの承諾を得た。

 但し過度なものは禁止、と強くえーちゃんから釘を刺されたが。

 

 

 その仁義なき戦い、第一戦目。

 開幕時、ジョーカーはまつりにあった。

 2周ほど進んでもまつりの手から離れなかったジョーカーだが、その次の周で遂に動く。

 まつりの隣のフブキがまつりのジョーカーに手を掛けた。

 特に意味はないが、まつりは敢えて力を加えて取られることを阻止する。

 

「……ちょっと、力加えんな」

「いいの? 本当にこれでいいの?」

「これでいいんじゃい!」

 

 フブキの勢いに合わせてまつりもようやく力を抜く。

 そのまま勢いに任せて一枚のカード(ジョーカー)がフブキの手に渡る。

 ここでまつりは敢えて「くっそ」と声を上げた。

 次の番に自分まで回ってくる確率は1/20736と超低確率。

 わざわざ演技してまで罠を張る必要性はほぼないが、なんとなくこっちの方が面白いと思えた。

 フブキもそれに合わせて笑って誤魔化す。

 フブキがそれを捨てなかったのは揃っていないから。そう仮定するとそれを引けば安全と勘違いしたはあとがまんまと罠にかかり、そのカードを引いた。

 

「はああああ⁉︎」

 

 物凄い怒号が車内を駆け巡った。

 

「私を騙してなんか恨みでもあんの?」

 

 はあとのお手本のような反応にまつりとフブキは笑いが止まらない。

 今の叫びから確実にジョーカーがはあとの手に渡ったと全員が理解できたため、カードを全て背後に回して綺麗にシャッフルしてメルに差し出す。

 迷わずに一番右を選びすっと引き抜く。

 

「かぁああああああ!」

 

 明からさまな態度で悔しさを表現。

 メルも面白がっている。

 メルの次はえーちゃん。

 はあとの今のが演技とは到底思えない。まず本心と考えて良い。

 だとすると今回はどれを引いても問題ない。

 案の定、えーちゃんが引いたものはハズレではない。

 更にアキロゼ、そら、ロボ子の番も普通に過ぎて再びまつりへ。

 こんな光景が続き、最終的に……。

 

「ほらほら、取りなよフブキ~」

「くっ……」

 

 震えるフブキの手がまつりの持つ最後のカードに触れる。

 さっと抜き取ると目の前のまつりの煽り顔がよく見えてウザかった。

 

「やったー、いっちばーん! なにしてもらおっかなー」

 

 無事王様になり意気揚々と笑うまつりに全員が歯軋りし、それと同時に身の危険を感じる。

 「まずい、最下位は避けなくては!」と言う使命感に駆られる。

 まあ結局アキロゼが負けたわけなのだが……。

 

「じゃあアキアキ!」

「はい」

「…………」

 

 全員が固唾を呑んでまつりの指示を待つ。

 

「……パンツ何色?」

「絶対言うと思ったー!」

「はあ……」

 

 フブキの予想は的中したようで、そんな発言があった。

 参加者の1人であるえーちゃんはため息をつき、他のメンバーは「まあ、だろうな」といった顔でいた。

 

「ピンク!」

「えー、うっそだー。ちょい見してみ」

「うそうそ……白です」

「よろしい」

「……なんなんじゃこれは」

 

 謎の品のない茶番に付き合わされた複数名の温かい目。

 フブキの最後の一言でひとまずこの下りは終わり次の試合へと突入。

 

 結果、勝者……ロボ子。

 敗者……フブキ。

 

「敗北者じゃケェッ……」

「くっ、取り消せよ!とは言えない……」

 

 そして再び始まる新たな茶番。

 今回は品のないものではないため、みんな楽しそうだ。

 

「じゃあフブキちゃんは森に着くまで語尾ににゃんをつけてくださーい」

「まさかの永続デバフとは……にゃん」

「ほらフブニャン、シャッフルしてよ」

「白上は狐じゃい、にゃん!」

 

 カオスなフブキのセリフに笑いが起こる。

 運転手は騒がしい後方の空間が気になって仕方ないに違いない。

 

「じゃあ次いこうか」

 

 こうして再び、次の試合へ突入。

 

 結果、勝者……そら。

 敗者……えーちゃん。

 

「えーちゃん、今度一緒にホラーゲームの配信しようね」

「いやだ、絶対!」

「はいはい、みんな、王様の命令はーー?」

「「絶対‼︎」」

「っーーーー‼︎‼︎」

 

 そらの後に続くコールにえーちゃんが悶えるような音を鳴らす。

 

 気が付けば、エルフの森まで残りわずかとなっていた。

 

「はあ……えっと、みなさん、もうすぐエルフの森なわけですが」

 とホラーへの恐怖を背負いながらも切り出すえーちゃん。

 

「あと少し……にゃん」

 

 フブキも罰ゲームの残り時間に喜びを見せている。

 

「そらはこれから色々と打ち合わせやリハーサルがあるから私と来て。それからロボ子さんもそのお手伝いに」

「うん」「うん」

「他の皆さんは、宿に着いた後は基本自由行動でいいです」

「やった」

「自由か……」

 

 各々が異なる反応を見せる。

 が、どうやら最終的に一期生全員でエルフの森を歩き回ることにしたらしい。

 

 宿前で下車し、皆が荷物を片手に宿を見上げる。

 街中というほど栄えた様子はないが、実際のところは相当賑わっている。

 やはり世界の中枢国である人間の国の高層ビルが立ち並ぶ場所からここへ来ればそうなる。

 建造物は数多くあるが、自然的な空気を感じる優しい造りだ。

 内部構造は和洋折衷感があった。

 

「それじゃあ、私たちは会場の下見に行ってきます」

「じゃーねー」

「また後で」

 

 ライブ準備組の3人が宿屋を後にした。

 

「……どうする?」

「はあちゃまはエルフの森の名物の和菓子?が食べたいんだけど」

「あー、あの饅頭?」

「そうそう」

「えー、まつりは普通に探検したいけど」

「探検は普通じゃないと思うけどね」

「うそ! 新天地に来れば探検するでしょ」

「アキロゼはこの森を見て回れたらなんでも」

「ああ、そう言えばアキちゃんも一応エルフだったね」

「一応じゃないから」

 

 ガヤガヤと個人が自由に話し始めるので全く纏まらない。

 やはり1人はまとめ役が必要なのだ。

 そしてそのまとめ役は残念なことに自分の意見を殺して他人の意見を尊重する必要性が高くなる。

 

「はいはい、じゃあみんな一回落ち着こう。はい、どこ行きたいの?」

 とフブキがその役を買って出る。

 

 全員頼りになる存在だが、こう言った時はやはりフブキが仕切ってしまう。

 

「メルはなんでもー」

「アキロゼもなんでもー」

「まつりは探検!」

「はあちゃまは翡翠饅頭が食べたい」

「なら、この周辺の店を散策した後少し外れた辺りまで出てみよう?」

 

 まとめるならそれでいいだろう。

 

「おっけー」「わかった」「ういー」「分かった」

 

 三者三様の返事が同時に返ってきて安心する。

 

 ある程度方向性が固まったので、適当に歩き始める。

 まずははあとの求める和菓子を買うため、先頭にはあとを置いて進む。

 歩幅も意識されることなく合わされており、ほぼ同じ歩速で歩く。

 会話も次第に花が咲き始める。

 

「そう言えばはあちゃまさ、留学してるんでしょ? なんでホロライブに入ろうと思ったの? 大変じゃない?」

「あー、まあスカウトされたから、楽しそうだしいいかなぁーって」

 

 先頭に立ち周囲の店を見回すはあちゃまに全員が驚く。

 

「ん? どうしたの?」

「いや……スカウトなの? どうやって?」

 アキロゼが全員を代表したように驚き混じりに尋ねる。

「あ、それね、それは普通にアレよ、以前からネットに住んでたからそこに連絡が入ったのよ」

 

 黙々と歩みを進めるはあとに全員が歩速を早めて追いつこうとする。

 未だに森の中としては十分賑わっている辺りにいる。

 そんな中、ようやくはあとの目にあの品が映り込む。

 

「あっ!」

 

 後続の者たちを置いてその店に駆け寄ると、ものの数分で戻って来る。

 その手にはしっかりと饅頭の箱が入った袋が握られていた。

 

「はあちゃまはもう満足したからまつりちゃんの好きなところへ行っていいわよ」

 

 ご機嫌な笑顔で先頭から下りるはあとに変わり、探検志望のまつりが先頭に立つ。

 彼女が先陣を切って素直な道を行くはずもなく、あっという間に森の奥深くへと入っていった。

 

「で、ここどこ?」

 

 早速迷子になったことを悟ったフブキがまつりに問いかけるが、

「森の中じゃない?」

「んなこたぁ知ってんよ!」

「……まつりちゃん、どうするの?」

 

 フブキのナイスツッコミもまつりは気にしない。

 このまま突き進むのか、はたまた来たかどうかもわからない道を後戻り?してみるのか、そんな意味を込めてメルが聞くが、

「え、進むけど?」

 何の効果もなくただただ奥へ奥へと誘われるようだ。

 

「ウソでしょ……」

 

 アキロゼが疲労困憊の表情でメルの肩を掴みながらまつりに向かって嘆くように言った。

 唯一、はあちゃまだけは自身の目的の達成に満足しているため未だに機嫌は上々だ。

 そんな風に静寂の中で騒ぐ5人。

 

「……?」

 

 しかし、ふとフブキが耳を跳ねさせて視線を右方向に向けた。

 

「どしたん?」

「いや……ううん、やっぱり何か聴こえる」

 

 まつりが興味津々に聞いてきたために一瞬躊躇ったが、やはり微かに妙な音がフブキの敏感な耳に響いてくる。

 

「何の音かしら?」

「どっちから聴こえる?」

 

 はあととまつりから一つずつ質問を受け、

「何かの鳴き声だと思う、多分こっちから」

 と、確信を持てないがと付け足して言った。

 

 彼女たち(特にまつりとフブキ)がそれを見過ごすはずもなく、5人はフブキを先頭に声のする方へと向かった。

 暫く走ると、他の4人にもようやく聞こえたのか全員の足取りが軽くなった。

 そして音源に辿り着くと、そこには一匹の謎の生命体がいた。

 奇妙な壺に下半身を埋めた白い丸型の外見フワッとした……シロクマ?のマスコットキャラのような小さな生物がいた。

 

「ゅーっ、ゅーっ」

「……何この生物」

「っていうか……何で雪?」

 

 その一匹の姿と、周囲に僅かに溶け残ったように散らばる雪に謎が尽きない。

 その生命体は5人の登場には一切関心を示さず、ただ同じ位置で佇んで動かない。

 見た目の可愛さからフブキがそっとその生物を抱き上げてみた。

 重さは大してない。恐らく重さの三分の一は壺だろう。

 しかし、壺にしても生物になされた装飾にしても、少し高価なものに見える。

 

「何してんだ、キミはー?」

 

 抱き抱えても不動な生物をぐるっと回し、無理矢理に視線を合わせるが愛嬌のある奇妙な鳴き声を立てるだけ。

 

「ねえねえ、アキロゼにも貸してよ」

「はいよ」

「うひゃー、もふもふ!」

「丸っこくて饅頭みたいね」

「えー、お餅でしょ」

 はあととまつりがそれぞれ謎の生物を近しい食べ物に例える。

「食べないでよ?」

「「流石にね」」

 

「ねえ、どうすればこの森を抜けられる?」

 

 アキロゼが無意味に尋ねる。

 

「いや、聞いてもわからんでしょ」

「そもそも言葉が分からんのじゃない?」

 

 冷静な二つのツッコミも虚しく森の中をただ風が抜ける。

 

「ねえ、よく見たらこっちに雪が続いてるけど?」

 

 メルが茂みを掻き分けてそこに繋がっている雪を指して言った。

 4人が近寄り覗き込むと確かにそこには溶けかけの雪があり、森のさらに奥へと誘導するように続いていた。

 

「一応聞くけど……」

「追うしかないでしょ!」

「はい」

 

 かくして一行は更に深くへと足を踏み入れた。

 

「……また聴こえる」

 

 雪を辿っていたが、いつの間にか湿った地を辿っていた一行。

 謎の白い生命体を抱えて進んでいたが、またしてもフブキの鋭い耳に信号が届いた。

 

「また同じ音?」

「ううん……今度は人の声」

 

 が、どうやら先程とは状況が異なるようだ。

 言葉の中身こそ不鮮明だが、声の主が人間(言語を話す者)であることは確実だった。

 フブキはまたしても先頭に立ち、声のする方へと流れていく。

 

「ーーふく!ーーだいふく!」

 

 次第に鮮明になる言葉。

 そして、その声の主が女性であり、少し高い、しかし美しい声音であると判断できる距離までは近づいた。

 フブキたちは急いでその方角へと足を運ぶ。

 

「ーー! だいふく⁉︎」

 

 すると、声の主が何かに気が付いたような声をあげたのが分かった。

 

「あわっ」

「うぁっ!」

 

 やがて彼女たちは巡り合った。

 全身、何もかもがまるで雪のような色合いの装飾等で包まれた、1人の美しいハーフエルフに……。

 

「あっ! もう、だいふく!」

 

 一声、何者かに叱るような声を上げると、フブキが抱えていたあの生物が壺ごと飛び跳ねてそのハーフエルフの腕の中へ入っていく。

 

「「……大福?」」

 

 一期生のシンクロが初めて見られた。

 全員キョトンとしていたが、その謎の生命体の名前が「だいふく」なのだと理解はできた。

 

「……なるほど、偶然でもだいふくを運んでくれたんですね、ありがとうございます」

 と、少女は全てを見ていたかのような口調で的確に事実を述べてお礼を言った。

 

「い、いえ、そんな……」

 と言葉に詰まる。

 

 そして、そうやって詰まっていると、

「けどここは一般人の立ち入りが禁止されている区域ですよ」

 と、忠告もされた。

 

「「ご、ごめんなさい……」」

 

 嘘をついて反論なんて考えは一切浮かばず、全員が素直に頭を下げた。

 

「はい、それでは」

 とだいふくを抱えて踵を返そうとする少女。

 

「あ、あの、待ってください!」

 

 フブキが彼女を咄嗟に呼び止める。

 呼び止められた当人以外はしっかりと理由を理解している。

 

「何ですか?」

 

 少女は涼しげな髪を靡かせて振り返る。

 

「実は……帰り道が分からなくて……」

 

 頭を少しずつ下げながら申し訳なさそうにそう告げる。

 

「……分かりましたよ、案内します」

 

 最後まで言わずとも理解してくれたようで、少女はだいふくから手を離すと「こっちです」と言いながら一期生を導いてくれた。

 

「一応聞いておきますけど、目的地はユニーリアではなくエルフの森の方でいいんですね?」

「……ゆに? 多分合ってます」

 

 一同は、無言のまま森を抜けた。

 

「ありがとうございます」

「以後気をつけてくださいね」

 

 今後いつ来れるかは分からないが、そう釘を刺される。

 

「はい……あ、あの!」

 

 その念押しに首肯したあと、少し図々しいと思いつつも、フブキは一言付け足す。

 

「明日、私の先輩のライブが森のステージであるんです……だから、もし時間さえあれば……!」

 と、先輩の宣伝を。

 

「……じゃあ時間さえあれば」

 

 少女はだいふくを傍に浮遊させて来た道を戻っていった。

 何故フブキはここで彼女をライブに誘ったのか、自分自身でも分からなかった。

 

 

 

          *****

 

 

 

 翌日ーーそらはステージに立っていた。

 ライブ映像は後に販売される予定だが、リアルタイムで見るには現地に行く他ない。

 多くないファンが、突如開催されると知って興味を持った現地の住人が、そして近くにはサポートしてくれたマネージャーなどが、観てくれている。

 

 ーーーーーー。

 

 涼しい森のステージで精一杯歌って踊って、汗をかいた。

 よくよく覚えていた。

 ペンライトが自分の歌に合わせて揺れていた。

 それもよくよく覚えていた。

 忘れられるはずがない。

 遠くの木の上から見ている人もいた。

 顔こそ全く覚えていないが、彼女はとても印象的だった。

 観客の半数ほどがエルフなため、客席には無数の精霊も浮いていた。

 黒服の怪しげな男だって見えた。

 ステージは凄い。

 何だって見えるのだから。

 自分を魅せて、他人に魅せられる。

 最高だ。

 鼓動が強く震えていた。

 嬉し涙の蒸発がとても早かった。

 心の熱が、会場の熱気が、きっと、高かった。

 

 初ライブは、大成功だったと言える。

 

 ーーーーーー。

 

 

 

          *****

 

 

 

 ライブを見張る黒い影……。

 

「見つけたぞ」

 

 携帯ではなく、小さな無線で何者かとコンタクトを取る。

 

「まだ可能性の範疇だが十分にあり得る素質だ」

 

 ステージの上に立つ1人のアイドルを見上げてそう呟いた。

 

「……そうだな、もし『歌姫』だとすればーー」

 

 一度振り返り、空を見て、ステージに向き直る。

 会場の熱で男の存在はほぼ周囲には認識されない。

 

「ーー計画の邪魔となるだろう」

 

 

 この世界の歴史に迫る影と、アイドルたち。

 このファーストライブが、彼女たちを、新たなセカイへと誘う。

 何の変哲もないこの世界で、無力な少女たちが……。

 




 作者でございます。
 この度はご愛読誠にありがとうございます。
 数日間投稿がなかったのは……まあ、ホロ好きなら察してくださると思います。
 さあ、今回で初の五期生が登場しました。
 これで四期生だけですね。
 いつ出せるかな〜?

 そして次回は遂に、ホロライブの芸人も登場⁉︎
 乞うご期待!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。