歌姫伝承〜ホロの異能大戦ストーリー〜   作:炎駒枸

82 / 122
82話 演者

 

 リスナーズ拠点。

 緊急時に備え、リスナーを集めた場所。

 本日までに集った仲間は数多い。

 箱推しを始め、ろぼさー、35P、はあとん、百鬼組、あくあクルー、みおふぁ、おにぎりゃー、ころねすきー、わためいと、ねっ子。

 勧誘をこそこそと続け、確定したメンバー。

 

 一癖も二癖もある変人揃い。

 変人級の知能。

 以前はホロライブに敵対した者。

 特殊な混血。

 歪な愛の形。

 希少な力の持ち主。

 

 今現在、このリスナーズ拠点に、唯一3期生のファンがいない。

 いずれ仲間にする予定だが、早めに1人は欲しい。

 

 総力を上げて、更なる仲間を……。

 

 

 

「……箱推しー、オモロイのみっけたよ」

 

 土曜日の昼下がり、庭にいた「箱推し」の元へ「ねっ子」が現れた。

 地面からニョキッと驚かすように。

 

「誰推し? 3期の誰かか?」

「いやー、悪い、座員だ」

「……まあいい、わかった、任せる」

「おー、任せろー」

 

 今度は走っていった。

 「ねっ子」の出てきた穴を埋める。

 室内から、バゴっ、と床の抜ける音が……。

 

「はぁ……」

「箱推し! 『はあとん』がまた穴空けやがった!」

 

 力を無闇に使わないでほしい。

 箱推しが上げた力ではないが、もっと制御しろよ。

 修理の為、内に入り、現場へ向かう。

 所々に誰かの体の一部が転がっている。

 右手、左足、抉れた腹。

 

「クッセェ! 生物クセェ!」

「ティータイムの時間、落ち着けないのですか」

「オレのカラダ、ドコにカクしたんだ」

 

 悲惨なリビングの光景。

 フローリングに穴が空いて、そこに「はあとん」がいる。

 「おにぎりゃー」が、体の砕けた「ころねすきー」を蹴り飛ばしている。

 紳士的な男性は「百鬼組」で、優雅に紅茶を音を立てず啜っていた。

 

「あ、ナイスだ『ハコオシ』。オレのカラダ、カエしてくれ」

「ほら」

 

 拾った手足と腹のカケラ。

 「ころねすきー」に投げると、近くで勝手に蠢き、元の位置へ帰りゆく。

 そして、完治する。

 

「箱推し、ここだここ。『はあとん』の野郎がぶち空けた」

「いやな、『わためいと』絞めようとしたんだけど……」

 

 「わためいと」と「はあとん」の組み合いの末生まれたフローリングの破損。

 大学生が高校生を絞めようとするな。

 

 「箱推し」が単純な魔法でフローリングを再生させた。

 

「あんま物壊さないように頼む」

 

 「箱推し」は自室へ向かった。

 

 

 

 賑わうとあるストリート。

 ギターを奏でる者、ダンスを踊る者、芸を披露する者。

 「ねっ子」はとある曲芸師の前で立ち止まる。

 カランっ、と小銭をオケに投げ入れた。

 たった100円。

 

「…………」

 

 曲芸師は手を止めた。

 見る者が少ないので、誰も困らない。

 100円を摘み、「ねっ子」に投げ返す。

 

「100円だからって、ドブに捨てるもんじゃねえのヨ、高校生」

 

 曲芸師。

 この男こそ、「ねっ子」の見つけた「座員」。

 

「面白いと思ったけどな〜」

「無料で観れるんだから、思うだけでいいのサ」

「……この桶は?」

「申請上、金稼いでるように見せてんのヨ」

 

 金銭を目的とせず、完全に趣味で芸を披露する男。

 

「高校生が探偵かなんかの真似事かい? 用があるなら、カフェ代くらい奢るヨ、遅い時間だけどもネ」

 

 指を鳴らして右手を開くと、500円玉が現れる。

 一度握って、もう一度開くと、それは2枚に分裂。

 2枚を指の間に挟んで見せびらかす。

 

「マッジ⁉︎ じゃ、お願いしまーす」

「普通は遠慮するとこなんだけどサ……ま、いっか」

 

 「座員」は撤収の作業を始め、僅か1分足らずで荷物は片付く。

 「ねっ子」は暇そうだ。

 

「カフェなら、こっちにいい店があんのヨ」

「ご馳走になりまーす」

「……初招待が子どもってのは、悲しいけどサ」

 

 高校生に奢る、少し残念な自分に嘆くも、案外楽しげだ。

 

 カラカラン、と店の鈴を鳴らして入店。

 モダンとクラシックの折衷的な店。

 装飾も建築素材も、質素であり、それでいて控えめすぎない。

 

「え、あれ?」

「ああ、特別席サ」

 

 客は入れない、スタッフルームへ。

 奥へ進むと、至って普通の生活の場。

 裏の一軒家と繋がっていたようだ。

 

「『座員』、この時間とは珍しいじゃ……誰?」

「探偵ごっこの高校生くんサ、いつものふたっつ」

 

 極めて普通のイスに腰をかけ、荷物を置く。

 

「さて、珈琲はすぐくるサ。調査をはじめようネ」

 

 対面のイスに腰をかけさせ、自ら尋問されにゆく。

 

「さっきの人、誰?」

「ここの店主の息子で俺の友人、『エルフレ』サ」

「……そっか。えっと、因みに話ってのは――」

 

 

 リスナーズ拠点という存在。

 集まっているメンバー。

 箱推しが主導者であること。

 これからの目標。

 それらを知る限り話した。

 

 途中で運ばれた珈琲を一口飲む。

 色合いに似合わず甘めに仕立ててあった。

 高校生の口に合わせたのだろう。

 

「へえ……変わったことしてんネぇ」

「俺もそう思って勧誘したんだけど」

「俺が変? 普通サ普通。ちょっと曲芸とか手品とかできるただの大人」

 

 常人は決して勧誘されない。

 「座員」には自覚のない変がある。

 

「まあ、『座員』役でメンバー入りしてもいいっちゃ、いいのヨ、別に」

「じゃあ決まりでいいじゃんか」

「大人ってのは、気掛かりなこと多いのヨ。例えばさっきの『エルフレ』とかサ」

 

 例として挙げたが、本命だ。

 「エルフレ」は「座員」が最も気に掛ける存在。

 自身とは違い、極めて特殊な生い立ちを持つから。

 

「高校生なら、種族の色々とか、習ってんでしょ?」

「因縁とか、しきたりとか、発生の仕方とかなら」

「『エルフレ』は世にも珍しい超獣人なのサ」

 

 超獣人とは突然変異によって発現する特別な個体。

 基本的に2つと同じ生物は生まれない。

 例えば同じ龍でも、突然変異の内容に差異が生まれるなど、個体差が生じる。

 

「会長と一緒じゃん」

「まあそうだけど、会長って結構特別なのヨ」

「……? そうなん?」

「ふぅ……おい、『座員』、ゴホッ、ゴホッ……勝手に話すなよ」

 

 コーヒーカップを片手に『エルフレ』が軽く咳をして現れた。

 咳をすると、火の粉が舞う。

 

「まあそう言わず、いい誘いだと思うヨ?」

「……俺も入れって?」

「面白そうって、思わない?」

「……イカれてる、と思う」

「ひっでぇ言い草」

 

 勧誘に来た「ねっ子」に一切の遠慮を見せず、「エルフレ」は言う。

 「座員」はハハッと笑う。

 

「コイツは年齢で言えば俺の一つ上だけど、義務教育から受けれてないのよ」

「へえ……孤児とか言うやつ?」

「超獣人は、親がクソッタレだと、生後間も無く売られたりするのサ」

「……つまりそう言うこと?」

「察しろって、『座員』も、ベラベラ話して……ゴホッ、ゲホッ……」

 

 超獣人の希少性は言うまでもない。

 生まれた途端、闇市で売り飛ばせば、一生お金には困らない。

 売られず育てられても、出先で誘拐されるケースも頻繁にある。

 親に恵まれて大人になっても、会社に勤めることは難しい。

 超獣人はいわば進化の途中地点に位置する生物であり、未完成形である。

 無意識下で周囲に被害を及ぼす者も少なくない為、会社に置くと被害を及ぼす厄介者になることがある。

 

「いやでも、この店主の息子って言ってたじゃん」

「その辺を察しろっての……」

「んじゃさ、2人はなんで『座員』と『エルフレ』なんだ?」

「あー……そうくるか」

 

 特殊な生い立ちは正直、どうでもいい。

 寧ろ、そんな人生でどうやって推しに出会ったのかが気になる。

 

「俺が切り抜きでポルカを知って、コイツに勧めたらふーたんに落ちたのサ」

「どの辺に惚れた?」

「面白さ、エンタメ力、時折出るかわいさ、ギャップなどなど……」

 

 「座員」はポンポンと挙げる。

 がしかし、「エルフレ」はコーヒーを啜って、喉を摩って、唸る。

 定期的に火の粉が舞い、ぱちっと弾けて光る。

 

「俺の人生が、明るくなるのを感じた」

「……カッコつけてんの」

「ハハッ、全くだよな」

「笑うな、ゴホッ……」

 

 茶化され、「エルフレ」は眉を顰めた。

 

「今度、コイツ連れてその拠点行ってみていいかい?」

「そんくらいいんじゃない?」

「おい勝手に……」

「『ねっ子』はいい人だと思えるだろう? 仲間増やそうって魂胆サ」

「それは……」

「どんな繋がりでも、『エルフレ』を友達と思ってくれる奴らは、いた方がいいと思うのヨ」

「……」

 

 暇そうに珈琲を飲み干した「ねっ子」は椅子の脚を半分浮かせてゆらゆらしていた。

 

「ってわけで、明日あたりに行くからサ」

「ん、ああ、明日は俺はいないけど、まあ話通しとくよ」

「ありがとさん」

 

 こうして、この日は解散。

 翌日、「座員」と「エルフレ」は拠点を訪れ、他のメンバーに迫られた結果、渋々仲間入りした。

 

 





 投稿が滅茶苦茶遅くなりましたが、どうも、作者です。
 失踪ではないです。
 何とは言いませんがひたすら配信見ながら厳選してたんです。

 さて、今回は長期間空いた割に内容は薄いですが、キチンと伏線を張ってます。
 日常編は基本的に伏線の巣窟なんですよね。
 バトル編も伏線の巣窟なんですよね。
 まあ、そんな事はさておき、座員、エルフレの加入ですね。
 ここで一つ、言っておきますと、キャラの種族に被りを無くしたいなと思っております。
 細かくは同じ動物の獣人や、同じ妖怪の妖怪族、同じ魚の魚人を登場させない、といった形になります。
 例えば会長はドラゴンなので、作中には他のドラゴンが登場しません。
 但し、悪魔や天使は人間と同じ括り方なので何人も出て来ます。

 長々と説明失礼しました。
 待たせた上に細々とした設定の話で申し訳ない。
 1から見てくださっている方がもしいるのであれば、是非、そこそこの期待値でこの作品を追っていただければと思います。

 それでは、また次回。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。