リスナーズ拠点。
緊急時に備え、リスナーを集めた場所。
本日までに集った仲間は数多い。
箱推しを始め、ろぼさー、35P、はあとん、百鬼組、あくあクルー、みおふぁ、おにぎりゃー、ころねすきー、わためいと、ねっ子。
勧誘をこそこそと続け、確定したメンバー。
一癖も二癖もある変人揃い。
変人級の知能。
以前はホロライブに敵対した者。
特殊な混血。
歪な愛の形。
希少な力の持ち主。
今現在、このリスナーズ拠点に、唯一3期生のファンがいない。
いずれ仲間にする予定だが、早めに1人は欲しい。
総力を上げて、更なる仲間を……。
「……箱推しー、オモロイのみっけたよ」
土曜日の昼下がり、庭にいた「箱推し」の元へ「ねっ子」が現れた。
地面からニョキッと驚かすように。
「誰推し? 3期の誰かか?」
「いやー、悪い、座員だ」
「……まあいい、わかった、任せる」
「おー、任せろー」
今度は走っていった。
「ねっ子」の出てきた穴を埋める。
室内から、バゴっ、と床の抜ける音が……。
「はぁ……」
「箱推し! 『はあとん』がまた穴空けやがった!」
力を無闇に使わないでほしい。
箱推しが上げた力ではないが、もっと制御しろよ。
修理の為、内に入り、現場へ向かう。
所々に誰かの体の一部が転がっている。
右手、左足、抉れた腹。
「クッセェ! 生物クセェ!」
「ティータイムの時間、落ち着けないのですか」
「オレのカラダ、ドコにカクしたんだ」
悲惨なリビングの光景。
フローリングに穴が空いて、そこに「はあとん」がいる。
「おにぎりゃー」が、体の砕けた「ころねすきー」を蹴り飛ばしている。
紳士的な男性は「百鬼組」で、優雅に紅茶を音を立てず啜っていた。
「あ、ナイスだ『ハコオシ』。オレのカラダ、カエしてくれ」
「ほら」
拾った手足と腹のカケラ。
「ころねすきー」に投げると、近くで勝手に蠢き、元の位置へ帰りゆく。
そして、完治する。
「箱推し、ここだここ。『はあとん』の野郎がぶち空けた」
「いやな、『わためいと』絞めようとしたんだけど……」
「わためいと」と「はあとん」の組み合いの末生まれたフローリングの破損。
大学生が高校生を絞めようとするな。
「箱推し」が単純な魔法でフローリングを再生させた。
「あんま物壊さないように頼む」
「箱推し」は自室へ向かった。
賑わうとあるストリート。
ギターを奏でる者、ダンスを踊る者、芸を披露する者。
「ねっ子」はとある曲芸師の前で立ち止まる。
カランっ、と小銭をオケに投げ入れた。
たった100円。
「…………」
曲芸師は手を止めた。
見る者が少ないので、誰も困らない。
100円を摘み、「ねっ子」に投げ返す。
「100円だからって、ドブに捨てるもんじゃねえのヨ、高校生」
曲芸師。
この男こそ、「ねっ子」の見つけた「座員」。
「面白いと思ったけどな〜」
「無料で観れるんだから、思うだけでいいのサ」
「……この桶は?」
「申請上、金稼いでるように見せてんのヨ」
金銭を目的とせず、完全に趣味で芸を披露する男。
「高校生が探偵かなんかの真似事かい? 用があるなら、カフェ代くらい奢るヨ、遅い時間だけどもネ」
指を鳴らして右手を開くと、500円玉が現れる。
一度握って、もう一度開くと、それは2枚に分裂。
2枚を指の間に挟んで見せびらかす。
「マッジ⁉︎ じゃ、お願いしまーす」
「普通は遠慮するとこなんだけどサ……ま、いっか」
「座員」は撤収の作業を始め、僅か1分足らずで荷物は片付く。
「ねっ子」は暇そうだ。
「カフェなら、こっちにいい店があんのヨ」
「ご馳走になりまーす」
「……初招待が子どもってのは、悲しいけどサ」
高校生に奢る、少し残念な自分に嘆くも、案外楽しげだ。
カラカラン、と店の鈴を鳴らして入店。
モダンとクラシックの折衷的な店。
装飾も建築素材も、質素であり、それでいて控えめすぎない。
「え、あれ?」
「ああ、特別席サ」
客は入れない、スタッフルームへ。
奥へ進むと、至って普通の生活の場。
裏の一軒家と繋がっていたようだ。
「『座員』、この時間とは珍しいじゃ……誰?」
「探偵ごっこの高校生くんサ、いつものふたっつ」
極めて普通のイスに腰をかけ、荷物を置く。
「さて、珈琲はすぐくるサ。調査をはじめようネ」
対面のイスに腰をかけさせ、自ら尋問されにゆく。
「さっきの人、誰?」
「ここの店主の息子で俺の友人、『エルフレ』サ」
「……そっか。えっと、因みに話ってのは――」
リスナーズ拠点という存在。
集まっているメンバー。
箱推しが主導者であること。
これからの目標。
それらを知る限り話した。
途中で運ばれた珈琲を一口飲む。
色合いに似合わず甘めに仕立ててあった。
高校生の口に合わせたのだろう。
「へえ……変わったことしてんネぇ」
「俺もそう思って勧誘したんだけど」
「俺が変? 普通サ普通。ちょっと曲芸とか手品とかできるただの大人」
常人は決して勧誘されない。
「座員」には自覚のない変がある。
「まあ、『座員』役でメンバー入りしてもいいっちゃ、いいのヨ、別に」
「じゃあ決まりでいいじゃんか」
「大人ってのは、気掛かりなこと多いのヨ。例えばさっきの『エルフレ』とかサ」
例として挙げたが、本命だ。
「エルフレ」は「座員」が最も気に掛ける存在。
自身とは違い、極めて特殊な生い立ちを持つから。
「高校生なら、種族の色々とか、習ってんでしょ?」
「因縁とか、しきたりとか、発生の仕方とかなら」
「『エルフレ』は世にも珍しい超獣人なのサ」
超獣人とは突然変異によって発現する特別な個体。
基本的に2つと同じ生物は生まれない。
例えば同じ龍でも、突然変異の内容に差異が生まれるなど、個体差が生じる。
「会長と一緒じゃん」
「まあそうだけど、会長って結構特別なのヨ」
「……? そうなん?」
「ふぅ……おい、『座員』、ゴホッ、ゴホッ……勝手に話すなよ」
コーヒーカップを片手に『エルフレ』が軽く咳をして現れた。
咳をすると、火の粉が舞う。
「まあそう言わず、いい誘いだと思うヨ?」
「……俺も入れって?」
「面白そうって、思わない?」
「……イカれてる、と思う」
「ひっでぇ言い草」
勧誘に来た「ねっ子」に一切の遠慮を見せず、「エルフレ」は言う。
「座員」はハハッと笑う。
「コイツは年齢で言えば俺の一つ上だけど、義務教育から受けれてないのよ」
「へえ……孤児とか言うやつ?」
「超獣人は、親がクソッタレだと、生後間も無く売られたりするのサ」
「……つまりそう言うこと?」
「察しろって、『座員』も、ベラベラ話して……ゴホッ、ゲホッ……」
超獣人の希少性は言うまでもない。
生まれた途端、闇市で売り飛ばせば、一生お金には困らない。
売られず育てられても、出先で誘拐されるケースも頻繁にある。
親に恵まれて大人になっても、会社に勤めることは難しい。
超獣人はいわば進化の途中地点に位置する生物であり、未完成形である。
無意識下で周囲に被害を及ぼす者も少なくない為、会社に置くと被害を及ぼす厄介者になることがある。
「いやでも、この店主の息子って言ってたじゃん」
「その辺を察しろっての……」
「んじゃさ、2人はなんで『座員』と『エルフレ』なんだ?」
「あー……そうくるか」
特殊な生い立ちは正直、どうでもいい。
寧ろ、そんな人生でどうやって推しに出会ったのかが気になる。
「俺が切り抜きでポルカを知って、コイツに勧めたらふーたんに落ちたのサ」
「どの辺に惚れた?」
「面白さ、エンタメ力、時折出るかわいさ、ギャップなどなど……」
「座員」はポンポンと挙げる。
がしかし、「エルフレ」はコーヒーを啜って、喉を摩って、唸る。
定期的に火の粉が舞い、ぱちっと弾けて光る。
「俺の人生が、明るくなるのを感じた」
「……カッコつけてんの」
「ハハッ、全くだよな」
「笑うな、ゴホッ……」
茶化され、「エルフレ」は眉を顰めた。
「今度、コイツ連れてその拠点行ってみていいかい?」
「そんくらいいんじゃない?」
「おい勝手に……」
「『ねっ子』はいい人だと思えるだろう? 仲間増やそうって魂胆サ」
「それは……」
「どんな繋がりでも、『エルフレ』を友達と思ってくれる奴らは、いた方がいいと思うのヨ」
「……」
暇そうに珈琲を飲み干した「ねっ子」は椅子の脚を半分浮かせてゆらゆらしていた。
「ってわけで、明日あたりに行くからサ」
「ん、ああ、明日は俺はいないけど、まあ話通しとくよ」
「ありがとさん」
こうして、この日は解散。
翌日、「座員」と「エルフレ」は拠点を訪れ、他のメンバーに迫られた結果、渋々仲間入りした。
投稿が滅茶苦茶遅くなりましたが、どうも、作者です。
失踪ではないです。
何とは言いませんがひたすら配信見ながら厳選してたんです。
さて、今回は長期間空いた割に内容は薄いですが、キチンと伏線を張ってます。
日常編は基本的に伏線の巣窟なんですよね。
バトル編も伏線の巣窟なんですよね。
まあ、そんな事はさておき、座員、エルフレの加入ですね。
ここで一つ、言っておきますと、キャラの種族に被りを無くしたいなと思っております。
細かくは同じ動物の獣人や、同じ妖怪の妖怪族、同じ魚の魚人を登場させない、といった形になります。
例えば会長はドラゴンなので、作中には他のドラゴンが登場しません。
但し、悪魔や天使は人間と同じ括り方なので何人も出て来ます。
長々と説明失礼しました。
待たせた上に細々とした設定の話で申し訳ない。
1から見てくださっている方がもしいるのであれば、是非、そこそこの期待値でこの作品を追っていただければと思います。
それでは、また次回。