歌姫伝承〜ホロの異能大戦ストーリー〜   作:炎駒枸

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9話 二期生・五石・下見

 ときのそら1st live、大成功。

 

 ホロライブのメンバーの誰もがそう言ってくれた。

 正直に言うと、自分自身でもいい出来だったと思っている。

 でも、ここで甘んじたり、妥協して手を緩めたりなどは絶対にしないし、できるはずもない。

 目指すは高み。

 そらの夢は、将来完成する、世界一のアリーナでのライブ。

 その夢だけは、揺らがない。

 

 

 

          *****

 

 

 

 そらのライブが成功に終わり、一行は再び元の地へ戻り、普段通り配信活動をしていた。

 そこへ、新たな仲間が加わった。

 ホロライブ二期生だ。

 

 マリンメイド服、ドジっ子メイドの「湊あくあ」。

 魔界の魔法使い(黒魔術)の「紫咲(むらさき)シオン」。

 魔界学校から来た鬼娘の「百鬼(なきり)あやめ」。

 魔界学校、保険医の「癒月(ゆづき)ちょこ」。

 総合格闘技部とe-sports部のマネージャーの「大空スバル」。

 

 この5人だ。

 何故か5人中3人が魔界出身という奇妙なことが起きているが、あまり気にしない。

 仲間が増えるだけで全員ハッピーだ。

 今回もまた個性豊かなメンバーだった。

 顔合わせ会の時、あくあは究極の人見知りを発動し言葉に詰まってしまったり、スバルは本人は真面目なのに場をお笑い会場にしてしまったり、あやめは会社内に無断で刀を持ち込んだり、シオンは会社内で無断で魔法を放とうとしたり、などなど……。

 荒れているというより、皆が皆マイペース過ぎるというべきか。

 この先二期生というグループで纏まった行動が取れるのか怪しい雰囲気だ。

 

「…………二期生、全員デビューおめでとー……」

「……」

「……」

「スバル、ドンマイ」

 

 折角用意した会場。

 先日丁度二期生最後の初配信となるスバルの配信が終了し、皆んなで打ち上げ(的なやつ)をしようと話して今に至る。

 会場とは言え事務所の小スペースだ。

 そして今この場にいるのはスバルとあやめのみ。

 スバルの誘いにあくあ以外は必ず来ると返事をもらった。

 あくあは未だに緊張するらしく来ない可能性も考えていたが、まさかシオンとちょこ先生まで来ないとは予想していなかった。

 大方2人とも寝坊だろう。

 わざわざ家凸するほどではないので、2人で静かに話し合う……と決めたのだが、やはり寂しくなって他のメンバーにも声をかけると、数名が駆け付けてくれた。

 こういう時、やはりよく動くのはフブキとまつり、今回はそらとロボ子も駆けつけた。

 

「2人ともお疲れー」

 

 みんなでジュースのコップを掲げて乾杯する。

 

「スバルちゃん、初配信凄かったね。これからもあんな感じなの?」

「やあ゛ぁ~めえ゛ぇ~てえ゛ぇ~! スバルのアレは違うのー!」

「おお、早くも黒歴史?」

 

 祝杯をあげた直後、早々に先輩からいじられるスバル。

 

「あやめちゃんは鬼だよね? お酒とかは飲まないの?」

「あー、余はね、飲めるよ? でもなんか鬼のイメージほどは飲まんかな」

 

 一方あやめは世間話のような会話の流れ。

 早速同期内での扱いの差が生まれている。

 

「なんかスバルちゃんって芸人みたい」

「違ぁう、すばうは芸人じゃなぁい」

「スバルっていい意味でアイドルっぽくないよね」

「良い意味でってなんだよ!」

 

 突然に声質を変えて突っ込むと、周囲から「あはは」と笑われる。

 もはやこのポジションで確定している。

 

「でもそう考えたらスバルってなんでここに入ろうと思ったん?」

「その言い方なんか酷くねえ⁉︎ スバルだってアイドルやりたかったって可能性もあるじゃん」

 

 もはやスバル対その他の図面が出来上がり、あやめがそう質問すると、スバルが的確な指摘をするが……

「でも違うんでしょ?」

「……うぅ……まぁ……半分くらい」

 と言葉に詰まる。

 

 となるとどうしてスバルはホロライブに入ろうと思ったのか、当然この場にいる全員が興味を持つ。

 全員の視線から意図を察したスバル。

 

「まあスバルにとって丁度大変な時期でなんか仕事探してたんだよ」

「そんなバイト探しな感覚で⁉︎」

「だって仕事探してたら貼り紙見たんだもん! なんかよく分からんけど受けたら入ったんだよ!」

「今なんかよく分からんってハッキリ言ったよね⁉︎ やっぱりアイドルーー」

「うあああああああああ!」

 

 絶叫。

 

 爆笑。

 

「おい話変えるぞ!」

「あ、逃げた」

「うるせぇ! 次だ次!」

 

 ひたすらにスバルはターゲットから逃れようとする。

 他にもスバルをいじるネタは幾つか残っていたようだが、折角集合してス虐だけというのもつまらない。

 

「あ、そう言えばフブキちゃんさ、アレが始まるんでしょ?」

「ーーアレ?」

 

 不意に話を振られ困惑するフブキ。

 話を振ったそら本人も「アレ」が何かすぐに浮かばず、「アレだよアレアレ」と何度も言って、

「えーっと……ホロライブゲーマーズ?」

「あー、言ってたね、ゲーマーが集まるんだっけ?」

 

 名前を出すと、ロボ子も噂には聞いていたのかある程度の要素を知っていた。

 新人の二期生はもちろん、一期生にも未だに明かされていないことだ。

 

「何スかそれ?」

 

 そのため、スバル、あやめ、まつりは興味津々だった。

 ネーミング的にアイドルではなくゲームの実況が本職のように思える。

 この会社ではもはやアイドルが本職なのかはわからないが……。

 

「そう、今ロボ子さんが言ったようにゲーマーグループを作るの。それでまたオーディションとスカウトを進めてるらしいよ」

 

 フブキがいつもより少し愉しげにーーというか、誇らしげに?鼻を鳴らして説明する。

 

「へぇー、でもなんでまつり聞いてないのにフブキは聞いてんの?」

 

 同期としてはまあまあ妥当な疑問だ。

 

「よくぞ聞いてくれた!」

 

 気持ちが昂ぶっているフブキのテンションが少し変化し始めた。

 

「なんとわたくし白上は、ホロライブ一期生兼ホロライブゲーマーズとして活動していくこととなりました」

「「へぇー」」

 

 存ぜぬ3名は軽く相槌を打つように返事をしたが、報告を事前に受けていた2人は特に反応せずに聞いていた。

 思ったよりも盛り上がりにかけており、フブキは少し残念そうだった。

 

「でも、そうだとすると三期生?はどうなるんかね?」

 

 あやめがふとそんな疑問を持った。

 

「さあ、でもこの調子ならゲーマーズのすぐ後くらいにできるんじゃない?」

「だろーねー。なんならその後も4、5、6……って感じで来るんじゃない?」

「かもねー」

 

 そんな流れでゲーマーズの話は終わり、後輩事情へと移っていく。

 

「今のところ各期5人ずついるし、この先もそうなるって考えたら……凄い人数だね」

「そうっスね、正直スバルは後輩できても舐められる気がするんでどうでも良いっスけど」

「余は……まあ大体の人間が人生の後輩だから」

「なるほど、確かに」

「いいよね、生物は歳の上下で見れば上の方が社会一般的には『優秀』ってされるから」

「あー、そっか、ロボットは技術が進歩していくから後に生まれた方が高性能なんだね」

「そうなんだよー、まあボクは既に十分高性能だけど」

 

 最後のロボ子の発言には誰も反応しなかった。

 

 このようにして小さな打ち上げはそこそこに盛り上がり、やがて収束していった。

 

 

 

 

 一方、小さな打ち上げが開かれていた中、不参加だった内の一人であるシオンはとある密室でえーちゃんと話し合っていた。

 

「一応シオンも今日の打ち上げでようと思ってたんだけど」

「それは本当にすみません」

 

 入社を決めたときのように軽いノリで不満げに口にするが、まるで何かを隠そうとしているようにも感じられる。

「ですが、シオンさんにどうしても知っておいてもらいたいことがあるんです」

 

「……へぇ~」

「――?」

 

 シオンが微かに見せた安堵に無言で疑問符を浮かべる。

 どうやらシオンは何かを杞憂していたようだ。

 それはさておき本題だ。

 

「まず予備知識として確認しますが、この国の五石については?」

「東の蒼、西の白、南の朱、北の黒、中央の金」

 

 当然とばかりに五つのそれをあげた。

 それを聞いてそうですと数度うなずく。

 

「各配置場所については?」

「南以外なら」

 

 その返答にやはり、と小さく呟いた。

 

「昔のことは?」

「それってすぐそばの空き地のこと?」

「はい、過去ーー50年前にあったとされる遊園地での騒動です」

 

 夕日が傾きかけており、窓からは丁度綺麗に夕日が差し込む。

 その明かりが少し熱い。

 

「わざわざその話を持ち込むってことは、この会社……」

「……はい……朱の石がこの会社の地下に……」

 

 シオンは歩き出した。

 

「シオンさん?」

「この会社に防衛手段が欲しいってことでしょ、今から仕掛けてくる」

 

 シオンは手ぶらのまま屋上へと向かった。

 分かれたえーちゃんとシオンはそれぞれ安心していた。

 えーちゃんは勿論、シオンが流れを読んで、その上要請を聞き受けてくれたことに。

 シオンは自身の魔導書に触れられなかったことに。

 

「…………」

 

 黙して歩みを進めるシオン。

 一言「五石か……」と呟き、歩みを早めた。

 過去の出来事を踏まえるとシオンの魔法防衛だけでは確実に戦力不足。

 ホロライブのメンバーも戦う羽目になると考えると、一般人でも扱える小道具が、もしくは単純な魔法を用意しなくてはならない。

 

「やだな~」

 

 黒魔術は主に自分の血を媒介として魔法を操る。

 規模が大きいほど自身への負担は大きい。

 それと、非常事態に取るべき最善の行動も前もって用意しなくては……。

 アイドル会社に入ったのに、アイドルとは違う方面で忙しくなりそうだ。

 

「……まあ、魔導書もあるし、その代償かな~」

 

 シオンは「何か」に妥協して歩速を元に戻した。

 

 

 

 

          *****

 

 

 

 

 影で不穏な動きがある中でも、時は進む。

 次に決定したのは、ロボ子とフブキそれぞれのソロライブ。

 

 まずはロボ子。

 場所は国の中央に聳える中枢エレベーター前。

 中枢エレベーターとは、天界と人界と魔界を繋ぐ超特大エレベーター。

 その造りやシステムは開発者のみが知るとされており、1つのエレベーターに一度に約100人が乗ることが可能だ。

 天界と人界、魔界と人界を繋ぐ場所は様々にあるが、三界を繋ぐのはこのエレベーターのみ。

 だからこそ、この国は世界の中枢となっている。

 そんな場所でステージを借りてライブをするのだ。

 

 次にフブキ。

 フブキは現在、ホロライブ唯一の獣人。

 それを踏まえて、獣人の街でライブをすることとなった。

 獣人の街は元々そんな名前などなかったが、いつからか住人の大半が獣人になり、やがてそう呼ばれるようになった。

 中には獣宅街と揶揄する者もいる。

 フブキはその街のそばの会場でのライブ。

 大きくはないが、やはり初ライブとしては十分過ぎる。

 

 これで3度目のライブとなるわけだが、これまでを見てきてわかる通り、今の会社の狙いは幅広い種族からの注目を集めることだ。

 会社の目指すべき地点は誰も知らないが、アイドルが目指すものは大抵決まっている。

 この広い世界で、注目を集めるためには何をすれば良いのか。

 それを考えた結果、多種多様な人々の目に留まることが大事だと判断した。

 きっとこの先も普通とは違う、風変わりなライブを繰り返していくだろう。

 

 ロボ子もフブキもライブの準備に追われている。

 それでも、日々の配信は欠かさない。

 ライブがあっても配信も仕事の一つとして手を抜けない。

 何より……配信中のコメントを見ると、やる気も元気も、必要な力全てが湧いてくる。

 最近になりホロライブの知名度も上がり、視聴者も次第に増え始めた。

 この調子でステップアップだ。

 

 今回のライブはステージを押さえるが路上ライブに近いため入場制限はある意味ない。

 肝心なのは1人でも多くの人の目に留まること。

 本日はそんなライブを前にしたロボ子の会場の下見。

 唯一の先輩であるそら、そして手伝いとしてアキロゼとメルが同伴している。

 

 中心街に近づくに連れて次第に人、車の横行が激しくなる。

 会場につけば人の往来は最高潮だ。

 

「……凄い人」

「……そうだね」

「そら先輩の時よりも遥かに多いよね?」

「まあ、無関係の人が大半だからね……」

 

 人の流れに圧倒されて言葉を失いかける4人がそれぞれ感想を絞り出す。

 そばに見えるエレベーターは常に稼働しており、通り過ぎる人の中には天使も魔界人もザラにいる。

 

「……ロボ子先輩、大丈夫ですか?」

 

 普段より口数が少なくなっているロボ子に声を掛けると、

「……まあ、ボクは高性能だからね! 失敗なんかしないし大丈夫だよ!」

 なんて豪語する。

 

 フラグを立てるな!と誰しもが思う。

 でも口にはしない方が良い気がした。

 そもそも、そんな空気ではない。

 

「でも、ほんとにロボち高性能で良かったね」

 

 だが意外な発言をそらがした。

 

「え?」

 

 いつも高性能高性能と自画自賛しているロボ子でさえも驚いて声を漏らした。

 

「高性能なおかげでちゃんと緊張感持ててるみたいだからね」

 

 先輩風を吹かせて笑うそらが本当に先輩だった。

 素敵な言葉かけに皆が言葉を失う。

 

「ま、まあボクほどの高性能ロボットは人間の全ての感情を持てるからね!」

 

 無言破壊のためにロボ子が紅潮して少し声を張った。

 緊張度は増しているが、それはまた別の緊張。

 だが、元気が出たようで何よりだ。

 そらもメルもアキロゼもクスッと顔を見合わせて笑った。

 

「あのー、すみません」

 

 そこへ突然、声が掛けられた。

 赤面していたロボ子を筆頭に驚き振り返る者たち。

 その振り返った目先、1人の天使が大きな荷物(トランク)を持って立っていた。

 頭に謎の手裏剣がある事には決して触れない。

 いや、恐らく触れてはならない。

 

「な、なんでしょう?」

 

 左腕には「生徒会」の文字が刻まれたワッペンが付けられている。

 一人で学校行事の何かに降りてきたのか?

 

「ここってどうやっていけば良いんですか?」

 

 あまり感情の見えない眼と声で簡易的な地図を広げてとある地点を指さす。

 どうやら単なる迷子らしい。

 しかしここには、少し離れるがインフォメーションセンターもある。何故わざわざ一般人に尋ねたのか。

 インフォの存在を知らないとなると仕方ないが。

 

「えーっと……」

 

 地図を見てぎこちなく振り返るそら。

 その眼は助けてと訴えかけていた。

 

「見してー」

 

 急いでロボ子が助太刀する。

 マップを見た瞬間脳内マップとリンクしたのか丁寧に教え始める。

 どうやら相手方もすぐに理解したようで、感情薄くお礼をした後その道へと向かって歩いて行った。

 

「……学校行事なのかな?」

 

 遠のいていく背を見ながらそらがつぶやいた。

 

「でも荷物多いよ?」

 

 メルは少し納得できていなさそう。

 

「あれって旅行か、もしくは引っ越しとかの荷物だと思う」

 

 アキロゼもメルと同意見だ。

 

「ボクは他人のことより自分のことで精一杯なんだけどなー」

 

 ロボ子は一人、他人に感情を向ける暇なく今も尚、僅かに緊張していた。

 

「大丈夫! 緊張は高性能の証! 高性能なら失敗なんてしないよ」

 

 そらの気の利きすぎる言葉。

 ロボ子は暖かい気持ちに包まれた。

 こんな感情も、やはり高性能ならではか。

 

「ねえ、折角だしお茶でもして帰る?」

 

 下見が終わった途端に暇ができる。

 それを見計らいそらが提案した。

 

「おー、奢り?」

「え、奢り?」

「さすが先輩!」

 

 するとロボ子を筆頭にそらにや(たか)り始める。

 先輩としての威厳がないのか、もしくは先輩として尊敬されているからこそなのか……。

 そらの場合は恐らく後者だろう。

 

「じゃあロボちだけね」

「えっ、ほんとに?」

「うん、私からの応援」

 

 アキロゼとメルもいいね、と賛同した。

 

 四人は雑談混じりに心休まる静かなカフェを探した。

 

 




 みなさんどうも、作者です。
 今回で漸く一人、4期生を出せました。
 勿論この先でしっかりとストーリー付きで登場しますが、4期生はもう少し先になりそうです。
 次はゲーマーズがありますので。
 それにそろそろ異世界らしい何かを出したいですね(バトル⁉︎)。

 もしこの先全員それぞれの出番会作ったら大変な事になりそうだけどやってみたい……。
 出来たとしてもきっと全員感動話は無理ですね。

 とまあ、こんな感じで続きは次回。
 次回、まだライブは始まらないよ(多分)。
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