歌姫伝承〜ホロの異能大戦ストーリー〜   作:炎駒枸

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93話 PEBOT砲台

 

 森の通路で激化する闘い。

 武闘家に挑むはPEBOT。

 

 剣士相手とは一変し、ぼたんは何一つ加勢できないでいた。

 

「――――」

 

 見上げた先、熾烈な争いが起きている。

 森の通路上空で、華麗な空中戦。

 空を飛べるトワ、空を蹴るぺこら、そしてエンジンで宙を駆ける武闘家。

 対してぼたんは捕捉するだけ。

 この空中戦に於いて、全く役に立てない。

 何かを投げたところで、この死闘では味方に命中する可能性を強く孕んでいる。それは寧ろ妨害になる。

 

 なら、ぼたんは2人を置いて先へ進むべきなのか?

 

 上空で、火花が散る。

 

 2対1で戦力は互角か敵が上手。

 ぼたんの加勢ができれば互角以上へ持ち込める。

 

「まだまだ!」

 

 体力を温存しつつ戦いに臨む武闘家。

 トワとぺこらの攻撃を同時に捌く技量は幹部級。

 縦横無尽に宙を駆け巡るぺこらの動きも、多方面に旋回するトワの飛翔も、完璧に見切るその視野の広さと直感の鋭さ。

 純粋な動きのキレの良さと身体からの発火による爆発的エンジン。

 

 ぺこらの「空中回し蹴り」を反動なく右腕で受け止め、トワの「天下踵落とし」を微力の反動で威力を流しつつ左腕で受け止める。

 2人が連続アクションを起こす前に、両腕から発火し軽い爆発を起こす。

 大した威力はないが、その爆風でトワが後方へ吹き飛ぶ。

 ぺこらは足への反発を利用して、爆風よりも早く後方へ避けた。

 

 常人であれば自らの腕を犠牲にするこの爆発。

 しかし、これはゲームで敵は幹部。

 肉体の構造が人間と同じとは思えない。

 今の爆発など擦り傷程度のようだ。

 肉体の衝突でトワとぺこらもその異常さは感じている。

 

 上空からの微風がぼたんに吹きつけた。

 

 あの人間離れした肉体を打ち破るには、どうすればいい。

 得意だろ、分析は。

 何もできなくない。

 ぼたんは今冷静に頭を使う時間が与えられている。

 使え、思う存分自分を。

 

 ぺこらは足への抵抗力を操作する。

 トワは悪魔の加護で他人の能力を借りれる。

 ぼたんは捕捉で的を逃さない。

 

 ウサギは何ができる?

 ライオンは何ができる?

 悪魔は何ができる?

 

 読め、分析しろ、状況を見極めて、戦況を自分の手で操作しろ。

 

 ぼたんが思考するその瞬間でさえ、場は目まぐるしく変化する。

 

「効かねっての、そんな軟弱な攻撃ぁよ」

 

 嘲笑とは思えないほどゲラゲラと笑う。

 2人も、手応えは感じていない。

 だがこれでも、本気で殺しにかかっている。

 

 ゲームだから。

 それだけの理由で受ける理不尽。

 

「じゃあ、あと5分な」

「あん?」

 

 突然右手を開いて突き出す。

 その宣言に、トワはメンチを切った時のような声を出す。

 ぼたんは、その声も5本指も認識できていない。

 

「俺が手加減するのは後5分ってことだ」

「ナメてんのか」

「当たり前だろ、この力差だぞ」

「ぜってぇー殺す」

 

 安い挑発に堪忍袋の緒が切れた。

 トワの瞳が燃えるように揺らぐ。

 そして勇猛果敢に難敵へと突っ込んでゆく。

 

 右腕からの鉄拳。

 魔力をパワーに変換し、火力を上げるが武闘家は左の掌で受け止める。

 その裏からぺこらが脳幹を撃ち抜くように蹴りをぶち込むが、それを右腕で防ぐ。

 思考を凝らし、今度はその腕を掴んでみた。

 受け止められた右手をバッと開き、武闘家の服の裾を握る。

 そのまま宙で2回転。

 勢いに乗せて地面へと投下する。

 地面に衝突する間近で爆発が発生。

 小さな爆風で巻き起こる砂埃が捌けると、そこには武闘家が余裕綽々とした様子で直立していた。

 

 ぼたんも近くにいるが、武闘家は無視して空を見上げた。

 

「っラァっ!」

 

 天からトワが降ってきた。

 遠心力と重力を掛け合わせた踵落とし。

 両腕を頭上でクロスして受け止める。

 バゴっ、と大地がひび割れ、周囲がわずかに陥没した。

 

 続けて武闘家の正面からぺこらが突っ込む。

 全力で駆け出し、風に乗り、鳩尾への蹴り込みを見舞う。

 塞がれた両腕。

 だが、右脚を上げて、脛の辺りで受け止めた。

 当然弁慶の泣き所よりズレた位置だが、筋肉や脂肪も少なく、とても防衛に向かない体構造をした部分。

 

「どうなってんだマジで!」

 

 ぺこらの苦言もよく分かる。

 トワもぺこらも確かにずば抜けた力はないが、容易く受けられる弱さでもない。少なくとも、2人を同時に抑える事が可能なのは一握りだと言える。

 このゲームの敵こそ、その一握りに含まれる。

 きっと、他の幹部も似た形だろう。

 

 もはや、死を恐れていては、突破は不可能かもしれない。

 1対1交換で倒せれば御の字、最悪全滅も視野に入る。

 なら……例え体が弾けようとも、倒す事だけを、念頭に。

 我が身可愛さなんて、今はいらない。

 ステージ上の自分と、戦場の自分を切り離せ。

 身を粉にして、戦え。

 カッコよく、戦死して見せろ。

 これはゲーム。

 1人でも生き残れば――勝ちだ!

 

「ッァーーーー!」

 

 ここで初めて、ぼたんの強襲。

 獣の瞳をギラつかせ、八重歯を煌めかせ、握った拳を振るう。

 そうだ、ぼたんは――ライオンだ。

 

「ブッとべ!」

「ッ、だっ――‼︎」

 

 ぼたんの狙う位置に一瞬敵の左足が現れる。

 だが、焦点は変更せず、左腕からのパンチを一撃ぶち込む。

 左脚と左腕の衝突で起きる衝撃波が、ぺこらとトワを吹き飛ばした。

 想像を絶する力の衝突。

 ぼたんはムキになるように力み、さらに力を加える。

 

「ぃ″ッ‼︎」

 

 左腕が壊れる音がした。

 まるで、ひしゃげたような、不気味な音。

 音と同時にぼたんが苦痛に顔を歪めた。

 でもまだ腕を引かない。

 ぶっ飛ばすまで、押し切る。

 

「あ″ァァァァァァァ″‼︎」

「きっ――」

 

 ぼたんの左腕が完全に振り抜かれた。

 その勢いのまま、ぼたんは膝を折って蹲る。

 青褪めた左腕を押さえながら悶絶する。

 

「ぐっ、ああ″! ッッッッッッッー!」

 

 ぼたんの左腕を代償に武闘家に与えたダメージは……

 

「データにないぞそれ……ああ、イッテぇ」

 

 右腕と左脚に痣ができていた。

 特に右腕の痣は色が濃い。

 

 服の土汚れを払う際、適度に加減していた。

 見た目のインパクトは無いが、効いている。

 

 データという単語に多少嫌悪感が湧くが、取り合う暇はない。

 

「ぼたんちゃん!」

「大丈夫か!」

 

 ぺこらとトワが駆けつける。

 滲む涙で視界がぼやける。

 

「ちょっと無理した……ッッ!」

「お、おい、あんま動くな――」

「動くよ。死ぬ覚悟でっ――やってっ、からッッ!」

 

 激痛を我慢して、ぼたんは片手をついて立ち上がる。

 

 獣人として持つ力。

 ぺこらが兎と同じ比率の脚力が出るように、ぼたんもライオンと同じパワーを出せる。

 だが、そもそもウサギとライオンでは比べ物にならない力差がある。

 人間よりパワーの弱い動物は人間の比率、パワーの強い動物はそのままの力で扱うことが可能だ。

 つまり、肉食獣などのパワーを使えば、人を容易く死へ追いやることができる。

 

 今回ぼたんはそのパワーを全開で放出した。

 人生で初めて。

 だから、身体がついて来れず、腕が壊れた。

 私生活での使用は勿論、現実で戦う機会があっても、まず使わない。

 ゲームだからこそ、この力を発揮できる。

 

「いける? 2人とも」

「「……おう」」

 

 左腕で血の滲んだ汗を拭う。

 

 ぺこらとトワが空中へ飛び出す。

 ぼたんは敵へ直進する。

 武闘家も空中へ。

 ぼたんの攻撃を最も嫌っている事が窺える。

 

 死んでも勝つ。

 

 そう誓って、挑んだ5分。

 結局、与えられた傷は先刻の一撃のみ。

 口約束の時間となる。

 遂に、来る。

 武闘家の、反撃が。

 

「5分。手加減も終わりだ」

 

 武闘家の言う手加減とは何か。

 それは、3人に反撃をしない事。

 防戦一方だったスタイルを変更し、攻撃にも転じる。

 

 キリッと表情を改める。

 次の瞬間、発火によるエンジンを利用し高速でトワの下へ。

 勢いを殺さず腹へ蹴り込もうとする。

 咄嗟に悪魔の羽を駆使して更に天空へ回避――すらも予期される。

 武闘家は蹴り込みの直前に手足から適度な発火でエンジンを追加。

 回避も虚しく蹴り上げが腹を撃ち抜く。

 

 エンジン点火から命中までの時間、僅か1秒。

 人智を超えている。

 

「うオ″っ――‼︎」

 

 衝撃で天へ昇るように打ち上がるトワ。

 空中で、一回転、二回転、三回転、四回転……。

 意識がないかもしれない。

 

「くっ――」

 

 ぺこらが飛び出す。

 トワ目掛けて空を蹴り、跳んで、跳んで、跳んで!

 

「人の心配する暇あんの?」

 

 声に反応して見下ろした瞬間、目前を武闘家が通り過ぎる。

 反射的にその姿を追いたくなる。

 だが焦ってはいけない。

 ぺこらは全身を半回転させ、直様足で攻撃を相殺できる体勢へ。

 

 刹那――右脚に迸る衝撃。

 海老のような体勢では、どうにも上手く力が入らない。

 

「スンゲェな! 圧倒的予測と反射」

 

 ぺこらの目を見張るような運動神経に、身震いする。

 しかも、地上と違い、不自由な空中での攻防。

 武闘家の高揚感が爆発として具現化される。

 パチパチと、発汗のように弾けている。

 線香花火程度の弱さ。

 

「まあ、力不足だがよ」

 

 抵抗力とパワーで抑えていたが、負荷が増し抗えなくなる。

 重力方向への圧力は、ぺこらの能力でも抑えきれない。

 

「っ――‼︎‼︎」

 

 地上へ真っ逆さまに撃ち落とされる。

 ビュンっ、と目にも止まらぬ速さで落下するぺこら。

 地上へ落ちる前に――!

 空を蹴り軌道変更。

 もう一度変更、変更、変更。

 

「何やって――ダッ!……」

 

 ぺこらを眺めていた武闘家の顳顬(こめかみ)を、たった一つの石がライフル弾の如く撃ち抜く。

 人間離れした肉体を持とうが、関係なくダメージを与える威力。

 普通なら風穴の開く威力だ。

 多少の出血のみとは。

 

「……痛え」

 

 傷口に触れ、手に付着した自身の血を見る。

 手を握り、血の感触を確かめる。

 中々、暖かい。

 

「で? 両腕壊したのか?」

 

 俯瞰し、嘲笑で余裕を見せる。

 ぼたんも仰視し、ほんのり口角を上げた。

 そんなぼたんの両腕は、武闘家の言う通り、故障している。

 拳を使った左腕と、肩を使った右腕で、わずかに負傷の差はあれど、ダメージの大きさに大差はない。

 肉食獣の力ってすげぇ。

 

「終わっとけ」

 

 この高さ、距離。

 ぼたんの声は聞こえない。

 

「ン″ぐ――――⁉︎」

 

 背後から突如襲い来る圧力に武闘家の体が持っていかれる。

 背中から全身にダメージが分散し、骨がしなる。

 その勢いのまま、隕石のように地上へ。

 

 直後――――激しい爆音と共に大地が唸った。

 

 

 ………………。

 

 ――――――。

 

「どうなった⁉︎」

 

 落下していたトワがいつの間にか意識を取り戻し、舞い降りてきた。

 地に足をつけぼたんと共に爆心地へ駆ける。

 

 爆ぜた通路に巻き上がる砂塵が消えない。

 その煙幕の中に二つの影が見える。

 1人が、寝ている人を踏み付けるような影絵。

 

 構図が、想定と逆でも不思議はない。

 

「テンメぇ――マジでどうなってんだ」

 

 震撼して声まで震えている。

 でも、ぺこらは元気そうだ。

 声から判別できる。

 

「流石に肝冷やしたって、コレはさあ」

 

 パチパチと火花が散る。

 火花は火力を増し、低威力の爆風を起こす。

 2つの影が反発するように距離を取った。

 その動作に連動するように、爆風で砂埃が履けていく。

 

 ぺこらも武闘家も、土汚れを付けただけで、変化がない。

 内面的な変化も、多少の疲労程度に留まるだろう。

 

「こんだけ対価払って、それだけの傷とか……マジで絶望だわ」

 

 トワが執拗に目前を覆ってくる理不尽に、再三悪態をついた。

 武闘家以上に、ゲームマスターへ憎悪が湧く。

 

「ゆうて、あたしの腕2本でしょ。まだ安い方……」

「いや悪い、トワはもうさっきみたく動けん」

「なんで⁉︎」

 

 バツが悪そうに目を伏せるトワ。

 身体能力を著しく損なうほど、腹への一撃が重かったのか。

 

「本体が死んでんだよ、そいつ」

「「……は?」」

 

 武闘家の発言に耳を疑う。

 唖然とし、無防備にもトワを見つめた。

 本体が……死んだ?

 

「ここで言う本体ってのぁ、先まで身体を動かしていた奴のことな」

「……???」

 

 理解が及ばない。

 仲間の知らない情報を、どうして敵が知っている。

 妙な感情が湧く。

 

「お友達にくらい話しとけって。連携しないと勝てないぞー」

 

 敵からのアドバイス。

 いや、ただの煽りだ。

 

「トワの身体能力が高いのは、ビビのお陰なんだよ」

「ビビ……」

「――! 帽子!」

 

 トワの頭には帽子が載っていない。

 戦闘時から消滅していた。

 トワの帽子は顔があるが、実の所その正体はトワよりも優れた悪魔。

 普段は微動だにせず帽子を演じているが、稀にトワの身体を借りて行動ができる。

 ビビに身体を貸すことで、トワは戦っていた。

 つまり、格闘技を使用できるのはトワではなくビビ。

 反射神経や運動能力が高いのもビビ。

 

 そのビビは、非常に打たれ弱い。

 腹への一撃で負荷が限界に達したのだ。

 

「だからトワ……は……。――?」

「――?」

 

 不意にトワの語気が弱まる。

 唐突に、何かに没頭した様に、俯いて、己の右手を凝視する。

 なんだ……これは……。

 

「どした、急に」

「…………」

 

 無言が長い。

 敵も味方も置き去りに、自分の世界へと入り込み、正体を確かめる。

 隙の様に見えるが、果たしてそうか。

 あの武闘家が攻撃に出るか思案し動かない現状が、突発的な展開の不穏さを示している。

 

 皆が傍観者となり、舞台の主役が一度消滅した。

 

「なあテメェ」

「――なんだ?」

 

 主役が2人、現れた。

 

「力比べしようや」

「「は?」」

「断る」

「「ええ⁉︎」」

 

 待て待て、何故そうなる。

 どちらの言い分も意味が分からない。

 何を持って勝負を吹っかけた?

 何を根拠に断った?

 

「お前、印象に反して賢いよな」

「場数踏んでんだよ、こっちは」

 

 武闘家の印象としては粗野で横暴。

 そこから短気、強気、負けず嫌いと言った性格を連想しやすい。

 だが実の所狡猾であり、冷静であり、読解や分析の能力に長けている。

 挑発行為を定期的に行い、逆に挑発には乗らない。

 敵と味方を見事にコントロールしている。

 

「さあ、遊びは終わったんだ。決着つけようか」

 

 武闘家が構えた。

 

「「――‼︎」」

 

 ぺこらと武闘家が同時に空へ飛び出た。

 風を切り裂いて、疾駆し宙での攻防を再開する。

 トワも飛べるが、今はビビ不在により対等に渡り合える運動能力がない。

 ぼたんも同様に。

 その弱点を突いて、武闘家は早々に狙いを切り替えて来るはず。

 ならば、行動を起こすならその前。

 照準がぺこら、もしくは完全に定まっていない今。

 

 トワはぼたんに耳打ちする。

 ここで本当に身を捨てて賭けに出る。

 まだトワ自身、この正体が何なのか定かではない。

 ただ、それでも賭けに出る価値はある高揚感だ。

 

 空中、遥か高くでぺこらと武闘家が一戦交えている。

 瞬時に最適解を導き出し、弱点になりうるポイントを殴打で狙う武闘家に対し、ぺこらは刹那の反射神経に身を委ね、もはや意志を持たずに戦う。

 ほぼ防戦一方のぺこら。

 力の差は歴然で、近い未来の決着は誰にでも予想が付く。

 その予想を破壊するために、トワの力が炸裂しようと、雄叫びを上げているのだ。

 

標的捕捉(ロック・オン)

「あいあいさー」

 

 地上の不穏な気配を察知し、攻撃ざまに数度一瞥を繰り返す武闘家。

 ぼたんのロックオンを確認。

 そのぼたんが持つもの――否、担ぐ者は常闇トワ。

 壊れた両腕でトワを持ち上げている。

 激痛が常に迸る。

 悶絶したい。

 でも我慢だ。

 耐えろ。

 呻吟を噛み殺し、強く八重歯で歯軋りする。

 

 来る――

 行く――

 

「BT砲、発――‼︎」

 

 トワ投擲の瞬間、右腕の骨が粉砕した。

 昏倒する脳内。

 最後まで言葉も発せず、ただこの一撃に命を賭した。

 痛覚が暴走する様に悲鳴をあげるが、それでもトワを全力で投げ飛ばした。

 全身全霊、ホワイトライオン渾身のパワーで。

 

 トワにかかる風圧。

 髪が引き千切れそうで、肌が焼き切れそう。

 そんな目にも止まらぬ豪速球(人)。

 

 2人の攻防に一石を投じる。

 目標へ一直線。

 

「速い――が残念」

 

 飛翔中に半回転したトワの足が、空振り。

 スッと無駄なく、華麗にあいつは回避した。

 武闘家を越したトワの足は目前ぺこらに衝突する。

 

「残念は――オマエや‼︎」

 

 反射しろ、ぺこら。

 

「――⁉︎」

 

 トワの足裏に、ぺこらの足裏が合わさり互いに反発し合う。

 いや、無理だ。

 ぺこらの抵抗操作だけでは抑えきれない勢力――

 

「味方の能力を――コピーしやがった――!」

 

 そうだ。

 基より標的はぺこら。

 2人の距離は近くどちらを的にしても、区別できない。

 そして、回避したと思わせ、ぺこらとトワが反発し合う事で、至近距離から全く同じ威力の攻撃を放つ。

 これが最後の賭け。

 

 武闘家の裏を突く思考、ぺこらの反射、ぼたんの余りの力、そして何より正体不明のトワの力に賭けた一撃。

 

 この至近距離の攻撃にエンジンで回避する猶予はない。

 両腕が咄嗟に迫る拳を防ぐ。

 

「「「PEBOT砲台」」」

 

 トワの拳の先が、まるで柔らかいタッチの様に武闘家の腕に接触し――

 

「――――⁉︎⁉︎⁉︎」

 

 轟く稲妻の如く、地へ落ちた。

 ただ閃光が天から地へ一直線に、刺した様。

 物体の運動など、まるで観測できない速度。

 

 雷鳴轟き、地は爆ぜる。

 

「っラァっ‼︎」

 

 そして悪魔が舞い降りる。

 

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