総隊長の孫娘〜その者、最凶の料理人につき…〜   作:名無しのナナ

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教え子

 四楓院家の戸を叩いて直ぐに中へと通されたボクは久しぶりに夜一さんと浦原君と顔を合わせ、此処に来た理由である痣城家を貶めんとする貴族達の動きを話す。

 

 無論、此処で話していても痣城家がしてしまった後暗い事は消えはしないが少なくとも痣城さんと双也くんにすぐに魔の手が伸びるような自体は避けられるだろう。

 

「ふむ、そうじゃなぁ…儂としては力を貸しても良いのじゃが、喜助、お主はどう思う?」

「そうっスねぇ…夜一さんが良ければアタシも良いと思うっスよ」

 

 当初は渋い顔をされる事を覚悟していたボクだったが、二人から返ってきた返事は思いの外色良いものであった。

 

「ありがとう、二人とも。でも本当に良いのかい?久しぶりに来た上にこんなお願いをしちゃって…」

 

 ボクの心配を笑い飛ばすように夜一さんがボクを見つめる。

 

「寧ろここで恩師を見捨てるようでは、ちとばかり格好が付かないというもの。

 …まぁ、どうしてもというなら別の形で借りを返してもらうのも良さそうじゃが」

「そうっスね、先生が納得しないっていうならこういうのはどうっスか?」

 

 二人はまるで示し合わせたかのように一人ずつ案を出してきた。

 

 夜一さんはこれから暇な時間があれば定期的に鍛錬に付き合うこと。

 浦原君は三百年後に勉強部屋と呼ばれる場所で使う温泉に入りその度にデータを取らせて欲しいとのこと。

 

(まさかあの温泉に入るとは思わなかったなぁ…)

 

 内心感慨深いものを抱くもボクは各々の案に首を縦に振る。

 

「そんな事で良いなら喜んでやらせて貰うよ」

「ありがとうございます、理論上は上手く行く筈なんスけどねぇ…データ採取に協力して貰えて幸いッス」

「とか何とか言いながら…喜助、お主千歳殿の裸体が見たいだけじゃあるまいな?」

「そうなの?」

 

 少し恥ずかしいけど中身は男だし、ボクは一向に構わないけど…というかもし本当にそうなら流石は声が狙い撃つぜの人(ロックオン)や変人48面相だな…と、首を傾げると浦原君は慌てたように首を横に振る。

 

「そんな訳ないじゃないっスか、そりゃあ良いおっぱ「やっぱりか、この助平」だから違いますッてば夜一さん!」

 

 …うん、まぁ、確かに良いおっぱいだよね。

 長年ぶら下げてて肩凝りの元凶である胸に視線を落としながら会話の流れを変えようと乾いた笑い声をあげる。

 

「あはは、浦原君のお願いはこれで良いとして…夜一さんのお願いは未知の領域だから何とも言えないよ?

 もしかしたら私じゃ話にならないかもしれないし…」

 

 学生時代ならいざ知らず、今どれくらい夜一さんが強いかは実際に手合わせをしないと何とも言えない。

 それ故に未知の領域、百年前からある試みを鍛錬時に取り入れているからこそ解る。ボクの本領を発揮するのは矢張り斬術と鬼道なのだ。

 

「構いませぬ、喜助じゃモヤシ過ぎて物足りないところでしたからな。久しぶりに千歳殿と手合わせをしながら…というのも乙なものでありましょう」

「モヤシっスか、ボク…これでも鍛えてるんスけどねェ…」

 

 それでも構わない、と笑う夜一さんにモヤシ扱いされた浦原君は泣いていいと思う。

 

「ま、まぁ…そういう事なら今からしようか?」

「そうするかのぅ、喜助も着いてこい」

「はぁ…それじゃあ行くとしましょうか」

 

 目指すは勉強部屋、BLEACHファンとしては一度は入ってみたい部屋へとボクは胸躍らせながら向かうのであった。

 

-------❁ ❁ ❁-------

 

 一行は勉強部屋へと足を踏み入れると早速とばかりに千歳は屈伸運動を始め、そして夜一へと振り返る。

 

「それじゃあ、はじめよっか」

「うむ、よろしく頼みますぞ、千歳殿」

「アタシは準備しながら見てます、二人ともやり過ぎないでくださいね」

 

 浦原はそう言うと温泉のある方へ向かい、千歳と夜一はなるだけその場から離れるように瞬歩を用い移動する。

 

 その速さたるや残像が残る程、並の隊士では見切る事すら叶わぬ速さを保ちながら会話する。

 

「二百年前に比べて随分速くなったね、夜一さん」

「完全に置き去りにするつもりでいたのに追い付かれては瞬神の名が泣いておりますわい」

 

 二百年前から既に歩法に関しては他の追随を許さなかった夜一ではあるが、その夜一を以てしても拮抗している事を認めざるを得ない千歳は斬拳走鬼を各々高いレベルで修めた死神である事が伺える。

 

「いやいや、置いてかれないように必死で食らいついてるだけだよ」

「儂からしてみれば千歳殿の底は未だ見えませんな」

 

 暫く走っていたが、二人は各々一度完全に静止し、同時に瞬間的に最速の速度を出す事で分身を作りながら互いの拳を利き手ではない手で受け止める。

 

()ッ」

()ッ!」

 

 その衝撃だけで空気が揺れるが斯様(かよう)な事は瑣末事(さまつごと)と言わんばかりに互いに掌底や蹴りを繰り出して行く。

 

「一発一発も重くなってる、速さだけじゃなくて筋力も鍛えてる証拠だね」

「それを受け流しながら蹴りを返してくるのは儂が知る中では千歳殿くらいですな」

 

 互いのたゆみない鍛錬の成果を褒め称えるように言葉を交わすが───千歳は一度地を蹴って後方に飛び退くと自身の霊力を極限迄超圧縮し黒き太陽を身に纏う。

 

「…うん、夜一さんなら何れ辿り着くだろうけど…」

「それは…!」

 

 瞬閧・黒輪乱舞(こくりんらんぶ)

 

 短く、然し力強い声で己が辿り着いた白打の境地の名を口にする千歳。

 黒き焔は辺りの霊子を吸収するように重力を持ちながら燃え盛る。

 

 それは、あの夜に千歳が視た有り得た未来の千歳の再現であった。

 

「黒い焔…ッスか…既存の鬼道には存在しないものッスね、何よりこの霊圧は…」

「…矢張り千歳殿に頼んで正解じゃった、…儂も今出せる本気を出すとしましょうぞ」

 

 瞬閧ッ!

 

 雷光を纏う夜一。

 霊圧の差は歴然であり、その上名だたる名刀が如く研ぎ澄ました千歳の霊圧は触れただけて弾き飛ばしてしまいそうな程に練り込まれているがこの恩師を超えたいと言わんばかりに振り絞った霊圧は凄まじく…。

 

 

 二人の拳は互いを捉えぶつかり合った。

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