R-type the endless danse   作:桜エビ

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ストックはまだある…(震え声



月を頭上にして、子供たちは腰を上げて踊りだす

『ブリーフィングを始める』

 

艦のブリーフィングの明りが落ち、ホログラムによる仄かな光が俺達を照らす。

あれから3日、緊急とのことで俺の休暇も打ち切って出撃命令が出されたのだ。

 

『諜報部からの情報により、明日未明に敵が地球にある本社のシリコンバレー工場を攻撃するという情報がもたらされた。』

 

シリコンバレー。既に地名として変化し名前の意味を持たない土地だが、それでもマクガイヤー社の精密電子機械の大動脈である。

 

『敵は我が社が敷設した対空陣地を衛星軌道上から波動砲で狙撃、破壊することによって爆撃機の道を切り拓く算段のようだ。』

 

『当然、そのようなことが無いようシリコンバレー上空の制宙権は我々が握っていた…昨日までは。』

 

そう、当然のことだ。

重要な基地、工場は宇宙からの狙撃も抑える為に宇宙も抑えているはずなのだ。

しかし、この流れがから予測されるのは当然、それを失ったということになる。

 

『3時間前、R戦闘機4機一個飛行隊の襲撃に遭った。そのたった一個飛行隊によって、旧アメリカ大陸上空の監視防衛網に無視できない穴が空いたのだ。そのうち一機は諸君が先日遭遇した試作R-13Tであることが確認されている。』

 

場がどよめく。

当然だ、その被害が正確にこちらに伝わってないが、狙撃型R戦闘機の部隊が無傷で通れ、追撃すらできないほどの穴を開けたのだ。

2,3中隊の壊滅まであり得る。

それが、たった4機で行われた。

 

『そこで、諸君らにこの狙撃R戦闘機隊のインターセプトに参加してもらいたい。もちろん今言った一個飛行隊の護衛も考えられる。諸君らの主な目的は、その一個飛行隊を含めた防衛機の露払いだ。』

 

一騎当千のR戦闘機隊、それを多勢で攻めたところで損失を増やすだけだ。

ならば、相打ちとは言え実質撃墜経験のあるエースをぶつけるのは、ある種当然である。

 

『諸君、最適の健闘を』

 

通信が途切れ、明りが戻る。

話が確かなら、俺は再びあの猛犬の相手をすることになるだろう。

…奴は生きていた。

確かに、アレで殺せたとは思っていなかった。

だが、なぜだろうか。恐怖ではない何かに俺の胸はざわつき、ただただ困惑が俺の頭の中を満たしていた。

 

 

『出撃まであと15分。各員戦闘配備を維持。戦闘機隊は速やかに出撃体勢に移行せよ。』

 

「おいキョウヤ!!」

 

愛機を整備してくれている、整備課のおやっさんに呼び出された

この前コックピットだけになって帰ってきたときは…正直申し訳ないと思っている。

無重力の中、近づいてヘルメットをくっつけて確実に会話する。

 

「手持ちにあるデルタのボディはこれで最後だ。この前みたいに派手に壊したら、次に本部からの補給が来るまで予備機しかないからな。」

 

「…了解。次は上手くやる。」

 

企業同士の戦争故、正規軍が保持しているR-99のような戦闘機はさすがに運用できないのが実情。だからうちの艦隊の主力はR-9A3―それも【オペレーション・ラストダンス】の影響である程度近代化はされている―という数世代前の機体だ。

だが、R-9A2はさらにその前世代。エースだからと俺の趣味に合わせて特注しているようなものだ。

だから、予備パーツはほかの機体以上に貴重。

だから前回のような機体全損レベルの被害に遭うと、こうなってしまう。

 

回転式固定台に固定されている愛機の最終点検を済ませた俺は、コックピットの座席へと宙を泳ぐ。

 

「キョウヤ、お前が頼みの綱だ。あの番犬をどうにかできるやつはお前くらいだろうからな。」

 

大声で声をかけてくるトウゴに、俺はサムズアップを掲げて応える。

彼らも彼らで、5年の任期こそ終えてないが既に4年近く生き残っているベテランだ。

AWCS担当ではあるが、彼らもかなりの腕だ。

 

…それが、俺を頼りにするしかない。

軽い絶望感と、高揚感の両方が俺の胸を満たしていく。

機関と俺の胸の鼓動がシンクロするように高まっていく。

そこにノイズもなく、俺自身も、おやっさんに実質新調してもらった機体も調子は完璧。そう俺は確信し―

 

「いや、違うな…やはり。」

 

軽い否定がよぎる。

確かに、俺も機体にも不調はないのは間違いない。

だがあの胸のざわつきは、やはり強敵に相対する高揚ではなかった、そう確信した俺は一層それがしこりとなって思考に引っ掛かり続けた。

 

だが、時は年を取らないスコルすら待ってくれない。

 

『R戦闘機発艦シーケンスを開始せよ。』

 

頭上のエアロックが開き、固定アームが愛機を宇宙へと送り出す。

 

 

 

 

宙が俺を迎え入れる。

 

 

 

 

 

それが俺の思考を思案から戦闘へと切り返させた。

アームが俺の機体を開放し、それが出撃の合図となる。

 

「R-9A2+、ミナモト・キョウヤ。出撃する!」

 

スロットルを全開にし、俺は愛すべき宙へと漕ぎ出した。

 

 

 

 

『クリアアイズ4、ボギー確認。照合……間違いない。R-9D2(MORNING STAR)が12機。R-9K(SUNDAY STRIKE)が16機…感づいてるな。R-9Kの4機がこっちに来てる。』

 

『こちらの後続機も近い…どうしますか』

 

敵がR-9Eの索敵範囲内に入った。

今更だが、戦闘機隊の隊長はキョウヤだ。

この判断はキョウヤが下さねばならない。

 

こちらはR-9A3(LADYLOVE)の4機編隊がカシウス、アルタイルの2つ(カシウスにキョウヤのR-9A2+が混じっているが)に早期警戒機のR-9E(MIDNIGHT EYE)

味方に後続の本命がいることを忘れてはいけない。

 

「…後退しつつ波動砲で護衛機を叩く。俺が拡散波動砲で接近中の4機を片付けるから、他は全機本丸を…」

 

『そんなまどろっしいことしてられないってえの!』

 

「…やめろ!カシウス4!」

 

勝利のために、キョウヤはこだわりを捨てつつ砲撃戦に持ち込む算段であった。

だが、新入りで血気盛んなカシウス4が命令を無視して突撃を開始した。

 

『喰らえ!』

 

敵機が装備しているフォースからの対空レーザーを回避し、2ループ状態の波動砲を発射。

こちらに向かっている小隊が分散した。

それを好機と見たのか、カシウス4はその中央を抜けて反転。

 

『FOX5!』

 

反転の間に合わない編隊の二機をミサイルで破壊する。

爆炎がカシウス4と敵編隊を遮るほどに迸った。

 

『やった!俺だってでき…な!?』

 

その直後、赤と青のレーザーがカシウス4の機体側面を削り取った。

爆炎から現れたのは、フォースを後ろ側に装着した敵機の姿。

マクガイヤー社はフォース反対派を取り込んだがために使えない、フォースの利点。

配置さえ間に合えばその方向からの攻撃は無効化され、反撃すら行われる。

味方の犠牲によって稼がれた時間に、彼らは反撃するべくフォースを後ろに配置したのだ。

 

そしてそのフォースが、カシウス4に向けて射出される。

破壊不能兵器という異名を持つフォースが、カシウス4の機体を粉砕しようと迫る。

損傷した衝撃で回避運動が取れないカシウス4に迫るフォース。

 

「させるか!」

 

―今言った破壊不能、というのは正確ではない。

フォースはバイドを培養してコントロールロッドで制御している物。

バイドの性質を持つ故にバイドなのでは破壊できないというのが実情。

ならば、バイドを打ち倒す手段の一つである波動砲は?

 

拡散波動砲がフォース諸共敵機体群を破壊していく。

撃ち下ろすように放たれたそれがカシウス4に着弾することはない。

この編隊で拡散波動砲を搭載している機体は一機しかいない。

 

『お、俺に貸しを……』

 

すぐ隣に、R-9A2+が降り立った。

カシウス4が強がろうと震えた声を上げようとするが。

 

「全機散開!!その後各々弾幕を掻い潜り吶喊せよ!!敵と完全に認識された!波動砲の雨が来るぞ!!」

 

カシウス1、隊長であるキョウヤの大声が味方全機に響く。

その声を聴いて全機が編隊飛行を解除して、一斉に散る。

 

その瞬間、その空間を青い光が満たした。

 

 

「…あのバカ!」

 

あの先陣ごと一斉に護衛機を叩かなければ、弾幕を浴びることになるのは目に見えていた。

背伸びして俺より手柄や武勇を上げたかったのかもしれない。

だが、それはまともに戦える土俵を組み上げてからだ。

 

俺だってドッグファイトの方が好みだ。だが、それだけが戦場じゃないことは学んでいる。

そうでなければ5年を通り越して7年戦って生きてるわけがない。

 

スクランブル的にコンタクトを取りに来た先行機。

それにすぐに敵と判断されれば、後続の敵機がこちらに向けて数での圧殺を選択する。

その前に砲撃してくる数を削ることでこちらのリスクはかなり減るだろうという寸法だ。

何しろ相手にはR-9D2がいる。

狙撃されればたまったものではないのだ。

何ならR-9Kの波動砲のフルチャージは拡散波動砲だ。遠方から断続的に放たれれば、戦艦の対空砲火さながらの弾幕になる。

 

「っッくう!」

 

既にコックピットの慣性制御を限界まで機体に渡している状態で、機体を青い光の間に捩じりこむ。

耐えられる限界寸前のGが体を襲い、視界が滅減してる。

 

『アルタイル2被弾!推力25%低下!このままじゃもちません!!』

『カシウス3、制御不能!制御不能!』

 

既に味方はこの弾幕に限界を迎え、脱落機すら出ている。

いまできる最善の策は、俺が拡散波動砲を敵編隊に叩き込み攪乱。弾幕を薄くさせて味方の突撃ルートを確保し、乱戦に持ち込むことだろう。

 

「あと少し…!!!」

 

圧縮波動砲が左上の尾翼のようなスタビライザーを掠めて丸ごと持っていかれたが、戦闘に支障はない。

拡散波動砲のチャージが終わり、最も効果が高いであろう位置につけた!

 

「…持ってけ…ッ!!」

 

波動砲の弾幕を押し返すように、敵に拡散波動砲が降り注ぐ。

敵のいくらかに命中し、陣形は形を失い各々が必死に回避する。

 

弾幕が途絶えた。

 

『いけぇ!!隊長が体張ったんだ!その分俺達が働くんだ!』

 

『そこだぁ!!!』

 

そこに猛犬のようにくらいつくカシウス隊、アルタイル隊の生き残り。

 

俺も立ち上がりかけの敵機を撃ち、味方への被害を減らす。

 

『隊長…俺…』

 

カシウス4が申し訳なさそうに並走する。

既にそれなりの損失を被っており、処罰は逃れられないだろう。何しろ命令違反だ。

 

「今は作戦に集中しろ。今を生き残らないと話にならない。」

 

 

『…了解……』

 

 

 

その直後、クリアアイズ4の大声が無線に響いた。

 

 

 

『反応が急にホップアップ!この前のやつだ!』

 

 

『………っ!!??』

 

 

 

 

カシウス4の機体が、上からフォースに食われた

余りに一瞬の事で、脱出の間もなく彼は散っていく。

 

 

 

今、俺は生き残れと言ったはずだ。

 

 

今まで何度も味方が撃墜されるところは見てきた。

5年生き残れるパイロットというのは少ないのが現実。俺は俺の僚機や部下をたくさん失ってきた。

だが、目の前で即座に2度目の命令違反(戦死)されるのはさすがに堪えた。

 

「どこから…っ!」

 

その直後、頭上から黒い機体が俺の真横を落下するかのように通り過ぎる。

 

R-13T

 

あの猛犬だ。

 

 

 

「…!全機、猛犬が来たら離れろ!奴は俺が狩る!」

 

確実に後ろが取れるよう、若干遠回りするように奴を追いかける。

前回墜としていれば、カシウス4は犠牲にならなかった。

例え命令を守らない奴であっても、ろくでもなくても、もしかしたら挽回できた可能性はあったはずだ。

その可能性を奪ったのは俺だ。

 

俺の全力を以て、俺は奴を狩る。

 




ぶっちゃけ描写とかにツッコミどころかあると思うので…感想お待ちしております
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