R-type the endless danse   作:桜エビ

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サブタイトルのセンスをください


月明かりが照らす舞台を眺める少女

私の記憶の始まりは、培養槽から自分が生産されるところ。

 

私は特異個体として生産された存在。

その誕生の瞬間、当然といえば当然。

 

特別ではあるけど、モルモット。

幸い毎日のように実験の連続という、昔のSFのような扱いを受けなかった。

研究は最高機密とはいえ、存在そのものを隠すよりその性質を隠す方がコスパがいいのだろう。私は通常のスコルとしての待遇で今を生きている。

 

 

「た、隊長が墜ちた!こ、こっちに…!う、うわああぁあああああ!!!」

 

「すまない!俺達には勝てない…!」

 

私はシステムのスイッチを入れる。

これを使えば、私の思考は切り替わり常人のものではなくなる。

 

だが、これを使わなければ奴は倒せないと確信めいた直感が告げている。

目の前のエネルギー体の破壊衝動が流れ込み、私を兵器へと変貌させていく。

 

そこから先は特筆すべき思考はない。

たった一つ、そこまでしてなお被弾して炎上している中で、敵の動きを思いだして真似した以外は。

システムが機体の破損に影響されたのか、もっと別の理由だったかは分からない。

分かっていることは、私が一時的に少し私を取り戻したということだけだ。

 

『だ、大丈夫か!?』

 

「ええ……でも長く飛べない…消火した後こっちのエンジンは切るわね…」

 

 

 

『ミッションを説明する。』

 

暗いブリーフィングルームの中で、私は上官の話にただただ耳を傾けていた。

 

『君達はこれよりシリコンバレー上空の宇宙監視防衛網に穴を開けてもらう。これは後に行うオペレーション・メキドの前段作戦だ。』

 

そう言うと、ホログラムが地球付近の宙域を表示し、敵の予想分布を表示する。

 

 

―広い。

 

私の抱いた感想はその一言だった。

 

『知っているとは思うがこの網は非常に強固で、そして広大だ。だが、この部分は異層次元レーダーの置き換えが間に合っていない、旧式のものということが分かった。そこで君たちの出番というわけだ。』

 

そのうちの一箇所の色が変色し、敵の弱点を強調する。

決して広くはない上そこまで気にするほどでもない筈のそれが、私達という特異な存在にはあまりにも致命的すぎた。

 

『君達は以前決行したように新型のR-9Cとそれが牽引するR-13Tで異相次元より接近、最大出力の波動砲で突破口を穿つ。』

 

…最新式のレーダーでしか捉えられないほど、深くまで潜航できるよう改装したR-9C。

最大効力射が狙える距離にまで接近できるのは非常に大きく、面制圧に優れる両機の波動砲で抵抗を許さず殲滅する。

 

『そして、その突破口にR-9D2とその護衛機が突入する。その際、損耗次第ではあるが退路の確保兼いざという際の増援要因としてその場で待機してもらう。』

 

一度抜けてしまうと、そこは防衛網の空白地帯。

おそらく2日は抵抗無く行動できる。

 

壁の強度こそ確保しているけれど、広く分布した防衛網は破損のリカバリーに時間が必要になる。

その僅かではあるが確かに存在するスキを突いて、電撃的にことを進める算段。

 

『長く過酷な任務になる。だが、君達の力を信じての作戦だ。最適の健闘を。』

 

お決まりの言葉で通信は途切れた。

明かりが戻るブリーフィングルーム。

 

「初陣がこれですか…僕達、できるでしょうか?」

 

隣にいた少年が声を掛ける。

先日撃墜されて失われたパイロットの補充―再生産された子の一人。

優秀と名高い素体をもう一回使ったのか、顔立ちも髪の色も前の子とそっくりの男の子。

大きく違うのは髪型、彼はくせ毛をそのままにしていたが、彼は少し誤魔化そうとしているのかかなり短めに切ってる。

それと、これまた僅かな差だけど経験値。

 

「以前貴方の同タイプと出撃しましたことがあるんです。彼はとても優秀でしたよ?気休めにしかならないかもしれませんが…」

 

私は出来る限り自然に微笑みかけ、期待のまなざしで彼を見た。

 

「いえ、ありがとうございます。」

 

間違ったことは言ってない、一切。

あのR-9A2ベースの機体を使って妙な機動をするアイツに、この前撃墜された彼。

3年やってきたベテランで、とても強くて、頼りにしていた存在…

弱ければ死ぬのはこの世界の、スコルの常なのは刷り込まれた知識で分かってはいる。

だけど、彼は決して弱くはなかったはずなのに。

 

あのデルタを使うエースを墜とせたのは正直言って偶然だった。

私がフォースの共鳴して破壊衝動に身を任せていたままだったら、きっとあのまま機銃の雨で私の機体は砕かれていたはず。

何故かあの一瞬だけ、少し理性が回復した。

 

僅かな理性と破壊衝動は上手い事調和できた。

敵のやってきた挙動を咄嗟にマネして、私はあいつの機体を粉砕した。

 

でも敵討ちは果たせなかった。

視界の端に、脱出した敵の機首が見えたから。

だけどあの時むやみに追撃していれば、私の機体は空中分解していたと思う。

 

「…ああ、一つだけいい?」

 

「なんでしょう。」

 

「デルタだけは私が墜とす。」

 

 

『こちらハウンド1、まもなく異相次元から復帰する。全機各部チェック、異相次元で永久に迷子にならないようにしろ。』

 

『了解!』

 

前回の作戦で隊長は死んだ。

私と、隣にいるエドガーだけが生き残った。

その結果、一番長生きしているエドガーが隊長に就くことになった。

いきなり渡された隊長の座に緊張しているのだろう。通信越しでもわかるくらいには声が震えてるのが伝わってくる。

 

「…エドガー。」

 

『…なんだ?』

 

「リラックスして…とは言えないね。【もしも】の時はあなたに任せなきゃいけないから…」

 

緊張をほぐそうと声をかけたが、すぐそのことに気づいた。

沈黙がしばらく続く。

 

私がモルモットとして搭乗しているこの機体。そして搭載システム。

それは暴走の危険性がある。

だから、この部隊の責任者であるエドガーが【処分】しなくちゃいけない。

 

『…任せろ。俺を頼ってくれ。』

 

だが、幸いにも腹をくくる要因の一つにはなれたようだ。

決意に満ちた声が、沈黙を破って帰ってくる。

 

「…ありがとう。」

 

私は静かに応えると、戦闘に備えた。

既に波動砲のチャージは済んでいる。後は通常空間に復帰して、食い散らかすだけだ。

 

『通常空間の敵機を再確認。このまま続行する。』

 

空間の一層下に潜み、攻撃の配置についた私達。

タイミングを合わせて浮上、砲撃すればそれで勝敗は決する。

敵機全滅とまでは行かないだろうけど、ここまでの奇襲に烏合の衆になった敵たちを片付ける仕事になるんだから。

 

『カウントセット。5,4,3,2,1,浮上!』

 

私の愛機は、みんなのR-9Cによって通常空間に引っ張り出される。

異相次元戦闘機は、異相次元の航行はできるけど自分の意志での潜航はできない機体が多い。

この機体もその一つ。

 

だから、こういった作戦にはみんなが必要だった。

 

『浮上完了、撃てぇぇぇぇぇ!!!!』

 

4機すべてが通常空間に復帰。

目の前には敵の艦隊と哨戒機。護衛機は上がってすらいない。

 

そんな無防備な敵に、私達は一斉に最大チャージの波動砲を撃ち込んだ。

私のライトニング波動砲が周囲の機体にホーミングして的確に射抜き、そして3機の拡散波動砲が艦と周りの機体を穴だらけにして行く。

 

それだけで敵は混乱し、組織的な抵抗が出来なくなっていた。

 

『気を抜くな!』

 

「分かってる!残敵を掃討する!」

 

 

 

 

そこから先は、特筆すべきことな何もない。

動きが鈍すぎる敵機を的当ての要領で撃墜し、この宙域は完全に沈黙した。

 

作戦成功の報を受けて、進んでいく味方の狙撃部隊。

キャノピー越しに敬礼をし合いながら、仕事の場へと赴くR-9D2を見送った。

 

そこから数時間後、いきなりエドガーが呟く。

 

『…やっぱりそうだよな…』

 

「何が?」

 

『いや、この前の敵と比べちゃってな。』

 

恐らくデルタの事だな、と納得する。

フォースを装備した隊長もあっさりと撃墜されてしまったほどの猛者。

私だって殺されかねなかった。化け物と言われても仕方ない私から見ても化け物だった、あの機体。

 

「あんな動きをするヤツが沢山いたら今頃こっちは負けてる。」

 

『だな…念のため研究しておこうかな…』

 

…それは…ありかもしれない。

一瞬否定しかけたけど、あの動きはある程度参考になるかもしれない。

慣性制御とフォースの存在で、砲撃戦の様相を呈しているR対Rの戦闘。

それに対し、高速度で常に機動し続け後ろを狙うあの動き。

決してセオリーではないけれど、全く無意味というわけではない。

もしかしたら新しいセオリー………になるというのはさすがに過言か。

R戦闘機のメリットがいくらか機能していない。

 

『…救援信号。インターセプトする部隊はいたようだな。行こう。』

 

「了解。」

 

思考の海から引きずり出された私は、スロットルと操縦桿を握り直す。

味方が襲われているんだ。助けない手はない。

 

最大戦速で急行すると、既に陣形は崩れていた。

乱戦となり、R-9KもR-9D2も次々と撃墜されている。

敵を退けなければ、作戦の遂行は難しくなる。

 

「…フォースリンクを使う。」

 

『承認が出た。行ってこい!!』

 

フォースリンクシステム。

 

フォースとはバイド。

そのバイドは本能として高い破壊衝動と戦闘本能を持つ存在。

ならば、それをR戦闘機の戦闘能力として利用できるのではないか?

かつて存在したバイド機に近い発想をもって生まれたこれを扱うために、私とこの機体がある。

 

システムが起動し、サイバーコネクタを通して私の脳は機体だけではなくフォースとも接続される。

その瞬間、私の思考回路はバイドに近いものへと変貌した。

 

「コワス」

 

ただ淡々とそう思考し、そう発する。

本能に従い目の前にいた手負いで動きの鈍い敵にフォースシュートを撃ち下ろした。

テキは油断していたのか、回避もできずにひしゃげてコワレタ。

次のテキは―アイツは。

 

爆炎を突き抜けるように動いていたワタシの機体と、ヤツが、デルタがすれ違った。

 

ヤツは…奴は墜とす。

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