俺の霊圧は消えない   作:ディアブロー

12 / 16


霊王宮に行ったことで、それまでとは違う霊圧を手にした原作最終戦の黒崎一護。

対して、ここのチャドは魂魄と崩玉の欠片が融合したことで異質な霊圧を手にしてしまっている。



チャド専用……だと!?

 

 

 黒崎一護、茶渡泰虎御一行が現世へと帰る日。

 

 チャドはこのまま自分が現世に帰っていいのだろうかと思案していた。

 

 今のチャドは、魂魄と崩子ちゃん(崩玉の欠片)が完全融合してしまっており、あまりにも異質な状態だ。普通の人間ではない。

 

 そもそも、チャドの周りには普通ではない人間が多く存在しているが…。死神の力を持つ黒崎一護。"事象の拒絶"と言う神の領域をも侵す力を手にしてしまった井上織姫。"滅却師(クインシー)"の生き残りである石田雨竜。チャド自身を含み4人も存在している。

 

 ただ、今のチャドは異質だ。本人は知らないが、実は()()()()()()も有している黒崎一護同様に異質なのだ。

 

 チャドの力を目覚めさせ、井上織姫にも特異すぎる力を与えた崩玉の欠片と完全融合してしまったことで、欠片とはいえ周囲に与える影響は計り知れない。

 

 また新たに、チャドや井上織姫のような特異な力を開花させる人間が現れる可能性もある。チャドはその点を強く心配しているのだ。

 

『そこはご心配なく!

 何故なら、私は()()()()()()の崩玉のようなものなので!チャド様以外に影響を与えることはまったくございませんよ!』

 

 しかし、チャドの心配は杞憂に終わったようだ。

 

 それにしても、チャド専用の崩玉(欠片)とは恐れ入る。しかも心意気次第で、チャドの力は無限に成長するのだから、これはVIP待遇ではないだろうか…。

 

「俺の霊圧は無限に成長するとのことだが、魂魄の弱い者に与える影響は大きいんじゃないか?

 近づいただけで死んだり…弾けたり(爆散)しちゃわないか?大丈夫か?」

 

『通常時と戦闘時で上手く切り替えればいいだけのことです。チャド様は、普段はあくまで人間なのですから。

 ですが、戦闘になれば──()()()になるのです!』

 

 どうやら、周囲への影響は本当にまったく気にするようなことではないのかもしれない。

 

 だが、それと同時にチャドは思った。

 

 別に超越者になりたいわけではないのだと…。霊圧が消えたくないだけで、そこまでは求めていなかったのだと…。

 

 周囲に与える影響もそうだが、チャドは今の自分の現状……何よりも今後の己の状況について心配しているのである。

 

 今のチャドの現状は、霊圧が消えないで最後まで戦いに参加するという当初の目的を果たすことはできたが、イレギュラーが発生してしまっており、より強い相手が障壁として常に立ち塞がる現状となっている。

 

 強者が強者を引き寄せる。因果応報のようなものだ。

 

 つい先日も、最強の死神(総隊長・山本元柳斎重國)最凶の死神(更木剣八)の2人と激闘を繰り広げたばかりだ。その闘いでも生き残り、チャドはまた一皮剥けてしまった。

 

 今後も同じような展開が必ず起きる(災厄が降りかかる)だろう。

 

 チャドの苦難は今後も続き、成長する度に更なる強敵が立ち塞がることになる。

 

 そして残念なことに、チャドにはもう逃げ道がない。崩子ちゃんが外堀を埋めてしまったのである。代償なく願いを叶え続けてくれることなどない。只より高いものはないのだ。

 

 チャドはそれを痛感し、まったく別の生き物になってしまったような感覚を抱きながら現世へと帰ることとなる。

 

 

 

 ◆

 

 

 

 青天の霹靂。

 

「チャ、チャドさん。

 あ、あの…これは現世に駐在している死神が尸魂界(ソウル・ソサエティ)からの虚襲来の指令を受け取る"伝令神機"と言う通信機器を改良してもらったもので、現世の携帯電話とほぼ同じようなものです。機能は通話とメールのやり取りのみしかできませんが…も、もし、チャドさんが嫌でなければ…現世に戻られてからも、私と連絡を取り合ってくれませんか?」

 

「ほォ…モテモテじゃのォ、チャド」

 

 後に修羅場。

 

 帰る直前、俺は勇音さんから通信機器をプレゼントされようとしている。しかもどうやら、俺と勇音さんが連絡を取り合う為のみに改良してもらった物であり……即ち、俺と勇音さん専用だ。

 

 ただ、帰る直前に……よりにもよって夜一さんの目の前で渡さなくてもいいだろう。勇音さんが意外と度胸があることをこのタイミングで知ることになってしまった。

 

 あと夜一さん、腕をつねらないでほしい。痛い。

 

「チャドさん、受け取って差し上げてください。

 勇音が特定の殿方にこのような思いきった行動をするのは初めてのことなのです」

 

 そしてまさかの、卯ノ花隊長からの援護射撃。卯ノ花隊長は『私の可愛い愛弟子を誑かしてんじゃねェ殺すぞ』的な反応を見せるのではないかと思っていたのだが…。

 

「勇音と仲良くしてあげてくださいね」

 

 笑顔が怖い。

 

『勇音に手ェ出したら、すぐに死んで護挺十三隊に入隊しねェと赦さねェ』──そんな幻聴まで聴こえてしまった。

 

「卯ノ花隊長、チャドはこれからますます強く、逞しく、素晴らしい男になるじゃろう。間違いなくな。

 言っておくが、()()()()()では釣り合わんぞ?」

 

 しかし、事態は混迷を極めている。とても嬉しいことではあるのだが、夜一さんがヤキモチを妬いてしまっており、卯ノ花隊長に真正面から勝負を挑み始めてしまった。

 

 白打最強と初代剣八の女の闘いなど恐ろしいにも程がある。

 

「夜一さん…言っておきますが、勇音は私の後継者です。副隊長如きではありませんよ。

 勇音の回道を直接受けたチャドさんなら、勇音の素晴らしさがわかりますよね?…ね?」

 

 ここで俺に話を振らないで頂きたい。

 

「ぐ…じゃ、じゃがそれがどうしたと言うのじゃ。

 白打最強の私こそが隣にいるのに相応しい。チャドをもっと鍛えてやれるのは儂のみじゃ。

 その娘に儂と同じことはできんじゃろう」

 

「ぐ…そう来ましたか夜一さん。

 確かに、勇音に白打の才能はありません」

 

 俺からしたら、夜一さんも勇音さんも魅力的すぎて、順位などつけられるはずもない。

 

『チャド様、素敵です!

 その懐の深さ、感服します!!』

 

 崩子ちゃん、お願いだからやめてくれ。惨めになるだけだ。今の俺は夜一さんと勇音さんに順位などつけられるはずがなく、2人に一途……つまりは、典型的な駄目で優柔不断な男。

 

 誉められても逆に虚しくなるだけである。

 

「ですが、決めるのはチャドさんです」

 

「確かに…そうじゃな。

 チャド、儂と小娘…どっちがいい?」

 

 これは、そんな優柔不断な俺への罰なのだろうか…。

 

 双殛の丘の"穿界門"前にて、見送りにやって来た死神達の視線が俺に向いている。

 

 答え次第で、俺の霊圧は消える(命は終わる)。事の成り行きを黙って見ていた砕蜂はこれ幸いと、蜂の下腹部を模したような照準器付きの砲台に、金色の蜂の針状の砲弾が装備された物騒なモノ(卍解・雀蜂雷光鞭)を構えている。

 

 卯ノ花隊長は、『もちろん勇音を選びますよね?』と、そんな笑顔を俺に向けているが、斬魄刀の柄に手が伸びている。

 

 チラッと一護や井上、石田に視線を向けたら、見事に顔を逸らされてしまった。俺達友達だよね…。

 

 誰も俺を助けてはくれないようだ。

 

「泰虎ァ、まだ帰るんじゃねェ!

 テメエの盾を今度こそ斬る!!」

 

 だが、天は俺を決して見放しては……いや、これはそう言えるのか些か疑問だ。何故なら、双殛の丘に現れたその男は、これまで常に肌身放さず持ち歩いていた斬魄刀──柄や鞘にサラシを巻いた刀身がボロボロに刃こぼれしまくった長刀ではなく、チャドよりも僅かに大きい自身の体躯に匹敵する()()を肩に担いで臨戦態勢状態だからだ。

 

 その場にいる誰もが驚いている。卯ノ花隊長も、すっかりそちらに意識を持っていかれており、俺は助かったと言えば助かったようなものだ。夜一さんには、あとで追及されてしまうだろうが…。

 

 ともかく、皆の関心は俺から逸れてくれた。今は、護挺十三隊の隊長の中で唯一"卍解"を習得していなかった更木剣八が、ついに卍解を習得したのかと……そちらに向いている。

 

 ただ、それが卍解ではないことを知るのは俺だけだ。

 

「泰虎…テメエともっと殺し合う為に得た力(始解・野晒)だ。帰る前にとくと味わって逝きやがれ」

 

 しかし、本来なら剣八が始解を習得するのはもっと先だ。崩子ちゃんは俺以外に影響を与えることはないと言っていたが、それは果たして本当なのだろうか…。

 

『私が影響を与えることがないのは事実です。

 けど、チャドさんに影響されて、切磋琢磨してライバルが強くなる…これは普通のことですよね?』

 

 崩子ちゃんの影響などではない。俺との闘いで、剣八が()()()()()()()()だけ。その反面──俺の霊圧が、常に危うい状態になっている。

 

 

 

 

 

 ▪️▪️▪️▪️

 

 

 

 

 

 短かったような長かったような。

 

 朽木ルキアを助ける為に足を踏み入れた尸魂界(ソウル・ソサエティ)……滞在した期間はだいたい2週間ほどだが、とにかく内容が濃い為に数ヶ月滞在したような感覚だ。

 

 とにかく闘いに明け暮れていた。

 

 考えてみたら、護挺十三隊の隊長5人と戦っている。我ながらよく死ななかったと思う。

 

 茶渡泰虎にとっての鬼門だった京楽春水戦から始まり、中断したとは言えイレギュラーな朽木白哉戦、総隊長・山本元柳斎重國と2度のリアルデスマッチに、そこに更木剣八を交え、そして藍染惣右介との防戦一方な闘い。

 

 最初は、京楽さんとの闘いを霊圧が消えることなく乗り切り、朽木ルキア救出のその時まで、この闘いに加われるようにと……それだけのつもりだった。

 

 それがどうだ。黒崎一護(主人公)よりも物語の根幹に深く関わってしまっている。崩子ちゃん(崩玉の欠片)と完全融合してしまっているのが、何よりもの証拠だ。

 

 良いことも悪いことも、想定外のことも、とにかくたくさん経験した。

 

 だが今は、無事に帰ってこれたことを喜ぼう。

 

「お疲れ様じゃな…チャド。

 おぬしは本当によく頑張ってくれた」

 

 俺は現世に帰って来た。

 

 ただ、勇音さんからのプレゼント(通信機器)を受け取り、始解を習得して襲いかかってきた剣八からどうにか逃れて穿界門を通過して現世に到着し、今回の騒動の原因でもある浦原喜助さんの出迎えを受け、独り暮らしする部屋に帰って来てみたら何故か……夜一さんをお持ち帰り状態である。

 

「おぬしは今回の一件で、間違いなく藍染に目をつけられておる。じゃから、儂がおぬしのそばにいることにした。あと…少し目を離しただけで、おぬしは他の女子(おなご)を虜にしてしまうようじゃからのォ」

 

 色々大変だった。けど、良いことの方が多かったかもしれない。

 

 夜一さんが俺専属の護衛として、夜一さんとの共同生活が始まるのである。

 

「それよりも腹が減ったのォ。

 チャド、飯にしよう」

 

 夜一さんとの共同生活で、俺はいったいどうなってしまうのだろうか…。

 

「あ、そうじゃ。

 おぬしには儂の素晴らしさを魂の真髄まで叩き込んでやるから覚悟しておくことじゃ」

 

 褐色気紛れ巨乳な夜一さんと一つ屋根の下。何も起きないはずがない。寧ろ、ついに()()()がやって来たのかもしれない。

 

 まだ夏休み期間。今年の夏は情熱的で過激的になりそうだ。

 

 もっとも、やるべきことは多い。楽しんでばかりはいられない。茶渡泰虎が乗り越えるべき試練がまた迫っているのだから…。

 

 

 

 ◆

 

 

 

魔王の制裁(サンシオン・デル・サタナス)

 

 

「こ、このッ、クソガキがァァァ!!」

 

 夏休みが終わりを告げ、新学期が始まり数日後……やはり事態は急変した。

 

 遂に、護挺十三隊を離反した藍染惣右介が本格的に動き出したのである。それも、護挺十三隊側の想定よりも遥かに早く。

 

 強大な力を持った敵の現世への襲来。

 

 茶渡泰虎にとっての()()()()()──右腕もがれ事件。

 

 ただ、チャドはそれを乗り越えるべく、真っ向から立ち向かい"悪魔の左腕(ブラソ・イスキエルダ・デル・ディアブロ)"から放たれた手刀で、敵の右腕を斬り落としていた。

 

 尸魂界(ソウル・ソサエティ)から戻ったチャドは、夏休みの残りの期間を四楓院夜一と修業に当て、また一段と成長していたのである。

 

 全ては、この日を乗り越える為に。

 

 チャドが再び、闘いに身を投じる。

 

 






とりあえず、尸魂界編はこれにて。

そして始まる破面編。チャドが乗り越えべき試練その2、ヤミー戦。右腕もがれ事件。

チャドの霊圧はこのまま消えることなく物語は進んでくれるのか?

現在のチャド……夜一さんと同棲中。
同棲しながら、勇音さんとMAILで連絡を取り合っている。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。